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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年05月27日

インターハイ東京1次予選A決勝 東海大菅生×都立小松川@駒沢第2

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0524koma2-3.jpg2次トーナメント進出を保証する切符の奪い合いも最後の1試合に。インターハイで3度、選手権で2度の全国を経験している強豪に都立の進学校が挑む一戦は駒沢第2です。
選手権は一昨年まで3年連続で西が丘まで進出し、昨年もベスト8まで勝ち上がるなど、トーナメントコンペティションでは普段以上に力を発揮する印象のある東海大菅生。今シーズンも関東大会予選では早稲田実業、堀越と難敵を相次いで倒してベスト8まで進出。今大会は初戦で攻玉社を3-0と一蹴してこの決勝へ。5年ぶりの2次トーナメントを懸けて、大事な80分間に挑みます。
就任8年目の田代明彦監督にとって、今回でインターハイは7年連続の1次トーナメント進出を成し遂げるなど、着実に力を付けつつある都立小松川。「普段のトレーニングはボールの止める蹴るが主体。ボールを止める蹴る、見る、姿勢を良くするという所に特化してやっていて、あとは個人の技術と戦術。だからグループでとかチームとしてというのはほとんどやっていないですね」と言い切る指揮官の下、今大会は支部予選3試合を11得点無失点で勝ち抜くと、この1次予選は都立鷺宮とスコアレスで迎えたPK戦を制し、拓大一とは殴り合っての4-3で競り勝ってファイナルまで。一定以上の自信と手応えを胸に、新たな歴史を切り拓くための80分間を戦います。スタンドには相変わらずのサッカージャンキーたちが集結。炎天下の1次予選ラストマッチは小松川のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートは菅生。4分、中盤センターの近藤伸太朗(3年・ヴェルディSS相模原)がミドル。ボールは枠の左へ外れたものの、まずは見慣れない"青"の菅生が積極的に立ち上がりましたが、突如として牙を剥いたのは「立ち上がりの5分間はリスクを冒さないでやろう」と田代監督に送り出された小松川。その5分間が明けた7分にキャプテンの澤頭良介(3年・ジェファFC)が右へ振り分け、開いた斎藤速太(2年・三菱養和巣鴨JY)のクロスは菅生のCB臼井大登(3年・東海大菅生中)にクリアされたものの、直後の左CKを斎藤が蹴り込むと、ファーでフリーになっていた工藤翔太(3年・フレンドリー)は体を折り畳んでヘディング。ボールはゴール右スミへ鮮やかに吸い込まれます。一瞬の出来事にどよめくスタンド。小松川が先にスコアを動かしました。
止まらない江戸川のサンパウロ。10分にも澤頭が右へ流し、上がってきたSBの山田泰亮(2年・江東東陽中)を経由してエリア内で斎藤が落とすと、澤頭が左足で狙ったミドルは左のポスト内側を叩いて、そのまま右のサイドネットへ飛び込みます。斎藤と澤頭の2トップが綺麗な連携から奪った追加点。「点数も取れたのでゲームプランとしては非常に思い通り」とは田代監督。早くも小松川のリードは2点に広がりました。
「ミドルシュートは力があるよという話はしていたんですけど、あのへんで寄せも甘かった」と話した菅生の手塚弘利監督がさらなる冷や汗をかいたのは13分。相手のクリアに澤頭が素早く寄せてブロックすると、こぼれに誰よりも速く反応した斎藤は左からマイナスの折り返しを送り、3列目から飛び込んできた南匠汰(2年・ブリエッタFC)がフリーで放ったシュートはクロスバーを越えましたが、あわや3点目というシーンにもはや完全に小松川を見る目が変わったスタンドの空気感。
「どんな強い相手でも判断しないで蹴ることはしないで、裏が空いていれば蹴ってもいいけど、とにかく運んでいこうと。状況判断しようということでずっとやっている」と田代監督が話す小松川はとにかく1人1人の基本技術が高く、コンビネーションの種類も豊富。「個人のスキルと個人の戦術を結び付けて、それが11人揃ったら強いでしょという考え方」(田代監督)の下、各人が生き生きと個々のスキルをこの舞台でも披露。14分にも斎藤のパスから加藤諒太(2年・両国FC)が打ち切ったシュートは枠の左へ。16分にも南、加藤、澤頭と細かく繋ぎ、工藤のミドルは菅生のGK細川優志(3年・帝京FC)にキャッチされましたが、「前掛かりになってセカンドボールも取れなくて、相手の思うままになった試合展開だったと思います」と菅生の右SHに入った小峰拓海(3年・東海大菅生中)も話したように、斎藤と澤頭の2トップにサイドハーフの加藤と工藤が絡み、ボランチから南と中嶋祐太(3年・江戸川松江第六中)が飛び出していく小気味いいアタックで小松川が完全にゲームの主導権を握ります。
さて、「ゲームを見ていても距離感も良いし、個々のアイデアもある」と相手の力を素直に認めた手塚監督率いる菅生にとって、「1点ならどうにかなると思っていたんですけど、2点目は厳しいなと思っていた」(手塚監督)中で3失点目のピンチを回避できたのは1つの光明。17分に右への展開から小峰が放ったシュートは近藤のブロックに遭い、20分に大関倖弥(3年・東海大菅生中)が蹴った左CKのこぼれを倉澤巧(3年・東海大菅生中)がクロスに変え、ファーに飛び込んだ小峰のヘディングは枠の左へ外れたものの、徐々に出始めた攻撃の手数。
すると、25分に生まれた追撃弾。近藤、小峰、氏家健太(3年・東海大菅生中)とスムーズにパスが回り、キャプテンの小岩井亮(3年・東海大菅生中)が左へラストパスを通すと、丁寧に押し出した大関のシュートはGKも及ばない右スミの絶妙とも言うべきコースを撃ち抜きます。強豪の意地。再び点差は1点に縮まりました。
同点のチャンスは直後の27分。右CKのこぼれを拾ったキッカーの近藤が自らクロスを蹴り入れ、三平涼平(3年・青梅第三中)が頭で狙ったシュートはDFに当たってクロスバーを直撃。30分には小松川も斎藤と澤頭の2トップが粘って残し、工藤のシュートは左へ外れましたが、菅生はここで早くも1人目の交替を。右SBの梶原真樹(2年・東京ウエストFC)を下げて、桑山大樹(3年・POMBA立川FC)をCBに送り込み、CBの臼井が右SBへスライドして守備の安定を改めて図ります。
33分は小松川。ゴール左、約30mの距離から工藤が直接枠に飛ばしたFKは枠を襲い、GKがファンブルしたボールはDFが何とかクリア。34分も小松川。CBの竹森広樹(3年・FC西新井)が右へ送り、1人かわした澤頭のシュートは枠の右へ外れましたが、ここで「もう3点目はいただけないので早めに替えよう」と判断した手塚監督は2人目の交替にも着手。近藤に替えて「ハードワークできる子」という小山歩夢(3年・昭島昭和中)をボランチに送り込み、三平を少し高い位置に出してさらに整えた全体の守備バランス。
37分は菅生。三平の右クロスがこぼれると氏家が拾い、小山がカットインから狙ったシュートは竹森が頭でクリア。38分も菅生。ワンツーから小峰が抜け出すも、よく帰っていた小松川のCB山口大貴(3年・FCエスフォルソ)がきっちりカバー。40分も菅生。小山が右にサイドチェンジを放り、エリア内で仕掛けた大関のシュートはここも山口がブロック。40+2分も菅生。ピッチ中央、ゴールまで約25mの距離から三平が直接狙ったFKはクロスバーを越えましたが、「交替からは相当中盤の方は落ち着いてやれた」と手塚監督も話した通り、中盤での守備の安定が攻勢に繋がり、終盤に入って菅生が少し盛り返した前半は、小松川が1点をリードしてハーフタイムに入りました。


