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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年05月19日

J2第14節 千葉×金沢@フクアリ

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0517fukuari.jpg"23年目"と"2年目"の邂逅。8勝3分け2敗。勝ち点27で並ぶ2位千葉と3位金沢の上位直接対決はおなじみフクダ電子アリーナです。
開幕から7戦無敗。連敗を挟んで現在は再び4戦無敗と、例年にない好調なスタートダッシュに成功し、今シーズンのJ1復帰へ懸ける意欲を前面に押し出している千葉。この日も田中佑昌や水野晃樹、森本貴幸などJ2屈指のタレントがベンチに控える選手層も目を引きますが、基本的には新キャプテンのパウリーニョを中心とした堅い守備をチームの根幹に据え、確実に勝ち点を積み上げていくスタンスが今シーズンのベース。"大先輩"として3位の新参者に"土産"を手渡す訳にはいきません。
足を踏み入れたばかりの"新世界"で現在驚異の10戦無敗中。「J2に昇格した初年度とは思えない、非常に整備された守備から得点の匂いをしっかり嗅ぎ付ける形も持った、非常に良いチーム」と敵将の関塚隆監督にも評価されるなど、もはやその快進撃を『フロック』という一言では説明できなくなりつつある金沢。「出来過ぎといったら選手に怒られますけど、本当に思ったよりもより多くの勝ち点を積み上げられている」と本音を口にしたのは森下仁之監督ですが、14試合目で迎えたJ2上位決戦は、クラブにとって新たな歴史を切り拓くためにも大事な90分間です。スタジアムには赤母衣衆のサポーターも含めて11396人が集結。注目の一戦はコイントスに勝った金沢の清原翔平がエンドを入れ替え、千葉のキックオフでスタートしました。


最初の決定機は1分経たず。ネイツ・ペチュニクが右に流したパスから金井貢史はクロス。阿渡真也のクリアをそのまま佐藤健太郎がボレーで叩いたボールはクロスバーにヒットし、ゴールとはいかなかったものの痛烈な先制パンチを。4分にもパウリーニョが左へ振り分け、中村太亮がファーへ送ったクロスは作田裕次が懸命にクリア。直後に中村が蹴った右CKは中央で当て切れずにゴールキックとなりましたが、まずはサポーターサイドに攻める千葉が攻勢に打って出ます。
7分も千葉。中央を持ち運んだ谷澤達也がそのまま放ったミドルは枠の左へ。9分も千葉。ペチュニクのパスから谷澤が30mミドルを狙うもクロスバーの上へ。12分はやはり千葉の決定機。中村が左から蹴り込んだCKはペチュニクにドンピシャ。振り下ろされたヘディングは金沢のGK原田欽庸が何とか弾き出し、清原翔平が大きくクリアしましたが、「最初の15分、20分は本当に相手の圧力が凄かった」(清原)「想定の範囲内ではありましたけど、結構激しく攻められた」(太田)と2人が声を揃えたように、フクアリのピッチへ千葉が吹かせた"先輩風"。
一方の金沢は16分にファーストチャンス。水永翔馬が左へ落とし、金子昌広が左から送ったクロスは中央を抜けてファーサイドへ。拾った清原のシュート気味クロスはDFに当たり、千葉のGK高木駿がキャッチしましたが、ようやく1つサイドアタックを。ただ、21分は再び千葉。太田のミスパスを今シーズン初スタメンとなった右SBの田代真一が奪って短く付けると、パウリーニョのミドルはクロスバーの上へ。24分は金沢。中盤でルーズボールに反応した清原は、ミドルレンジからのボレーを枠の上へ。25分は千葉。パウリーニョの縦パスから、「戦術的な所で1つ変化を込めながら」(関塚監督)の右サイドハーフ起用となった金井が2人を置き去りにするダイレクトパス。受けたペチュニクのミドルは枠の右へ外れましたが、徐々にお互いが手数を出し始めます。
