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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
8月15日から17日までの3日間、御殿場は時之栖と裾野グラウンドにて今回で11回目を数える『COPA SEIRITZ』が開催されました。この『COPA SEIRITZ』という大会は東京の成立学園高校が主催する、高校年代のいわゆる"Bチーム"の強化を目的に行われるコンペティションで、日本中から高校のサッカー部やクラブユースなどの"Bチーム"が集結し、公式戦さながらのシビアなガチバトルを繰り広げるという、非常に意義深い大会なんです!
今大会は全部で16チームが参加し、4チームを4グループに分けて予選リーグを開催。そこから各グループの順位に応じて、順位決定リーグが行われるというシステム。30分ハーフとはいえ、1日2試合を3日間連続というかなりハードな日程の中、優勝を目指して熱い戦いが連日繰り広げられました。
各グループを首位で通過し、1位~4位決定リーグへと進出してきたのは山梨の山梨学院大附属、島根の立正大淞南、青森の青森山田、群馬の前橋育英の4校。いずれも全国制覇を明確に掲げる強豪ばかりです。ちなみに、最終戦を前にしたリーグテーブルは以下の通り。
究極の"4すくみ"。各チーム2試合を消化して、綺麗に全チームが1勝1敗。得失点差で並んだ山梨学院大附属と前橋育英は、総得点で前者が首位、後者が2位。さらに得失点差で立正大淞南が3位、青森山田が4位で続きます。
全チームが優勝の可能性を残して臨んだ最終戦。バケツの水を引っ繰り返したような豪雨の下で行われた山梨学院大附属と立正大淞南の激闘は、青森山田の某コーチが引き分けを願って本部テントの中から叫び続けた甲斐なく、後半に決勝点を挙げた山梨学院大附属が2-1で勝利。これで前橋育英は当該成績の関係で勝ちさえすれば、一方の青森山田は5点差で勝てば、それぞれ優勝というシチュエーションに。もはやバケツどころか、ビニールプールを引っ繰り返したような豪雨が叩き付ける中、カップの行方を決める一戦は12時半にキックオフされました。
水たまりというレベルではなく、水が浮きまくっているピッチコンディションの中、ファーストシュートを放ったのは育英。2分、1トップの秋元章吾(3年)が粘って残すと、橋本駿建(3年・FC杉野)のシュートは青森山田のGK照井竜馬(3年・MIRUMAE FC U-15)がキャッチしましたが、3分にも宮本翔平(3年・レッドスターJY)とのパス交換から高沢颯(2年)が右のハイサイドにボールを落とし、高橋英暉(3年・FC東京U-15むさし)が枠内へ収めたシュートも照井がキャッチしたものの、まずは「『しっかりと球際に行って、青森山田さんに勝てないと全国に行けないよ』という話をしていた」と北村仁コーチも話した育英が続けてフィニッシュを取り切ります。
一方、青森山田は9分に右からCBの小山新(2年・青森山田中)がFKを蹴り込むも、ここは育英のGK平田陸(3年・ジュビロSS磐田)にキャッチされると、14分には逆に育英の秋元に枠の左へ外れるループミドルを打たれましたが、15分には素晴らしい形から決定機を。左SBに入った中山純希(2年・青森山田中)のパスから金森義虎(2年・鹿島アントラーズJY)が右へ振り分けたボールを、永島卓徒(2年・前橋JY)はピンポイントクロス。ジャストミートした黒田凱(2年・青森山田中)の左足ボレーはわずかに枠の左へ外れたものの、悪天候を十分考慮した浮き球でのチャンス創出。見せ付けた順応力の高さ。
16分は育英。「ちゃんとしたピッチだと色々な部分が出てくると思うんですけど、今日なんかは相手に勝つということを考えた時に、どうしてもぶつかった方が何か起きるぞということで、それも1つのサッカーの手段じゃないですか
」と語った北村コーチの「ぶつかれ!ぶつかれば何か起きるぞ!」という掛け声の下、高橋が蹴ったFKへ選手が殺到し、ゴール前の混戦から中嶋修造(3年・横浜F・マリノスJY)が蹴り込んだシュートは、照井が何とかキャッチ。スコアは動きません。
先制点は唐突に。お互いにピッチコンディションとそれを考慮した戦い方へ完全にアジャストした21分、中央で三国スティビアエブス(2年・青森山田中)が競ったボールは永島の目の前へ。思い切って右足で振り抜いたシュートは右スミを襲い、懸命に飛び付いた平田も弾き切れずにボールはゴールネットへ飛び込みます。「元気を出してやらないとサッカーも面白くないと思うので、そこは普段から言っています」と千葉貴仁コーチも笑った青森山田は、ベンチメンバーも含めて全員が大喜び。前橋出身の永島が地元の高校へ手痛い一撃。前半の30分間は青森山田が1点のリードを手にして、ハーフタイムへ入りました。
