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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ビッグスワンでのファイナルまではあと1つ。インターハイ王者の新潟明訓と6年ぶりの全国を目指す北越の激突は新潟市営陸上競技場です。
インターハイでは過去6度の全国大会出場を果たしているものの、選手権予選では11年に渡ってファイナルからも遠ざかっている新潟明訓。今シーズンはインターハイ予選で開志学園JSC、帝京長岡と近年の強力なライバルを相次いで撃破し、2年ぶりに新潟を制したものの、全国では大阪桐蔭に初戦で惜敗。ただ、「夏のインターハイは自分たちのやりたいことがあまりできなかったですけど、そこからチームとして大きく変わった」と高橋怜大(3年・アルビレックス新潟JY)が話したように、その敗戦をキッカケにポジション変更を含めて田中健二監督の振るった大ナタが奏功。今大会は新潟工業、新潟西とプリンス勢を圧倒的な結果で連破し、このセミファイナルまで。まずは「今年の子たちは最低ラインで決勝まで行かないとダメ」と指揮官が話す"最低ライン"に到達するための80分間を戦います。
新潟県の高校サッカー史に残る選手権予選3連覇を達成したのは6年前。以降はなかなかファイナルまで辿り着けない時期が続いている北越。昨年のこの大会では結果的に優勝を果たした開志学園JSCに無念の延長負けを喫し、5年ぶりの全国出場が潰える結果に。迎えた今シーズンもインターハイ予選は準々決勝で新潟江南と熱戦を演じながら、最後はPK戦で悔しい敗退を突き付けられており、選手権に懸ける想いは並々ならぬモノがあるはず。新潟明訓とはプリンス北信越で0-4、2-7と連敗していますが、今シーズン最後の対戦で一泡吹かせる覚悟は整っています。会場の新潟市陸には2600人という大観衆が。小雨が断続的に降り続く中、明訓のキックオフでセミファイナルはスタートしました。
先にチャンスを創ったのは明訓。5分に左から田辺大智(3年・アルビレックス新潟JY)がクロスを送り、収めた高橋のシュートは枠の左へ外れましたが、6分にも今度は右SBの白井克秀(3年・グランセナ新潟JY)が入れたクロスに、中村亮太朗(3年・グランセナ新潟JY)が頭から飛び込み、ボールは枠の右へ外れたものの、「とにかく最初の15分は押し続けようということは話している」とキャプテンの加藤潤(3年・アルビレックス新潟JY)が話した通り、明訓の続くラッシュ。
すると、歓喜の瞬間は10分に早くも。「得意なドリブル」で右サイドをえぐり切った高橋が中へ付けると、2か月前まではSBを務めており、コンバート後に「今までシュート練習には縁がなかったのでそこには力を入れました」という田辺はスムーズな反転から左足一閃。鋭いボールはGKのニアサイドをぶち破って、ゴールネットへ到達します。「反転してそのままというイメージがあったので、そのまま左足で打つことができました」という5番のストライカーはこれで3戦連発。「何よりもあの子はシュートの思い切りが良いので、『何本外しても良いからとにかく打て』ということで迷わせないようにしています」と田中監督も笑う田辺の一撃で、明訓が勢いそのままに1点のリードを奪いました。
以降も手数は明訓。12分にはマーカーとうまく入れ替わった田辺がエリア内へ潜り、放ったシュートは懸命に飛び出した北越のGK瀧本和輝(2年・湘南ベルマーレU-15南足柄)がファインセーブ。そのルーズボールを至近距離から坂田純(3年・小針FC)が狙うも、ここも北越のCB堀川海都(3年・グランセナ新潟JY)が足を伸ばして決死のブロック。15分も高橋が左へ付けると、関口正大(2年・FC五十嵐)がカットインから打ち切ったシュートは瀧本がキャッチ。17分にも中村が左クロスを放り込み、走った関口にはわずかに合わず。北越も18分には舛谷凛太朗(3年・グランセナ新潟JY)が左へ振り分け、SBの内藤琉希(2年・アルビレックス新潟JY)が上げたクロスに大野匡輔(1年・FC阿賀野)が突っ込むも、明訓のCB木村風輝(3年・アルビレックス新潟JY)がきっちりクリア。変わらないゲームリズム。
