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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年09月22日

高校選手権東京B2回戦 実践学園×東海大高輪台@駒沢補助

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0920komaho-2.jpg1回戦を共に完封勝利で勝ち上がってきた強豪同士の直接対決。実践学園と東海大高輪台が対峙する第4試合は陽も傾き始めた駒沢補助競技場です。
過去3年で2度のファイナル進出。昨シーズンは決勝で國學院久我山と激闘を繰り広げ、最後は0-2で屈して全国切符は掴めなかったものの、通年で争われるT1では堂々たる成績で頂点に立った実践学園。迎えた今シーズンは関東大会予選こそベスト4まで進出したものの、インターハイは1次予選決勝で東京実業に1-2の悔しい逆転負け。最後のトーナメントコンペティションとなった今大会は、初戦で桐朋を4-0と退けて2回戦へ。実力者と相対するこのゲームは今シーズンのすべてをぶつけるキーゲームです。
2年前の選手権予選では、らしさ全開のチームで初めて西が丘まで到達。近年はT1での戦いも経験するなど、都内の中でもそのスタイルを含めて小さくない存在感を発揮している東海大高輪台。今シーズンは関東大会予選は初戦で駿台学園に屈し、インターハイ予選でも支部予選初戦で都立美原にPK戦で敗れるなど苦しい序盤戦となりましたが、「インターハイに負けてから3年生が本当に変わって、みんな成長していると思う」と話したのはキャプテンの武市健太(3年・インテリオールFC)。川島純一監督も「夏なんかは結構やり込んで、リーグ戦も好調で8試合くらい負けていない」と自信の一端を。初戦の青稜戦も残り7分の決勝ゴールで1-0の勝利をおさめてこのステージへ。相手は実践学園。舞台は整いました。注目度抜群の一戦だけあって場内は大観衆で大入り満員の風情。2回戦屈指の好カードは実践のキックオフでその幕が上がりました。


立ち上がりから激しくやり合う両者。6分は高輪台。武川剣真(2年・AZ'86東京青梅)、野村浩輔(3年・FC東京U-15深川)、武井成豪(2年・GRANDE FC)とスムーズにボールを繋ぎ、本藤悟(2年・横浜FC JY)のシュートはヒットせず、最後はオフサイドを取られましたが、いきなり持ち前のパスワークを披露。9分は実践。左から谷本薫(3年・文京クラッキ)が蹴った左CKは、ニアで武川がクリア。11分も実践。左から深城壮太(3年・町田ゼルビアFC JY)が投げ入れたロングスローに、キャプテンマークを巻いた勝田勇気(3年・東急SレイエスFC)はシュートまで持ち込めなかったものの惜しいシーンを。「入りは結構五分五分だったと思う」と野村。好ゲームを予感させるようなハイテンションでゲームは立ち上がります。
高輪台の好機は13分。左SBの木野友誉(3年・フレンドリー)を起点に水野団(2年・ESA)がドリブルで突っ掛け、野村が枠へ飛ばしたミドルは実践のGK永見彰吾(3年・FC.VIDA)がファインセーブで回避。直後の右CKを袖山翼(2年・インテリオールFC)が蹴り込むと、ファーで小池英翔(3年・三鷹F.A.)が折り返したボールはDFがクリア。その左CKは野村が蹴り入れ、ここもファーで小池が競り勝ったボールはDFが掻き出しましたが、「立ち上がりで落ち着いたらすぐにやり出した」(川島監督)高輪台の好リズム。
セットプレーも大きな武器の実践は、20分を過ぎるとハイサイドを取れるようになったことで、そのセットプレーを続けて獲得。21分、右から佐藤尚史(3年・JACPA東京FC)が投げたスローインで、L字に走ってDFの裏を完全に取った野崎智寛(3年・杉並FC)のシュートは、いち早く察知した高輪台のCB田中千寛(3年・杉並FC)が体でブロック。その右CKをレフティの深城が蹴るも、ここは高輪台のGK関根康大(3年・GRANDE FC)がしっかりキャッチ。26分に高い位置でボールを奪った流れから、左で得たCKは短く蹴り出した谷本と周囲の呼吸が合わず、シュートには至りませんでしたが、ジワジワと実践が手にし始めたサイドの主導権。
すると、30分の絶叫はやはりセットプレーから。ここも右サイドで獲得したCK。キッカーの深城は絶妙の位置にボールをコントロール。ここに飛び込んだ勝田は、密集の中で高い打点からヘディングを繰り出すと、ボールは綺麗な軌道を描いてゴールネットへ吸い込まれます。10番が一直線に走り寄ったのは優に100人を超える部員の大応援団。あまりの喜びように勝田がイエローカードをもらう一幕もありましたが、それだけの価値がある貴重な先制弾。実践が先にスコアを動かしました。
32分にも深城の右FKから佐藤にあわやというヘディングシュートを打たれた高輪台でしたが、1点のビハインドにも「点を取られるのはリハーサルしてきたのでそこで慌てなかったですね」と川島監督。34分には右から野村がFKを蹴り入れ、小池が残したボールを本藤が左クロス。田中のヘディングは枠の右へ外れましたが、きっちりフィニッシュまで。36分には早くも1枚目のカードとして高野颯翔(2年・ジェファFC)を右ウイングに送り込むと、38分には決定機。袖山が右へ振り分け、「夏休み前にケガ人が出ちゃって右SBがいなくなって、消去法でずっとCFだった一樹を使ったんですけど、夏休みの1か月間やらせたら持ってましたね」と指揮官も明かした、SBに転向して数か月の右SB畠中一樹(3年・FC PROUD)がドリブルから鋭いクロス。ニアに突っ込んだ本藤のヘディングはわずかに枠の左へ逸れたものの、可能性十分なサイドアタックを。お互いが持ち味をしっかり出し合った前半は、実践が1点のリードを手にしてハーフタイムを迎えました。


