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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年06月23日

J2第19節 横浜FC×大宮@ニッパツ

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2連勝中の11位と4連勝中の首位が好調を維持したタイミングで激突する好カード。横浜FCと大宮の対峙はニッパツ三ツ沢球技場です。
3シーズンに渡ってチームを率いたクラブOBでもある山口素弘・前監督の退任を受け、今シーズンからスロヴェニア人指揮官のミロシュ・ルス監督を招聘し、新たなフェーズへ踏み出した感のある横浜FC。16節を終えて5勝6分け5敗という五分の成績から、ここ2試合は岐阜と京都を相次いで下して一気に白星先行へ。10位前後の順位が続いている現状を打破すべく、3連勝で一気に昇格プレーオフ圏内を視野に入れたい90分間に挑みます。
「落ちそうで落ちない」ジンクスを10シーズンも保ち、在籍し続けてきたJ1からの降格を経験。今シーズンは1年でのトップディビジョン帰還を唯一であり、最大の目標として掲げる大宮。序盤戦はC大阪や千葉に敗れるなど、開幕ダッシュとは行きませんでしたが、2連勝、3連勝と徐々に連勝の数が増えていく中で、現在は4連勝中であり、11戦無敗と完全にJ2の戦い方にアジャストして独走状態も視界の先に。「2週続けてアウェイですけど、本当にファン、サポーターの方がいつも熱い応援をしてくれる」と渋谷洋樹監督も言及したように、アウェイ2連戦に駆け付けたオレンジサポーターのためにも、5連勝を達成してゴール裏で共にダンスを踊りたい一戦です。三ツ沢の空は雲に覆われてこそいるものの、何とか持ち堪えそうな雰囲気。注目の90分間は横浜のキックオフでスタートしました。


立ち上がりから攻撃的な姿勢を打ち出したのは大宮。6分に横山知伸が縦に付けたパスから、横谷繁が左足で右スミギリギリを狙ったミドルは、横浜FCのGK南雄太がファインセーブで掻き出しましたが、直後に横谷が蹴った右CKのクリアを和田拓也が頭で繋ぐと、カルリーニョスがクロスバーを越えるミドルにトライ。さらに、8分にも家長昭博、和田と繋いだボールを、横山は巻いた球質で枠内ミドル。ここも南が懸命のファインセーブで回避したものの、「前半からやっていてミドルの質は明らかにJ1クラスだなと思っていました」と2本の好セーブを見せた南も話したように、大宮が精度の高いミドルで横浜ゴールを脅かします。
9分に崩したのも大宮。右サイドで家長を起点に、横谷が綺麗なスルーパスを縦へ。オーバーラップした渡部大輔のクロスに飛び込んだムルジャのシュートはヒットしませんでしたが、サイドアタックからフィニッシュの一歩手前まで。ただ、10分には横浜も右サイドを運んだ小野瀬康介が、少し中に入りながらわずかに枠の右へ外れる際どいシュートを放つと、13分には寺田紳一と市村篤司の連携で奪った右CKを松下年宏が蹴り込み、ニアで大久保哲哉が触ったボールはDFにクリアされるも、セットプレーでチャンスの芽を。14分には松下が、18分には寺田がそれぞれミドルを放つなど、「ちょっと守備のポジショニングのズレとかで相手にシュートまで行かれていた」と横山も認めたように、少しずつ横浜にも見え始めたゴールの可能性。
すると、21分に決定機を掴んだのはホームチーム。南が蹴り込んだロングキックに大久保が競ると、小野瀬とDFがもつれてこぼれたボールは中央へ。ここに走り込んできた松下はまったくのフリー。絶好の位置から放ったシュートは、しかし今シーズンの堅守を支え続けている大宮のGK加藤順大が気迫のファインセーブで仁王立ち。横浜はビッグチャンスを先制に結び付けられません。
27分の衝撃。カルリーニョスのパスを引き出した家長はうまく体を使って反転しながら縦へ。「結構相手の選手はアキを見過ぎる部分があったので、そういう所で僕がうまいこと間に立ってもらおうというのは意識していました」という横谷はボールを受けると、スルリと前を向きながらすかさず右足一閃。ボールは完璧な軌道を残して、ゴール左上へ一直線に突き刺さります。「最初はファーに蹴ろうと思ったんですけど、思い切り足を振ってニアを狙いました」というスーペルゴラッソに、南も「J2だとあそこの距離をあのコースに沈めてくるというのは守っていてあまりない」と素直な感想を。横谷の強烈なミドルで大宮が1点のリードを手にしました。
30分にもカルリーニョスのパスから泉澤仁がゴール右へ外れるカットインシュートを放つなど、完全にペースを掴んだ大宮に対し、横浜も34分には左サイドを巧みな反転で抜け出した小野瀬がクロスを送るも、加藤がきっちり足でクリア。直後の左CKも松下のキックは、ニアでストーンのムルジャが確実にクリア。41分には横浜のCBに入ったパク・テホンの縦パスを、完全に狙っていた和田がインターセプトで奪い切り、カルリーニョスのシュートはクロスバーを大きく越えたものの、ゲームリズムは明らか。首位を快走する大宮が1点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。


