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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年10月31日

ナビスコ決勝 鹿島×G大阪@埼スタ

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1031saista.jpg積み重ねられた22回のファイナルを振り返っても初めての対峙。6度目の戴冠を狙う鹿島と、連覇を懸けるG大阪の一戦は埼玉スタジアム2002です。
ファーストステージは黒星が白星を1つ上回っての8位。セカンドステージも第3節で松本に0-2と完敗を喫すると、クラブの決断は指揮官の交替。第2次トニーニョ・セレーゾ政権に3シーズン目でピリオドを打ち、石井正忠コーチを監督に昇格させた鹿島。それからの復調はご存知の通り。リーグ戦でもセカンドステージでは優勝争いを繰り広げ、このナビスコカップでも3年ぶりの決勝進出という成果を手に。ただ、「やっぱりアントラーズというクラブはタイトルを獲ってこそのチーム」と言い切ったのは小笠原満男。17冠目を手にするためだけに、この90分間へ挑みます。
ナビスコカップ、J1リーグ、天皇杯と国内3冠を手にしたのは昨シーズン。そして、迎えた今シーズンもここまで2年連続で3冠を達成する資格を有しているG大阪。リーグ戦では前節の仙台戦に勝利したことで年間3位に浮上し、チャンピオンシップ進出へ大きく前進。このナビスコカップでは準々決勝で名古屋を壮絶なPK戦の末に振り切ると、準決勝では新潟相手に第1戦のビハインドを跳ね返して、2年連続でファイナルのピッチヘ。今シーズン1冠目をもぎ取る準備は整っています。スタンドには50828人の大観衆が。ビジョンで選手登場までのカウントダウンが始まると、ジーコと1つ星のビッグフラッグをはためかせた赤のゴール裏と、白十字のコレオを浮かび上がらせた青黒のゴール裏。注目の決勝戦は鹿島のキックオフでその幕が上がりました。


開始32秒に滲ませた気迫。西大伍、小笠原とパスが繋がり、金崎夢生は思い切って左足でミドル。ボールは枠の右へ外れたものの、鹿島が早速ファーストシュートを放ってみせると、2分には早くも決定機。柴崎岳の右ショートコーナーを遠藤康が中へ送り、小笠原がミドル。DFに当たったこぼれを遠藤康は拾ってエリア内へ付け、中村充孝の落としに飛び込んだ遠藤康はフリーでシュート。ボールはクロスバーの上に消え、シューターの25番は天を仰ぎましたが、「ガンバは凄く下がるとペナルティエリア内に人がたくさんいるので、個人では難しい所があるんですけど、ああやって周りの人とのコンビネーションを取ればどこかで崩せるのではないかなと思っていた」という遠藤康の惜しいシーンに象徴されるように、立ち上がりの勢いは圧倒的に鹿島。
4分も鹿島。西のパスを赤﨑秀平が中央に浮かせ、飛び込んだ小笠原はG大阪のGK東口順昭と交錯してオフェンスファウルを取られるも、ボランチが3列目から果敢にエリア内へ。5分も鹿島。柴崎が右へ刺したスルーパスに反応した遠藤康はシュートを打ち切れず、こぼれを拾った赤﨑のシュートはクロスバーの上へ。7分も鹿島。小笠原が遠藤保仁から中盤でボールを奪ったシーンをきっかけに奪ったCK。右から柴崎が蹴ったボールはシュートまで持ち込めなかったものの、「最近立ち上がりがずっと悪くて、今回の試合では立ち上がりからガンガン行こうとみんなで話していた」(遠藤)鹿島の止まらないラッシュ。
9分も鹿島。遠藤康の左FKに昌子源が反応するも、シュートには至らず。11分も鹿島。ファン・ソッコを起点に柴崎が左へ付けると、独特の間合いから放った中村のシュートはわずかに枠の右へ。12分も鹿島の決定機。柴崎のスルーパスから赤﨑は左をえぐって中へ。中村が枠へ収めたシュートは、遠藤保仁が何とかヘディングでクリア。その左CKを遠藤康が蹴り込み、昌子が頭で残したボールはパトリックが懸命にクリア。15分も鹿島。金崎のパスを受けた遠藤康は、右からカットインしながら東口にキャッチを強いる枠内シュート。「人を捕まえ切れていなくて浮いていた選手もいたし、ボールホルダーにも全然行けなくて、簡単に好きな所を通されていた」と振り返るのは阿部浩之。最初の15分間は7本のシュートを集めた鹿島が、金崎を強烈な推進力に圧倒的攻勢を仕掛けます。