そんな中で20分過ぎから目に付いたのは、金沢がディフェンスラインとボランチできっちりボールを動かす姿。「実際にボールを持てば、しっかり技術的には高い選手が中盤の選手は多い」という森下監督の言葉を待つまでもなく、ドイスボランチの秋葉勝と山藤健太がボールを引き出して、パスワークのリズムを創出。「感覚的にはコンサドーレも割と似たような感じで、最初は凄くパワーを掛けてきた中で、厳しい時間帯を守った後に結構自分たちの時間帯が来たので、そういう経験を踏まえてゼロで抑えられれば、自分たちの良い時間帯というのは来るのかなと思いながらやっていた」と清原。シュートまでは繋がらないものの、おそらくはフィフティに近い所まで回復したボール支配率。
立ち上がりの15分あまりを耐えられてしまった千葉。以降は相手のパスミスからはチャンスの芽が垣間見られましたが、能動的に崩す形はなかなか出て来ず。33分にはパウリーニョの右FKをニアで金井がフリックすると、ファーでキム・ヒョヌンがヘディングを敢行するも、ここはオフサイドの判定。「もっと引いてくるかなと思いましたけど、割と前にラインを高く保ってきたなという印象は受けていました」と関塚監督も話した金沢の積極的な守備を打ち破れません。
35分は金沢。佐藤和弘が左からスローインを投げ入れ、チャ・ヨンファンの折り返しがこぼれると、「みんな謙虚に戦っているという所が今のハードワークに繋がってると思う」と好調の要因を語る太田のミドルはクロスバーの上へ。42分も金沢。太田が左へサイドを変え、チャ・ヨンファンを経由して佐藤が上げたクロスは中央と呼吸が合わず。「無理せず前半は進められたかなという感じ」とは太田。序盤のラッシュ以降は落ち着いた展開で推移した45分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


後半もファーストチャンスは1分経たず。中盤でルーズボールを拾った秋葉は、左足でも躊躇なくミドルにトライ。ボールは枠の左へ逸れましたが、「攻守において何でもできる選手」と元同僚の佐藤健太郎も称する秋葉が開始11秒に滲ませた勝利への決意。49分にも山藤、チャ・ヨンファンと繋いだボールを再び秋葉がミドル。ここは高木がキャッチしたものの、30番のボランチが若いチームを積極的なプレーで牽引します。
53分には千葉にセットプレーのチャンス。中央左、ゴールまで約30mの位置から中村が直接狙ったキックは作田がきっちりブロック。54分は金沢に決定機。自陣で山藤が驚異的なキープを披露して繋ぐと、佐藤を経由したボールを水永は右へ。外を回った阿渡を囮に、少し中へ潜って打った清原のシュートは高木の正面を突きましたが、全体のゲームリズムは金沢に。
56分に中村の右CKを原田がパンチングで掻き出し、こぼれをオナイウと金井がお見合いしてシュートを打ち切れなかったシーンを見て、関塚監督は1人目の交替を決断。59分、その直前に自陣でイージーなロストがあった田代を下げて、井出遥也を右サイドハーフへ投入。その位置にいた金井を右サイドバックへ1列下げて、「金沢さんが非常に堅い良いチームですので、やはりそんなに差が付くような形にはならない」という状況打破を21歳に託します。
71秒後の衝撃。60分は金沢の左CK。佐藤が蹴ったボールをキャッチした高木は、すぐさま大岩一貴に付けてカウンター発動。運んだ大岩は左へ振り分けると、開いて待っていたのは井出。縦へ加速してから、中央へ方向を切り替え、1人目をかわし、2人目をかわして右足一閃。ボールはゴール右スミへ完璧な軌道とスピードで突き刺さります。これには原田も一歩も動けず。投入からわずか71秒で井出が大仕事。関塚采配ズバリで劣勢の千葉がスコアを動かしました。
