mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2015/10

S M T W T F S
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年10月18日

高校選手権東京B準々決勝 成立学園×東海大高輪台@実践学園G

mas o menos
  • Line

1018jissen.jpg2年前に西が丘で実現したカードのリターンマッチ。ゼブラ軍団の成立学園とタイガー軍団の東海大高輪台が再会する一戦は実践学園高校高尾グラウンドです。
1回戦では2年前の選手権予選ファイナルで敗れた修徳を河口海斗(3年・成立ゼブラFC)の決勝弾で1-0と振り切ると、2回戦の早稲田実業戦も終盤に1点を返されながら、2-1とやはり1点差で勝ち切って、このクォーターファイナルまで勝ち上がってきた成立学園。昨年、一昨年とインターハイこそ全国大会を経験しましたが、最後に選手権で東京を制したのは第84回。10年ぶりとなる冬の全国を視野に入れながら、まずはこの難敵との80分間に挑みます。
関東大会予選、インターハイ予選とまさかの初戦敗退。トーナメントコンペティションでは難しいスタートを強いられた中でも、夏前からリーグ戦も含めて一気に勝利という結果が出始め、この大事な選手権予選へ向けて好調をキープしてきた東海大高輪台。迎えた今大会は1回戦の青稜戦を本藤悟(2年・横浜FC JY)の決勝ゴールで1-0と制すると、2回戦では優勝候補の一角とも評された実践学園と死闘を演じ、最後はPK戦をモノにしてベスト8のステージまで。2年前のリベンジを果たし、その時以来となる西が丘へと歩みを進めるべく、強豪相手に全力でぶつかります。会場は立ち見が多数出るほどの大入り満員。聖地を懸けたクォーターファイナルは10時ジャストにキックオフを迎えました。


2分のファーストチャンスは成立。左からレフティの大野泰成(2年・FCゼブラ)が蹴ったFKは、高輪台のGK関根康大(3年・GRANDE FC)ががっちりキャッチ。4分は高輪台。野村浩輔(3年・FC東京U-15深川)が入れた左FKを、武井成豪(2年・GRANDE FC)がヘディングで枠へ飛ばすも、成立のGK吉澤凌(3年・成立ゼブラFC)が丁寧にキャッチ。お互いにまずはセットプレーからチャンスを窺います。
9分には高輪台に"らしい"形が。武川剣真(2年・AZ'86東京青梅)、野村とボールを繋ぎ、水野団(2年・ESA)のミドルはDFに当たって吉澤にキャッチされたものの、スムーズなパスワークを披露しましたが、12分には成立に決定機。CBの手塚翔太(3年・ヴェルディSS小山)が好フィードを送ると、マーカーに競り勝った河口はそのままGKと1対1に。シュートは枠の左へ外れ、ベンチもチームメイトも頭を抱えるも、成立が高輪台の喉元へ突き付けた縦に速いアタック。
すると、以降は「動かすことが好きなヤツらだから」と宮内聡監督も笑ったように、しっかりボールをポゼッションして動かしながら、サイドへと展開していく成立ペースに。13分に長島滉大(3年・成立ゼブラFC)のドリブルを起点に、竹本大輝(2年・成立ゼブラFC)、吉村伸(3年・アセノSC)と繋いで、右SBの矢田部竜汰(2年・横浜F・マリノスJY)が上げたクロスはDFが何とかクリア。その右CKから大野泰成が蹴り込んだボールもDFが大きくクリア。21分には矢田部の右クロスがDFに引っ掛かると、こぼれを長島はヒールでラストパス。吉村のシュートは高輪台のキャプテンマークを託された田中千寛(3年・杉並FC)が体でブロックしましたが、徐々にアクセルを踏み込んでいくゼブラ軍団。
直後のCKも成立。大野泰成が右から蹴ったキックを、ファーで長草優之(2年・鹿島アントラーズつくばJY)が折り返すも、田中が懸命にクリア。22分も成立。左サイドでボールを持った竹本は、エリアの外から枠内へ収めるも関根が一旦ファンブルしながら何とかキャッチ。高輪台も23分に右から野村が放り込んだFKがDFのクリアに遭うと、28分には成立に決定的なチャンス。「左利きで良いモノを持っているんですよ」と指揮官も評価する大野泰成は中央をドリブルで切り裂き、2人をあっさりかわしてシュート。ボールはクロスバーを越えましたが、際立った個人技でのフィニッシュにスタンドからどよめきが上がります。
押し込まれる時間が長く、「前から行こうか、このままやり過ごしちゃおうか、どっちにしようかと思ったんですけど、やり過ごすことを選択した」と川島純一監督が話した高輪台も、ようやく31分にビッグチャンス。水野のパスを本藤が右へ振り分け、野村はピンポイントクロス。武井が胸で落としたボールを武川は左足のボレーで叩き、最後は吉澤のキャッチに阻まれましたが、サイドアタックから惜しいシーンを。33分にも水野が残したボールを、1人外した本藤は吉澤にキャッチされる枠内シュート。続けて繰り出したタイガー軍団の手数。
38分に成立は早くも1枚目のカードとして大野裕輝人(1年・成立ゼブラFC)を右SBへ送り込むと、40+1分にはセットプレーからチャンス。鈴木龍之介(2年・成立ゼブラFC)の右FKへ、頭から突っ込んだ竹本のヘディングはクロスバーの上へ。40+2分にも相手のクリアを拾った吉村が中へ付け、シザーズからワンステップで打ち切った大野泰成のシュートは関根がファインセーブで回避。「練習で意図的にやっていた所は、攻撃でも守備でもいくつか出ていた」と宮内監督も言及した成立が押し気味に進めた前半は、両者のスコアに変化なく0-0でハーフタイムへ入りました。


