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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
初戦を勝ち上がったチーム同士が激突するセカンドラウンド。3度の全国出場経験を有する国士舘と成蹊が対峙する一戦は駒沢補助競技場です。
ベスト8まで躍進した89回大会以来、4年ぶりとなった昨年の都大会は1つ勝って堂々のベスト16進出。今大会も1次予選で八王子を3-1、都立桜修館を2-0と退けると、都立府中西を5-1の大差で下し、2年連続で都大会まで駆け上がってきた成蹊。先週の日曜日に行われた1回戦も、都立片倉を相手に3-0と快勝を収めてこちらも2年連続となるベスト16まで。はつらつと、爽やかに。目指すは4強。すなわち西が丘のピッチです。
昨年はベスト8で東京農業大第一にPK戦での敗退を余儀なくされ、一昨年はベスト16で実践学園に0-2で敗れるなど、選手権予選では2年続けて悔しい想いを味わってきた国士舘。今シーズンは関東大会予選、インターハイ1次予選とどちらも初戦敗退を突き付けられており、トーナメントコンペティションでは未勝利という中で臨んだ今大会は、先週の初戦で都立調布南に3-1で競り勝ってようやく1勝を。余勢を駆って準々決勝へと勝ち進むべく、重要な80分間に挑みます。会場の駒沢補助は両校を応援する人波でフルハウス。楽しみなゲームは成蹊のキックオフでスタートしました。
勢い良く立ち上がったのは国士舘。3分に廣瀬寛治(3年・横河武蔵野FC JY)が蹴ったFKはゴール前で混戦を生み、最後はDFにクリアされたもののいきなり惜しいシーンを。5分にも廣瀬、工藤夏仁(3年・三菱養和巣鴨JY)と繋いで、熊谷拓海(3年・FCトリプレッタJY)が成蹊のGK中田修平(2年・成蹊中)にキャッチを強いるシュートを放つと、6分に再び熊谷が放ったミドルは中田がしっかりキャッチしましたが、まずは国士舘が続けてチャンスを創出します。
ただ、対する成蹊もこのラッシュを凌ぐと繰り出す手数。9分に左から洪修鎭(3年・東京朝鮮第一中)がクロスを放り込み、白井隼平(3年・成蹊中)が飛び込むもDFが何とかクリア。このCKを左から洪が蹴ったボールはゴールラインを割りましたが、11分には白井のスルーパスから後藤悠太(3年・成蹊中)が抜け出し、ゴールネットを揺らしたシュートはオフサイドで取り消されたものの、14分にも伊澤旺(3年・成蹊中)の左クロスを、CFの高橋弾(3年・調布神夜中)はワントラップボレー。完全にはヒットせず、国士舘のGK菊地大輝(3年・府ロクJY)がキャッチするも、成蹊が披露した見事な反発力。
14分には中田の蹴ったキックがDFに当たり、わずかにゴール左へ外れるというあわやオウンゴールの危険なシーンを経て、15分は成蹊にチャンス。ミドルレンジで前を向いた洪は、ゴールまで約25mの距離から思い切ってシュートを放つと、左スミを捉えたボールは菊地がファインセーブで何とか回避。その左CKを洪が蹴り込み、藤木裕大(3年・成蹊中)が競り勝ったヘディングは枠の左へ。蒼き志士に漂い出した先制点の香り。
ところが、先にスコアを動かしたのは国士舘。21分、右サイドから根橋拓也(2年・東急SレイエスFC)の上げたクロスを、ファーで拾った熊谷が中央へ折り返すと、走り込んでいた長谷川未来(3年・三菱養和巣鴨JY)は正面から難なくこのボールをゴールネットへ送り届けます。10番を背負ったキャプテンがこの大事な一戦で大仕事。やや押し込まれていた国士舘が1点のリードを奪いました。
以降はリズムを取り戻した国士舘が攻勢に。26分に廣瀬が右から入れたCKをファーで工藤が折り返すと、根橋のシュートはカバーに入っていたDFがライン上で決死のクリア。29分にもCBの尾田航士(3年・府ロクJY)がフィードを送り、ルーズボールに反応した熊谷のミドルは中田がキャッチ。36分にも熊谷が斜めにパスを打ち込み、ギャップで受けた廣瀬の右足シュートは枠の右へ。次々と繰り出されるフィニッシュ。押し込む国士舘。
37分には成蹊に久々のチャンス。洪が右へ展開したボールを高橋はクロスに変えるも、飛び込んだ後藤には届かず。40分は国士舘。右SBの藤森悠斗(2年・川崎フロンターレU-15)が中へ送り込み、こぼれを叩いた長谷川のシュートはクロスバーの上へ。40+1分も国士舘。藤森のパスから長谷川が2人のマーカーの真ん中をぶち抜き、中央へ送ったパスを工藤が狙うも枠の上へ。先制してからは攻撃の形がしっかり出始め、尾田と斎藤敦(1年・S.T.FC)のCBコンビも安定してきた国士舘が1点のアドバンテージを手にして、最初の40分間は終了しました。
後半に入ってもゲームリズムは変わらず。43分は国士舘。アンカーの礒川拓夢(3年・町田木曽中)を起点に廣瀬が右へ振り分け、工藤の折り返しに熊谷が飛び込むもわずかに届かず。45分も国士舘。左から廣瀬が蹴ったCKは中央でオフェンスファウルという判定。52分も国士舘。中央やや左、ゴールまで20m強の位置から工藤が枠へ飛ばしたFKは中田がキャッチしましたが、リードを後ろ盾にペースを掴み続ける国士舘。
