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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年11月14日

高校選手権東京A決勝 堀越×駒澤大学高@西が丘

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1114nishigaoka.jpg24年ぶりか。それとも5年ぶりか。伝統の紫に身を包んだ2年連続ファイナリストの堀越と、昨年のインターハイ王者でもある駒澤大学高の決勝は言うまでもなく味の素フィールド西が丘です。
最後に全国の舞台を踏んだのは24年前。以降は6度の西が丘を経験しながら、四半世紀に渡って頂点へと辿り着くことができていない堀越。ただ、昨年度の選手権予選はファイナルまで進出し、最後は都立三鷹に屈したものの、大きな存在感を発揮。その時のメンバーも富樫草太(3年・FC町田ゼルビアJY)や守護神の横山洋(3年・TACサルヴァトーレ)など守備陣を中心に多数残っており、今大会も準々決勝ではインターハイで全国4強まで駆け上がり、絶対的な優勝候補と称されていた関東第一を延長の末に下し、先週の準決勝も多摩大目黒に3-0と快勝してこのステージへ。昨年のリベンジと四半世紀ぶりの戴冠を手にすべく、最後の1試合に挑みます。
名門帝京を向こうに回し、終盤の劇的な決勝ゴールで初めて東京を制したのは5年前。臨んだ晴れ舞台でも大津と対峙した開幕戦の国立対決を制し、3回戦まで躍進。全国にその名を轟かせた駒澤大学高。それでも2年前はファイナルで國學院久我山に敗れ、インターハイ王者に輝いたことで優勝候補の呼び声も高かった昨年は、準々決勝で都立三鷹にまさかの敗退を突き付けられるなど、近年は続いている"あと一歩"。迎えた今大会は初戦で中大杉並を4-1で下すと、全国経験もある都立駒場に5-0と大勝を収め、先週のセミファイナルでは都内屈指の実力を有すると目されていた都立東久留米総合に1-0と競り勝って、このファイナルまで。250人を越える部員の応援を後ろ盾に堂々と東京制覇を狙います。両校の応援団を含めて試合前からスタンドには4717人の熱気が充満。注目の一戦は駒澤のキックオフでスタートしました。


先にリズムを掴んだのは駒澤。開始まだ1分、左から矢崎一輝(2年・大豆戸FC)が入れたスローインをキャプテンの深見侑生(3年・FC東京U-15深川)が戻し、矢崎のクロスは堀越のGK横山がキャッチしましたが、早くもファーストチャンスを。5分に野本克啓(3年・FC多摩)が左から蹴ったCKも、8分に村上哲(2年・FC府中)が右から蹴ったCKも、共にシュートまでは至りませんでしたが、まずはセットプレーから相手ゴール前を窺います。
一方、「やはり駒大さんのプレーというか圧力というか、それは観客とか会場の雰囲気も含めて非常に圧倒されるものがあった」と佐藤実監督も認めたように、なかなか相手の圧力を押し返せない堀越。9分には齋藤一輝(2年・青梅新町中)が投げた左スローインから、ミドルレンジで前を向いた新井真汰(3年・TACサルヴァトーレ)がボレーで狙うも、駒澤のGK鈴木怜(2年・STFC)ががっちりキャッチ。逆に駒澤は12分、右サイドをえぐった栗原信一郎(2年・FC多摩)がグラウンダーで送ったマイナスクロスに、矢崎がダイレクトで合わせたシュートは枠の右に外れましたが、押し込み続ける駒澤。
赤黒の咆哮は14分。高橋勇夢(2年・Forza'02)の右クロスから、竹上有祥(3年・ヴェルディSSレスチ)が2連続で放ったシュートを、こちらも2連続で横山に防がれて獲得した左CK。キッカーの野本が鋭いボールを蹴り込むと、中央からニアへ飛び込んだ高橋のヘディングは、そのまま右スミのゴールネットへ吸い込まれます。「何か持っているんですよね。今年の2月のTリーグの1試合目も東久留米戦で、アイツのCKのヘディングシュートから始まって、選手権の初戦だった中大杉並戦もアイツがCKから2点入れたんですよ」と大野祥司監督も認める"持っている"右SBがさすがの一仕事。高橋の先制弾で駒澤が1点のリードを手にしました。
以降も変わらないゲームリズム。23分は駒澤。左から村上が上げたアーリークロスを、野本は収めてヒール。竹上のシュートは富樫が体で飛び込んで何とかブロック。27分は堀越のFKから、一転して駒澤の高速カウンターが発動。矢崎が運んで野本が左へスルーパスを通すと、エリア内へ侵入した竹上のドリブルは懸命に戻った小磯雄大(2年・FCヴィラセーゴ津久井)が何とかタックルで回避。35分も駒澤。高橋の右アーリーがこぼれると、深見のボレーはゴール右へ。36分も駒澤。矢崎が右へ振り分け、1つタイミングを溜めて放った栗原のシュートは、横山が何とか弾いてDFがクリア。「技術や戦術じゃなくてまずは強い気持ち」(大野監督)という部分もしっかり体現する赤黒軍団。
長いボールを照井基也(2年・足立第十四中)と新井に入れる回数の多い堀越でしたが、ここは「あの2人の能力は高いですね」と大野監督も認める佐藤瑶大(2年・FC多摩)と西田直也(1年・横浜F・マリノスJY追浜)のCBコンビがことごとく跳ね返すため、前で基点がなかなか創れません。37分には小磯のドリブルでCKを獲得すると、齋藤一輝はグラウンダーでマイナスに蹴り入れ、走り込んだ新井が打ったシュートは味方に当たって枠の右へ。シュートもほとんどなく、そのままのスコアで前半終了が見えてきた38分に、しかし突如として堀越に訪れた決定機。左から齋藤一輝が蹴り入れたアーリークロスは、DFに当たってフリーの照井へ。前を向いた照井が右へ流れながら打ったシュートは右のポストにハードヒット。最終盤に堀越がビッグチャンスを掴んだ前半は、駒澤が1点のリードを保って40分間が終了しました。