後半のファーストチャンスは菅生。44分にGKとDFの間に潜った氏家が粘り、ルーズボールを収めて放ったシュートはゴール左へ外れるもCFが泥臭くフィニッシュまで。小松川も45分には、右から工藤が蹴ったCKをフリーになった菅谷光(3年・江戸川松江第三中)がヘディングで狙うも、ボールは枠の左へ外れると46分に田代監督は1人目の交替に着手。ケガを抱えた山田を下げて、藤倉健太(3年・浦安SC)を右SHに送り込み、右SHの加藤が右SBへスライド。「CBの子がイレギュラーな子で、山口もケガ明けでちょっとディフェンスに不安があって苦肉の策で」(田代監督)交替と配置換えを敢行します。
沸騰した応援団はビハインドの黄黒。47分、小岩井が右へパスを振り分けると、受けた三平は相手に寄せられながらも粘り強く縦に運んでそのままシュート。ボールはゴール左スミギリギリにゆっくりと転がり込みます。「ハーフタイムに『延長をやることで彼らと我々のどっちに不利益があるかということくらいしっかり考えろ』と。『40分で1点取ればいいんだ。2点はいらない』と話しました」とは手塚監督。たちまちスコアは振り出しに引き戻されました。
後半の早い時間で2点のリードを吐き出してしまった小松川。52分に工藤が入れた右CKは小山がきっちりクリア。54分にも左から斎藤が蹴り込んだCKは細川がキャッチ。逆に57分は菅生。氏家の左ロングスローを小岩井が頭で繋ぎ、小峰がボレーで叩いたシュートはわずかに枠の左へ。直後にも小岩井が小松川のGK林佑亮(3年・FCエスフォルソ)にキャッチを強いるミドルを繰り出すと、61分にも臼井の右ロングスローを氏家が頭ですらし、小岩井のヘディングは林にキャッチされましたが、流れは完全に菅生サイドへ。
63分に小松川は2枚目のカードを投入。ボランチの南を加藤裕貴(2年・ブリエッタFC)に入れ替えて、もう一度中盤の主導権奪取に着手。67分にはその加藤が積極的なドリブルからミドルを放つも、ボールはゴール右へ。68分は菅生。小峰のリターンから臼井が上げた右クロスは林が懸命にキャッチ。このシーンの直後に林は足を攣ってしまい、試合は一時中断。苦しい時間帯の最中に一瞬訪れたブレイクを受けて、両チームの選手がドリンクのボトルに手を伸ばす中、菅生の手塚監督は11人全員をベンチの前に呼び寄せ、身振り手振りでチームに指示を。その内容を問われて「『相手はGKまでも足を攣ってるでしょ。だから勝ち急ぐなって。慌てる必要もないから。絶対にお前らにメリットがあるんだから延長でいいじゃん』と話しました」と手塚監督。一方、「あまり好きなことじゃないけど『耐えるしかないな』と。『耐えろ耐えろ』と言っていました」と話したのは田代監督。再びピッチに散らばった22人。いよいよゲームは最後の10分間へ。
75分は菅生。臼井のFKは中央にこぼれ、小岩井のシュートはDFが弾き出し、倉澤のシュートは林がしっかりキャッチ。77分は小松川。右から工藤が蹴ったCKはニアで三平がクリア。78分は菅生。カウンターから氏家が右へ流すと、シザーズから縦に持ち出した小峰のシュートは林がファインセーブで仁王立ち。79分も菅生。小峰、三平と回して小山の左足で上げた右クロスから、氏家が叩いたシュートはクロスバーの上へ。多くの観衆が延長戦を予感していた最終盤で、しかし試合に蹴りを付けたのは、再三のチャンスをDFやGKに阻まれながらも「これはイケるなと思っていました」と振り返った11番。
規定の時間がほとんど終わりかけていた80分、大関、小山と回ったボールを小岩井が右へ付けると、「あそこは得意なコースですけど、とりあえずシュートが欲しかったので得意じゃなくても狙いに行ったと思います」という小峰は右45度から左足でフィニッシュ。左スミギリギリに飛んだボールはポストとGKに当たって、ゴールネットを揺らします。「監督から2-2で引き分けなら延長をやればいいという言葉があったので、みんな落ち着いてできたんじゃないかなと思っています」と話した小峰の劇的な逆転弾に「延長にならなかったのは偶然です」と豪快に笑ったのは手塚監督。80+1分に小松川が佐々木優一(3年・青戸中)を、80+4分に菅生が黒澤優介(3年・FCコラソン インファンチル)を投入したアディショナルタイムも菅生が消し去り、駒沢の空に鳴り響いたファイナルホイッスル。菅生が苦しみながらも小松川を逆転で振り切って、2次トーナメント進出を勝ち獲る結果となりました。