ところが、48分に白井との交替で右サイドにそのまま投入された棚橋佑介(3年・成蹊中)が、そのスピードでチームに推進力をもたらすと、56分には高橋のパスを受けてうまく反転しながら、粘って打ち切った洪のミドルはクロスバーを越えるも好トライ。さらに58分、ピッチ中央でFKを獲得すると、後藤との交替でピッチに駆け出した吉野豪(3年・大宮ソシオ)はいきなりスポットへ。自信満々の助走から放ったキックは何とクロスバー直撃の惜しい弾道。流れは間違いなく成蹊に。
蒼の咆哮は61分。洪のパスから右SBの水上光(3年・成蹊中)は中央へグサリ。上向一平(3年・調布FC)との連携でエリアに迫った高橋は一旦手放したボールが、再び足元に戻ってきたタイミングで右足一閃。軌道は鋭く左スミのゴールネットへ突き刺さります。8番を背負ったストライカーがさすがの一発。攻勢を強めた成蹊がスコアを振り出しに引き戻しました。
66分に奮闘した洪と加藤大貴(3年・三鷹F.A.)をスイッチした成蹊は、アンカーの安部泰祐(3年・成蹊中)が中盤でことごとくボールを回収し出すと、焦りの見える国士舘はイージーなパスミスが頻発。70分は成蹊のショートカウンター。相手のパスミスを奪った上向が縦に付け、高橋が左へ流したボールは走った加藤も間に合わず、飛び出した菊地がキャッチ。73分も国士舘のパスミスから成蹊に絶好のチャンス。4対2というシチュエーションで上向が高橋へ出したラストパスは、球足が長くなって菊地がキャッチ。あと一歩というシーンを創り出す成蹊も、激闘に足を攣る選手が続出する状況下で最後の一刺しまでは至りません。
既に根橋とスイッチした千葉隆稀(2年・三菱養和調布JY)が左SBに入り、左SBだった篠生健人(3年・東京ベイFC U-15)を一列上げた国士舘は、75分に工藤と細田晃輝(3年・三菱養和調布JY)を、78分に廣瀬と藤原孟海(2年・クリアージュFC)をそれぞれ入れ替え、前線のパワーを増強して最後の勝負に。79分にはエリア内へ侵入した篠生がシュートを放つも、藤木が果敢に体でブロック。アディショナルタイムは何と8分。わからない勝敗の行方。
80+4分はカウンター。長谷川が運んで左へラストパスを送るも、藤原のシュートは中田ががっちりキャッチ。80+4分に成蹊はバックチャージを受けてプレー続行不可能になった上向に替えて辰巳怜史(1年)を、80+6分に国士舘が篠生と吉田祐介(3年・杉並向陽中)を入れ替えると、その後はお互いにチャンスなく迎えたタイムアップのホイッスル。両雄譲らず。熱戦は前後半10分ずつの延長戦へともつれ込むことになりました。
延長は体力面で勝った国士舘ペース。83分、左サイドを独力で切り裂き、中央へ潜りながら長谷川が打ったシュートは中田が懸命にファインセーブ。87分、熊谷とのパス交換から藤森が上げたクロスは水上が何とかクリア。その右CKを熊谷が蹴り込むも、ラインを割ってゴールキックへ。90+3分、細田が右から左足で上げたアーリーは吉田の手前で何とか水上がカット。その左CKを吉田が蹴ったボールはファーに流れましたが、成蹊のキャプテンを託された藤野千紘(3年・成蹊中)は何度も足を攣らせながら、その度に立ち上がって必死に対応。水際での守備が続きます。
国士舘の執念が実ったのは92分。右サイドへ展開した流れから、おそらくはチームで最も走っていた熊谷が粘ってクロスを放り込むと、宙を舞ったのは184センチの藤原。高い打点で合わせたヘディングはゴールネットへ飛び込みます。2年生ストライカーの貴重な貴重な一撃に、沸騰する赤い応援団。1-2。とうとう国士舘が勝ち越し弾を奪いました。
トドメの一刺しも10番のキャプテン。97分、藤原が右サイドへ付けると、ドリブルを開始した長谷川は加速しながらそのままズドン。コントロールされたボールは、素晴らしいコースに素晴らしいスピードで向かい、左スミのゴールネットへ吸い込まれます。1-3。勝負あり。ノーシードで勝ち上がってきた成蹊の進撃もここまで。国士舘が2年ぶりの準々決勝へと駒を進める結果となりました。
成蹊の健闘が光ったゲームだったと思います。とりわけ後半の同点に追い付いてからは、上向と高橋の強烈な推進力でいつ逆転ゴールが入ってもおかしくないような時間が続き、場内もかなりの盛り上がりを見せていたのは間違いありませんでした。試合終盤には前述したように足を攣る選手が続出し、延長でも前半までは何とか粘っていたものの、最後はまさに刀折れ矢尽きるような格好で敗れはしましたが、整列時に巻き起こった大きな拍手は何よりも彼らのプレーが観衆の心を揺さぶったことを証明していたと言えるでしょう。まさにグッドルーザー。見る者に鮮烈な印象を残し、成蹊が選手権の舞台から静かに去っていきました。 土屋
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