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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年10月03日

T1リーグ第17節 多摩大目黒×帝京@駒沢第2

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1001koma2-2.jpg2月に開幕したT1リーグもいよいよ大詰め。今シーズンからトップディビジョンに参入してきた多摩大目黒と、7年連続2位という珍しいT1記録を持つ帝京の対戦は引き続き駒沢第2です。
前任の塩川岳人監督が自信を持って創り上げた昨年のチームが、置き土産に残していったT1は茨の道。「今年は1年生と2年生中心の若いチームなので、T1のスピードに戸惑っている部分はありますね」と遠藤雅貴監督が話したように、現在は残念ながら16連敗という状況を突き付けられている多摩大目黒。トーナメントコンペティションも関東大会予選とインターハイ予選は早期敗退を強いられましたが、選手権予選は初戦で早大学院を延長の末に振り切ると、学習院には4-1と快勝を収めて準々決勝へ。残されたリーグ戦の2試合で何とか初勝利を記録して、18日の決戦に弾みを付けたい一戦に挑みます。
新チームの始動は昨年11月の新人戦地区予選から。関東大会予選では2回戦で難敵の都立東久留米総合に屈したものの、インターハイ予選は1次予選で成立学園と堀越を相次いで撃破。最後は準々決勝で東京朝鮮と壮絶に撃ち合い、延長で3-5というスコアで敗れたとは言え、間違いなくその実力への手応えを掴んでいる帝京。「1年間通してあまり良い成績ではないのがリーグ戦ではあったと思うので、そのあたりを踏まえて最後は綺麗に終われるようにしたいということで、『勝ちに行くことにこだわってゲームに入ろう』と言って送り出した」と話したのは日比威監督。こちらも17日に控えた選手権予選を見据えつつ、勝ち点3のみを求める90分間へ向かいます。駒沢第2のスタンドには雨にもかかわらず、少なくない数の観衆が。雨も弱まりつつあるコンディションの下、13時30分にゲームはキックオフを迎えました。