21分の咆哮もサックスブルー。右サイドでボールを持った加藤はピンポイントクロスを中央へ。ここに走り込んだのは「個人的にはポジションが1つ上がった分、点に絡まないといけないという想いはある」という中村。体を伸ばして当てたヘディングは右スミのゴールネットへ収まります。1年時から10番を託され、「とにかくアシストと点を取ることは意識している」という中村の貴重な追加点。点差は2点に広がりました。
さて、185センチの長身を誇る安藤崇裕(3年・グランセナ新潟JY)にボールを当てながら、何とか打開を図りたいものの、なかなか攻撃の形が出て来ない北越。24分には中央をドリブルで運んだ菅井皇太(3年・アルビレックス新潟JY)が25mミドルを放つも、明訓のGK杉本陸(2年・アルビレックス新潟JY)ががっちりキャッチ。25分にも安藤が左へ流し、舛谷が枠へ飛ばしたシュートも杉本がキャッチ。ようやく繰り出した手数もゴールには至りません。
27分は明訓。指揮官が「一番努力もしていましたし、そういう所で何かで使いたいと思っていた」と話す、夏以降にSBのレギュラーを掴んだ東山裕輝(3年・グランセナ新潟JY)が左サイドをぶち抜くと、こぼれに反応した坂田のシュートは瀧本がファインセーブで阻止。28分も明訓。白井の左CKにCBの苅部杜行(3年・ジェズ新潟東SC JY)のドンピシャヘッドはわずかに枠の右へ。30分から34分にかけても3度のCKを蹴り込むなど、「前半で勝負を付けるというのは大事だなと思っていた」という高橋の言葉はチームの共通認識。
40分の主役は「自分もまさか今日決めるとは思っていなかった」と笑った主将。右サイドの深い位置で獲得したFK。スポットに立った加藤は「『中の味方に合わせて入るかな』というのはあったんですけど、GKのポジショニングがちょっと高かったので、枠に入れることが第一だと考えて」インスイングのキックを得意の左足で蹴り込むと、ボールはGKの頭上を越えてゴールネットへ吸い込まれます。「チームとしては前半で決めに行くというのは話し合っていたので、その点に関しては100パーセントの前半だったと思います」と淀みなく話す加藤の直接FKはチーム3点目。明訓が大きなアドバンテージを握って、最初の40分間は終了しました。
後半はスタートから北越に1人目の交替が。菅井に替えてそのまま右サイドハーフに小林剛人(3年・新潟白根北中)を送り込み、サイドの推進力へ変化を加えに掛かりますが、開始早々の43分にその北越を襲ったアクシデント。前半の終盤からドリブルに冴えを見せ始めていた左SBの内藤が負傷でプレー続行不可能に。高岡遼弥(3年・五泉DEVA)が右SBに投入され、右SBだった渡辺啓太(3年・グランセナ新潟JY)が左SBへスライド。早くも2人目の交替を余儀なくされてしまいます。
48分に右寄り、ゴールまで約20mの直接FKを加藤が枠の上に外した明訓は、その2分後に思わぬ形からダメ押しの追加点。白井がラインの裏へ落としたフィードは、DFが先に追い付いていましたが、懸命に走った関口はDFの横から左足を突き出してシュートを放つと、虚を突かれたGKは反応できずにボールはゴールへ転がり込みます。新潟西戦では驚異のハットトリックを達成した2年生アタッカーがこの日も一仕事。スコアは4-0に変わりました。
意地を見せたい北越。52分には中央で1つ溜めた舛谷が左へスルーパスを通し、走った渡辺のカットインシュートはDFに当たって枠の左へ。53分に坂田と高橋裕人(3年・グランセナ新潟JY)を入れ替えると、59分にはボランチの佐藤喜生(3年・グランセナ新潟JY)が裏へ浮き球を送り、小林が全力で走るも木村と苅部の明訓CBコンビが挟み込んで確実にカット。直後にも本間清隆(2年・グランセナ新潟JY)が左へ送り、渡辺のカットインシュートはDFにブロックされたものの、左に回った渡辺の推進力に漂う可能性。60分には堀川と山田洸太(2年・アルビレックス新潟JY)もスイッチして、まずは何とか返したい1点。
「無理して行ってカウンターというよりは確実に確実に繋いでいってという風に思っていた」と加藤が言及したように、少しゲームをコントロールしながら確実な好機を窺う明訓。61分には白井のフィードに中村が抜け出し、左から折り返したボールは関口もわずかに届かず。62分には中央から右にドリブルで流れた高橋のシュートが枠を襲うも、瀧本がファインセーブで応酬。直後の62分は北越。本間のパスから安藤のミドルは枠の右へ。64分は明訓。東山の浮き球パスを、センス溢れるトラップで収めた高橋の右カットインシュートは瀧本がキャッチ。お互いに取り合うフィニッシュ。
