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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
近年では常に全国をその視野に捉えて日々を過ごしている強豪同士の邂逅。実践学園と修徳の激突は引き続き駒沢補助です。
選手権予選は決勝で國學院久我山に屈し、プリンス昇格決定戦は2回戦でヴァンフォーレ甲府U-18に敗れ、共にあと一歩の結果には届かなかったものの、チームの成長度や一体感は見る者の心を捉えて離さなかった昨シーズンの実践学園。長年指導に当たってきた野口幸司コーチがチームを去り、「まだまだ自信とは程遠いですけど、自分のやれることを精一杯やっていくだけかなという所です」と話す内田尊久コーチのチーム構築に占める役割が大きくなった今シーズンは、リーグ戦こそ結果が出ていないものの、この大会では昨年の選手権予選で苦しめられた大成を4-0と一蹴してベスト8へ。残されたあと3つの勝利を貪欲に狙います。
リーグ戦ではT3降格の憂き目を見たとはいえ、選手権予選はインターハイで苦杯を嘗めた関東第一に準々決勝でリベンジ達成。最後は都立三鷹の勢いに飲み込まれる格好となってベスト4で涙を呑みましたが、やはり"トーナメントの鬼"として存在感を発揮した昨シーズンの修徳。ただ、「去年だって選手権の準決勝は勝たなくてはいけなかった。ああいう所を勝ち切れないのがウチの弱い所だから、今年はかなり厳しくしていますよ」と話したのは岩本慎二郎監督。今大会は先週のベスト16で難敵の駒澤大学高を1-0と退けて、きっちりクォーターファイナルへ。インターハイを見据える上でも間違いなく勝っておきたい80分間に挑みます。会場には第1試合以上の観衆が。注目の一戦は修徳のキックオフでスタートしました。
「先週の駒大と修徳戦を見て、かなりお互いが蹴り合っているようなイメージの中で、そういうことが得意な駒大がそれで勝てなかったので、ウチがそれをやっても絶対に勝てないという話は選手にして、とにかくボールを浮かさずにグラウンダーで勝負をしようと。そういう所から入りました」と内田コーチ。一方、「実践のゲーゲンプレッシングみたいな、あのプレスは凄い」とは岩本監督。修徳のロングボールと実践のハイプレス。主たる特徴はお互いにしっかり把握している中で、それを出させないような状況を意識したこともあってか、立ち上がりからなかなか攻撃の形が生まれない展開に。最初の10分間はお互い1本のシュートも打てずに推移します。
ファーストシュートは14分の実践。左から浅貝崇祐(2年・VIVAIO船橋)がロングスローを投げ入れ、こぼれに反応した黒石川瑛(3年・AZ'86東京青梅)のミドルは枠の右へ外れるも、ようやく生まれたフィニッシュ。17分も実践。右から黒石川が蹴ったFKは、修徳のCBを任された今田啓太(2年・ジェファFC)がクリア。20分にも黒石川のドリブルから右CKを奪うと、野崎智寛(3年・杉並FC)が入れたキックはここも今田が跳ね返し、クリアを拾った黒石川のシュートは修徳の左SB和田裕太(3年・三郷JY)がきっちりブロック。やや実践が押し込み始める展開の中、修徳もおなじみの粘り強い守備でゴールへ掛ける固い鍵。
22分には修徳にもチャンスが。石原海(3年・ジェファFC)が右へ送ると、レフティの大畑雄亮(3年・ジェファFC)は利き足でクロス。飛んだ望月翔(2年・草加松江中)のヘディングはしっかり当たらずにゴールキックとなったものの、サイドアタックからフィニッシュの一歩手前まで。24分にも左から和田が蹴ったFKに望月が競り勝つも、実践のCB海老名優作(3年・JACPA東京FC)がきっちりクリア。26分に再び和田が放り込んだ左FKも、やはり海老名が的確にクリア。「セットプレーでは絶対やらせない」という決意で臨んだ海老名が1つずつピンチの芽を吹き飛ばします。
