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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
共に1年前の雪辱を期して臨む埼玉王者と東京王者の対峙。城西大と明治学院大の昇格決定戦は味の素スタジアム西競技場です。
昨年度の大会は引き分け以上で昇格決定戦へと進出する可能性を残した予選リーグ最終戦で、今回の対戦相手である明治学院大に敗れ、4年ぶりとなる関東2部昇格の夢を絶たれた城西大。迎えた今シーズンは平成国際大との一騎打ちを制して2年連続で埼玉王者に輝くと、今大会の予選リーグでは初戦で横浜市立大に2-1で競り勝ち、東京農業大にも3-2と劇的な逆転勝利。さらに上武大に3-0で快勝して、1年前は届かなかった昇格決定戦まで。因縁の相手にリベンジを果たして、関東昇格を勝ち獲りたい一戦です。
「4年間で3回目の入れ替え戦です」とキャプテンの小林拓矢(4年・八千代)が話したように、近年はメキメキと力を付け、東京都リーグは勝ち抜けることも多くなってきたものの、3年前のこの大会では参入決定戦で東京農業大に屈し、昨年は予選リーグで無念の敗退を強いられた明治学院大。今シーズンは東京都1部リーグで優勝という堂々たる結果を残し、今大会も中央学院大、立正大とは共に引き分けたものの、防衛大相手に5ゴールを叩き込み、3チームの勝ち点が並んだ中でもわずかに得失点差1という差で2位に滑り込んでの昇格決定戦進出を。小林も「今年は勝負にこだわってきた」と話すチームで、最も勝負にこだわる必要のある最後の90分間へ挑みます。味スタ西のスタンドは空席もほとんどないような大入り満員状態。1年ぶりの再会。待ったなしのデスマッチは城西大のキックオフでスタートしました。
開始3分でいきなり訪れた歓喜。左サイドで明治学院大が掴んだスローインの流れから、エリア内へボールがこぼれると素早く反応したのはシャドーの一角を務める林龍之介(1年・横浜創英)。躊躇なく振り抜いた右足から繰り出されたボールは、そのまま勢いよく右スミのゴールネットへ突き刺さります。防衛大戦でもハットトリックを決めていたルーキーが、この大一番でも度胸満点の大仕事。早くも明治学院大が1点のリードを手にしました。
いきなりビハインドを追い掛ける展開となった城西大も、7分には中里勇斗(4年・武南)が右CKを蹴り込むも、ニアで八木一成(2年・藤枝明誠)がきっちりクリア。8分は明治学院大。廣瀬圭(3年・日大藤沢)の縦パスを受け、反転した大林将之(4年・駒澤大学高)のシュートは枠の左へ。10分も明治学院大。ここも大林がミドルレンジから左足で狙ったシュートは枠の右へ。「8月まではほとんど就活に専念していたんですけど、ここまで頑張って持ってきてくれた。人柄も凄く周りから尊敬されるので、彼の頑張りというのは凄く大きかったですね」と大森一伸ヘッドコーチも認める4年生ストライカーが、チームのアタックを牽引します。
14分は城西大にセットプレーのチャンス。ピッチ右寄り、ゴールまで約25mの位置から中里が得意の左足で直接狙ったFKは、小林がファインセーブで回避。直後の右CKを中里がショートで蹴り出し、串田翼(4年・武南)が上げたクロスはDFがクリア。18分にも中里が右から蹴ったCKは、ここも八木がクリア。城西大もチャンスシーンはやはりセットプレーから。
以降もゲームリズムは「ボールを動かしながら、相手の隙を突いてということを徹底してやろう」(大森ヘッドコーチ)と1年間言い続けてきた明治学院大にやや。19分にはボランチの佐藤正弥(2年・前橋育英)を起点に、林のパスを引き出した吉田祐弥(2年・藤枝明誠)が無回転のミドルを枠内へ打ち込み、飛んだ城西大のGK高畑一馬(4年・新田)が懸命にファインセーブ。19分にも林の左CKを右で粘って収めた廣瀬がクロスを送るも、DFが何とかクリア。22分にも林の左FKは城西大のCB的場京(4年・武南)にクリアされるも、井出佳希(3年・前橋育英)が果敢に枠外ボレー。続いて27分にも横山充(3年・正智深谷)が右からくさびを打ち込むと、大林が左へ捌き、ダイレクトではたいた廣瀬のパスは流れてしまいますが、悪くないアタックも形になり掛けます。
