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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
聖地でのセミファイナルは鍛え抜かれた技術の高さで東京を代表する両者の対峙。成立学園と國學院久我山の激突は味の素フィールド西が丘です。
最後に冬の全国へと駒を進めたのはちょうど10年前。以降は5回に渡って西が丘まで勝ち上がっては来るものの、覇権奪還には至っていない成立学園。迎えた今大会は最も厳しいと言われるトーナメントの山型に放り込まれた中で、初戦は2年前のファイナルと同一カードとなった修徳戦を1-0できっちり制し、続く早稲田実業戦にも同じく1-0で粘り勝ち。準々決勝では東海大高輪台と好勝負を演じましたが、最後はPK戦をモノにして西が丘のステージへ。ゼブラ軍団の誇りを胸に、大事なセミファイナルへと挑みます。
昨年度の選手権は全国ベスト16まで躍進。最後は京都橘にPK戦で屈したものの、改めてその実力を全国のステージで見せ付けた國學院久我山。今シーズンは東京を勝ち抜いて夏の全国を経験しましたが、そこで悔しい敗退を喫したことで「インターハイ後に意識が変わって、少しずつ勝ちにこだわる意識が出てきた」と話したのはキャプテンの宮原直央(3年・FC多摩)。今大会も2回戦屈指の好カードとも称された暁星戦を1-0でしっかり勝ち切ると、国士舘戦は3ゴールを奪い切る快勝で昨年のインターハイ予選のリベンジも達成。前任の李済華監督からバトンを受け継いだ清水恭孝監督の下、史上3校目となる東京3連覇に向けて、まずは目の前の80分間を戦います。聖地には降りしきる雨にもかかわらず、両校の応援団を含めて3000人を超える大観衆が。ファイナル進出を巡るビッグマッチは、久我山のキックオフでその幕が上がりました。
先にチャンスを掴んだのは久我山。3分に左サイドでボールを持った澁谷雅也(2年・ジェファFC)は、小林和樹(3年・ジェファFC)とのワンツーでエリア内へ侵入すると、そのままシュートまで。寄せた成立のCB長草優之(2年・鹿島アントラーズつくばJY)が体でブロックしたものの、10番が見せたフィニッシュへの意欲。5分のチャンスは成立。右から長島滉大(3年・成立ゼブラFC)が中央へ流し、大野泰成(2年・FCゼブラ)は思い切ってミドル。ここもDFのブロックに遭いましたが、お互いにやり合う覚悟を立ち上がりから鮮明に打ち出します。
ただ、以降は「『どっちが東京でボールをしっかり動かせるんだ』という所で『それは負けないでやろう』と言っていた」と宮内聡監督も話した成立ペースに。6分に右から大野が蹴ったCKを、久我山のGK平田周(1年・FC東京U-15むさし)が弾いたボールはあわやオウンゴールという軌道でわずかに枠の右へ。直後に再び大野が入れた右CKは今度は平田にしっかりキャッチされましたが、エリア外で構えるGKの吉澤凌(3年・成立ゼブラFC)も使いながら、レフティの大野と河口海斗(3年・成立ゼブラFC)のドイスボランチを中心にショートパスで成立がきっちりポゼッション。8分に大野が左サイドの裏へ送ったボールに鈴木龍之介(2年・成立ゼブラFC)が走るも、久我山のCB野村京平(3年・横河武蔵野FC JY)が確実にクリア。9分に大野が放ったミドルはクロスバーの上に外れるも、成立がボールを持ちながら窺うテンポアップのスイッチ。
さて、「ある程度持たれるのは想定内」と清水監督も話した久我山も、12分には決定的なチャンスを。右サイドへ展開したボールを内桶峻(3年・GRANDE FC)は正確なクロスで中央へ。ファーに走り込んだ小林のシュートは枠の左へ逸れましたが、サイドアタックからフィニッシュまで。ただ、「仕掛けが今日は全体的に遅い気がしていた」と指揮官も話した通り、時折サイドにボールが入ってもスピードは上がらず、チャンスを創り切れません。
26分は成立。CBの手塚翔太(3年・ヴェルディSS小山)が縦に付け、大野はDFラインの裏へ上手く浮かせてフィード。走った長島はハンドを取られましたが、中盤を仕切り始めていた大野の好トライ。29分は久我山。山本研(3年・横浜F・マリノスJY)の左FKがこぼれると、鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)の思い切ったミドルは吉澤がキャッチ。31分は成立。中盤で竹本大輝(2年・成立ゼブラFC)が粘り強いキープからスルーパスを繰り出し、長島が走るも飛び出した平田がキャッチ。相変わらず流れは成立の手の中に。