30分は実践。右から黒石川が投げたロングスローに勝田勇気(3年・東急SレイエスFC)が競り勝つも、修徳のGK砂川鉱一(3年・三郷JY)がパンチングで回避。直後も実践。右から野崎が蹴り込んだCKはDFがクリア。31分は修徳に決定的なシーン。和田が得意の左足で低空フィードを送ると、走った望月は前へ、前へ。エリアに入って切り返した局面は、必死に戻った長谷川颯斗(3年・AZ'86東京青梅)が懸命のタックルで防ぎましたが、「今は前に蹴るしかないから」と岩本監督も笑う修徳も、そのシンプルな"前"の脅威を実践ディフェンスに突き付けます。
「前半の内に1点取ろうというのは監督も言っていた」(海老名)チームの狙いは残り6分で。野崎のパスを受けた谷本薫(3年・文京クラッキ)が果敢にエリア外からシュートを放つと、DFに当たったリバウンドが選んだのは野崎の足元。冷静にコースを狙ったシュートはゴール右スミへ飛び込みます。両ワイドのアタッカーが揃って中央で一仕事。声援を送り続けていた応援団の元へ一直線に走ってきた野崎を中心に生まれる歓喜の輪。実践が1点のアドバンテージを手にしました。
追加点のチャンスは38分。エリアのすぐ外、ゴールまで約20mの位置で獲得した実践の間接FK。スポットに立った勝田が小さく蹴り出し、黒石川が狙ったコントロールシュートはわずかにクロスバーの上へ消えたものの、正確なキックが持ち味の黒石川はさすがの精度。「前半に関してはある程度プラン通りにできたと思います」と内田コーチも語った実践が1点をリードして、ゲームはハーフタイムに入りました。
後半に入って流れに大きな変化がないと捉えた岩本監督は即決。45分に1人目の交替として、右SHの石川知稔(2年・練馬光が丘中)を下げ、「速くて左利きでなかなか相手に捕まらない」根岸航(2年・ジェファFC)をピッチへ送り込み、サイドのギアチェンジを図ります。
すると、直後から右サイドでのセットプレー獲得が増加。46分は右FK。和田のボールに今田が飛び付くも、DFが何とかブロック。同じく46分は右CK。和田の蹴ったボールは実践のGK永見彰吾(3年・FC.VIDA)がキャッチ。50分は根岸の仕掛けで得た右CKをやはり和田が蹴り入れ、ニアに突っ込んだ岡田拓光(3年・KSC)のヘディングは枠の左へ逸れましたが、根岸とSBの石原健流(3年・ヴェルディSSレスチ)が躍動し始めた右サイドに生まれつつある修徳の推進力。
50分に菅野涼太(3年・AZ'86東京青梅)のフィードから、野崎の右カットインシュートが砂川にキャッチされたのを見て、実践ベンチも1枚目のカードを。最前線で基点創出に奔走した中島陸(3年・練馬三原台中)を丸田健太郎(3年・FC.Branco八王子)に入れ替え、アタッカーの顔触れに変化を。56分は修徳の決定機。和田の右FKを今田が頭で残すと、石原海はオーバーヘッドで中へ。2分前に投入された佐藤颯(2年・世田谷東深沢中)のヘディングはわずかに枠の右へ外れましたが、それまでで最も惜しいシーンに沸き立つ応援団。58分は実践の決定機。黒石川の左CKを海老名はドンピシャのヘディングで合わせ、2分前に投入された石井幸太(3年・Forza'02)はゴールまで数メートルの位置で胸トラップからボレーを放つも、ボールはクロスバーの上へ。思わず頭を抱えるベンチと応援団。ただ、お互いに交替で送り出された選手がすぐさまチャンスに絡みます。