65分に北越へ訪れたこのゲーム最大のチャンス。ここも渡辺を起点に本間が縦へ入れたパスから、バイタルで反転した安藤は左足ボレーで狙いましたが、ボールは無情にもゴール左へ外れ、同点とは行かず。明訓は67分に白井と五十田侑也(3年・グランセナ新潟JY)、69分に坂田と渋木理(3年・アルビレックス新潟JY)を相次いで入れ替え、70分には加藤のCKから中村が枠の左にヘディングを外すと、71分には「教育的な部分から」(田中監督)GKの杉本に替えて、三富駿(3年・グランセナ新潟JY)をゴールマウスに解き放ち、残された10分弱とアディショナルタイムへ向かいます。
終盤は「みんなボールが欲しいので、最後はみんなシュートを打ちまくっていましたね」と中村も苦笑したように、明訓の猛ラッシュ。71分には抜け出した田辺がクロスバーを越えるミドル。73分には高橋が右へスルーパスを送ると、「中村とかに相手から離れて受けろというのを言われ続けてきた」という田辺は絶妙のラインブレイクからフリーで飛び出し、シュートは枠の左へ外れたものの「前でやっている以上は『点も欲しいな』という感じで2点目、3点目を狙っていこうと思った結果」という本人の姿勢には「ちょっと粗くなったんですけど、打たないよりは良いと言っていたので」と指揮官も納得の表情。
73分に関口と本田宗彰(3年・グランセナ新潟JY)を4枚目の交替としてスイッチすると、74分には中央を独力で切り拓いた中村のシュートは、ブロックに入ったDFに当たって枠の上へ。75分には北越も最後のカードとして高橋慧(2年・春日FC)をピッチヘ解き放ちましたが、77分も明訓。「元々攻撃の選手で両足が使える」(田中監督)東山がドリブル突破からクロスを上げ切り、ニアへ突っ込んだ渋木のボレーは枠の右へ。直後に田中監督は苅部と阿部晃大(3年・グランセナ新潟JY)というCB同士の交替をラストカードに。11人の3年生に任せたゲームクローズ。
79分に渋木が、80分に田辺がそれぞれ枠外にミドルを打ち上げても、「打ちたいという気持ちが子供たちにあると判断したいと思います」と田中監督はゴールへの意欲を最大限に評価。そして、3分間のアディショナルタイムを経て、新潟の空へこだましたのはサックスブルーの勝利を告げるホイッスル。「最後はみんな欲張っちゃって、その面で点が入らなかったと思うんですけど、しっかりシャットアウトできたので後半も良い形だったと思います」と加藤も話した明訓が、16年ぶりの覇権奪還へ王手を懸ける結果となりました。
試合後には田辺、高橋、加藤、中村と4人の選手に話を聞かせてもらったのですが、印象的だったのは4人が4人とも非常にしっかりと会話できる青年だったこと。「自然体でやらせたかったので、自分もミーティングはほとんどしていません。昨日ちょっとやっただけで、今日もミーティングをしないでメンバーを言っただけなので。今までにない指導法があの子たちのおかげでできていますし、それぐらいあの子たちは自立していますし、私に意見も言えますから、そこは大人になる上で潰したくないですね」と田中監督も認めたように、とりわけ1年生から主力を担ってきた前述のメンバーを中心に、例年にない自主性を持っているのが今年の明訓。キャプテンの加藤も「日頃から自立を求められるのが僕たちですし、その能力があると監督も思ってくれていると思うので、みんなの中で共有しながら『こうしよう』というのが試合中にできていることが一番の強みかなと思いますね」と力強く語ってくれました。「自己主張できる子たちと出会うというのはなかなかないので、そこは存分に出させてあげようかなと思っています。できるだけベンチに座って指示は出さずに。サッカーはラグビーと一緒で、できれば監督はいない方が良いと思っています(笑) そこをラグビーから学んだので自分もやろうかなと」と笑顔を見せた田中監督。「選手たちが楽しくやることを今年は凄く目標にしている」(田中監督)明訓の戴冠まではあと1つの勝利のみです。 土屋
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