「陣形を整える前にやられたという形。僕たちの一番やられるポイント」(水永)でビハインドを負った金沢。65分に山藤、佐藤と回して秋葉がミドルを枠の右へ外すと、失点前から用意しながら「さらに自分たちがバタつくのが嫌だったので少し状況を見てから、落ち着いてからもう1回入れ直そうということで、ちょっと待った」大槻優平を金子に替えて左サイドハーフへ送り込み、佐藤が1.5列目の中央へ。68分には清原が右へ展開し、阿渡、佐藤と繋いだボールはフィニッシュまで持ち込めませんでしたが、人と配置を動かして狙う同点とその先。
「相手は2トップ気味に来て、そこの所をやっぱり留守にしないために、少しパウリーニョがアンカーの位置に入りながら、両サイドをもっと推進力を持ちたいという風な形を狙っていった」という関塚監督は68分前後にシステムチェンジ。中盤アンカーにパウリーニョを置いて、その前に右からオナイウ、井出、佐藤健太郎、谷澤を並べ、最前線にペチュニクを頂く4-1-4-1へシフト。「守備の時にはパウリーニョが1人になってしまって両脇が空いてしまうので、なるべく絞りながらそこから出て行くことを意識しました」と佐藤健太郎も守備に軸足を置きながら、サイドアタックを中心に追加点への可能性を探ります。
ところが、「相手が出てくる所からの守備の所でもう1つ前に出る力というものが我々もなかった」と関塚監督も振り返り、「ジェフさんが多少手堅くゲームを運んでいる所で、ボールを前にあまり運ばなかったり、少しラインを下げてくれた」と森下監督も言及したように、千葉が全体的に引いたことでボールを動かせる金沢の強みが攻勢に直結。70分、71分と続けてCKを獲得すると、75分には佐藤が粘って残し、秋葉のミドルはDFに当たって高木が何とかキャッチ。76分には佐藤を下げ、2枚目の交替カードとしてジョーカーの田中パウロ淳一を投入。「自分たちがそこは運べると思っていたので、中盤の選手も含めて少しボールを持てる選手を投入した中で、間、間をうまく取れればなという」(森下監督)狙いで図ったさらなるギアアップ。
77分は金沢に決定的なチャンス。太田の鋭いインターセプトから、チャ・ヨンファンのリターンを太田は右へ。運んだ阿渡がハイサイドで粘ってパウリーニョのクリアを体に当てると、ボールはフリーになっていた太田の目の前へ。「もう僕らも1点取らなくてはいけなかったので、僕が結構リスクを冒して出て行きました」というCBのシュートは、しかし右足にしっかり当たらずゴール左へ。千載一遇の同点機を生かし切れません。
それでも押し込む金沢。79分、清原がルーズボールを収め、田中のドリブルミドルは高木がキャッチ。81分、チャ・ヨンファンが中央へ送り、秋葉のこの日5本目となるミドルはDFをかすめてわずかにゴール左へ。直後の左CKを山藤が蹴り入れると、ファーで舞った作田のヘディングはクロスバー直撃。82分、「このまま続けばどこかで点は入れられるかなという雰囲気はありました」と清原も手応えを感じていたピッチへ、水永との交替で最後のカードとして投入されたのは辻正男。「チームが結果を残していて、なかなか出番が回ってこない中で、それでも腐らずにチャンスがもらえた時のために準備しておこうと思って日頃から練習していた」9番がフクアリの芝生へ解き放たれます。
83分に谷澤と田中佑昌を入れ替えた千葉は、「先制点を取って彼らをもう少し引き出したいという所があった」(関塚監督)という狙いを実行できそうな展開でしたが、「なかなかボールに出られなくなったのと、スペースに穴を開けたくなかったので、なるべく全体的に押し上げられれば良かったんですけど」と佐藤健太郎も話したように、ラインが下がってしまった状況でサイドの推進力も打ち出し切れなかったものの、ミドルこそ許しながらもエリア内への侵入は許しません。
88分は金沢。阿渡のパスを右サイドで引き出した田中は、カットインしながら強烈なミドルを繰り出すも、ボールはゴール右へ。89分も金沢。清原の浮き球を大岩がバックパスで戻すも、ボールの勢いが弱く、懸命に走った辻より一瞬速く高木がクリア。アディショナルタイムは4分。"23年目"と"2年目"の対峙も240秒の最終局面へ。