後半は拮抗した立ち上がりを過ぎると、ファーストシュートは46分の高輪台。木野が左からロングスローを敢行し、その流れの中から袖山が放ったミドルは枠の右へ。48分は逆に実践が深城のロングスローから掴んだセットプレー。左から谷本が蹴ったCKを、大山友幸(3年・三菱養和巣鴨JY)が合わせたヘディングはゴール右へ外れましたが、49分にも相手のミスを見逃さずに中島陸(3年・練馬三原台中)が奪って右へ。野崎智寛の折り返しを中島がダイレクトで打ったシュートはクロスバーを越えたものの、やや流れは手数も含めて実践へ。
52分に決定的なシーンが訪れたのは黄色と黒の縦縞軍団。ボランチの武川が素晴らしいインターセプトから、そのまま左へスルーパス。開いて受けた本藤が少し運んで打ち切ったシュートはGKを破るも、ボールはクロスバーを叩いてラインギリギリヘ落下。微妙なジャッジではありましたが、副審、主審共にノーゴールをジャッジすると、高輪台ベンチは猛抗議をするも当然判定は変わらず。あと一歩という所で同点とは行かなかったものの、変わり始めたゲームリズム。
実践が1枚目の交替を決断したのは53分。野崎智寛を下げて野崎楓人(3年・FC GIUSTI世田谷)を投入し、サイドの推進力向上を。57分には勝田とのワンツーから深城がクロスを上げると、ファーで待っていた菅野涼太(3年・AZ'86東京青梅)のボレーは枠の右へ。和氣貴也(3年・横河武蔵野FC JY)と長谷川颯斗(3年・AZ'86東京青梅)のCBコンビが守備陣を引き締めつつ、サイドアタックに滲ませる追加点への意欲。
比較的良い流れを掴みつつも、それが手数に繋がらない高輪台。60分には木野の左ロングスローから、こぼれを水野が左へ流し、深城が放り込んだクロスは実践のハイタワー長谷川がきっちりクリア。なかなかフィニッシュを繰り出せず、「ウチの流れで来ていたのに『"確変"終わっちゃったな』という感じで見ていた」と川島監督も明かしたそのタイミングが歓喜の時。
61分、右から袖山が蹴ったCKはニアでDFにクリアされたものの、再び右へ展開すると畠中はすかさずアーリークロス。中央の混戦でこぼれ球に誰よりも速く反応した小池が右足を振り抜くと、ボールは中央のゴールネットを鮮やかに揺らします。「先に1点取られちゃって、悪い時だとあれでまた狭くなって急いじゃうんだけど、リハーサルもしてきたから落ち着いてやれていましたよね」と川島監督。スコアは振り出しに引き戻されました。
追い付かれた実践はすぐさま2枚目のカードを投入。中島と根岸哲平(3年・杉並FC)を入れ替え、前線の顔触れにも変化を加えながら狙う勝ち越し。65分は実践。谷本の左CKは関根がパンチングで掻き出し、武川が大きくクリア。69分は高輪台。畠中のオーバーラップで奪った右CKを木野が頭で触り、本藤が放ったヘディングは枠の左へ。一進一退。残されたのは10分間とアディショナルタイムのみ。
71分の交替は実践の3人目。菅野に替わって高精度キックを誇る黒石川瑛(3年・AZ'86東京青梅)を根岸と2トップ気味の位置へ解き放ち、大山を1ボランチ気味に配しながら、その前に野崎楓人、勝田、谷本が並ぶ4-1-3-2気味の布陣で勝負に出ると、73分には谷本が裏へ落としたボールを斜めに走り込んだ黒石川は関根にキャッチを強いるシュートまで。77分にも野崎楓人が右FKを奪い、深城が入れたボールは「1年生の頃からハイボールだけは絶対に負けないと決めて、練習からも一番こだわってやってきた」という関根がキャッチしたものの、交替カードが躍動した実践に確かな勢いが出てきます。
ところが、アクシデント発生は終了間際の79分。実践の選手にイエローカードが提示されると、1分前にもやはりイエローカードをもらったその選手は退場処分に。実践は10人での戦いを余儀なくされてしまいます。80分は高輪台。水野が左カットインから放ったシュートは永見がキャッチ。80+1分は実践。大山のパスから黒石川が狙ったシュートは関根がキャッチ。80+3分は実践。勝田が粘って取ったFKを左から黒石川が蹴り込むも、小池が懸命にクリア。80+4分は高輪台。武川がクサビを打ち込み、本藤が落としたボールを高野が叩くも永見がキャッチすると、これが既定の時間内では最後のシュート。80分間では決着付かず。ベスト8への進出権は前後半10分ずつの延長戦で争われることになりました。