「前から来るのは想定内だったんですけど、自分たちが本当に悪過ぎた」と遠藤保仁も話したG大阪のファーストシュートはようやく23分。小笠原のFKを跳ね返した流れからカウンター発動は宇佐美貴史。左サイドを1人で60m近く運び、そのまま放ったシュートはしかし曽ヶ端準が難なくキャッチ。逆に26分には左寄り、ゴールまで約25mの距離から遠藤康が直接狙ったFKは東口がキャッチ。29分に柴崎が入れた左CKは東口が掴み切れませんでしたが、DFが何とかクリア。「前半良く凌いでいたとは思いますけど、攻撃もちょっと単調でしたし、そこまでボールを回せなかったという所が、自分たちのゲームに持ち込めなかった所かなと思いますね」と遠藤保仁。変わらないゲームリズム。
「前半1点取られたら難しいゲームになると感じた」長谷川健太監督は30分に大きな決断。CBの西野貴治を下げて、同じ位置に岩下敬輔を投入。「30分ぐらいをメドに、落ち着かなければ岩下を入れようと考えていた。西野が悪かった訳ではない」と強調したものの、最終ラインに経験豊富な岩下を送り込み、「交替のタイミングは意外でしたけど、チーム自体が良くなかったですし、耐えるという意味でも前半はまずゼロで行こうという風に捉えられた」と阿部も口にした通り、前半は無失点で乗り切る姿勢を改めてピッチヘ交替という形で示します。
「比較的ウチが主導権を握れる展開」(石井正忠監督)の中で、31分のチャンスも鹿島。遠藤康が左アウトサイドで絶妙のスルーパスを通し、走った赤﨑のシュートは東口がきっちりセーブ。その左CKを遠藤康が蹴ったボールは、空中でラインを割ってしまいゴールキックに。36分はG大阪。宇佐美のドリブルで奪った左CKを遠藤保仁が蹴るも、ニアで遠藤康がクリア。38分もG大阪。鹿島のパスワークが乱れ、拾った阿部は左に持ち出しながらシュートを打つも、西に当たって枠の左へ。逆に40分は鹿島に決定的なシーン。ここも遠藤康が完璧なスルーパスを通し、抜け出した赤﨑はGKを右にかわして、角度のない位置からシュート。無人のゴールへ向かったボールは丹羽大輝が決死のタックルで掻き出しましたが、「湘南戦は前半の入りが良くなくて相手に圧倒されてしまった所があるが、逆に今日の試合はG大阪を圧倒できるような戦い方ができた」と石井監督も認めたように、得点こそ奪えなかったものの、鹿島がG大阪を押し込み続ける格好で最初の45分間は終了しました。


15分間のブレイクを挟み、迎えた後半もファーストチャンスは鹿島。47分に遠藤が左からCKを蹴り込み、昌子が残したボールを金崎が狙ったシュートはDFにブロックされると、50分はG大阪にらしい形が。阿部、遠藤保仁とボールを回し、倉田秋が中央へはたいたパスをパトリックはダイレクトでシュート。ミートし切れなかったボールは枠の右へ大きく外れましたが、「悪いなりにはやれていたので、後半どこかでチャンスがあればとは思っていた」と遠藤保仁。わずかに見えた青黒の光明。
52分は鹿島の右CK。ここまでの2本をいずれも蹴っていた柴崎ではなく、小笠原が蹴り込んだキックはDFがクリア。53分は守備に追われた宇佐美が西を倒して生まれた鹿島の右FK。遠藤康のキックはファーの金崎にドンピシャも、叩き付け過ぎたヘディングは枠の左へ。54分はG大阪。遠藤の縦パスを倉田が短く落とし、バイタルで前を向いた宇佐美のミドルはワンバウンドしながらわずかに枠の右へ。58分もG大阪。遠藤保仁が放り込んだ左FKに、突っ込んだ岩下はオフェンスファウルを取られましたが、「流れが来ていると思って見ていた。前半相手が外してくれていたので、一発チャンスがあればと思っていた」と長谷川監督。徐々にセカンドも今野泰幸、遠藤保仁のボランチラインで回収し始め、G大阪が引き寄せつつあるゲームリズム。
