最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
セミファイナルという大舞台で実現した"長岡ダービー"。2年ぶりの全国を狙う帝京長岡と12年ぶりの頂点を目指す長岡向陵の対峙は引き続き新潟市陸上競技場です。
現在はJ2昇格を目指すレノファ山口FCでレギュラーとして活躍している小塚和季を擁し、県勢初の全国ベスト8へ到達したのは3年前。3連覇を目指した昨年度の大会は準々決勝で涙を飲み、最後の冬にリベンジを誓っている帝京長岡。今シーズンもインターハイ予選で新潟明訓に0-1で敗れ、夏の全国出場には届きませんでしたが、「たぶん本当にインターハイで0-1で負けたのが悔しかったんだと思います。トレーニングの質が変わりました」と古澤徹監督が話した通り、夏以降は桐光学園や草津東など全国の強豪にも互角以上のゲームを。迎えた今大会も、準々決勝で昨年王者の開志学園JSCに2-1で競り勝ってベスト4へ進出。2年ぶりの全国へ王手を懸けるべく、重要な80分間に向かいます。
5試合無失点という鉄壁の守備を武器に、新潟を初めて制したのは12年前。以降は4度の準々決勝進出はあったものの、なかなか県4強の壁を超えることができていない長岡向陵。今大会は2回戦で新発田南を9-0、長岡大手を6-0と大差で下すと、4回戦ではインターハイ予選準優勝の加茂暁星も3-0で堂々撃破。3日前の準々決勝も新潟産業大学附属を2-0と倒して、優勝した82回大会以来のベスト4まで到達。さらに長岡のライバルを蹴落として、ビッグスワンのピッチヘと勝ち上がりたい一戦です。「準決勝という舞台で教え子がたくさんやっているというのは、感慨深いものがあるなと思いますね」と古澤監督も口にしたように、両チーム合わせた40人のメンバー中、実に19人が長岡JY FC出身であり、長岡ビルボード出身も7人が名前を連ねるなど、まさに長岡の育成年代にとっては記念すべき一戦。第1試合同様に2000人近い観衆が見つめる中、帝京長岡のキックオフでゲームはスタートしました。
先にチャンスを掴んだのは長岡向陵。3分に左サイドでFKを獲得すると、谷口成冴(2年・長岡JY FC)が蹴ったボールはDFにクリアされるも、まずは水色と黒の縦縞が惜しいシーンを迎えますが、7分には帝京長岡も大塚翔太(3年・長岡JY FC)、岩下航己(3年・長岡JY FC)、陶山勇磨(1年・長岡JY FC)とスムーズにボールを回し、石田健太郎(3年・長岡JY FC)の反転シュートは枠の右へ外れたものの、このフィニッシュで踏み込まれたアクセル。
9分も帝京長岡。「ボールを蹴れるのであそこから効果的に長いボールを使えていた」と指揮官も言及した大桃海斗(3年・長岡JY FC)のフィードに、走った小林拓夢(3年・長岡JY FC)が左からグラウンダークロスを通し、ここは長岡向陵のCB渡邊祐貴(2年・長岡ビルボード)がクリア。10分も帝京長岡。CBの吉田誠(3年・長岡JY FC)が中央をドリブルで運んで左へパスを通すと、小林のシュートは長岡向陵のGK菅井悠平(3年・長岡ビルボード)がファインセーブで応酬。11分にもやはりCBの大桃が最前線までボールを運んだ流れから、陶山が枠を越えるミドルまで。帝京長岡が攻勢を強めます。
さて、押し込まれつつある長岡向陵はサイドハーフの曽田健介(3年・アルビレックス柏崎JY)を槍に右サイドに可能性が。16分にはその右サイドから山田朋成(3年・長岡JY FC)が投げたロングスローはDFのクリアに遭い、直後の右CKも山田が蹴り込み、残した水本連(3年・小千谷SC)のリターンを山田が上げたクロスもDFにクリアされたものの、セットプレーで窺う相手ゴール前。20分には左サイドをドリブルで運んだ山本貴大(2年・長岡JY FC)が中へ戻し、SBの松島翼(3年・長岡ビルボード)の放ったシュートは枠の右へ逸れましたが、ようやく長岡向陵に記録されたファーストシュート。
ところが、21分に輝いたのは「自分たち2人の特徴をしっかりわかり合えて来たかなと思います」(小林)「お互いを生かして生かされてみたいな関係ができてきた」(高野)と声を揃えた緑の2トップ。中央をドリブルで突き進んだ小林が右へスルーパスを送ると、「ボールが来た時は結構落ち着いていて『そこしかないな』と思った」高野は対角線上のファーサイドへシュート。一直線に左スミへ向かったボールは、そのままゴールネットを力強く貫きます。「あの角度は結構練習していたので、しっかりミートだけ考えて打った」という9番を背負うストライカーが早くも一仕事。帝京長岡のスコアボードに"1"の数字が踊りました。