後半もまずは成立に手数。43分に鈴木が左から蹴ったCKは関根にキャッチされましたが、45分にも河口のパスから長島が枠内シュートを打ち切り、ここも関根にキャッチされたものの好トライ。46分にもビッグチャンス。大野泰成、鈴木と細かく繋ぎ、竹本のシュートは関根が抜群の反応で弾き出し、至近距離で詰めた長島のシュートも枠の右へ。なかなか1点を奪うことができません。
手数こそ出された中で、決して悪くない流れで後半に入った高輪台も、アンカーの袖山翼(2年・インテリオールFC)を中心にセカンドをきっちり拾って、少しずつ創り出すアタックのテンポ。48分にはCBの小池英翔(3年・三鷹F.A.)が左サイドへボールを入れると、SBの木野友誉(3年・フレンドリー)はフリーでエリア内へ侵入。ここは間一髪で長草がブロックしましたが、サイドバックのオーバーラップで決定的なシーンの一歩手前を創出してみせます。
53分に鈴木の左FKに手塚が突っ込み、オフェンスファウルを取られた成立のセットプレーを見て、川島監督も56分に1人目の交替を決断。奮闘した武井に替えて、高野颯翔(2年・ジェファFC)を右ウイングへ投入。その位置にいた水野を左ウイングへスライドさせて、狙うサイドの推進力向上。ただ、59分は成立のチャンス。大野裕輝人、鈴木と回ったボールを吉村がシュートに変えると、DFがブロックしたボールへ長島が反応。その長島より一瞬早くDFが掻き出し、ここも先制とは行かなかったものの、あわやというシーンに意気上がる成立応援団。
64分にピッチサイドへ立ったのは高輪台のナンバーセブン。夏からチャレンジした右SBを全うした畠中一樹(3年・FC PROUD)に替わり、緑の戦場へと駆け出したのはキャプテンの武市健太(3年・インテリオールFC)。負傷で長期離脱を強いられ、「勝つことが色々な人への恩返しだと自分は思っている」と話す闘将が、この大事な局面でいよいよ登場。「ハーフタイムで健太を入れる時は勝負に行く時だと言っていたので、ギリギリまで引っ張って入れました」と川島監督。タイガー軍団へ示されたスイッチを入れるタイミング。
70分には宮内監督も2人目の交替を。長島を下げて、こちらも切り札の町田ジェフリー(2年・浦和レッズJY)を送り込み、前線へパワーと推進力を。74分は高輪台。高野が繋いで本藤は右へラストパス。エリア内から野村が打ち切ったシュートは、しかしクロスバーの上へ。悔しがる10番。いよいよゲームは泣いても笑ってもわずか5分間とアディショナルタイム。
76分は高輪台に絶好の先制機。本藤が粘って時間を創り、左サイドに開いた武市はそのまま縦へ。野村が抜け出して1対1になり掛けましたが、吉澤が最高のタイミングで飛び出してブロックを敢行し、こぼれを野村が中へ送るもDFが必死にクリア。77分は成立に絶好の先制機。吉澤のキックにそのまま竹本が抜け出すと、完全にGKと1対1に。余裕を持って右スミを狙ったシュートは、ここも関根が体に当てる超ファインセーブで仁王立ち。変わらないスコアボードのゼロとゼロ。80分に成立は足が攣ってしまった大野泰成と萩原幹太(2年・成立ゼブラFC)を、高輪台は武川と宮原孝輔(3年・GRANDE FC)をそれぞれ入れ替え、突入するアディショナルタイムは2分。
80+1分には成立にまたも絶好の先制機。再三チャンスに絡んでいた左SBの西羽開(2年・鹿島アントラーズつくばJY)のパスを河口が左クロスに変えると、ゴール前で収めた鈴木はすかさずシュート。至近距離からのシュートでしたが、関根は冷静に弾き出し、萩原が詰めるもすぐさま関根が果敢にキャッチ。80+2分は高輪台にまたも絶好の先制機。再びウイングに戻った水野と武市が執念で繋ぎ、股抜きで中央へすり抜けた高野のシュートはボール1個分枠の左へ。馬虎譲らず。集中力の高い好ゲームは前後半10分ずつの延長戦へともつれ込むことになりました。