いきなりのファーストチャンスはカナリア軍団。開始1分にエリア内でパスを受けた千葉一輝(3年・FC町田ゼルビアJY)は右足一閃。ボールはわずかに枠の右へ外れましたが、早くもゴールへの意欲をフィニッシュへ滲ませると、10分にも平井寛大(3年・帝京FC)のパスから長倉昂哉(3年・さいたま木崎中)がフリーで抜け出し、1対1を迎えるもここは多摩目のGK大野隆滉(3年・FC多摩)がファインセーブで回避。11分にも吉田大晟(3年・足立六月中)が右から中へ折り返し、長倉のシュートは枠の左へ外れたものの、「自分にできることは声を出してチームを鼓舞することと、プレーでチームをどうにか引っ張っていくことだと思う」と話すキャプテンの長倉が続けてチャンスに絡みます。
一方、「前からアグレッシブに行こうという話はしていたんですけど、なかなか連動性が持てなくて」と遠藤監督も話した多摩目は手数を繰り出せず。15分に左から古橋謙介(2年・多摩大目黒中)が蹴ったFKも帝京のGK岩崎波瑠(3年・横浜栄FC)がしっかりキャッチ。逆に19分は帝京。長倉のパスから千葉が枠へ収めたシュートは大野がキャッチ。21分も帝京。ピッチ中央のFKを布施颯斗(3年・足立第十四中)が短く出すと、中山大希(3年・蕨第一中)が中へ入れたボールはそのまま流れたものの好トライ。続く帝京のゲームリズム。
ところが、次の決定的なシーンは突如として多摩目。24分に左サイドでボールを持った下茂宏充(3年・多摩大目黒中)はグラウンダーで鋭いクロス。走り込んだ鰺坂賢(2年・世田谷FC)のシュートは岩崎がファインセーブで何とか掻き出しましたが、「シンプルにボールを動かして3人目でサイドからというコンセプト」(遠藤監督)を体現するような決定機。多摩目がいきなり懐から突き付けた鋭いナイフ。
きっちり仕留めたのは「自分の持ち味は前に走ることと前にゴリゴリ行く所と、あとはゴール前とかのゴチャゴチャの所でしっかり戦う所だと思っている」と話したキャプテン。30分、右から中山がクロスを放り込み、潜った鈴木啓太郎(3年・ジュビロSS浜松)はシュートを打ち切れませんでしたが、ボールはファーサイドへ流れると、ここに突っ込んだのは長倉。DFやポストとの接触をものともせず、頭で押し込んだボールはゴールネットを力強く揺らします。「あそこは絶対に怖がっちゃいけない所だと思ったので、思い切って触りに行きました」という長倉の執念で奪った先制点。帝京が1点のリードを手にしました。
以降もペースは完全に帝京。35分に中山が打ったミドルは大野にキャッチされ、直後に鈴木が巧みなシザーズを見せながら放ったミドルは枠の右へ外れましたが、36分に千葉の右クロスへ桑島健太(3年・和歌山西脇中)が完璧に合わせたボレーは右ポストにハードヒット。37分にも布施の左CKはファーへ届き、桑島のヘディングはゴール右へ。41分にも相手DFの小さくなったクリアを、千葉が直接叩いたボレーは枠の左へ。押し込み続けるカナリア軍団。
その結実は42分。中山が右からショートコーナーを蹴り出し、鈴木がダイレクトで戻すと中山はこれまたダイレクトで完璧なスルーパス。ハイサイドでフリーになった鈴木の折り返しを受けて、酒井樹哉(3年・北区赤羽岩淵中)は丁寧にボールをゴールネットへ送り届けます。「中山は今季初スタメンでしたけど、運動量もあってかなり良かったと思いますよ」と日比監督も称賛を贈った中山は前半だけで2アシストの大活躍。帝京が2点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムには双方に交替が。多摩目は攻守のバランス維持に腐心していた関澤海(1年・多摩大目黒中)に替えて、中島慶之(3年・FCトリプレッタJY)を中盤へ投入。一方の帝京は2枚替え。大塚迅人(2年・FC東京U-15むさし)と桐生慶太郎(1年・クリアージュ)をアタッカーとして送り込むと、後半ファーストシュートは帝京。50分に鈴木が右へ振り分け、長倉のシュートはクロスバーを越えましたが、狙うのは試合を決定付ける3点目。
ところが、後半立ち上がりの主導権を握ったのは多摩目。「中島は声が出るのでそういった部分で連動性が増えて、ボールを持てる時間がちょっと増えたのかなと思います」と遠藤監督が言及したように、キャプテンマークを巻いた中島と田中潤(2年・多摩大目黒中)がうまくボールを捌きながら、ようやく多摩目にスムーズなパスワークが。「2点入って余裕が出たのか、プレッシングが少し甘くなったのはあると思います」とは日比監督。52分にはここも下茂のグラウンダークロスに鰺坂が反応してフィニッシュ。岩崎が懸命に弾き出したものの、宮崎隼(3年・港北FC)と池田篤生(2年・多摩大目黒中)のCBコンビも繋ぐ意識を最優先に押し出し、変わり始めたゲームリズム。
ただ、ボールを握る時間こそ長くなったものの、「3人目を意識させているんですけど、それがなかなかうまくいかないんですよね」と指揮官も嘆いた通り、そのパスワークはなかなかシュートまで繋がらず。65分に2人目の交替として加藤天馬(3年・多摩大目黒中)と中村亮太(1年・多摩大目黒中)を入れ替えると、66分に福本純也(3年・多摩大目黒中)が右へ振り分け、伊藤良平(1年・多摩大目黒中)が上げ切ったクロスは中村へわずかに合わず。69分に下茂を起点に中村が右へ絶妙なスルーパスを通すも、走った伊藤はわずかの差でオフサイドに。CBの吉田一貴(3年・府ロクJY)と酒井を中心にディフェンス陣が強固な鍵を掛け続ける帝京ゴールをこじ開けられません。
70分に仁科虎生(3年・PELADA FC)を、72分に原田祐二郎(2年・SP-フッチSC)を相次いで投入した帝京に対し、多摩目も74分には石井翔(3年・川崎チャンプ)をピッチヘ解き放ち、反撃態勢を整えに掛かりますが、74分に鈴木が左サイドから右足で流し込んだクロスに、ドンピシャで合わせた長倉のダイビングヘッドは大野が超ファインセーブで立ちはだかるも、次の得点が記録されたのも十条のイエロー。
78分にエリアのすぐ外でボールを回すと、仁科が短く戻したパスを上がってきた平井は少し中に潜りながらミドル。右スミへ向かった美しい軌道は、そのままゴールネットへ吸い込まれます。「あれくらいボールが収まってやれれば、ああいう風に平井もオーバーラップできるし、みんながセカンドボールを拾えるようにラインをコントロールして、前に圧力を掛けられる形になっていく」と全体での追加点を強調したのは日比監督。複数人の連携で掴んだチャンスを締め括る平井のゴラッソが飛び出し、帝京が大きな3点目を手にしました。
80分には右CKを長倉がショートで始め、大塚のクロスにフリーで合わせた原田のヘディングは枠の左へ。81分に帝京5枚目のカードとなった日吉健介(3年・ESA)と、82分に多摩目4枚目のカードとなった善甫直久(1年・多摩大目黒中)とそれぞれの交替を挟み、86分のビッグチャンスは多摩目。池田を起点に縦へ運んだ中村が、石井とのワンツーから右へ巧みにスルーパス。受けた伊藤は右足を振り抜くも、ボールは枠の右へ外れてしまいます。90分にも多摩目は石井のドリブルで獲得した約25mの右FKを古橋が直接狙いましたが、クロスバーの上へボールは消えて万事休す。「もう後半の20分以降に関しては危ない場面は1本くらいだったかなと思うんですけどね」と日比監督もゲームクローズに対する手応えを口にした帝京が、3ゴールに完封という上々のパフォーマンスで勝ち点3を積み上げる結果となりました。


