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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年08月07日

インターハイ準々決勝 広島皆実×関東第一@三木陸上

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0807miki2.jpg夏も冬も一度ずつ全国制覇を経験している緑黒と初めての全国8強に挑む首都の新・カナリア軍団の邂逅。広島皆実と関東第一の対戦は三木総合防災公園陸上競技場です。
2年連続で激戦の広島を制し、夏の全国へと駒を進めてきた広島皆実。2回戦からの登場となった今大会は、初戦で徳島市立に2点差を追い付かれながらも、最後はPK戦をモノにしてしぶとく勝ち上がると、3回戦では旭川実業を途中出場となった片岡永典(2年・シーガル広島JY)の決勝弾で1-0と振り切って、やはり2年連続となるベスト8まで。昨年は青森山田に負けたこのステージへ、優勝した16年前以来となるベスト4進出を懸けて臨みます。
8年ぶりにライバルひしめく東京を抜け出し、全国の舞台へと乗り込んできた関東第一。初戦で激突した羽黒を3-1で一蹴すると、2回戦も夏4度の全国優勝を誇る名門・清水桜が丘を岡崎仁太朗(3年・杉並ソシオ)のドッピエッタで3-2と下して、同校初の全国2勝を記録。さらに、3回戦では年代別代表選手を2人抱える大津に対して、キャプテンの鈴木隼平(3年・Forza'02)が驚異のハットトリックを達成するなど、4-1と快勝して全国8強へ。「台風の目になりたいですね」と2回戦後に笑ったのは守護神の円谷亮介(3年・FC東京U-15深川)。"台風の目"を超えた存在へ辿り着くべく、クォーターファイナルに挑みます。1日の休息日を経たとはいえ、この日も気温は34.0度。真夏の8強決戦は関一のキックオフでスタートしました。


立ち上がりから鮮明になったのは、きっちりボールを回していく関一と、きっちりブロックを敷いて守る広島皆実という構図。「あそこまでベタ引きされるのは東京でもなかなか少なかった」と関一の左SHに入った高橋快斗(3年・PBJ千葉)も話したように、広島皆実は最前線に藤井敦仁(2年・FCバイエルン ツネイシ)を残して、5バックと中盤4人の9枚で自陣のスペースを埋める戦い方を選択。関一がボールを動かす中で、6分には広島皆実も前谷慧(3年・FCバイエルン ツネイシ)の仕掛けから、伊佐将吾(3年・FCバイエルン ツネイシ)が繋いで、有國修平(3年・サンフレッチェ広島JY)が枠内ヘッド。ここは関一のGK円谷がキャッチしましたが、一瞬の隙を突く狡猾さを披露すると、先にスコアを動かしたのも広島皆実。
7分に岡崎仁太朗(3年・杉並ソシオ)のミドルが枠を越えた関一は、13分に冨山大輔(2年・FC習志野)が蹴り込んだ左CKがDFのクリアに遭うと、こぼれを拾った前谷はすかさず縦へ。右サイドでボールを収めた有國は一気に加速しながらマーカーを振り切って、そのままフィニッシュ。飛び出したGKの右脇をすり抜けたボールは、ゴールネットへ飛び込みます。まさに狙い通りのカウンターが綺麗に炸裂。広島皆実が1点のアドバンテージを手にしました。
さて、ボールを圧倒的に支配しながらワンチャンスで失点を喫した関東第一でしたが、「点数が取れなくても慌てないでやろうと言っていたし、先制点は取られたけど、決定機はいっぱいあると思っていた」と鈴木隼平が話した通り、焦れずにそれまで通りのパスワークで左右に動かし続けるスタイルを継続。そんな中、「どうせ外側で張っていてもマークもされるので、わざと4-4-2のボックスみたいな感じにして」(小野監督)、岡崎と高橋の位置を入れ替えると、少しずつ「仁太朗が落ちるよりは自分が落ちた方がゲームが創れる」と話す高橋がボールを引き出しながらリズムチェンジを敢行。手数は出ない中でも前向きにボールを持つ機会がチーム全体で増えていきます。
すると、小野監督も「思わずちょっと前に出てしまいました」と苦笑いしたのは26分。左SBの大里将也(3年・レッドスターJY)が付けたボールを野村は縦方向へグサリ。鈴木隼平が粘ったこぼれを冨山は「リードされていたので打っていこうと思って」ミドルレンジからダイレクトで狙うと、DFに当たって少し方向の変わったボールへ広島皆実のGK對川敦紀(2年・サンフレッチェ広島JY)も懸命に反応しましたが、シュートの勢いが勝ったボールはゴールネットへゆっくりと転がり込みます。「この大会はずっと調子が良かったけど、みんな点を取っている中で取れていなかったので、アイツには『なかなか時間が掛かるね』と言っていたんですけどね」と小野監督も笑った冨山のゴールは、本人も「取りたかった」今大会初ゴール。10番の同点弾が飛び出し、スコアは振り出しに引き戻されました。
畳み掛けたい関一。34分、今大会は献身性の目立つ道願翼(3年・VIVAIO船橋)が右へ振り分け、「こっちから攻めていたので今日は行ってやろうと思っていました」という二瓶亮(3年・江戸川葛西第三中)が縦に持ち出してクロスを上げると、冨山の完璧なヘディングは對川に弾き出されるも、絶好の逆転機を創出。35+2分にもCBの中村翼(3年・大豆戸FC)が右へ鋭いパスを送り、二瓶が上げたクロスのこぼれを道願が叩いたミドルは對川がキャッチ。お互いにある程度の狙いを体現した35分間は、タイスコアでハーフタイムに入りました。


