mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2015/09

S M T W T F S
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年09月21日

高校選手権東京A2回戦 都立小松川×東京実業@駒沢第2

mas o menos
  • Line

0920koma2-2.jpg今シーズンの東京を賑わせている"江戸川のサンパウロ"とT2首位の実力者が激突する好カード。都立小松川と東京実業の80分間は駒沢第2球技場です。
インターハイ予選で強豪の東海大菅生と激闘を演じ、最後は2点リードを引っ繰り返されて逆転負けを喫したものの、その技術を生かしたスタイルも含めて、大きなインパクトを見る者に与えた都立小松川。地区トップリーグの優勝を手土産に臨んだ今大会も、1次予選は明学東村山に4-2、大東学園に8-1、日工大付属駒場に5-0と持ち前の攻撃力を遺憾なく発揮して勝ち上がると、東京学芸大附属とぶつかった先週の都大会初戦も6-2と殴り合ってこのステージまで。例年ならインターハイでの引退が通例だった3年生も多数残り、西が丘の舞台を真剣に目指します。
T2ではFC東京U-18(B)、FCトリプレッタユース、東海大高輪台など難敵ひしめくリーグ戦で現在堂々の首位。インターハイ予選でも1次予選で駿台学園、実践学園とT1勢を相次いで撃破し、最後は都立東久留米総合に0-1で惜敗しましたが、都内でも注目校の1つとなっている東京実業。2年前にも西が丘まで勝ち上がる好チームを創った片山智裕監督も、「気持ちは2年前の方が強かったですけど、コイツらは結果が出ていることもあってチームとして自信があると思います」とキッパリ。西が丘のその先を視界に捉えつつ、まずはこの初戦に挑みます。14時の駒沢第2は強烈な西日が差し込む真夏並みのコンディション。ベスト8を懸けた一戦は東実のキックオフで幕が上がりました。


立ち上がりから押し気味にゲームを進めた東実がスタンドをどよめかせたのは16分。中央、ゴールまで30m強の位置で獲得したFK。スポットに立った栗田マーク(3年・東京ベイFC U-15)が短く出すと、キャプテンマークを巻いたCBの境亘平(3年・大田雪谷中)は右足を強振。尾を引くような軌道はクロスバーに激しくぶつかりますが、その強烈な一撃にスタジアムの雰囲気も改めて引き締まります。
さらに、21分には東実に決定的なチャンス。朝日凱大(2年・LARGO.FC)のパスを受けた荻原陸(2年・LARGO.FC)は左へ丁寧なスルーパス。開いていた黒川洸揮(3年・川崎玉川中)はGKとの1対1をクロスバーの上に外してしまったものの、「ああいう感じでパパンと入って、パス交換してというのが普段のゴールの形」と片山監督。東実が魅せる自らのスタイル。
一方の小松川は田代明彦監督が「想像通り押される時間が長いなと思った」と振り返った通り、大半の選手が初めての都大会ということもあって、序盤から堅さが目立つ中でも22分にはチャンスを。澤頭良介(3年・ジェファFC)が左へ付けると、工藤翔太(3年・フレンドリー)は得意の左足でシュート。やや当たりが弱く、東実のGK増田大輝(2年・フレンドリー)にキャッチされましたが、1つ創ったフィニッシュの形。
27分は東実。相手の中途半端なパスをカットした右SBの松浦琢人(3年・大森FC)がそのまま縦に付け、受けた朝日のシュートはゴール右へ。31分も東実。栗田、朝日、黒川とスムーズにボールが回り、こぼれを叩いた安藤雄祐(3年・フレンドリー)のシュートは枠の右へ。変わらず東実が押し込む中で、突如として小松川に訪れた千載一遇の先制機は32分。工藤が左からアーリークロスをグラウンダーで入れると、ファーに潜っていた加藤諒太(2年・両国FC)は正確な折り返しを中央へ。フリーで走り込んでいた斉藤速太(2年・三菱養和巣鴨JY)の目の前にはゴールとGKしかいませんでしたが、シュートはヒットせず。ビッグチャンスをモノにできません。
それでも、ようやく「チャンスはない訳ではないと言っていた」という田代監督の言葉通り、徐々にペースを押し戻した小松川のチャンスは32分。中嶋祐太(3年・江戸川松江第六中)のFKに工藤が競り勝ち、澤頭が繋ぐと南匠汰(2年・ブリエッタFC)のミドルは増田がキャッチ。34分は東実。「6番は効いていましたね」と敵将も名指しで称賛したアンカーの森良太(2年・FCグロリア)は素早い切り替えでボールを奪い返し、黒川のミドルは小松川のGK林佑亮(2年・FC ESFORCO)がキャッチ。35分も東実。中央をドリブルで運んだ荻原のシュートは枠の右へ。37分は小松川。澤頭を起点に中島が左へ展開し、工藤が思い切って狙ったミドルは増田がキャッチ。ここに来て出し合う手数。
38分は東実にチャンス。右サイドをえぐり切った黒川がクロスを入れるも、小松川のCB山口大貴(3年・FC ESFORCO)が何とかカットして菅谷光(3年・江戸川松江第三中)が大きくクリア。40+1分も東実。最後尾から上がってきた境が右へスルーパスを通し、走った松浦が切り返して枠へ収めたシュートは林がしっかりキャッチ。「ピンチを迎えましたけど運よく0-0で折り返せたので、プランとしてはそんなに悪くなかった。前半は良い形でウチのペースだったと思います」と田代監督が話したように、小松川が山口と大橋拓登(2年・両国FC)のCBコンビを中心に凌ぎ切り、最初の40分間はスコアレスでハーフタイムに入りました。


