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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2年連続での昇格という偉業を確かに視界へ捉えたオレンジ軍団と、ハマに根付いている伝統の総合スポーツクラブが対峙する90分間。レノファ山口FCとY.S.C.C.横浜の一戦は維新百年記念公園陸上競技場です。
20勝1分け6敗。ここまで積み重ねてきた勝ち点は62。ここまで積み重ねてきた得点は76。1試合平均2.71ゴールという驚異的な攻撃力で、今シーズンのJ3を牽引し続けている首位の山口。ただ、6敗の内の3敗は最終盤の第3クールに入り、ここ4試合で集めた数字。「我々はずっと挑戦者と言いますか、今年初めてJ3に入ってきたので、『その時のことを思い出してみんなでやろう』という話をしました」と上野展裕監督が話せば、「アウェイ2連戦で町田に勝った勢いを福島で無くしてしまったので、また維新で再スタートできればと思っていた」とは福満隆貴。ここまでわずか1敗と圧倒的な強さを誇るホームスタジアムで、負の連鎖を断ち切りたいキーゲームに臨みます。
5勝6分け17敗。得点はリーグ最少の17となかなか攻撃の勢いを出し切れず、苦しい戦いが続いているYS横浜。それでも、「今はホームで良い結果が続いている」と守護神の高橋拓也が話したように、第3クールは2位の町田にこそ敗れたものの、J-22を4-0と、さらに琉球を1-0とどちらも完封勝利で下して、ホーム連勝を達成。順位もJ-22を得失点差で上回り、定位置になっていた最下位を脱出するなど、間違いなくチーム状態は上向きに。ここでアウェイとはいえ、首位を叩くことでさらなるステップアップを狙いたい所です。会場の維新公園には10人あまりでゴール裏に陣取ったYS横浜サポーターも含めて、4510人とシーズン平均を上回る大観衆が。スタジアムDJも叫んだ『戦の始まり』。注目のゲームはYS横浜のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートはYS横浜。3分に右CKを友澤貴気が蹴り込むと、こぼれを叩いた藤川祐司のボレはクロスバーの上へ。6分もYS横浜。友澤貴気が左クロスを放り込み、泉宗太郎が落としたボールを仲村京雅がシュート。ここもクロスバーの上に外れたものの、10分にもその仲村がラインの裏へスルーパスを落とし、走った梅内和磨が右から放ったシュートは山口のGK一森純がキャッチしましたが、「ゲームの入り方そのものは良く入れたなと思う」と有馬賢二監督も話したように、まずはYS横浜が好リズムで立ち上がります。
さて、「前半はイージーなミスが全体的に多くてキツかった」と小塚和季も振り返った山口は、やや全体の距離感も悪く、細かいコンビネーションのズレが散見。14分には岸田和人を起点に庄司悦大が裏へ流すと、こぼれを拾った福満のシュートはヒットせず高橋がキャッチ。19分にも小塚が右サイドへ良いタイミングでスルーパスを繰り出すも、鳥養祐矢のクロスは飛び出した高橋ががっちりキャッチ。上がらないホームチームのテンポ。
23分はYS横浜。ボランチの吉田明生が右へ付けたボールから、藤川は左足のアーリークロスを中央へ。ファーに流れながら梅内が当てたヘディングは一森にキャッチされたものの、24分には梅内とのワンツーから泉が右へ振り分け、藤川のクロスはDFのクリアに遭うも、ここも藤川が果敢にチャンスメイク。同じく24分にも大泉和也、梅内と繋いだボールを、友澤貴気は枠を越えるミドルまで。「前半は自分たちが相手のディフェンスラインの裏にラフなボールを入れて、それが通らなかったとしても11人が前を向いてディフェンスができるという所で、相手を前からハメてということの繰り返しで、相手も低い位置から組み立てるのでミスも出ていましたし、そこから奪ってショートカウンターでという形が創れていたと思います」とは高橋。首位を向こうに回してYS横浜が押し気味にゲームを進めます。
26分は山口。キャプテンの島屋八徳が右へ回すと、福満が繋いだボールは中央と合わず、鳥養が残して福満が左足で狙ったシュートはクロスバーの上へ。31分も山口。小塚のパスが相手に当たって右のハイサイドへこぼれ、上がってきた小池龍太のクロスは高橋がキャッチ。32分も山口。小塚のパスから福満が左足でミドルを放つも、やはりボールは大きくクロスバーの上へ。「動きが少なかったので、『みんなもっと動こう』と。そういう話をしていました」と上野監督。漂い出した停滞感。