畳み掛ける帝京長岡。22分に小林が左のハイサイドへ蹴り入れたボールを、「ボールも取られないので、自分たちが出し手じゃなくて受け手になれる」と高野もその実力を認める陶山は粘って収めて中央へ。石田の前で良く戻ったDFがカットしましたが、1年生がきっちりチャンスメイクを。22分に石田が小さく出して高野が上げるというショートコーナーを左から連続で繰り出すと、27分にも同じ左ショートコーナーから高野がクロスを上げ切り、高橋響(3年・長岡JY FC)のヘディングはゴール右に外れるも、続けてチャンスを創出した帝京長岡に「アレは本当に感覚で普段のトレーニングの賜物」と指揮官も評価するゴラッソが生まれたのはその直後。
29分、右サイドで岩下が粘って残すと、ボールを引き取った陶山は鋭いグラウンダーのパスを中央へ。「走り込んできたのが見えたので、本当は自分でターンして左足で打とうかなと思ったんですけど、あそこはアイツに任せました」という小林が優しく落としたボールを、「3人目で関わるというのが結構帝京の形で、練習していたのでそこには絶対に関わろうと思っていた」高野が確実にゴール右スミへ流し込みます。「形というよりは自分たちのイメージで同じ絵が描けてトントントンと行って、アレは良いゴールだったと思いますね」と古澤監督が話せば、アシストの小林も「『これは行ったな』というのはありましたね」と手応えを口に。再び小林から高野というホットラインが開通し、両者の点差は2点に開きました。
小さくないビハインドを負った長岡向陵も、32分には外山光(1年・長岡JY FC)が右へ振り分け、ドリブルを縦へ進んだ曽田のクロスはわずかに水本と合わず。34分に左サイドで時間を創った小林のパスに、走り込んだ高橋のシュートは菅井がキャッチで凌ぐと、37分には好機到来。水本のパスを受けた曽田が右へスルーパスを送るも、外山のドリブルは吉田が貫禄のボールカット。「小林と高野で2人で仕事が2つできたことで、チームも乗って行けたかなと思います」と古澤監督も言及した帝京長岡が2点のアドバンテージを握って、最初の40分間は終了しました。
『向陵の誇りと公立の夢みせろ』。後半キックオフ直後にいきなり滲ませた"向陵の誇り"。41分、バイタルで4本続けて短いパスを繋ぐと、山本のシュートはDFのブロックに阻まれ、谷口の左足ミドルは枠の上に外れましたが、綺麗な形からフィニッシュまで。43分にもスローインの流れから廣瀬亮太(3年・長岡ビルボード)のパスを曽田がクロスに変え、ファーへ流れたボールを拾った山田はクロスを上げ切れなかったものの、「後半の立ち上がりの所で相手にリズムを与えてしまった」と古澤監督。ギアを一段階引き上げた縦縞の長岡。
44分には帝京長岡も陶山、石田と回したボールを、左に持ち出した小林がシュートまで持ち込むも、菅井がファインセーブで仁王立ち。45分は長岡向陵。山田とのワンツーから水本が左へ流すと、山本が少し運んでシュート気味に入れたクロスは枠の上へ消えたものの、後半は山本も流れに乗り始め、逆に左サイドの活性化が呼び込んだゲームリズム。
49分は帝京長岡。左SBの金井明寛(3年・長岡JY FC)を起点に石田が中央へ戻し、小林が狙ったシュートは枠の左へ。50分は長岡向陵。エリア内へ潜った山本のシュートは、吉田が体でしっかりブロック。52分に負傷した大塚と澄川広大(1年・長岡JY FC)の交替を挟み、53分も長岡向陵。廣瀬の右スローインを水本がダイレクトで繋ぐと、山田のDFをかすめたミドルは帝京長岡のGK深谷圭佑(2年・豊橋デューミラン)がキャッチしましたが、「10(山田)が8(谷口)と縦関係になって出てきて、9(水本)が降りてきて、ちょっと掴み切れないようなシーンがあった」と古澤監督も認めた通り、中盤の攻勢をボックスからダイヤモンド気味にして、山田がよりエリアの近くで仕事をし始めた長岡向陵の続くペース。
帝京長岡も54分には高野の右CKから小林が、56分にも小林と岩下の連携から陶山が、それぞれフィニッシュを取るもボールは枠外へ。58分は長岡向陵。右から水本が蹴ったクロスはゴール方向へ向かい、深谷が懸命のフィスティングで回避。59分も長岡向陵。谷口の左CKから、ニアへ入った曽田はシュートまで至らなかったものの、直後には外山と小川大翔(2年・長岡ビルボード)をスイッチして、何とか1点を奪いに掛かります。