後半はスタートから東実がラッシュ。42分、牧山龍太(3年・川崎西高津中)のとのパス交換から、黒川が放ったミドルは林がキャッチ。43分、右に流れた栗田がそのまま狙ったシュートはクロスバーの上へ。44分は決定的なシーン。右サイドで1人かわした荻原が中へ折り返すと、フリーの黒川は至近距離から右足を振り抜くもヒットせず、林がすぐさまキャッチ。「もうちょっとイケイケでやれるかなと思ったんですけど」とは片山監督。突き破れない小松川ゴール。
45分には「11番は1人できちゃうから厄介でしたね」と片山監督も認めた工藤が左サイドで収め、エリア外から放ったミドルは枠の右へ。46分も小松川。工藤が右へサイドを変え、澤頭が競ったこぼれを加藤がミドルレンジから狙い、ボールは枠の右へ逸れたものの、"江戸川のサンパウロ"に芽生え始める手応えとやれる感覚。
47分は東実の決定機。森のパスから朝日が右へ流れながら枠へ飛ばしたシュートは、ここも林がファインセーブで仁王立ち。50分は小松川。加藤、斉藤速太、澤頭と細かいパスで崩して、斉藤速太がエリア外から打ったシュートは、増田にキャッチされましたが特徴の一端を。直後の50分は東実。黒川の右クロスを栗田が豪快に叩いたボレーは、クロスバーにハードヒット。にわかに騒がしくなった両ゴール前。
仕留めたのはT2得点ランクトップのストライカー。51分に松浦が右のハイサイドへボールを落とすと、走った黒川はピンポイントクロスを中央へ。トラップした栗田は冷静に滑るマーカーを外して、丁寧にボールをゴールネットへ送り届けます。「結構チャンスはあったんだから、その前に決めないとダメでしょ」と片山監督は期待を厳しい言葉に込めましたが、ようやく飛び出した先制ゴール。東実が先にスコアを動かしました。
マーク再び。54分は東実に追加点機。ここも松浦が右のハイサイドへフィードを送り、黒川は単独で持ち上がる過程できっちり中央を確認してグラウンダーのラストパス。走った栗田は完璧なお膳立てに難なくプッシュ。ゴールネットは静かに揺らされます。栗田はこれでドッピエッタ。あっという間に点差は2点に広がりました。
「2点とも同じような形の失点。でも、あれは前半からやられていましたし、人に付いていたので振られて中の選手を見切れなくて、それが失点に結び付いたと思います」と田代監督も認める連続失点を喫した小松川は63分に1人目の交替を。南を下げて加藤裕貴(2年・ブリエッタFC)を送り込み、中盤の強度アップに着手すると、64分にはいきなりチャンス。加藤のパスを受けた右SBの山田泰亮(2年・江東東陽中)はDFラインの裏へ。走った斉藤速太は左へ持ち出しながらシュートまでは至りませんでしたが、悪くないアタックを。66分にも右サイド、ゴールまで約30mの位置から工藤が直接狙ったFKは増田がキャッチ。67分は小松川の真骨頂。加藤裕貴が送ったパスを、澤頭はヒールで残し、斉藤速太は2人に挟まれてシュートまで持ち込めなかったものの、「ウチらしさが少し出て仕掛けられたので、その時間が続けば1点入るかなという所」(田代監督)まで小松川も反攻します。
それでも、東実が中央に築いた壁は非常に強固。キャプテンの境はもちろんですが、「技術はそこまでないですけど、何でも一番で帰ってくる選手。破られそうでも最後に体を張るというのが多いし、T2も彼のおかげで守備ができているのかなと思う」と指揮官も評価したCBの伊ノ木滉平(3年・川崎臨港中)もことごとく相手の攻撃を潰し続け、決定的なチャンスを創らせません。
68分は東実。栗田がヒールで繋いだボールを、途中出場の佐原優浩(3年・川崎生田中)が狙ったシュートは枠の左へ。71分には2枚目の交替として黒川とジョーカーの寺山晋太郎(3年・すみだSC)を入れ替えると、72分も東実はセットプレーから好機。牧山のFKに寺山が合わせたヘディングは林にキャッチされたものの、打ち出す「交替選手も含めてまだこっちはどんどん行きますよという感じ」(片山監督)。
意地の小松川。76分は斉藤速太がドリブルでもぎ取ったFK。右から工藤が蹴り込んだFKは荻原のクリアに遭いましたが、79分にはこの日一番の決定機。工藤が粘って粘って左へ繋ぐと、中嶋が力強く打ったシュートは枠を捉えるも、ボールはクロスバーを直撃。詰めた澤頭のシュートもDFに当たってクロスバーの上へ。どうしても1点が奪えません。
80+2分に東京実業は殊勲の栗田と赤松尚斗(3年・プロメテウス)を、小松川は奮闘した工藤と中久保雅貴(3年・SK-ONZE-FC)をそれぞれスイッチすると、それから程なくして駒沢の青空に吸い込まれたファイナルホイッスル。「ここまで厳しくなるとは正直思わなかったですね」と片山監督も言及した小松川の奮戦及ばず。東京実業がチームの完成度を見せ付ける格好で、2年ぶりのベスト8へと勝ち上がる結果となりました。