「前半でどういう位置に人を置けばいいのかというのはわかった」小野監督のメッセージを受け取った関一は、後半スタートからギアアップ。38分に高橋の左クロスへ鈴木隼平が合わせたヘディングはクロスバーを越えましたが、イメージのシンクロが結実したのは5分後の43分。野村と冨山のパス交換から右サイドへ展開されたボールを、「声が聞こえたのでそこを狙って蹴りました」という二瓶はグラウンダーでマイナス気味に中へ。声を出した野村が「ふかさないようにだけ気を付けて」右足を振り抜くと、ボールはゴール左スミへゆっくりと吸い込まれます。「自分は元々守備的な感じだった」という野村が今大会の好調を攻撃面でもきっちり成果に。関一が逆転に成功しました。
粘り強く守っていたものの、とうとう2点目を奪われた広島皆実は44分に1人目の交替を。1トップで奮闘した藤井敦仁を下げて、安原修平(2年・シーガル広島JY)を送り込むと、49分にはその安原がエリア内まで持ち込むも、最後は中村がきっちりスイープ。続けて50分には2人目の交替として門廣大雅(2年・シーガル広島JY)と小林拓真(2年・サンフレッチェ広島JY)をスイッチして、サイドの推進力向上に着手しましたが、逆に54分は関一に決定機。野村が左へ展開したボールを岡崎がクロスに変え、鈴木隼平が粘って残したボールを高橋は枠内へ。對川のファインセーブで3点目は免れたものの、変わらない攻守の構図。
これが伝統の力か。55分の歓喜は劣勢の緑黒。對川を始点に前谷が右へ送ると、サイドを粘り強く切り裂いた安原は丁寧に中央へ。混戦の外側でボールを待っていた藤井陸(3年・サンフレッチェ広島JY)がトラップから素早く右足で蹴り込んだボールは、左スミのゴールネットへ到達します。2度のカウンターによる決定機を、2度とも決め切る驚異の決定力。両者の点差は霧散しました。
嫌な空気を振り払ったのは、前日に体調不良を訴えながらも今日になって試合出場を志願し、「彼がキャプテンなので彼の意思を尊重したいなと」指揮官に送り出された9番。57分、道願が右へ送ったボールを「元々サイドプレーヤーじゃなかったので、サイドで必要なものを1個ずつできるようにしていった」高橋がピンポイントで中へ。「良いボールが上がってきたので体がまた反応した感じ」という鈴木隼平のダイビングヘッドは、ゴール左スミに突き刺さります。大津戦でも2本沈めていたダイビングヘッドでの一撃に「ちょっとキテますね」と笑った鈴木隼平の貴重な勝ち越し弾。関一が再び1点のリードを奪うと、次の歓喜はそのわずか3分後。
60分に中央でボールを持った高橋は「付けて裏にタイミング良く出すのが自分の持ち味」と岡崎に付けて裏へゴー。岡崎のリターンを受けると、「ちょっと相手が後ろから来ていて押されていたので、コース的にGKの股しかないなと思って、思い切りよく蹴れました」というシュートは想定通りにGKの股下を破り、ゴールネットを確実に揺らします。「こみ上げるものがありました。『やっと』って感じです」とゴールの瞬間を振り返った高橋は、これが今大会初ゴール。点差は2点に広がりました。
一気に突き放されてしまった広島皆実。4失点目の直後には有國と片岡、64分には前谷と藤原悠太(1年・サンフレッチェ広島JY)を相次いでピッチヘ解き放ちましたが、連続失点のショックやボールを回され続けた疲労の影響もあってか、アタックに迫力を打ち出せません。対する関東第一は70分から新翼(3年・Forza'02)、石島春輔(3年・JSC CHIBA)、唐木澤友輝(3年・ザスパ草津U-15)、大須賀琢真(3年・FC東京U-15深川)と4人を小刻みに交替出場させる万全のゲームクローズで時間を潰し切ると、聞こえたファイナルホイッスルはネクストステージへの祝笛。「僕も今日は一番興奮しちゃいました」と小野監督も笑った関東第一がベスト4へと勝ち上がる結果となりました。


関東第一の快進撃が止まりません。2回戦以降は清水桜が丘、大津、広島皆実とファイナル経験校を相次いで撃破。「正直ここまで来るとは思っていませんでした」(二瓶)「正直最初に出る時にはここまで予想していなかったです」(高橋)と"正直"な感想を口にした2人も、「メチャクチャ燃えてますね。イチフナには絶対に負けたくないです」(二瓶)「1つ1つ勝っていくのを意識してやっていて自然とベスト4まで来れたので、このまま1個ずつ勝ち続けたいと思います」と今ではさらなる躍進への意欲を隠しません。試合後には広島皆実のキャプテンを務める林耕平(3年・シーガル広島JY)と3バックの左を担っていた坂下剛基(3年・シーガル広島JY)が関東第一のロッカールームを訪ね、自らの校名が入った千羽鶴を託す一幕も。「皆実の2人には『自分たちのためにも頑張ってくれ』と言われました。向こうの気持ちを預かっているので、そういうみんなのためにもしっかり準決勝は戦いたいなと思っています」と話したのは、その千羽鶴を握りしめてロッカーから出てきた鈴木隼平。「今まで苦しんできた先輩の想いだとか、そういうものをこの舞台で結果という形で出せたというのが凄く良かったなと思います」と少し感極まった小野監督も、「僕が一番楽しみにしているかもしれないです」とセミファイナルに向けて最後は笑顔も。市立船橋と激突する明日の関東対決を含め、全国の頂点まではあとわずかに2つの勝利のみです。      土屋


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(写真提供:石倉利英)

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