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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年11月09日

高校選手権東京B準決勝 東京朝鮮×帝京@西が丘

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1109nishigaoka.jpgインターハイ予選のクォーターファイナルでも実現した"十条ダービー"。東京朝鮮と帝京がぶつかるセミファイナルは引き続き味の素フィールド西が丘です。
高体連加盟2年目で初めてファイナルまで辿り着き、帝京に延長戦で屈したのは18年前のこと。以降は3回に渡って西が丘のピッチを踏んではいるものの、勝利が遠い東京朝鮮。今シーズンはインターハイ予選で躍進を遂げ、準々決勝で今回の対戦相手でもある帝京を5-3という撃ち合いで下し、最後は全国4強を経験することになる関東第一に0-1で敗れましたが、チーム力に一定の手応えを。今大会も2回戦で駿台学園を2-1で振り切ると、準々決勝では都立日野台相手にリャン・ヒョンジュ(2年・大宮アルディージャJY)が圧巻の4ゴールを叩き込んで、6年ぶりの西が丘へ。「目標は全国なので西が丘は通過点ですし、ここで満足できないと思う」と話したのはキャプテンのキム・ファンジ(3年・東京朝鮮第一中)。初優勝へ向けてまずは目の前の80分間を戦います。
4連覇を狙って臨んだファイナルで駒澤大学高に敗れたのは5年前。それからは一度も東京の頂点に立つことができていない帝京。最後に全国制覇を果たした第70回大会でキャプテンを務めていた日比威監督が就任した昨年の選手権予選も、まさかの初戦敗退を強いられ、今シーズンも前述したようにインターハイ予選では東京朝鮮に競り負けてしまいましたが、迎えた今大会は初戦で東海大菅生を2-1と下し、準々決勝も都立松が谷に5-0で快勝。リーグ戦でも最後の6試合は4勝2分けと好成績を残しており、「やっていることの方向性は間違っていないと、スタッフの中ではみんな思っている」と自信を口にしたのは日比監督。6年ぶりの覇権奪還を狙うための準備は整いつつあります。1試合目から降り続く雨の中、この好カードを見届けるべく西が丘のスタンドを埋めた観衆は4802人。注目のセミファイナルは13時ジャストにキックオフを迎えました。


なお、第1試合に関する取材の都合上、前半は試合を詳細に見ることができなかったため、この試合の前半は公式記録として配布されたマッチリポートと、日比監督のコメントを掲載させていただきます。
【マッチリポート】
帝京は3-4-3、東京朝鮮は4-4-2のシステムでお互いDFラインの背後にボールをシンプルに配球しながらセカンドボールを拾う、リスクの少ないゲーム展開であった。序盤、帝京は高身長のFW⑱高橋心(2年・A.N.FORTE FC)へロングボールを配球しながらMF⑪中瀬大夢(2年・FCトリプレッタJY)、MF⑨浅見颯人(3年・FC多摩)がセカンドボールを拾い積極的にシュートを打ちゴールを狙う。さらに東京朝鮮DFラインが中央を警戒しバイタルエリアに枚数を掛けるとサイドからMF④平井寛大(3年・帝京FC)、MF⑧長倉昂哉(3年・さいたま木崎中)の縦への突破を有効的に使いサイドから素早い攻撃を仕掛ける。一方、東京朝鮮は帝京の攻撃を③キム・ファンジを中心に高いフィジカル能力でしのぎながら素早く前線にボールを配球し⑪リャン・ヒョンジュのスピードを活かす攻撃を試みたが、帝京DFの連携のとれた守備でリズムを掴めない。お互い球際の強さと速い攻守の切り替えで前半を0-0で折り返した。
【日比威監督(帝京)の前半総括】
入りはTリーグも今までひどかったんですけど、今までにないくらいの入り方ができたのかなと思いますし、1試合目の成立と久我山の試合を見ていても、この西が丘というのは普通の精神状態ではやれない部分があるので、今回に関しては帝京高校全員がスムーズに入れたというのは良かった1つの要因じゃないかなと思います。チャンスもあったんですけど、あそこで1本シュート打ってGKに取られて、詰めたボールも入らないと。打たされている部分もありましたけど、あそこで相手の3番の子(キム・ファンジ)が捨て身で防いだりしているのも見てしまうと、ああいうのからノッて来ちゃう部分もあると思うので、そういう所で焦れる部分はありましたけど、ハーフタイムには「良かったぞ」と伝えました。