双方が創った気合いの円陣が解け、実践が谷本と石井幸太(3年・Forza'02)をスイッチして迎えた延長前半は、1人少ない実践が先にチャンスを。83分に石井がいきなりドリブルで獲得した右CK。黒石川は短く蹴り出し、石井が上げたクロスはDFにブロックされたものの、勝利への気持ちを前面に押し出すと、川島監督がとうとう決断したのは85分。武川に替えて、ピッチヘ送り出したのは「去年から中心選手なのでアイツがいるのといないのじゃ全然違う」とその指揮官も全幅の信頼を寄せる武市。「先週の火曜に練習に復帰したばかりで、前の試合もベンチも入っていなかった。みんながここまで連れてきてくれたので、その気持ちに応えないとダメだなと思った」というキャプテンの登場に、高輪台応援席も一気にテンションが上がります。
絶叫のタイガー軍団。88分、中央から本藤が右へ流すと、受けた野村はルックアップ。「味方が外を回ってくれて、それが見えて出そうと思ったんですけど、その瞬間に感覚的に相手の足が動いたのが見えた」という10番は、選択を変更して自ら少し中へ潜ると左足一閃。衝撃的な軌道を描いたボールはそのまま一直線にゴール左スミへ吸い込まれます。「右利きなのでカットインのシュートは左サイドからを意識して練習していて、右足でもなかなか出せないんですけど、今日は左足で出せて逆から決められて良かったと思います。入った瞬間は頭の中が喜びで爆発しそうでした」と語る野村のスーペルゴラッソに「アレはシビれましたよ」と川島監督。とうとう高輪台が逆転に成功しました。
数的不利の中でビハインドを背負った実践。88分には野崎楓人が右から折り返したボールが、中央でフリーになっていた黒石川に渡り、ループ気味に放ったミドルはわずかにクロスバーの上を越えると、一斉に頭を抱えたベンチとチームメイト。90分には黒石川が左FKを、90+1分にも黒石川が今度は右ロングスローを投げ込むも、シュートには至らず。高輪台が1点をリードして、いよいよゲームは運命のラスト10分間へ。
延長前半終了間際に畠中と宮原孝輔(3年・GRANDE FC)を入れ替え、後半スタートからは本藤と興津快(3年・FC PROUD)もスイッチして、守備面での安定感向上に着手した高輪台に対して、実践に再び訪れたアクシデント。91分にイエローカードを提示された選手は、67分にも警告を受けており、まさかのこの日2枚目となるレッドカード。この最終局面で実践は2人の数的不利を被ってしまいます。
突き放したい高輪台。93分に高野が運んで自ら放ったシュートは永見がキャッチ。同じく93分に高野のパスから、武市がマーカーをかわして左足で放ったシュートは永見が丁寧にキャッチ。「自分が呼ばれた時は『自分で点を決めてこい』という先生からのメッセージだと持っている」という武市も積極的にフィニッシュへ絡み、狙うダメ押しの追加点。
見る者すべてを震わせた『心で勝負』の証明。96分、後方から入ったロングボールに対して、前線に上がっていた189センチの長谷川は懸命にジャンプ。このボールがDFラインの裏へ抜けると、真っ先に反応したのはダイアゴナルに走り込んでいた黒石川。もはや視界の先にはゴールとGKのみ。至近距離から力強く右足で振り抜いたボールは、ゴールネットへ飛び込みます。狂喜の青。呆然の黄黒。沸騰する実践応援団。これには川島監督も「さすが実践学園。魂を感じましたね」と脱帽。9人の実践が執念を上回る執念で追い付き、勝敗の行方はPK戦へと委ねられることになりました。