「今までの流れとして、前半に点を取るけど後半に引っ繰り返されるというような試合がTリーグで多かった」(内田コーチ)という流れの中で、後半も半分を折り返しても手数は実践。61分には浅貝の左ロングスローから、勝田がヘディングを枠へ収めるも砂川がキャッチ。62分にも石井が左サイドで仕掛けて折り返すと、谷本が叩いたボレーは枠の左へ。63分には谷本と深城壮太(3年・町田ゼルビアJY)も入れ替えながら、66分には黒石川のフィードを石井が粘って残し、勝田のシュートは砂川がキャッチしましたが、「セカンドボールを拾ったり競り合いを忠実にしたり、ウチが繋がれたら嫌だなという所を無理な体勢でも繋いできたりなんていう所は、ウチよりも1枚も2枚も上手だったよね」と岩本監督。実践が着実に進める時計の針。
67分に和田が左から鋭いクロスを送り、佐藤が飛び込むも海老名に弾き返されたシーンを経て、岩本監督は決断。ボランチの岡田をCBに、1トップ下の石原海をボランチにそれぞれ落とし、CBの今田を最前線に上げる形で最後の勝負に。よりシンプルにボールを放り込む戦い方を徹底したことで、実践も「彼らも失点に対する怖さで引いてしまったと。そこで蹴り込まれてしまったのかなと思います」(内田コーチ)「ちょっとラインが引いちゃった部分はあった」(海老名)と受ける時間帯に。75分には足が攣った黒石川と戸塚源基(3年・SCUDETTO)もスイッチして、消し去りたい残り5分とアディショナルタイム。
76分は修徳。佐藤が倒されて奪ったFK。やや右寄り、ゴールまで約30mの距離から和田が放った枠内シュートは、永見が丁寧にしっかりキャッチ。80分も修徳。岡田が渾身の右FKを蹴り込むも、「今日は最後まで集中を切らさずにできたと思う」と振り返った海老名が大きくクリアすると、程なくして聞こえたのはタイムアップのホイッスル。「ゼロで抑えられたという試合がリーグ戦ではほとんどなかったので、ここでゼロで抑えられたことは彼らの自信になると思います」と内田コーチも一定の評価を口にした実践がセミファイナルへと勝ち進む結果となりました。
試合後は開口一番「やっぱり実践は強いよ」と相手を称えた岩本監督でしたが、修徳も例年以上に個性的なメンバーが揃っているのではないでしょうか。左CBの中村大志(3年・ジェファFC)左SBの和田、左ボランチの岡田、左SHの大畑と「左サイドの選手は全部左利き」(岩本監督)。最後尾の今田と最前線の望月は185センチオーバーであり、ボランチにはいかにも修徳らしい小澤翔(3年・荒川南千住第二中)も。「全体の総合力を高めていかないとね」という岩本監督。その口ぶりからは面白いチームになりそうな手応えを掴みつつある様子が窺えました。
実践で印象的だったのは70分前後の一幕。黒石川が足を攣った際に、その事実をいち早くベンチに伝えたことですぐさま首脳陣も反応。黒石川は前線に上がり、左SBから右SBへスライドした浅貝を筆頭に、4人の選手が配置転換にしっかりアジャストして、戸塚が投入されるまでの5分あまりを凌ぎました。これに関しては「選手たちは慌てることなく、自分たちからすぐ伝えるということをやってくれたので、こちらもすぐ修正をすることができました。今までは攣ったら慌てちゃうだけという形だったのが、ここは冷静にすぐ対応してくれたので、彼らの大きな成長じゃないかなと思います」と内田コーチも言及。負ければ終わりのトーナメントで、しかも押し込まれ始めた時間帯にこういう対応ができたあたりに、今年の実践のチーム力が垣間見えた気がします。「チームのために応援してくれるメンバーも多いので、そのためにも恥ずかしい試合はできませんし、彼らのために走るという感じです」と言い切ったのは、実践伝統の10番を託された海老名。今シーズンも高尾の野武士集団は東京の高校サッカーシーンを牽引していくはずです。 土屋
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