監督が再三投げ掛けた言葉を受けて、あえて80分での勝負にこだわらず、確実に勝ち切ることを100分も含めてデザインできたことが、結果的に勝利を手繰り寄せた菅生。「前半の最後だって『後半の終わりみたいなことしやがって』って怒鳴ったんですけど」と笑った手塚監督が、前半で2枚のカードを切って中盤の守備を修正したことも含めて、百戦錬磨の指揮官であることを改めて証明したような一戦だった気もします。今年のチームの特徴を問われて「一言で言うとマジメですけど、少し結果が出ると浮付いちゃう気持ちが出るかなと思います」と話したのは決勝弾の小峰。ただ、浮付いてしまったとしてもこのチームには手塚監督という明確な楔が。2次トーナメントの初戦は関東大会予選でも激突した早稲田実業とのリターンマッチです。
失礼を承知の上で言いますが、小松川は想像以上に素晴らしいチームでした。「とにかく『止めること、蹴ることに集中して余分な声なんて出さなくて良い』と言っています。『その方が練習でしょ』と。だから、悲壮感もないし圧迫感もないし押し付けもないし、練習は楽しいものだという考えでやっています」という田代監督の哲学が浸透したチームは、とりわけ前半の20分前後までは圧巻のパフォーマンス。それも「普段通りです。毎試合できます」と指揮官にすれば当然のこと。「どんな強いチームと当たっても自分たちのやり方をやっていこうと。そうしないと悔いが残っちゃうし、今まで何のためにトレーニングをやってきたのかというのが泡になって消えちゃうから、そこはずっと決めていることです」(田代監督)というチームの共通理解は最後の最後までブレることはなかったと思います。試合後に大半の選手が涙を見せ、マネージャーが号泣していたことからもわかるように、「今までは夏まで残った子はいないんですよね」という田代監督の言葉を待つまでもなく、進学校ということもあって基本的に3年生はこのインターハイで高校サッカーに別れを告げるのが慣例。ただ、今年の3年生は田代監督が受け持っている学年ということもあって、その指揮官曰く「今年は選手権予選までと考えている子はいるので、残る子は残ると思います」とのことでした。例年で考えれば、東京の選手権予選は8月中旬からスタート。間違いなくこの日の駒沢を熱狂させた彼らにとって、肌で感じた強豪との差を縮めるための時間は、まだ3ヶ月あまりも残されています。       土屋

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