ハーフタイムに動いたのはリードしている駒澤ベンチ。「相手の中盤の6番と5番を離し過ぎていた」と判断した大野監督は「スプリントは良い所もあったし、悪くないんですけど」という竹上を下げて、岩田光一朗(2年・大田東調布中)を前線に送り込み、野本がドイスボランチの一角にスライド。もう一度全体のバランス維持に着手しながら残された40分間へ向かうと、44分に後半だけで3本目となったCKを右から村上が蹴り込み、ファーで高橋がドンピシャヘッド。ボールはクロスバーをなめて枠の上へ外れましたが、駒澤が追加点の香りを早々に漂わせます。
村上がGKの位置を見た35mロングを枠の左へ外した直後の46分、次の交替も駒澤サイド。ボランチの春川に替えて、そのままの位置に武智悠人(2年・Forza'02)を投入し、さらに中盤の強度アップを図ると、52分には流れの中から決定的なシーン。深見が右へ展開したボールを、上がってきた高橋はピンポイントクロス。中央に飛び込んだ矢崎のヘディングはわずかに枠の右へ外れましたが、サイドアタックはやはり駒澤の大きな武器。
さて、「もうちょっとボールを落ち着かせようということと、もうちょっとボールを前からしっかり追って取れる位置を高くしないと、雄大の出て行く距離が長くなってしまう」(佐藤監督)ということをハーフタイムに話し合った堀越は、少しずつ広瀬智也(2年・FC Consorte)のアンカーを経由させつつ、斎藤拓磨や齋藤一輝を使いながらパスを回して、小磯にドリブルで勝負させる意識を表出。53分には小澤颯(3年・FC GONA)が後方からフィードを送り、新井はトラップできなかったものの好トライ。58分には加藤悠矢(2年・アローレはちきたFC)と須藤海斗(3年・府ロクJY)をスイッチして、前へのパワーと推進力アップを図るなど、少しずつ見え始めてきたアタックの可能性。
61分は駒澤に決定機。右サイドを抜け出した岩田は、そのまま少し運んでGKとの1対1を迎えるも、ループ気味に狙ったシュートは枠の左へ。64分は堀越に2人目の交替。照井を下げて、鈴木龍河(3年・あきる野FC)をそのまま最前線で新井と並べる攻撃的な采配を。65分は駒澤。中盤でボールを奪い返した岩田のミドルはゴール左へ。少しオープンな展開になり掛けている中で、「相手も自陣でのミスが結構増えていたので、後半は少しボールが前の方で取れ出した」(佐藤監督)堀越もきっちりペースを押し返します。
68分は堀越にセットプレーのチャンス。小磯と須藤の連携で奪ったCKの2本目を、右から福山健介(3年・FC府中)が蹴り込むもクリアから一気に駒澤のカウンター。左へ開いた野本のスルーパスに岩田がフリーで抜け出しますが、横山が残った足でビッグセーブ。73分に堀越が3人目の交替として小磯とジョーカーの北田大祐(3年)を入れ替えると、73分にも駒澤に決定機。深見、栗原と丁寧に繋ぎ、高橋のクロスに至近距離から矢崎がヘディングで合わせると、ここも横山が驚異的な反応の超ファインセーブで仁王立ち。横山の連続セーブが繋ぐ勝敗の行方。
74分は駒澤。村上の右CKはニアでDFが懸命にクリア。同じく74分は堀越。右サイドを抜け出した北田のクロスは、逆から絞った高橋がここも懸命にクリア。76分も堀越。左から齋藤一輝が蹴ったCKはDFが何とかクリア。「危ないシーンもあったので、同点までは覚悟して次の手は考えていた」と大野監督が話せば、「非常に展開的には我々が目論んでいた部分が出ていたと思う」と佐藤監督。時計の針が80分間を刻み終わり、スコアは1-0のままでいよいよ試合は3分間のアディショナルタイムへ。
80+2分に訪れたのは堀越のビッグチャンス。新井が必死に体を伸ばして頭で繋ぐと、収めた鈴木龍河は右に流れながら思い切ってシュート。バウンドしながらゴールへ向かったボールは鈴木がファインセーブで阻止。直後の右CKを福山が蹴り入れ、こぼれたボールを強奪した福山のクロスに、フリーで飛び込んだ新井がヘディングを枠に収めるも、再び鈴木が超ファインセーブ。「CBとGKの逆三角形は全国でも十分やれるレベルじゃないかなと思います」と大野監督も太鼓判を押す2年生守護神が、この大事な場面で連続ファインセーブを披露して赤黒軍団を救います。
確信を持ってこじ開けた全国への扉。80+4分、左サイドでボールを持ちながら中央へ潜った深見がパスをはたくと、栗原はおしゃれヒールでワンタッチパス。ここへ突っ込んできた岩田は、GKを冷静に見極めながら浮き球のシュートを選択。ボールは水しぶきを纏いながら、ゆっくりとゴールネットへ到達します。「シュートの振りが速いので結構点は取るんですよね。今日は失敗が続いていたけど、最後に取り戻したので良かったです」と大野監督も笑った2年生ストライカーの一撃で勝負あり。守っては無失点でゴールに鍵を掛け切った駒澤が、5年ぶりに秋の東京を制する結果となりました。