後半はスタートから育英が4枚替え。CBで奮闘した大川夏輝(3年・足利ユナイテッドFC)、橋本、高沢、秋元に替えて、赤尾賢也(3年・大宮アルディージャJY)、永井聖哉、須藤祐(3年・FC厚木JY DREAMS)、大井川大和(3年・クラブレジェンド熊谷)を送り込み、優勝に必要な2点を奪いに掛かると、いきなりの同点機は32分。赤尾のパスを起点に大井川が左へ流し、高橋のシュートは右のポストへ激しくヒット。こぼれは照井が懸命に抑えましたが、あわやというシーンを創出。35分には永井が照井にキャッチを強いるミドルを打ち込み、36分にボランチの大場飛明(3年・川崎フロンターレU-15)が入れたFKは中央でオフェンスファウルを取られるも、タイガー軍団が滲ませる勝利への欲求。
青森山田も38分と39分には相次いで小山がFKをゴール前へ蹴り入れるも、前者はオフェンスファウルを取られて、後者はそのままゴールキックへ。42分には千葉コーチも金森と佐々木快(2年・リベロ津軽SC U-15)を入れ替えると、43分には濱谷幹太(3年・青森山田中)の右FKに、藤村鉱希(3年・MIRUMAE FC U-15)が合わせたヘディングは枠の右へ。突き放したい青森山田。追い付きたい育英。
44分は育英。ピッチ左寄り、ゴールまで約25mの距離でSBの渋谷由馬(3年・大宮アルディージャJY)が絡んで獲得したFK。大場が蹴ったキックはゴール右へ。45分も育英。右サイドで須藤が粘って上げたクロスは、中央で青森山田の右SBを務める元気印の新井健太郎(2年・前橋FC)がきっちりクリア。46分に北村コーチは5人目の交替として松本啓吾(3年)をピッチヘ送り出すと、46分にはSB中村響(3年・横浜F・マリノスJY)の攻撃参加で奪った右CKのスポットに2人が立ち、赤尾が掬い上げたボールを大場がボレークロスで中央へ放り込むも、ラインを割ってしまいゴールキックへ。なかなか1点を奪うことができません。
ラスト10分は「オマエら、5点必要なんだぞ」と正木昌宣コーチに気合を入れられた青森山田のラッシュ。50分に濱谷が左へ展開し、黒田のゴール方向へ飛んだクロスはクロスバーへヒット。51分に2枚目の交替カードとして住川鳳章(2年・FCバイエルン ツネイシ)をピッチヘ解き放つと、52分には三国が左から枠内へ好シュートを打ち込むも、平田がファインセーブで仁王立ち。育英も何とか残す大会制覇への可能性。
魅せたのは途中出場の81番。56分、ここも三国が粘り腰でボールを繋ぐと、佐々木のシュートは平田もよく弾き出しましたが、こぼれにいち早く反応した住川のヘディングはフワリとした軌道を描きながら、カバーに入ったDFの頭上を越えてゴールへ吸い込まれます。もはやピッチに入って喜んでいる選手もいた青森山田のベンチサイド。「ピッチ上が悪いことで体の弱さだったり、球際の弱さだったりが物凄く出たかなと思います」とは北村コーチ。点差が広がりました。
最終盤も青森山田。59分に小山のFKから、ルーズボールを拾ったボランチの葛西拓実(3年・坂戸ディプロマッツ)がシュートを放つも枠の左へ。60分にも小山の鋭いFKは、平田が何とか掻き出してクロスバーの上へ。60+1分のラストチャンス。葛西が浮かせてラインの裏へ落としたパスに、濱谷がうまく抜け出してヘディングでゴールネットを揺らしたものの、副審がフラッグを上げていたため、オフサイドで幻のゴールになってしまうと、直後に訪れたタイムアップの瞬間。「雨だったので普通に蹴って走ってセカンドボールを拾ってという形だったので、本当に難しかったですけど頑張ってやってくれたと思います」と千葉コーチも選手を称えた青森山田がこのゲームを制しましたが、得失点差で惜しくも準優勝に。既に豪雨もあって会場を後にしていた山梨学院大附属が、カップを"郵送"で手に入れる結果となりました。
最終日は靴が完全に水没するぐらい、ピッチサイドも水が溜まる程の凄まじい豪雨の中で試合が行われましたが、改めてこの『COPA SEIRITZ』は非常に意義のある大会だなあと再確認することができたと思います。「Bチームでこういう優勝の懸かったゲームを、しかも全国の強豪とやれて、毎回選手もレベルアップさせてもらっているので、この中から本当に1人でも2人でも選手権のメンバーに入ってくれればいいと思います」と千葉コーチが話せば、「今日の1日は本当に僕にとっても彼らにとっても勉強させられたというか、『もっと鍛えなくてはいけないな』というのがありましたし、この子たちは違う遠征にも1週間くらいずっと出ていて今日で最後なんですけど、やっぱり勝つ試合が多かった中で、ここで最後の日に何もできないという形で終わったので非常に良かったかなと思います」と話してくれた北村コーチも、「この大会は物凄く良い大会で、彼らにとってはこの最後の秋で選手権のメンバーに入るか入らないかという瀬戸際の所で、真剣勝負ができるという所は非常にありがたいと思っています。フェスティバルでこれだけ熱くなれる試合というのはなかなか僕にとっても勉強になりますし、選手たちにとっても公式戦のような試合ができることで、非常に良い経験ができていると思うので、また来年も是非来たいと、森岡さんが呼んでくれればやっていきたいかなと思います」と最後は笑顔。大会を主催した成立学園の森岡幸太コーチも充実感を漂わせながら、大団円を迎えた『COPA SEIRITZ』。この大会に参加した選手の中から1人でも多くの選手が、"Aチーム"へと巣立って行けるように願っています。 土屋
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