開口一番、「外し過ぎかなという感じですね。なんかフワフワしていて、気合いが入り過ぎちゃって、何でもないシュートを外してしまったりとか。でも、それも踏まえて選手権ですからね」と話した片山監督。とはいえ、こういうゲームをしっかり勝ち切るあたりに今シーズンの東実の充実ぶりが窺えます。「別にゲーム前にあまり何も言っていないですしね。相手の情報だけは渡しましたけど、勝手にミーティングを始めてましたし」と指揮官も口にしたように、ピッチ内外で自主性を持って行動できるのがこのチームの強みとのこと。とりわけ今の3年生は、1年生時に西が丘で躍動する先輩の姿を見ているだけに目標も明確。東実の東京予選を掻き回す準備は整っています。
「全然できない訳ではなかったので、もう少し怖がらないでやっても良かったかなと、振り返って思う所もあります」と田代監督もゲームを振り返った小松川。ただ、東実という高い壁を乗り越えることはできませんでしたが、ゲームに出た5人を含めて11人の3年生が残って挑んだ選手権は、チームの新たな歴史の第一歩。指揮官も「強豪相手にウチの形を変えないでしっかりできたということは財産になると思いますし、3年生の高校サッカーは終わりますけど、1年2年が引き継いでやってくれると思うので、勝てなかったですけど収穫のあるゲームだったと思います」と言い切っていました。「地区トップも優勝できて、選手権もここまで来れて、インターハイもベスト16まで行けて、この1年間は教員生活の中でも本当に1,2を争うような良いシーズンでした」と感慨深げに語ってくれた田代監督に選手権まで頑張った3年生へのメッセージを尋ねると、「これで勉強と両立してサッカーはやり切ったので、彼らには大きな柱ができたと思います。この自信の柱が大学に行っても、社会に行っても必ず良い柱になって良い家が建つと思うので、『本当に良く頑張ったぞ、男らしかったぞ』と誉めてあげたいです」と最後は笑顔。試合直後は泣いていた選手たちも、保護者が取り囲む中での記念撮影ではムードメーカーの工藤を中心にすっかり元気を取り戻した様子。これから受験勉強に本腰を入れるであろう"江戸川のサンパウロ"の3年生たちの今後へ、最大限のエールを送りたいと思います。       土屋

  • Line