ところが、1本のパスで局面を変えたのは7番を背負った黄色のレフティ。28分、左サイドでボールを持った中里は、一瞬中央を確認するとピンポイントのアーリークロスを中央へ。1つ弾ませた磯崎龍慈(4年・帝京)が右足ボレーで叩いたボールは、豪快にゴールネットを揺らします。流れの中から初めて放ったシュートが見事同点弾に。4年生同士のホットラインが飛び出し、スコアは振り出しへ引き戻されました。
引っ繰り返った形勢。33分は城西大。的場、遠藤葵(4年・桐生第一)、磯崎と細かくボールが繋がり、右からカットインして放った中里のシュートは枠の右へ外れるも、やりたいことの一端を見事に表現。35分も城西大。キャプテンマークを巻く佐藤恵祐(4年・流通経済大柏)のミドルは大きくクロスバーの上へ。38分も城西大。右SBの若林可輝(4年・正則学園)が1人かわして中へ送り、佐藤を経由して磯崎が打ったシュートはDFがブロック。39分も城西大。内田倭(4年・香川西)が流したボールから、1人外した櫛田の左足ミドルはクロスバーを越えたものの、「前が動いたらすぐ放っちゃうみたいな感じになってしまった」と大森ヘッドコーチも語るなど、単発の長いボールが増えてしまった明治学院大に対し、城西大がペースを奪還するような終盤となった前半は、1-1のタイスコアでハーフタイムに入りました。
「最初のプランというのは、城西は横にボールを動かすとバラバラになる傾向があったので、慌ててボールを中に放らずにゆっくりと動かしながらという形だったけど、それがどうしてもなかなかできなかった」と前半を見ていた大森ヘッドコーチ。修正を加えられてピッチヘ飛び出した明治学院大の後半ファーストチャンスは48分。林の思い切ったミドルはクロスバーを越えるも、この1年生はおそらく緊張と無縁。50分も明治学院大。吉田が左へ振り分け、廣瀬が少し運んで上げたクロスは高畑にキャッチされましたが、「失点も想定の範囲内というか別に動じなかった」(小林)という明治学院大が再び攻勢に打って出ます。
それでも城西大には「足元に入ったら怖いですよね」と大森ヘッドコーチも認めるレフティの脅威が。55分に右サイドでボールを受けた中里は必殺スルーパス。抜け出した磯崎には小林が上手く対応してシュートを打たせず、最後は佐藤の左足ミドルが枠の右へ外れましたが、一瞬でも隙を作ればそこは"中里ゾーン"。56分に八木が枠の左へ外したミドルを挟み、59分には中里も枠の右へ外れるミドル。黄色の7番が奏でるピッチ内の転調。
とはいえ、全体のペースは明治学院大サイドに。63分に吉田が獲得したFKを右から林が蹴り込むも、DFにクリアされると明治学院大ベンチの決断はその1分後。吉田に替えて鳥谷部嵩也(1年・桐蔭学園)をピッチヘ解き放ち、全体の推進力アップに着手。やや押し込まれる時間の続いていた城西大も、75分に決断したのは2枚替え。中里と遠藤を下げて、青木椋(4年・大宮南)と中野真悟(3年・市立船橋)をピッチヘ。運動量こそ落ちていたものの、最も効いていた印象もあった中里はここでベンチへ。大森ヘッドコーチも「替わったのはちょっと意外でした」と素直な感想を口にします。
78分は明治学院大。井出が左からクサビを打ち込み、鳥谷部がうまく間で受けてきっちり繋ぎ、大林はシュートまで持ち込めなかったものの、狙いは明確な好トライ。79分も明治学院大。廣瀬が左へ流し、鳥谷部が鋭いステップで1人かわして、そのまま上げたクロスは絞った城西大の左SB池田政之(4年・岩槻)が懸命にクリア。80分は明治学院大に2人目の交替。奮闘した大林に替えて、近藤健太(3年・弥栄)をそのまま最前線へ。81分は城西大。右から青木が蹴り入れたFKに、ファーで合わせた若林のヘディングは枠の上へ。82分も城西大。磯崎が左へ展開し、青木のクロスをダイレクトで振り抜いた内田のボレーは枠の右へ。やり合う両雄。いよいよ迎えるクライマックス。