そんな空気を切り裂いたのは「自分の役割はチームの勝利に貢献することのみだと思っている」と言い切るナンバーセブン。34分、3列目から飛び出した庄司が福満とのワンツーから右へ流し、小池のクロスに飛び込んだ福満は「結構良いボールが上がってきたので、何も考えずに振り抜いた」と右足ボレーを敢行。やや当たり損ねたボールは、しかし左スミギリギリを捉えると、ポストに当たりながらゴールネットへ転がり込みます。「あそこのコースはたまたまですね」と笑いながらも、「入って良かったです」と安堵の表情を浮かべた福満の貴重な先制点は、アタックに厚みを加えた庄司の攻撃参加も大きなポイントに。劣勢の山口が先にスコアを動かしました。
「連動性のある攻撃にわかっていながらやられたという部分はある」と有馬監督も話したように、警戒していた"連動性"を防ぎ切れずに失点を許したYS横浜。41分にはここも島屋、岸田、福満とボールを細かく回され、島屋の落としを鳥養が至近距離から打ったシュートは高橋がキャッチしたものの、明らかに変わり始めたゲームリズム。45+1分にはYS横浜も仲村が右へサイドチェンジを送るも、走った泉のクロスは一森が確実にキャッチ。先制以降は丁寧に時計の針を進めた山口が1点のアドバンテージを手にして、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムに動いた有馬監督。選手は替えずに1.5列目気味に構えていた大泉を左SHへ移し、その位置にいた友澤貴気を中央へスライド。「相手のストロングというのを消しながら、ボールを奪った後もどう先に1個取りに行くかという中」(有馬監督)で、ボールフィーリングの良かった友澤貴気の配置転換で反撃を期すと、50分には藤川のスローインを梅内が繋ぎ、友澤貴気がミドルにトライ。ここは一森にキャッチされましたが、後半も先にチャンスを掴んだのはYS横浜。
51分もYS横浜。高い位置で相手ボールを奪った泉が粘って残し、藤川がクロス気味に打ったミドルは一森が横っ飛びで何とか回避。直後の左CKを友澤貴気が蹴ると、ニアへ松田康佑がフリーで飛び込むもシュートまでは至らず。友澤貴気は54分に左CK、59分にも右FKを蹴り込み、前者は岸田のクリアに阻まれ、後者は走り込んだ松田へわずかに合わなかったものの、一段階アップしたサポーターのボルテージ。
ところが、YS横浜にアクシデントが起こったのは60分。51分のチャンスにも絡むなど、サイドで存在感を示していた泉が負傷でプレー続行が難しくなり、有馬監督はエルサムニー・オサマとの交替を決断。エルサムニー・オサマは最前線に入り、再び友澤貴気が左SHへ戻ると、その1分後に決定的な得点機を迎えたのはホームチーム。
61分にエリアのすぐ外で細かいパスワークを披露した流れから、岸田がエリア内へ縦パスを付けると、受けた鳥養はDFと接触して転倒。大坪博和主審は迷わずペナルティスポットを指し示します。キッカーに関して「選手が決めていると思います(笑) 選手は『監督が決めている』と言うと思いますけど(笑)」と笑った上野監督に対して、ここまで7本のPKを蹴っている岸田は「監督の言い方的には『オマエ最近蹴り過ぎてるんじゃないか?』みたいな感じで、そう言われると『ああ、そうですね。じゃあ福満で』みたいな感じに言われている方はなるので、誘導尋問じゃないですけど(笑)」とこちらも笑顔で話しつつ、「最終的には僕たちで決めていますけど、監督の願い的には福満に蹴って欲しいんだと理解しています」ということでスポットに立ったのは福満。左を狙ったキックは高橋も読み切って触りましたが、わずかに勢いの勝ったボールはゴールネットへ到達。「先制はするんですけど追い付かれたり逆転されたりがあったので、本当に2点目がここ何試合か重要だということを話していた」という福満のドッピエッタで、山口が重要な"2点目"を奪いました。
64分に小池のクロスから小塚が自ら「ホームランになっちゃって」と苦笑した枠越えミドルを放ったのを見て、有馬監督は2人目の交替に着手。大泉を下げて、右SHへ友澤剛気を送り込み、これで両サイドハーフは友澤ブラザーズに。67分に小塚の左CKから福満がわずかに枠の左へ外したヘディングを経て、70分には早くも3枚目のカードも。仲村と工藤由夢をスイッチして、「奪ってから背中を取りに行く」という基本姿勢をもう一度ピッチヘ落とし込みに掛かると、71分には梅内を起点に友澤貴気が左クロス。ニアへ突っ込んだエルサムニー・オサマのヘディングは、それでもわずかに枠の左へ逸れ、追撃弾とはなりません。
72分には山口にも1人目の交替が。PKを獲得するなど奮闘を見せた鳥養に替えて、レフティの黒木恭平がそのまま右SHへ。78分には小塚の丁寧なスルーパスから、左サイドを福満が独走。少し中に潜って枠へ収めた1対1は、高橋がファインセーブで仁王立ち。ここは3点目とは行きませんでしたが、80分に見せたのは「全員が戦術を理解しているというか、カウンターになった時にどう動くかとかもできているので、そこは強みだと思います」と小塚も胸を張った、狙い通りのカウンターアタック。