傾き掛けた流れを掴み返したのは「36歳というのはサッカー選手として若い方じゃないですけど、若い頃になかったものも今はあるので、36歳には36歳の良さがあります」と話した闘将。60分の左CK。それまでは遠藤康と柴崎が交互に蹴っていた中で、ここもキッカーは小笠原。正確なボールが中央に届くと、「自分のマークは岩下選手だったと思うんですけど、替わってそんなに時間が経っていない所で、自分がうまくマークを外せて良いポイントにボールも来たので、あとは頭に当てるだけでした」というファン・ソッコのフリーで合わせたヘディングが、鹿島サポーターのまさに目の前にあるゴールネットを揺らします。「ミーティングで満男が言ったことですが、『ここで勝つのと負けるのでは本当に違う』と。そういう気持ちというものを常に持っているということが重要だと思う」と石井監督も言及したキャプテンの右足が呼び込んだ先制弾。鹿島が1点のリードを手にしました。
62分にも遠藤康のスルーパスに抜け出した中村が1対1を迎え、最後は東口のファインセーブに阻まれたものの、あわや追加点というシーンを創出すると、65分に動いたのは長谷川監督。2人目の交替として、阿部に替えて大森晃太郎をそのままサイドハーフに送り込み、全体の推進力と運動量向上に着手。一方の石井監督も66分に遠藤康とカイオ、69分に中村と鈴木優磨と相次いでサイドハーフの入れ替えを。「運動量が落ちてしまうと相手に押し込まれてしまうケースが非常に多くなるし、相手はウチの陣内に入ってきた所のサイド攻撃が起点になっていると思うので、その意識がおろそかになってしまうと相手に押し込まれてしまうと思った」とはその指揮官。こちらもサイドの強度を再び引き上げに掛かります。
すると、73分には替わった2人が絡んで決定的なシーンを。左サイドでボールを持った鈴木優磨は最高のサイドチェンジを右へ送ると、これまた最高のトラップで縦へ持ち出したカイオはグラウンダーでクロス。中で待っていた金崎のシュートは、東口が驚異的な反応から右足で掻き出す超ファインセーブを披露し、追加点とは行きませんでしたが、ルーキーの鈴木優磨は堂々たるチャンスメイクを。74分にも金崎と小笠原が果敢なプレスで遠藤からボールを奪取し、金崎のパスを受けた赤﨑が1つ右に持ち出して放ったシュートは、枠の右へ外れるも好トライ。76分にも金崎のパスから、鈴木優磨は中へ潜って積極的なシュート。DFに当たったボールをカイオが収め、1つタメて打ち切ったシュートは今野が顔面で懸命にブロックしたものの、19歳と21歳があっという間に試合の流れに乗ったことで、ゲームリズムは完全に鹿島へ。
20分以上シュートのなかったG大阪は78分にラストカードを投入。倉田に替えてリンスを送り込み、パトリックと最前線に並べてブラジリアン2トップで最後の勝負に。これを見た石井監督も80分、赤﨑と山村和也をスイッチして、小笠原と山村のドイスボランチに柴崎を1列上げて1トップ下に配し、金崎の1トップで全体のバランス維持を。双方が交替カードを使い果たして、いよいよゲームは最後の10分間とアディショナルタイムへ。
輝いたのは最年長と最年少。84分は鹿島の左CK。ここも先制点と同様に小笠原がアークに立つと、放ったキックは鋭くファーサイドへ。舞った鈴木優磨が懸命に体を伸ばして頭で折り返したボールに、誰よりも速く反応したのは金崎。飛び出した東口とパトリックの鼻先で押し込んだボールが、ゴールネットへ力強く吸い込まれます。36歳が振るった軌道を、19歳が執念で残して、最後は絶好調の26歳が冷徹に一突き。まさに全世代が融合した完璧な一撃。大きな大きな2点目が鹿島に記録されました。