迎えた後半のファーストチャンスは帝京。42分、左サイドへ開いたボランチの布施颯斗(3年・足立第十四中)が深い位置からクロスを送ると、飛び込んだ長倉も浅見も触れなかったものの好トライ。ただ、44分に東京朝鮮もカン・ドゥホ(3年・東京朝鮮中)が左クロスを放り込み、拾ったキム・スンミョン(3年・東京朝鮮第五中)の落としをペク・スンホ(3年・西東京朝鮮第一中)が狙ったミドルは大きくクロスバーを越えましたが、ようやくファーストシュートが記録された東京朝鮮に入ったスイッチ。
46分に高隆志監督が前線で奮闘したリ・フィドン(3年・埼玉朝鮮中)を下げて、チョン・リョンホ(2年・埼玉朝鮮中)をピッチへ。同じく46分にミドルレンジからキム・スンミョンが叩いたミドルは帝京のGK渡辺聖也(3年・FC多摩)にキャッチされましたが、47分にもペク・スンホのクロスにリャン・ヒョンジュが走り込み、渡辺が一瞬早くパンチングで回避するも、リ・キョンチョル(3年・東京朝鮮中)が粘って残し、きっちりCKを獲得すると歓喜の瞬間が訪れたのはその直後。
コーナーアークに立ったのは、FIFA U-17ワールドカップが開催されていたチリから4日前に帰ってきたばかりというリャン・ヒョンジュ。短い助走からニアへ鋭く蹴り込んだキックへ、全力で飛び込んだのはペク・スンホ。うまく頭に当てたボールは綺麗な軌道を描いて、右スミのゴールネットへ飛び込みます。「計算通りに試合も運べていましたし、CKも練習でやっていたので計算通りでした」と言及したのは高監督。この日は右サイドバックを務めていた3年生が大仕事。東京朝鮮が1点のリードを手にしました。
「立ち上がりのセットプレーは気を付けようと言っていたのに、そのセットプレーでやられたというのはもうちょっと反省しないといけない」と日比監督も口にした帝京は1点を追い掛ける展開に。49分には左サイドを平井が抜け出しましたが、クロスは中央と合わず。55分にも3バックの左に入った鈴木啓太郎(3年・ジュビロSS浜松)の好フィードを受け、ワントラップで持ち込んだ桑島健太(3年・和歌山西脇中)の左足ボレーは、東京朝鮮のGKチェ・ヒョンジュ(3年・埼玉朝鮮中)が丁寧にキャッチ。日比監督も直後には高橋に替えて、「この夏はケガでまったく使っていなかった」という大庭健人(3年・文京クラッキ)を投入。点を取るための勝負に出ます。
56分は東京朝鮮に決定機。キム・スンミョンの左クロスがこぼれると、いち早く反応したリ・キョンチョルはエリア外からシュート。このボールをオフサイドラインギリギリから飛び出したリャン・ヒョンジュがコースを変えるも、ボールは枠の左へ。60分は帝京。大庭が右へ流し、長倉のクロスは東京朝鮮のCBキム・テウ(2年・西東京朝鮮第一中)が必死にクリア。63分は帝京に決定機。ここも大庭を起点に鈴木がピンポイントのアーリークロスを放り込み、浅見の落としにフリーで走り込んだ長倉のボレーはクロスバーの上へ外れ、その長倉は頭を抱えましたが「後半はウチの左サイドから攻められて、思った以上に向こうのキャプテンに走られた」とは高監督。覚悟を決めて縦へ走り続けるカナリア軍団の主将。
64分は帝京の決定的なチャンス。中瀬が左CKを渾身のキックで蹴り入れると、平井はドンピシャのヘディングを叩き付けますが、ボールは右のポストを直撃して、こぼれもDFがライン上で何とかクリア。65分にも帝京に決定的なチャンス。今度は右から中瀬がストレートボールでCKを蹴り込み、ファーに潜った桑島のヘディングはわずかに枠の左へ外れたものの、ジワジワと押し込み始めた帝京の圧力。
主役は「今の帝京では一番よくわからないヤツ」(日比監督)。ここもボールを持った大庭が右へ振り分け、ここも走った長倉はマイナス気味に優しいクロス。走り込んだ浅見がダイレクトで右足を振り抜くと、完璧なコースを辿ったボールはゴール左スミへ美しく吸い込まれます。「彼は宇宙人なので自由にやらせるしかないと思う」と日比監督も笑った"宇宙人"浅見のボレーも見事でしたが、それまで普通に上げていた中でここに来て一変化を加えるクロスを送った長倉も見事。沸騰する黄色のスタンド。帝京がスコアを振り出しに引き戻しました。
追い付かれた東京朝鮮は全体の運動量も低下してしまい、吉田、河野翔太(3年・アラグランデJY)、鈴木と並んだ帝京3バックの集中力も高く、頼みのリャン・ヒョンジュまでボールが入らず。69分にはパク・ヒャンジェ(3年・東京朝鮮中)の左CKに、キム・テウが突っ込むもオフェンスファウル。73分には高監督も2人目の交替を決断。カン・ドゥホとムン・インジュ(1年・埼玉朝鮮中)をスイッチして、「あの子がキーポイントになるし、あの子を後半に出すのが大きな利点」と期待を寄せる1年生のジョーカーに全てを託します。
「何が特別という訳じゃないと思いますけど、アイツらの負けたくないという気持ちの部分かな」と日比監督も笑顔を見せて説明した瞬間は75分のCK。右から中瀬が丁寧に蹴ったボールはファーへ届き、飛び込んだ平井のヘディングは左スミへ。GKも懸命に反応して触りましたが、わずかにシュートの勢いが勝った格好で、ボールはゴールネットへ到達します。「中瀬もキックに関しては良い精度を持っているし、平井はヘディングが強いんですよ」と指揮官も納得の2人が生み出した逆転弾。帝京が最終盤でスコアを引っ繰り返して見せました。
76分には足を攣りながらも執念でピッチへ立っていた吉田一貴(3年・府ロクJY)と千葉一輝(3年・FC町田ゼルビアJY)をスイッチして、ゲームクローズに入った日比監督。東京朝鮮も77分には、負傷を抱えながらも闘志を見せ続けたリ・キョンチョルとキム・シンジュン(3年・東京朝鮮中)を入れ替え、最後の勝負に。残された時間はもはやアディショナルタイムを含めても5分程度。ファイナルを巡る攻防もいよいよクライマックスへ。
78分は東京朝鮮の左CK。キム・ソンホ(2年・東京朝鮮第五中)が放り込んだボールは、DFが確実にクリア。79分も東京朝鮮の右FK。再びキム・ソンホが中央に蹴り込んだボールは、GKがファンブルしましたが、すぐさまカバーに入ったDFが大きくクリア。80+1分には東京朝鮮も最後のカードとしてキム・セヨン(2年・東京朝鮮中)を投入したものの、2分のアディショナルタイムも帝京がきっちり消し去ると、雨の西が丘へ鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「少しずつアイツらも先制点を取られても沈むんじゃなくて、引っ繰り返す力が付いてきたかな」と日比監督も手応えを口にした帝京がインターハイのリベンジを達成。6年ぶりのファイナルへと駒を進める結果となりました。