中盤でボールを奪った島屋は少し運び、受けた福満が右へ振り分けると、島屋の丁寧なクロスを岸田は「ワンタッチでとりあえず狙って、枠内にしっかり収めて、そこで入ってくれれば良いなという感じ」の右足アウトサイドボレー。高橋も必死のセーブで掻き出し、一旦プレーはそのまま流れましたが、田中義大副審の進言もあって、ラインを割っていたという判定でゴールが認められます。「僕自身はちょっと『止められた』と思ったんですけど、副審がゴールということを言ってくれたので、副審の方に感謝したいです」と話した岸田は、これで27試合27ゴール。「ラッキーゴールと言えばラッキーゴールでしたけど、アレをフカしていれば絶対に入っていない訳ですし、1試合1ゴールと明言しているおかげで、自分自身もどれだけキツくてもゴールに気持ちが行っているのかなと思います」と話すエースの一撃でスコアは3-0に変わりました。
82分にYS横浜は藤川と渡邉三城を入れ替えましたが、83分の決定的なチャンスは山口。黒木が左へピンポイントで通し、収めた島屋が左に流れながら枠へ飛ばしたシュートは高橋がファインセーブで阻止。87分はYS横浜のチャンス。右SBへ移った松田のパスから、エリア内へ潜った友澤剛気のシュートはクロスバーの上へ。「終盤の時間帯は運動量が落ちてしまいましたね」と高橋。どうしても1点が奪えません。
トドメの一刺しは三たびこの男。89分に自陣深くから繰り出されたカウンター。黒木からパスを引き出した島屋が少し運んで縦に付けると、斜めに走って受けたのは2分前に投入されたばかりの菊本侑希。その3番はやや弾んだトラップをそのまま生かして浮き球で絶妙のラストパスを送り、GKと1対1になった福満は「良いタイミングでGKが出てきて、自分のトラップもうまくいったので、そのバウンドを利用してループを狙いました」とGKの頭上を越す完璧なループで揺らしたゴールネット。「福島の時に決めることができずに悔しい想いをして、それをどうしても挽回したいと思っていたでしょうから、そういう気持ちが今日の得点に繋がったと思います」と指揮官も言及した福満は、これで「JFLではなかったので学生の時以来ですかね」というハットトリックを記録。最後は前田晃一をクローザーとして送り込み、「観客も『ワ~』ってなったと思いますけど、だいぶ外れていましたけどね(笑)」と上野監督も笑った庄司の決定機逸も経ながら、維新公園に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「久しぶりに維新に戻って来まして、選手は本当に良くやってくれたと思います。苦しい試合でしたけど、本当に足を攣る人もいまして、皆さんも見られたらわかるようにコンディションもバラバラで、その中で最後まで選手は良くやってくれました」と上野監督も話した山口が、大きな大きな勝ち点3をホームで奪い切る結果となりました。
「最近勝っていなかったので、ここで勝ち切ったのは大きいと思いました。これを続けて波に乗っていきたいですね」と小塚が話し、「攻撃は4点取れましたし、守備も最近無失点が少なかったですけど、チームみんなで守れたので、この勝ちは非常に大きいですね」と福満も手応えを口にした通り、スコア的にも久々にホームのサポーターを熱狂の渦に巻き込んでみせた山口。「内容がどうかと言われるとアレですけど、今は本当に結果を伴わせることが一番大事だと思うので、そういう意味ではホームでまた良いリスタートを切れたと思います」と岸田も認めたように、ここから先は内容云々というよりも確実な勝ち点の積み上げが求められるフェーズに。そういう意味でも内容が手放しで喜べるようなものではない中で、4ゴールを奪い切れたあたりに再浮上の兆しを見た気がしました。今後への意気込みを問われた指揮官は「星勘定はしないようにしています」と話しながらも、「チームのリズムもそうですし、当然攻撃のコンビネーションもそうですし、色々な意味で選手が次の試合はもっと良くなると思います」と確かな手応えを。「ここで上がれなかったら『もったいなかった』で終わってしまうので、充実感を得るためにも最後まで勝ち切って昇格したいですね」と言い切ったのは小塚。ゴール裏に掲げられた『至誠而不動者未之有也』の文字。レノファの貫き続けてきた誠実が、Jリーグの歴史を動かす日はすぐそこまで迫っています。 土屋
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