後半のファーストチャンスは横浜。48分に寺田、中島、小野瀬のパスワークで右CKを奪うも、松下のキックはまたもストーンのムルジャがクリア。逆に49分は大宮。家長のパスで左サイドを抜け出した和田が中央へクロス。ここはムルジャの目前で中島がクリアしましたが、50分にも横山が南にキャッチを強いる枠内ミドルを放つなど、セカンドハーフも展開に大きな変化は訪れません。
55分に横浜は右CKを松下が蹴り込み、ここもやはりDFにクリアされると、そのボールに反応した市村がハンドを取られて大宮ボールに。このFKを素早く左に横谷が流し、サイドに開いたムルジャは「完全に切り替えの所でウチが置いてかれちゃった」(南)横浜を尻目に独走。中里崇宏も懸命に食い下がりましたが、中に切れ込みながらムルジャが右足でジャストミートしたボールは、ゴール右スミへ吸い込まれます。「毎回毎回言いますけど、ワンチャンスワンゴールを決められるだけの能力はあるので、非常に相手にとっては厄介だなと私自身も思います」と渋谷監督が話せば、「ボールを預ければやってくれると思っています。預ければいいみたいな(笑)」と笑ったのは横山。パーフェクトなカウンターからムルジャがさすがの決定力を発揮して、両者の点差が広がりました。
畳み掛けたオレンジ軍団。58分、中央から左に流れたカルリーニョスがサイドに付けたパスを、泉澤は少し溜めて中央へ絶妙のショートパス。右足の極上トラップでエリア内へ潜った家長が左足を振り抜くと、強烈な弾道を描いてクロスバーを掠めたボールはゴールネットへ弾み込みます。「彼は試合前日のセットプレーが終わった後でもシュート練習を少し乳酸が溜まるくらいまでやっているので、やっぱりしっかりと毎日そういう形でシュート練習をやっていることが、結果として出たんじゃないかなと思っています」と指揮官も称賛した家長のゴラッソ。スコアボードの"2"はすぐさま"3"に変わりました。
「後半のウチは前掛かりに、やっぱり得点を取りに行かなくてはならない」(ルス監督)という共通理解の下、攻撃的な姿勢を打ち出した矢先に2点を続けて失った横浜は、62分に松下を下げて黒津勝を最前線に送り込み、小野瀬がサイドハーフにスライドして前線の顔ぶれに変化を。64分には寺田が左へ振り分け、ワンフェイクから小野瀬が上げたクロスに小池純輝が合わせるも、加藤は冷静にキャッチ。逆に67分には家長のパスから、泉澤があわやという際どいカットインシュートを枠の左へ飛ばすなど、次の得点の香りもアウェイチームに。
まずは1点を返したいホームチームも、68分に中里が左から蹴ったCKに黒津がヘディングで合わせるも当て切れず。69分にも中里が左へ振り分け、小池がミドルレンジから狙ったシュートもクロスバーの上へ。後半は枠内シュートも繰り出せず、「立ち位置を取れるだけの時間を逆に与えてくれていたので、そこは我々にとっては非常に良かったかなと思っています」と敵将の渋谷監督も評したように、プレスの強度も上がらない中で時間だけが経過していきます。
73分に右に流れたカルリーニョスが、得意の左足アウトでスルーパスを通し、渡部の折り返しに飛び込んだムルジャのシュートがDFにブロックされたのを見て、渋谷監督の決断は2枚替え。74分、先制点の横谷と2点目のムルジャを下げて、渡邉大剛と清水慎太郎がピッチヘ。76分には左を切り裂いた泉澤の丁寧なラストパスから、いきなり清水に決定機。シュートはクロスバーを大きく越えてしまい、4点目とはいきませんでしたが、「相手ももう3-0になってオープンなゲームになって、あそこで4点目、5点目、そこを仕留めることが今後においても大切だと思います」と渋谷監督。実直な指揮官に慢心する気持ちは微塵もなし。
ルス監督も相次いで2枚目と3枚目のカードを。79分には大久保と佐藤謙介を、82分には小池と内田智也をそれぞれ入れ替え、最後の勝負に打って出ますが、82分に佐藤が左から蹴ったFKはDFに弾き出され、83分に寺田のスルーパスから佐藤が枠の右へ外れるシュートを打つと、これがこのゲームのラストチャンス。86分にはキャプテンの菊地光将と福田俊介の交替でゲームクローズも丁寧に図ったオレンジ軍団が、そのままのスコアで聞いたタイムアップのホイッスル。「先日の栃木戦もそうですけど、ファン、サポーターは明日から仕事がある中で足を運んでくれているので、勝利を届けられたことを嬉しく思います」と渋谷監督も話した大宮が完勝を収めて、勝ち点3をさらに上積みさせる結果となりました。