これでリーグ戦の連敗が17となってしまい、最終節に全敗ストップが持ち越されることとなった多摩目。「中高一貫で中学からやっているサッカーは変わらずに、高校でもという所で今はやっている」と話す遠藤監督にとって、現在高等部に所属している選手は中等部時代に自ら指導していた選手が多く、1年生の起用も躊躇なく行う中で「やるべきことは彼らもわかっているので、チーム創りはスムーズですね」と手応えを感じている面も。その中で「球際の所で甘い部分があるんですよね。人任せというか、練習中から意識していかなくてはいけないというのは彼らもわかっているんですけど、なかなかどうしても個の能力で行かれてしまうという部分はありますね」という"球際"の部分は彼らのキーポイント。1,2年生が中心ということも考えると、東京実業と対戦するまでの2週間でも成長する余地はまだまだ十分残されています。
後期に入ってからは4勝3分け1敗。関東第一に國學院久我山と今年のインターハイ全国出場校にもドロー劇を演じるなど、明らかにチーム力を上げてきている帝京。「今までやってきたことというのは年間通してブレてはいないので、メンバーが替わったりとかケガ人があったりして、どのチームも同じだと思うんですけど、その中でも帝京は誰が出ても変わらないという部分はしっかり持ってやろうと言っている」と日比監督も話したように、メンバーだけではなくシステムも様々なものを試しながら、チーム全体で戦う意識が強烈に浸透してきている印象です。「今の帝京にしたら余裕は何一つないので、もうどんな相手でもやることは1つで、どんな形でもいいから勝つという気持ちが選手にあれば、自ずと結果は付いてくると思うんですよね」と指揮官が話せば、「自分たちはまだ3年間通して一度も全国という舞台に立っていないので、今年は自分たちも最後ですし、絶対に行かなくてはいけないという想いは心にあります」と決意を口にしたのは長倉。6年ぶりの戴冠へ。カナリア軍団の力強い調べが西が丘に響き渡るのか、今から非常に楽しみです。      土屋

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