場内のどよめきが収まらない中で迎えた11メートルの果し合い。高輪台1人目の田中は中央へ豪快にグサリ。武市が出場するまでキャプテンマークを託されていた副キャプテンには、その武市も「自分がいない中で副キャプテンの野村と田中が良くやってくれたと思う」と感謝の言葉を。そして、実践1人目が短い助走から蹴ったキックは右のポストを直撃。いきなり点差が付いてしまいます。
高輪台2人目の野村がGKの逆を突いてきっちり左スミへ成功させると、次の主役は「PKは1,2週間ずっと練習していて自信も付いてきていたし、勝つ自信があったので落ち着いてできました」という守護神。実践2人目の左を選択したキックは、関根が完全に読み切ってビッグセーブ。「公式戦でこういう会場でやるというのは緊張感もあって自分が昂っちゃうこともあるんですけど、GKコーチの加藤さんに『練習でやってきた雰囲気を試合でどれだけ出せるか』と言われてきていて、サブGKの篤生(角田篤生・2年・FC PROUD)もPKの前には声を掛けてくれたので、平常心を保ってPK戦に臨むことができました」という関根のストップで、点差は2点に開きます。
高輪台3人目の宮原は左上の難しいコースへ確実にねじ込み、外せば終わりの実践3人目を任された石井は、GKの逆を突いて見事に成功。高輪台4人目は武市。決めれば勝利という状況で左を狙ったキックは枠を外れてしまい、実践サイドは一瞬喜んだものの、主審はGKが早く動いたという判断で蹴り直しを指示。武市にすぐさま挽回の機会がやってきます。「外した後もみんなが笑顔にしてくれたので『コイツらのためにも決めたら勝てる』というのがあった。2本目は気持ちの整理が付きました」というキャプテンが1本目とは逆の右スミを狙うと、揺れたゴールネット。狂喜の黄黒。呆然の青。「インターハイの時はPK戦で負けてしまったんですけど、そこから4,5か月でこのチームは強くなったと思いますし、メンタルの部分が強くなったと思うので、その成長がこの試合に出たと思います」と武市も話した高輪台が、激闘を制してベスト8へと駒を進める結果となりました。


歴史に残るような好勝負だったと思います。特に延長は野村の凄まじいゴラッソでの勝ち越し弾に、2人少ない実践の執念という言葉さえも超越したような魂の同点弾と、今でも鮮明にその光景が甦ってくるようなシーンの連続。観戦していた方の心にも、この100分間とPK戦は深く刻まれたのではないでしょうか。印象的だったのは実践の守護神として奮闘した永見。試合後に泣き崩れてなかなか整列に並べないチームメイトに対して、「俺たちがやってきたのはこういう所だろ。3年間こういう所をやってきたんだからしっかり最後までやろうぜ」と泣きながら叱咤。まさに『心で勝負』を掲げているチームの真髄を体現するような彼の振る舞いには、改めて色々なことを感じさせてもらいました。
これで2年ぶりのベスト8進出となった高輪台。「積み重ねてきたことがちゃんと積み重なって表現できていると思います」と今年のチームを評した川島監督は、続けて「ただ、甘いんですよね。まだまだ経験がないし全国の強豪という訳ではないから、ああいう失点とか2-1で終わらない所とか、やっぱり甘いです。でも、彼らも色々なことをたぶん肌で感じたと思うので、こういう中で進みながら1つ1つ乗り越えながら行きたいですね」とも。次の成立学園戦に向けて、「元々僕らは西が丘を目指して去年からやっていたんですけど、『西が丘に行くのが当たり前』を合言葉にこの夏はみんなでやってきた。本当にこの夏はみんな頑張ってくれたと思いますし、勝つことが色々な人への恩返しだと自分は思っているので、ここからの1ヶ月は自分の持っている力を全部出して、次の試合も絶対に勝ちたいと思います」ときっぱり言い切ったのは武市。次の戦いまではあと1ヶ月。この試合を見ている限り、高輪台にまだまだ十分なのびしろが残されているのは間違いありません。      土屋

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