「もう正直に言うと完敗ですよね。ちょっと差があり過ぎるなというのは試合をやっていて感じましたし、球際とか走力とかそういう部分ですら圧倒されちゃったので、もうスコア通りというのはやっていて感じましたね」と再三の好守を見せていた南が話したように、横浜にとっては難しい90分間となってしまいました。ルス監督も「ひょっとしたら今シーズン対戦した中でたぶん一番良い相手だったのではないかというのは、やっぱり認めないといけないんじゃないかなと思います」とこの日に関してはお手上げの表情。ただ、大宮との差を問われて"スピード"と"技術"を挙げた指揮官は、「スピードはなかなか修正できるものではないです。もう1つは個人の技術の面ですが、トレーニングを通じてウチは改善しようとしています」とのこと。身体的かつ頭の"スピード"で生まれる差を補うため、その"個人の技術の面"をどこまで伸ばしていけるかに、指揮官の手腕が問われることになりそうです。
実は2010年に甲府のコーチを務めていた時、この同じ三ツ沢で3点を横浜FCに先制されながら、4点を取り返して劇的な勝利を収めた経験を持っているという渋谷監督。「それが僕自身も頭の中にあったので、3-0でも『もしかしたら何かあるかな』というのは凄く感じていたので、非常に『集中させよう、集中させよう』という風に自分の中で思っていました」という指揮官も、「選手は本当に最後までゼロで終えるための準備を、後ろの選手たちを含めて全員が守備意識を高く持ってやってくれていたので良かったかなと思います」と無失点できっちり試合を終わらせたことには、小さくない手応えを感じているようでした。確かに「得点は個人の力でしたね」と横山が笑顔で話したように、大宮の得点はタレントの個の力による所が大きいとは思いますが、「ムルジャも凄いペースで点を取ってくれているし、仁やアキも点を取ってくれるので守りがいはありますけど、後ろだけで守っている訳ではないですし、前ももちろん守備をしているからゼロで抑えられていると思っているので、チームで戦っている感じはします」と横山。攻守においての一体感が結果と共に醸成されてきているオレンジ旋風は、まだまだ当分止まりそうにありません。      土屋

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