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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ファイナルへと進出する2枚目の切符を懸けた大一番。ジェフユナイテッド千葉U-18と大宮アルディージャユースの激突は引き続きニッパツ三ツ沢球技場です。
新指揮官にトップチームを率いた経験を有する江尻篤彦監督を招聘し、新たなチャレンジのシーズンを迎えたジェフユナイテッド千葉U-18。今大会はグループステージでアビスパ福岡U-18、京都サンガU-18と西の強豪を相次いで倒したものの、ベガルタ仙台ユースに競り負けて敗退濃厚となった中、他会場の動向によって奇跡的な決勝ラウンド進出を果たすと、優勝候補の呼び声も高かった鹿島アントラーズユース、ちばダービーとなった柏レイソルU-18を撃破して、8年ぶりにセミファイナルまで。就任から指揮官が求めてきた「理屈じゃない戦いの場」へ身を投じる覚悟は整っています。
今シーズンから念願の高円宮杯プレミアEASTへ参入を果たし、日常から厳しい相手との実戦経験を繰り返し、今大会は優勝候補の一角と評されている大宮アルディージャユース。厳しい組み分けとなったグループステージもセレッソ大阪U-18、ジュビロ磐田U-18と難敵相手に2連勝で早々に突破を決めると、ラウンド16では川崎フロンターレU-18を4-1、準々決勝ではコンサドーレ札幌U-18を4-0と共に粉砕して、実に10年ぶりとなるベスト4へ。クラブ史上初のファイナル、そしてその先へと続く重要な90分間に挑みます。18時キックオフということもあって、薄暮の三ツ沢は29.6度と若干ではあるものの過ごしやすい気候に。注目のセミファイナルは大宮のキックオフで幕が上がりました。
立ち上がりから明確になったのは、ボールを回す大宮とボールを追う千葉。大宮がアンカーの山田陸(2年・大宮アルディージャJY)や黒川淳史(3年・大宮アルディージャJY)、長谷川元希(2年・大宮アルディージャJY)の中盤センター3枚を中心にボールを左右へ動かし、テンポアップのポイントを探れば、千葉も「もうちょい出てくるかなと思ったんですけど、最初の10分、15分くらいは来た」と大宮の伊藤彰監督も話したように、最前線の伊藤大将(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)をスイッチに、前からのプレスを敢行。4分に黒川がクロスバーを越えるこのゲームのファーストシュートを放つも、以降は大宮がじっくりと動かし、千葉がじっくりと待ち構える展開が続きます。
14分には千葉にもチャンス到来。右サイドで大塚一輝(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が縦に付け、中村駿太郎(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がマイナスに折り返したボールはDFにクリアされるも、サイドを崩す形を1つ創出すると、20分にも氣田亮真(3年・カナリーニョFC)が左へ流したボールを、横山玄徳(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)は思い切ってミドル。ボールは伊藤に当たって枠の左へ外れたものの、戦列復帰した岡野洵(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)と柳田健太郎(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)のCBコンビを中心に、しっかり守っていた千葉にもフィニッシュへの意欲が。
一方、「ゲームをコントロールすることがこの夏場は大事かなという所」と伊藤監督も話した大宮は、無理に仕掛けることなく「長丁場になることはわかっていたので、どこでスイッチを入れるかという所」(伊藤監督)をじっくりと探るボール回しを。29分には松崎快(3年・大宮アルディージャJY)が狙ったミドルは、千葉のGK辻周吾(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)ががっちりキャッチ。ゲーム展開は我慢比べの様相に。
40分は千葉。右SBの齋藤拓海(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を起点に、大塚が右からマイナスのクロスを送り込み、ダイレクトで捉えた北原渓(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)のシュートはクロスバーの上へ。44分も千葉。左サイドから北原が蹴ったボールに氣田が飛び込み、少し触れたヘディングはわずかに枠の右へ。「0-0の時は相手が出て来ないというのはわかっているので、焦れないでという所はありますね」と伊藤監督が話せば、「ある程度大宮さん相手でも、しっかりこちらも守備は崩されずにできるかなというのはあった」と江尻監督。スコア動かず。0-0で最初の45分間は終了しました。
このゲーム最初の決定機は千葉。47分、北原が蹴った左CKは一旦跳ね返されましたが、その流れから再び北原が中へ送ると、こぼれに反応した伊藤はスムーズな反転で至近距離から右足を強振。ボールはわずかに枠の左へ逸れ、先制とはいかなかったものの、「点を取りに行く形も徐々に出始めてきたので、少しずつ狙いが高まったかなと思います」と江尻監督も話した千葉があわやというシーンを生み出します。
さて、ハーフタイムに「アタッキングサードの所でスピードアップする所をちょっと早めた所と、シュートの意識という所と、崩しの所でちょっと強引でも仕掛けという所をもうちょっと押し出してやっていければと話した」という伊藤監督。53分には川田拳登(3年・大宮アルディージャJY)のパスを松崎が潰れて残し、川田のシュートは枠の右へ。61分にも長谷川のパスを引き出した山田がミドルをクロスバーの上へ。少しずつ現れ始めた"シュートの意識"。