金沢は死なず。千葉のブロックの外側で12本のパスを繋いで左右に揺さぶり、13本目の大槻のパスを14本目で秋葉が左へ。開いた田中のクロスはDFが懸命に掻き出すも、このこぼれに反応したのは太田。「とにかくしっかり当てようと」右足を振り抜いたミドルは清原に当たってゴール前に。「ちょっと戻り遅れたんですけど、良い形でボールがこぼれてきたので、そこからはあまり硬くならずに綺麗に打てました」という辻が撃ち抜いたシュートは、ゴール左スミへ美しく突き刺さります。「リハビリを1年以上やっていたので、トレーナーに対しての想いだったり、監督に対しての使ってくれたという想いだったり、色々な想いで」一直線に向かったベンチには赤い歓喜の輪が。「『この一瞬の喜びのために日頃頑張っているんだな』と素直に思いました」と笑った辻の劇的な同点弾。時間は90+1分。土壇場でスコアは振り出しに揺り戻されました。
千葉は死なず。90+2分、左右から続けて中央へボールを放り込み、右へ流れたボールを金井が残し、オナイウの枠内ミドルは原田が丁寧にキャッチ。90+3分、オナイウに替えて森本をピッチへ。90+3分、中村の左FKに金井が合わせたヘディングはゴール右へ。90+4分は絶好の得点機。左サイドでスローインの流れから佐藤健太郎が繋ぎ、田中のクロスへまったくのフリーで飛び込んだ森本がヘディング。ボールはクロスバーの下側を叩いて、ゴールラインギリギリに落下したものの、五十嵐泰之副審のフラッグは上がらず、ノーゴールという判定。当然千葉の選手もアピールしますが、当然判定は覆りません。90+5分、中村の左CKを原田がパンチングで弾き出すと、飯田淳平主審が吹き鳴らしたファイナルホイッスル。最終盤に激しく動いたゲームはドロー決着。両者に1ポイントずつが上積みされる結果となりました。


「非常に残念な失点だったですけど、その失点の"1"を考えても、もう1点取れる力というものが我々には必要だったなと思っています」と関塚監督が話した千葉。後半の押し込まれる時間でもミドルこそ再三打たれる中で、エリアの中にはしっかり鍵を掛けられていただけに、「もう1個入り込みたかったんですけどそこは堅かったので、ゴールシーンはラッキーだった」という太田の言葉の裏を返せば、失点自体がアンラッキーだったのは間違いありません。ただ、前述の関塚監督が話した"もう1点取れる力"をリードしていた時間帯に打ち出せなかったのは誤算の1つ。サイドの推進力を期待された谷澤とオナイウも後ろに引き込まれてしまい、カウンターの脅威を突き付けられなかったことが最後の失点の遠因だったかなと。無念さの残る勝ち点1の獲得となってしまいました。
金沢は負けませんね。連続無敗記録は11試合まで。これでJ2昇格チームとしては、2013年の長崎が打ち立てた連続無敗記録に並んだことになります。加えて、この日の同点弾を決めたのが負傷に苦しんできた辻だったというのも、今のチームの勢いを象徴しているようなトピックス。「ずっとなかなかケガから出場機会がなくて、彼がそういった中でもずっと努力してきた中で今日1つ大きな仕事をしてくれたことは、今後チームがさらに残留に向けてやっていく中で、非常に大きかったんじゃないかなという風に思います」と森下監督が話せば、「彼がこういう相手に同点ゴールを決められたというのは本当に大きいことだと思いますし、僕らも本当に嬉しかったというか、苦しんでいるのをずっと見ていたので、これで彼の"重し"が取れれば良いかなと思います」と太田も同調し、「本当に1人だけではピッチに戻ってこれなかったので、東京のJISでみんなの助けだったり、本当に色々な人の支えでやれていたので、しかもこういう中で結果を残せたので本当に嬉しいです」と周囲への感謝を強調したのはその殊勲のストライカー。こちらは逆に今後へ向けて数字以上の意味を持つ勝ち点1の獲得となったようです。        土屋

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