両チームの気合いを込めた円陣が解け、高輪台のキックオフでスタートした延長は成立に勢い。82分、中央で粘って町田がスルーパスを通すと、ここも粘って左へ持ち出した竹本のシュートは関根が冷静にキャッチ。85分、左から鈴木が蹴ったCKは袖山が懸命にクリア。87分、今度は右から鈴木が入れたCKを町田が頭で狙うも、関根が正面でキャッチ。88分、竹本、大野裕輝人と回ったボールを萩原がミドルレンジから狙うも、関根が延長だけで3本目のキャッチ。「シュートをどんどん打たれるとガタガタ来ちゃうけど、声を聞いていてもCBの2人が『やられてねえぞ』『入ってねえぞ』と言っていたので大丈夫だと思っていた」と川島監督。0-0のままで延長も後半の10分間へ。
94分はようやく高輪台にセットプレーのチャンス。ピッチ中央、ゴールまで約30mの位置で小池が獲得したFK。スポットに立った武市は、短い助走から直接ゴールを狙いましたが、成立のカベも執念でブロック。95分は成立のセットプレー。鈴木の左CKはDFにクリアされましたが、こぼれを西羽がヘディングで跳ね返すと、ボールは右サイドでフリーになった大野裕輝人の下へ。1年生が渾身の力で枠へ収めたシュートは、もはや鬼神と化した関根がこの日5本目のファインセーブでゴールは許さず。実践学園戦から続く関根の安定感はタイガー軍団最強の武器に。
97分に川島監督は水野を下げ、最後のカードとして渋谷雄隆(3年・GRANDE FC)を投入。そして99分に宮内監督が最後のカードとして送り出したのは、なんとGKの園田悠太(2年・横浜F・マリノス追浜)。「PKになったらアイツで行こうと決めていた。この1週間で2回くらい練習したんですけど、結構良い駆け引きをやるんですよ」と指揮官も期待を寄せる2年生守護神がゴールマウスに向かい、高尾の空に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。西が丘行きの切符は11メートルのタイマン勝負へもつれ込むことになりました。