ゼブラ軍団の決定機は34分。高い位置を取り続けていた左SBの西羽開(2年・鹿島アントラーズつくばJY)を起点に、長島がドリブルでグングン運び、左に流れながら中央へラストパス。ここに入ってきた吉村伸(3年・アセノSC)はフリーでシュートを放ちましたが、ボールは平田がほぼ正面でキャッチ。「ゴール前のスピードアップというか、シュートまで持って行くイメージは持っているんだけど、足を振るのが遅い」(宮内監督)中で、ようやく掴んだ決定的なチャンスも生かし切れません。
逆に「我々が行って奪われて、名倉君の所にポンと入ってそこから速くというのは十分わかっていた」と宮内監督も口にした通り、久我山は「彼なんかは典型的な久我山のタイプ。ウチで輝ける選手」と清水監督も認める名倉巧(2年・FC東京U-15深川)からのカウンターが1つの活路に。37分にはその名倉から発動されたカウンターで内桶がFKを獲得すると、ゴールまで約20mの距離から山本が直接狙ったキックはカベを直撃。「前半にあの流れの中で得点を取りたかったですね」と宮内監督も振り返る最初の40分間は、成立がゲームリズムを引き寄せながらスコアレスのままでハーフタイムに入りました。
「ハーフタイムは『ボールを動かすことだったり、相手のボールを奪いに行くことだったりができていても、それでサッカーをやれているような気になっちゃダメだ』と。『やっぱり勝負を決めに行くのは、本当に最後の所で崩しに行かなきゃいけない、シュートを打たなきゃいけない』というような話をしました」とは宮内監督。後半のファーストシュートはその成立。42分にルーズボールへ反応した大野はダイレクトミドル。軌道は枠の右へ外れましたが、悪くないチャレンジでシュートへのスイッチを早速起動します。
ところが、44分の決定的な場面は久我山に。右サイドでドリブルを開始した内桶は、エリア内に潜ると2人を相次いで鮮やかにかわし、そのまま左足でシュート。懸命に飛び出した吉澤もファインセーブで応酬し、先制とは行かなかったものの、一瞬で突き付ける個の脅威。直後の右CKを鈴木遥太郎が入れると、フリーで飛び込んだ野村のヘディングはDFに体で阻まれましたが、「ハーフタイムには『アタッカーが高い位置でボールを受けて、やっぱり点数を取りに行かないと面白くない』と伝えました」という清水監督の言葉を体現すべく、内桶が高い位置から仕掛けることで生まれた惜しいシーン。
すると、49分に到来した絶好の先制機は久我山。短く蹴り出されたFKを受けた宮原は、「顔を上げたら蹴れば雅也が1対1の場面だったので、そこで仕掛ければ何か起きるだろうと思って」左へ好フィード。うまく収めた澁谷が寄せるマーカーと入れ替わってエリア内へ侵入すると、倒れながら対応したDFがボールに手で触れたという判定を福島崇主審は下し、久我山にPKが与えられます。千載一遇のチャンスにキッカーは山本。短い助走から中央やや左に蹴り込んだボールは、豪快にゴールネットを揺らします。「練習から守備をやっていて、雅也の1対1が強いのはこっちが実感しているので、アイツを信じてやった結果」と宮原が話せば、「よく強引に入って行ったと思いますし、ああいうのが好きなタイプなのでPKになって良かったなと思います」とは清水監督。10番の仕掛ける姿勢が呼び込んだ先制弾。久我山が1点のリードを手にしました。
ビハインドを追い掛ける展開となった成立。52分には竹本が左から中央へ戻し、1人外した大野のループミドルは枠の上へ。53分に鈴木龍之介が自ら奪った左FKを蹴り込むも、平田がパンチングで回避。その右CKを大野が放り込むも、長草のヘディングは鈴木遥太郎が体でブロック。55分には右SBの矢田部竜汰(2年・横浜F・マリノスJY)がピンポイントクロスを上げ切り、竹本はフリーでヘディングを放ちましたが、ボールはわずかにクロスバーの上へ。57分には宮内監督も1人目の交替を決断。吉村を下げて、「本人も自主練を本当に一生懸命やって、かなり良い感じになってきた」というジョーカーの町田ジェフリー(2年・浦和レッズJY)をピッチヘ送り込むと、58分にはその町田を起点に鈴木龍之介のラストパスを竹本がエリア内で受けるも、寄せた野村と上加世田達也(1年・Forza'02)の久我山CBコンビがきっちりスイープ。変わらないスコア。