その距離はわずかに900メートル。"十条ダービー"という冠が示す通り、十条駅を最寄り駅に持つ両校は近年において日頃から親交を深めてきたチーム同士。「我々が困っている時はグラウンドを貸してくれたり、一緒に練習したり、GKも去年から毎週月曜日に合同で練習したりしているぐらい。彼らとは気心が知れていて、普通に駆け引き云々もできないくらい手の内をお互い知り尽くしている中での試合なので、本当のガチンコの勝負でした。だから複雑ですけどね」と日比監督が話せば、「帝京さんと合同練習をしたり、ウチにないものを習ったり、ウチはグラウンドがあるのでグラウンドを提供してという形で、日比監督には良い影響を受けていましたし、できればやりたくなかったですね。せめて決勝で会いたかったです」と高監督。良い意味でお互いをリスペクトしながら激突した今回のセミファイナルでは、伝統のカナリア軍団に軍配が上がりました。とりわけ60分を過ぎての猛攻と、逆転まで持って行った力強さはまさに帝京の真骨頂。「昔であればどんなことがあっても残り10分くらいあれば引っ繰り返すだろうと、この会場の雰囲気自体もそういう風に持って行くのが、やっぱり帝京ならではの引っ繰り返す力」と語る日比監督も、「点を入れられても30分あったので、その30分で何をしなくてはいけないかというのを長倉中心にしっかりできたと思います」と一定の評価を。色々な角度から考えても、今の帝京にとって非常に大きな1勝になったのは間違いありません。ファイナルで待ち受けているのは3連覇を目指す國學院久我山。「僕らは全然チャンピオンでもないし、選手権も2年も3年も空いてしまえば初出場と何ら変わりのない学校なので、そこに関しては普通の高校の1つが決勝まで出てきたと。過去の栄光どうこうって言った所で何もわからないので、そういう意味でもウチはチャレンジャーですし、久我山さんはここ10年の結果を見れば月とスッポンくらいに突き放されているので、それをどうにかしがみついてでも、最後の1分1秒でもチャンスがあれば頑張ってチャレンジして、結果が残せればいいなと思いますけどね」と日比監督。楽しみな対戦となったファイナルは14日の14時15分にキックオフ。舞台は言うまでもなく聖地・西が丘です。     土屋

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