63分に輝いたのはオレンジレフティ。右サイドから黒川が蹴ったCKは一旦辻にパンチングで弾かれるも、拾った松崎は黒川とのワンツーからエリア内へ潜ると、寄せてきたマーカーをゴールラインギリギリの位置にもかかわらず、ダブルタッチで華麗にかわし、そのまま角度のない位置から左足一閃。速いボールはGKの股間を抜けてゴールネットへ飛び込みます。「ペナの中に入れば自分の形を持っている」と伊藤監督も評価する小柄なレフティがゴラッソで大仕事。大宮が1点のリードを手にしました。
左右に振られながらも最後の場面はきっちり凌げていた中で、個人に打開されてビハインドを追い掛ける格好となった千葉。64分にも左SBの朝妻佑斗(3年・大宮アルディージャJY)を起点にした流れから川田に枠の左へ外れるシュートを打たれると、江尻監督は次々に交替のカードを。67分には安藤一哉(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)、68分には長谷川雄介(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)、さらに73分には菊池俊吾(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を相次いで送り込み、氣田を前線に配置しながら狙う同点。75分には大塚、川村優太(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)、安藤とスムーズにボールが回り、川村の突破はシュートまで持ち込めなかったものの、1点のビハインドを覆すべく懸命に食い下がります。
「点を取った後に握るというのが今の課題なんですけど、全然握れていなくて蹴ってみたいな形になってしまった」と山田が話した大宮は、少し圧力に押し込まれ始めたタイミングで交替を。78分に黒川を下げて高柳拓弥(3年・大宮アルディージャJY)を、81分に長谷川元希に替えて小柏剛(2年・大宮アルディージャJY)をそれぞれ投入し、中盤のバランス向上に着手。千葉も81分には中村と中上貴博(3年・カナリーニョFC)をスイッチして、最後の勝負に。残された時間は10分間とアディショナルタイムのみ。
83分は千葉にチャンス。エリア外で前を向いた氣田は思い切ってシュートを放つもDFに弾かれ、こぼれを拾った北原のシュートもDFがきっちりブロック。逆に松崎と立石爽志(3年・大宮アルディージャJY)を86分に入れ替えた大宮は、2分後に右CKを獲得。高柳が蹴り込んだボールを千葉DFがクリアすると、ボールはクロスバーにヒット。あわやというシーンにスタンドもどよめきます。
アディショナルタイムの掲示は5分。300秒の最終決戦。90+1分は大宮。右SBに入った古谷優気(3年・大宮アルディージャJY)のパスから、1人外した藤沼拓夢(3年・大宮アルディージャJY)のシュートは長谷川雄介が決死のブロック。90+3分は千葉。右から横山が入れたクロスに、投入されたばかりの小澤裕太(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が競り勝つと、安藤がボレーで叩いたボールはクロスバーの上へ。届かない1点。届かせない1点。
90+6分のラストチャンスは千葉。エリア内で小澤が溜めて、飛び込んだ横山が放ったシュートも「2CBは本当にこの大会で頼もしくなったと思います」と伊藤監督も評した北西真之(2年・大宮アルディージャJY)と野崎玲央(3年・大宮アルディージャJY)がしっかりコースを潰して弾き出すと、三ツ沢の夜空に吸い込まれたファイナルホイッスル。「押し込んで保持してイニシアチブを取りながらやりたい所はあったんですけど、こういう大会で相手も残り10分20分は前に前に出てくるので、そういう所でしっかりチームとして受けられるという所は良くなってきているかなと思います」と伊藤監督も認めた大宮が力強く勝ち切って、初めてのファイナルへと駒を進める格好となりました。
「前半は結構握れたんですけど、後半はちょっとラフなゲームになってしまった」と山田が話した大宮は、ボールを握れるチームが陥りやすいゲーム展開になりかけたものの、松崎のゴラッソ以降は守備面でも粘り強い対応を続けて、結果的には完封勝利。「しっかりと時計を進めながら、今回みたいに1-0で勝つという所も視野に入れていかなくてはいけないかなと思っています」とは伊藤監督ですが、なかなか思い通りに行かない流れの中でも今大会3度目のウノゼロで勝ち切ったあたりに、今年のチームが有する強さの一端を垣間見た気がしました。決勝に向けて「もう1位しか見えないので絶対に獲ります」と言い切ったのは中盤のキーマンとしてこの日も躍動した山田。着々と力を付けてきたオレンジ軍団の戴冠、すなわち日本一まではあとわずかに1つの勝利のみです。
勇戦及ばずベスト4での敗退となった千葉。「ここまで来れるとは僕自身も思っていなかった」と正直に話した江尻監督は、「"理屈じゃない戦いの場"というのが、僕はこのチームにはないなというのが就任してからずっと感じていた。身体を最後投げ出す部分は相手よりも一歩でも前に出る、一歩でも戻って味方のカバーをしてあげるというような、当たり前のことが忘れられているというか、肝心なピッチに魂が宿っていないというか、そういうのをちょっと感じていた」とのこと。ただ、今大会を振り返って「今回を通じて理屈じゃないプレーというのも、自分たちがひたむきに努力して走るんだということが少し掴めたんじゃないかなと思いますし、選手間同士の仲間意識や1つになるということがなければここまで絶対に来れなかったので、そういうものは選手が掴んでくれたんじゃないかなと思います」と指揮官自身も小さくない手応えを掴んだ様子でした。
「最近は"育成のジェフ"ということから少し遠ざかっていたと思うし、そういう選手が輩出できなかったという所から、ここ何年間かずっとチームが育成に力を注いでやってきた結果がベスト4という結果に表れていると思います。これはこのチームだけじゃなくて、中学1年からチームを立ち上げて、徐々にそれに関わる育成スタッフ、それを支えるクラブが徐々に形に見え始めた成果が今回の結果だと思っています」とクラブ全体での取り組みに言及。
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