62分にショートカウンターから小林がミドルをゴール左へ外すと、清水監督も65分に1人目の交替を。仕事を果たした澁谷に替えて、同じポジションに多嶋田雅司(3年・FC東京U-15むさし)を送り出し、サイドの推進力向上へ着手。66分には宮原のパスを内桶がダイレクトで繋ぎ、右へ持ち出した小林のシュートは左のポストを叩いて、跳ね返りを吉澤が懸命にキャッチ。69分にも2人目の交替として知久航介(2年・浦和レッズJY)と比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)をスイッチすると、直後には比留間が1人かわして右へ振り分け、内桶のダイレクトパスから小林が枠の右へ外れるシュートまで。「後半は前中心で攻撃ができた」と清水監督。流れは一気に久我山へ。
「完全に崩し切らないと打たない」(宮内監督)ような流れも続く中で、69分に成立も2人目の交替を。竹本に替えて長田一宏(3年・成立ゼブラFC)をピッチヘ解き放つと、75分には仕掛けた長田のパスを引き出した鈴木龍之介が、ミドルレンジから巻き気味にシュート。ゴール右スミへ吸い込まれるような弧を描き、スタンド中が息を飲んだボールの行方は、しかしクロスバーとポストの角々に激しくヒット。頭を抱えた成立応援団と安堵のため息を漏らした久我山応援団。スコアは0-1のままで、残された時間はもはや5分間とアディショナルタイムのみ。
77分に3枚目のカードとして、内桶との交替で藤田智裕(3年・三菱養和調布JY)を投入した久我山は、79分に宮原、名倉と繋いだボールから、多嶋田がわずかにゴール右へ外れるシュートを。80+1分には成立もセットプレーの流れから長草が残し、長田の左クロスに手塚が頭から突っ込むも、ヘディングは大きく枠の左へ。逆に80+2分は久我山。名倉とのワンツーで抜け出した多嶋田のシュートは、この日2度目となる右ポスト直撃。それでも「したたかさや粘り強さや試合巧者ぶりがちょっとずつ出てきたかなと思います」と清水監督も言及した通り、2点目も狙いながら久我山が確実に進めて行く時計の針。
80+2分は成立。長島が左から中央へ送り、町田を経由して大野が狙ったループミドルはクロスバーの上へ。80+3分は成立のラストチャンス。GKの吉澤も最前線まで駆け上がる中、左から鈴木龍之介が蹴ったCKがDFのクリアに遭うと、ほどなくして吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「理想は3点取ってゼロで抑えるような形ですけど、この選手権は勝ちが一番大事なので、1-0でも2-1でもとにかく勝とうと思っていた」とはキャプテンの宮原。今大会2度目のウノゼロで勝ち切った久我山が、3年連続となるファイナルへと勝ち上がる結果となりました。
「1つのインサイドキックだったり、トライアングルだったりに久我山もこだわっているし、我々もそこにこだわってサッカーをやりたいと。そこで個人のストロングポイントが生きればいいという風にやってきているので、そこはやっぱり久我山と東京都のトップクラスのサッカーができればと思っていた。ある意味勝ち負けを度外視した中でもレベルの高いサッカーをお互いにした中で、『やっぱり東京のサッカーも捨てたもんじゃないぞ』と見てもらえればという所を考えていた」と試合後に話したのは宮内監督。高い技術を生かしたスタイルという意味では、間違いなく都内でも双璧と言って良い両者の対峙は、本当に見どころの多い80分間だったと思います。その激闘を制したのは「自分たちは200人の中から選ばれたメンバーで、悔しい想いをしているヤツらもいるので、やっぱりそういうメンバーのためにも負けられないというのもあった」と宮原も語った久我山。多くの高校が彼らをターゲットにしてきた中で、きっちり今年もファイナルまで辿り着いたことには大きな拍手を送りたいと思います。とは言っても、来週にはいよいよその都内最後の1試合が。「今日の円陣でも言ったんですけど、『ツラくなったら応援団を見ろ』と。『応援団を見ればきっと奮起できる』と。そういう面では入場の時に久我山賛歌を聞いたんですけど、鳥肌が立ちました。本当に全員に感謝していますし、『必ず全国に行ってやろう』と改めて思いました」と言い切ったのも宮原。3連覇という偉業達成に必要な勝利はあとわずかに1つです。 土屋
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