そして、勝利を確信する次のゴールも起点は小笠原。宇佐美のミドルがゴール右へ外れた1分後の86分、自陣でボールを持った小笠原は素早く柴崎へ。その柴崎もすかさず左足で右サイドへスルーパスを通すと、スピードに乗ったカイオはGKと1対1に。やや角度のない位置から、それでも躊躇なく放ったシュートは東口の肩口を破り、鮮やかにゴールネットへ飛び込みます。「試合が進むにつれて1点取って、また追加点、さらに、という形になり、どんどん攻撃的なモノを出せたので、途中からは本当に『今日は勝てるな』という気持ちになっていた」と石井監督。もはや赤きゴール裏のボルテージは最高潮に。
最終盤で時間を巧みに消し去っていくのは、それこそ鹿島の十八番。苛立ったパトリックと大森が相次いでイエローカードをもらい、反撃の手数を繰り出せないG大阪を尻目に、鹿島はボールをキープしながら、セットプレーを奪い続けて、着々と進めて行く時計の針。そして、小笠原が貪欲に直接FKを枠の左へ外した直後の94分10秒、さいたまの空に鳴り響いた家本政明主審のファイナルホイッスル。「石井さんが監督になって、タイトルを獲らせてあげたいという気持ちもみんなあったと思うので、そういう意味では本当に石井さんも"持っている"人だなと思いますね」(遠藤康)「Jリーグ初期からこのチームを知っている石井さんが『アントラーズは勝利にこだわる、全員でファイトするチームだ』と。『まず戦うんだ』ということをずっと言い続けてくれて、練習からやってくれた成果が出たと思う。素晴らしい監督だと思います」(小笠原)と2人が言及した優勝監督は「監督に就任して数ヶ月ですけど、この優勝は監督ではなく、選手の戦う気持ちが最初から出ていたと思う。今日は本当に選手が90分間足を止めず、積極的に自分たちの戦う姿勢を見せてくれたと思っている」と選手たちに賛辞の言葉を。遠藤康が「ソフトバンクの優勝を思い出した感じです(笑)」と笑った胴上げで6回宙を舞った"石井さん"。鹿島が文句なしの完勝で17冠目を獲得する結果となりました。


長谷川監督が記者会見で開口一番「今日は完敗でした」と認めた通り、ほぼ90分間に渡って鹿島が主導権を握り続けたファイナルでした。とりわけ際立ったのは切り替えの速さ。「どこかで取られてもみんな切り替えが速くて、前のパトリックにボールが渡る前に取り切れていたので、それが凄くチームとして良かったんじゃないかなと思いますね」と遠藤康が話したことと、「押し込まれながらもとにかく前でキープというのは考えていましたけど、それもあまりできなかったですね」と遠藤保仁が話した内容はほぼ同義。結果的になかなかボールを受けられなかったパトリックはボールが足に付かず、唯一のチャンスだった50分のシュートもジャストミートできず。ここの寸断が攻守両面でG大阪に大きなダメージを与えていたのは間違いありません。また、もう1つ見逃せないのは鈴木優磨の躍動。セレーゾ体制ではまったく出場機会を得られなかったルーキーは、リーグ戦のG大阪戦でデビュー戦初ゴールを記録すると、それからスーパーサブとして確固たる地位を確立。この日も投入直後から積極的なプレーを繰り返し、貴重な2点目のアシストまで挙げてしまうと。彼は競争力が格段に上がった石井体制の象徴のような選手であり、彼の活躍はそのまま今のチーム力を象徴していると言っていいのではないでしょうか。「どんなに良い試合や3位のような結果を残しても、タイトルを獲れないと評価されないチームですし、またそれが僕たちには良い刺激になる。こうやってタイトルを獲るということが鹿島なので、これからも獲り続けていきたいなと思います」と遠藤康が話せば、「タイトルは獲った者にしかわからないモノや見えないモノがあると思うし、勝った人にしかわからないこの感覚をまた味わいたいという想いがあれば、またどんどんタイトルを獲っていけるチームになると思うので、そういうのを伝えていくためにタイトルを獲れたことは嬉しいですけど、続けてタイトルを獲らなくてはいけないのがこのチーム」と言葉を紡いだのは圧巻のパフォーマンスで90分間チームを牽引し続けたMVPの小笠原。鹿島の新たな歴史に名を刻んだこのタイトルは、あるいは鹿島の新たな歴史の幕開けとなるタイトルなのかもしれません。     土屋

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