苦しい状況を跳ね返したのは「『ちょっと飲み込まれてきたかな』というのがあって、次の1点は自分が決めてやろうというのがあった」と話す14番。62分、体の強さを生かして相手ボールを奪った陶山はすかさず左へスルーパス。ここに反応した小林はGKの目前で先にボールへ到達し、冷静にゴールネットへ流し込みます。「自分が付けていいのかなというのが正直な気持ちなんですけど、新しい14番像を創るチャンスというのも自分の中にはあるので、今年の14番はこれだというのをしっかり見に来てくれる方々に表現できたらなというのはあります」と語る帝京長岡のエースナンバーを背負った小林の追加点に、古澤監督も「嫌な雰囲気で小林が1つ取ってくれたので、あの3点目が一番良かったかなと思いますね」と納得の表情。次の1点も帝京長岡に入りました。
65分に岩下の浮かせたパスを陶山が落とし、絶好の決定機を「ゴールが欲し過ぎて、流し込もうか思い切り打とうか迷ってやっちゃいました」と苦笑する高野が枠の上へ外し、ハットトリックのチャンスを逃すと、双方が切り合うカード。65分に帝京長岡は陶山と岩下を下げて、小林歩夢(1年・長岡JY FC)と武内蓮(3年・長岡JY FC)を送り込む2枚替えを敢行。70分に長岡向陵はCBの小山凌生(2年・エスプリ長岡)と加藤颯一郎(1年・エスプリ長岡)を入れ替え、71分は帝京長岡も石田と金子大晟(1年・長岡JY FC)をスイッチ。お互いに1年生をピッチヘ送り出しながら、ゲームはいよいよ最終盤へ。
続くミドルの応酬。73分は長岡向陵。谷口のパスを小川が落とし、山本のミドルは枠の左へ。76分は帝京長岡。小林歩夢のパスを受けた武内は、右に流れながらループミドルを狙うも菅井がキャッチ。直後の76分は長岡向陵。中盤を1人でグングン運んだ山田のミドルは深谷が丁寧にキャッチ。77分には古澤監督も最後のカードを。ドッピエッタの高野を下げて、木村勇登(2年・Desenvolver.FUT)をピッチヘ解き放ち、ゲームクローズに着手します。
80分のラストチャンスは長岡向陵。後方からのフィードをよくボールに絡んでいた小川が懸命に繋ぎ、エリア内から水本が放ったシュートは枠を捉えるも、深谷が確実にキャッチすると、3分間のアディショナルタイムが消え去るのを見て、熊谷幸剛主審がすっかり雨も止んだ越後の空へ向け、短いホイッスルの音を3度。「フィールドの子たち全員が集中して入っていたなというイメージがあった」と古澤監督も言及した帝京長岡が、新潟明訓の待つファイナルへと駒を進める結果となりました。
3回戦から準決勝までを11日間で消化するというスケジュールを受けて、「とにかく決勝のことは考えずに3回戦からの4試合を1つのスパンで勝ち抜こうと話していた」(古澤監督)という帝京長岡。16-0、15-0と大勝が続いた中で苦しい準々決勝をモノにした勢いのまま、長岡ダービーも快勝で制して、2年ぶりのファイナルまでとうとう辿り着きました。最後に対峙する相手は前述したようにインターハイ王者の新潟明訓。「まだ1回も勝っていない相手ですし、本当にアイツらとやるのも最後なので、ここで一泡吹かせてやろうというのはみんな思っている」(小林)「1回も勝っていないですし、手応えは結構あるのに最後に取られて全部0-1で負けているので、帝京サッカーで崩して最後の最後で勝ちたいと思います」(高野)と2トップが意気込んだように、ファイナルで激突するには最高の相手。一足先にセミファイナルで勝利を収めた新潟明訓の田中健二監督は「今年の新潟はどっちが勝っても全国で戦えると思っているので、そういう意味にふさわしいゲームが決勝でできれば良いと思います」と語り、古澤監督も「どっちが勝っても本当に日本でトップを目指せるようなチームだと思うので、そこは本当にリスペクトして、自分たちがやってきたことをやろうと考えています。『本当に日本のトップを目指せる子たちが育成年代で育っていって、勝ちか負けかという五分五分の勝負が良いスタジアムでできることになったら幸せだね』というのはスタッフの中で常々言っていました」と決勝への想いを。激闘必至のファイナルは2週間後の15日、デンカビッグスワンスタジアムで12時15分に時計の針が動き出します。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!