絶叫を呼び込んだのは途中出場の2人。85分に明治学院大は左サイドへボールを運び、鳥谷部がエリア内で粘ってドリブル。このこぼれを拾った近藤が思い切り良く右足を振り抜くと、高畑も抜群の反応で弾き出しましたが、そのボールへ誰よりも速く突っ込んだのは鳥谷部。飛び出した高畑より数十センチ先に頭に当てたボールは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。「GKとの競り合いで、GKが勝つと思ったので入ると思わなかった。あっちまで走って行きたかったですね」とその瞬間を振り返ったのは小林。「時間帯も最高に良かった」(大森ヘッドコーチ)勝ち越しゴールは、165センチの大きなルーキーが執念のヘディングで。最終盤で明治学院大が再びリードを奪いました。
「実は昨日の練習で残り5分で勝っていた時の戦い方というのをシミュレートしていた」(大森ヘッドコーチ)という明治学院大は、きっちりコーナーキックも時間を使いながら、着々と進めていく時計の針。89分には佐藤正弥と慶野琢也(3年・常総学院)を入れ替え、それまで3バックを構成していた石田海土(3年・東福岡)、中川大介(2年・座間)、井出に加えて、180センチの長身CBを送り込んで取り掛かるゲームクローズ。城西大はなかなかボールを奪い返すことができません。
そして、掲示されたアディショナルタイムの3分を少し回った時、「嬉しいという感情と本当に終わりだなという寂しさ」が胸に去来していた小林の耳に届いたファイナルホイッスル。「入れ替え戦の前までは4年生のスタメンは僕だけだったんですよ。最後の最後で大林が入ってくれて、一番前と一番後ろで挟める4年生がいるという形になったんですけど、今年1年間4年生は1人で戦ってきて本当に後輩に救われたなと。後輩が僕に付いてきてくれて、同じ気持ちを持ってやってくれたので、この結果が付いてきたんだと思っています」と笑ったキャプテンに次々と飛び付く後輩たち。激闘を制した明治学院大が35年ぶりとなる、悲願の関東2部昇格を果たす結果となりました。
前述したようにこの日の明治学院大で、メンバーに入っていた4年生は小林と大林のみ。当然大半の4年生は忙しい就職活動の日々を過ごしていたため、なかなかサッカー部の活動に関わる機会は多くなかったそうですが、「ウチは部員が多いので、スタッフが少ない中でも色々協力してくれました。見えない所で凄くチームを支えてくれた、凄く良い4年生です」と大森ヘッドコーチも、彼らがチームに与えた小さくない影響を強調。試合後、この日は制服を着て応援席で声援を送り続けていた4年生の元へ向かった小林は「その時はずっと泣いていましたね」と満面の笑みを浮かべていました。「明治学院大学にとって凄く良い歴史を創れたというのは嬉しいですよね。サッカー部だけじゃなくて一般の学生も嬉しいでしょうし、協力してくれている部長の先生や職員の皆さんも励みになるようですから、そういう人たちと喜びを分かち合えるというのは本当に嬉しいです」と大森ヘッドコーチも言及したように、新たな歴史を切り拓いたチームを文字通り支え続けた小林は「ずっと4年間関東昇格を追い続けてきたので、それが最後の年にできたというのは本当に嬉しいです」と話しながら、「最初はただのガキンチョ軍団だったんですけど、今は大人になったと思います。今日は『自分たちが関東で戦いたい』という気持ちを前面に出してくれたと思いますし、『それでいいかな』と思って、安心して後ろから見ていました」と後輩たちの成長にも手応えを。「僕たちはやることはやったので、あとは後輩たちに『思う存分やって来い』という気持ちです。まずは念願の関東のピッチで思い切りプレーして欲しいなと思います。それに尽きますね」と力強く言い切ったキャプテンからバトンを受け継ぎ、いよいよ明治学院大が"関東"という新たなステージへ足を踏み入れます。 土屋
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