残念ながら2年連続での準優勝という結果になった堀越。昨年からレギュラーを務め、今大会も関東第一を沈める決勝FKを決めた東岡信幸(3年・TACサルヴァトーレ)が警告累積でこの試合に欠場するという面もありましたが、「彼がいないということで1週間準備してきたこともあった」と佐藤監督。セットプレーから決定機を演出した福山を含め、特に3年生が最後の瞬間まで非常に奮闘し続ける姿が印象的でした。その3年生には指揮官も「1年生で入ってきた時から見ると本当に成長しているし、人間的に見ても成長しているし、結果は付いてこなかったですけど、こういう舞台でも自分たちの力を出せるというのは証明できたと思う。去年は何となく引っ張ってもらってここまで来させてもらいましたけど、今年は自分たちの力でここまで来られたので、そういった意味では成長の幅は大きかったのかなと思います」と成長の実感を話してくれています。最後に「我々が決勝に出てくるレベルのチームなのかどうなのかというのは正直わからないです。なので、それが本当にここまで来させてもらって、多くの皆さんに我々の活動とか我々の取り組みを見てもらえたというのは大きいと思いますし、初めて堀越が選手権に出るために結構回数が掛かっていたことを考えても、そんなに簡単に選手権は行けるものではないと思いますので、組織作りだとかチーム創りからしっかりベースを積み上げて、またこういった所でチャレンジできる機会があれば良いなと思っています」と笑顔を見せた佐藤監督。まさにグッドルーザー。堀越の選手たちに大きな拍手を送りたいと思います。
最後はきっちり2点目も奪い切り、257名の部員全員で全国切符を勝ち獲った駒澤。大野監督も「不思議なもので去年の方が全然良いチームだったし、強かったんですけどね。今年は『ダメだダメだ』と言われて。でも、本当に彼らの努力の成果というか、本当に強い気持ちでやってくれたと思うんですよ。だから、今日は技術や戦術以上に気持ちで部員全員でできた試合じゃないかなと思います」とやはり部員全員での勝利を強調されていました。今シーズンは春先からメンバー選考に苦労してきた中で、結果的にこの選手権ファイナルでも20人のメンバー中、3年生はわずかに6人。「私も3年の学年部長で、授業もサッカーもずっと一緒にいるので、気持ち的には3年生を出してあげたいんですよ。でも、勝負師としてそうはいかないなと」と苦しい胸の内を明かした指揮官。ただ、「彼らも最初は外れて変な雰囲気とかになっていたんですけど、途中で他のスタッフもコミュニケーションを取ってくれたり、私が直接言えないことを周りから言ってサポートしてくれたり、自分を押し殺してでもチームのためにという気持ちで準決勝、決勝を本心から応援してくれたので、チームが一枚岩になって良かったなと思います」と一体感を出してくれたベンチ外の3年生へ対する感謝の気持ちも口にされていました。「(名鑑用の)写真撮影の30人には結構3年生を入れたんですけど、本当はここで這い上がってきた3年生を使えればと思うんですけどね」と大野監督が話した通り、全国大会まではまだ1ヶ月近い期間が。3年生が這い上がってくるのか。はたまた下級生が定位置を死守するのか。夢にまで見た憧れのピッチに立つのは果たして。駒澤の新たな熱い冬が、ここから本格的に幕を開けることになります。     土屋

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