先攻は成立。1人目の吉村は左スミを狙い、完全に読み切った関根もボールに触りましたが、キックの勢いがわずかに勝ってゴールネットへ。後攻は高輪台。実践学園戦でも1人目で登場した田中は完璧なキックを左スミへ叩き込み、渾身の雄叫び。成立2人目の鈴木は中央右寄りへグサリ。高輪台2人目の宮原は左上ギリギリのコースへグサリ。PK戦でも双方譲る気は全くありません。
成立3人目の河口は左スミへ、高輪台3人目の武市も左スミへそれぞれ成功。成立4人目の竹本は右スミへ、高輪台4人目の渋谷も右スミへそれぞれ成功。運命のラストキッカー。成立の5人目を任された萩原は氷の冷静さで中央へきっちり成功。外せば終わりの高輪台5人目として登場した小池も、左スミへ確実に成功させて力強くガッツポーズ。「PK戦もしっかり準備してきた」と川島監督が話せば、「選手権なのでPKも含めて練習はしましたけどね」と宮内監督。PK戦はここからサドンデスへと突入していきます。
成立6人目の手塚は左スミを狙い、関根も反応したもののわずかに及ばず。高輪台6人目の本藤は左下を狙い、園田も読んでいたもののわずかに及ばず。成立7人目の長草も左スミを選択し、関根はここもわずかに及ばず。高輪台7人目の袖山はGKの逆を突いてきっちり成功。成立8人目の西羽は4人連続となる左に蹴って、GKは逆へ飛んで成功。そして高輪台の8人目。後半終盤に足を攣ってしまい、それでも懸命に走り切った木野が左へ蹴ると、ボールが収まったのは同じ方向へ飛んでいた園田の両腕の中。手に汗握る激闘はPK戦8人目のキッカーで終止符。「インターハイの時に帝京にPKで負けていて、今日決めたヤツでもその試合で外しているヤツもいるので、そういう意味では1つ成長というか、粘ってサッカーできたのかなというのがありますね」と宮内監督も安堵の表情を浮かべた成立が、2年ぶりの西が丘へと勝ち進む結果となりました。


最後はPK戦での決着となりましたが、どちらが勝ち上がってもおかしくないような素晴らしい100分間プラスアルファでした。「もうひと踏ん張りでしたね」と第一声を絞り出しながら、「PK戦は相手も上手かったですね。PKも実力なので」と川島監督。そんな指揮官が最後に「悔しいね。超えられないね」と本音を滲ませた表情が印象に強く残りました。ただ、2年前の西が丘で完敗を喫した成立相手に、ここまでのゲームを披露したことは十分に誇っていい結果。試合後には3年生1人1人が部員の前でスピーチをする姿も。高輪台の3年生がピッチ内外で示した雄姿は、間違いなく後輩たちの心に刻まれたと思います。
「高輪台は本当に頑張るチームなので、何年か前から本当に良いお付き合いをさせてもらって、共に歩んできているというか、1年生やBチームも試合の相手をして頂いている良いチームなので、こんなゲームになるのは見えていました」と宮内監督も話した成立は、100分間でこそ決着を付けられなかったものの、前述したようにインターハイで敗れたPK戦をこの大舞台でモノにして、次のステージへ勝ち進んだことは大きな収穫。自らも抱きがちなやや勝負弱いイメージを払拭する意味でも、重要な勝利だったのではないでしょうか。「高輪台の子たちは本当に良いチームでしたし、早実だって修徳だって本当に良いチームでしたから」と指揮官も口にした通り、A、B両ブロックを通じても最激戦区とも言うべき連戦を抜け出した先に、いよいよ待っているのは西が丘のピッチ。10年ぶりの戴冠へ。成立がまた1つ大きなヤマを乗り越えてみせました。      土屋

  • Line