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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
わずか2チームが手にすることのできる関東大会出場とインターハイのシードを巡るコンペティションもクォーターファイナルへ。今季公式戦無敗の関東第一と今大会の台風の目になりつつある私立武蔵の対峙は駒沢補助です。
昨シーズンはインターハイ予選、選手権予選と揃ってベスト8敗退。T1リーグでも中位に甘んじるなど、悔しさの残るシーズンとなった関東第一。迎えた新シーズンは5試合中4試合が1点差という粘り強さで、T1も開幕から怒涛の5連勝を達成。勢いそのままに突入した関東大会予選も日大豊山を2-0で下すと、先週のベスト16でも保善に6-0という圧勝を収めてこのステージへ。それでも「まだ自分たちは全然強くないし上手くないと思っている」と話すのはキャプテンの鈴木隼平(3年・Forza'02)。慢心することなくこの一戦に臨みます。
インターハイ予選は準決勝まで進出した国士舘に1次予選で惜敗と一定の手応えを得たものの、選手権予選では1次予選で当たった都立片倉にPK戦で敗退し、真夏にシーズンの閉幕を突き付けられることとなった私立武蔵。ところが、新チームは新人戦で5連勝を飾って地区優勝を勝ち獲ると、いきなりディフェンディングチャンピオンとの対戦となった関東予選は、その都立駒場を3-2と撃ち合いの末に撃破。さらに、先週の多摩大目黒戦もPK戦をモノにして一気にベスト8まで。一躍注目を浴びる格好で4強進出を狙います。舞台の駒沢補助はポツポツ雨もパラつく曇天模様。注目のゲームは10時ジャストにキックオフされました。
ファーストチャンスは早速の決定機。5分、冨山大輔(2年・FC習志野)が左から蹴ったCKはファーまで届き、道願翼(3年・VIVAIO船橋)が枠へ飛ばしたシュートは武蔵のGK松山凛之介(2年・武蔵中)が抜群の反応で弾き出し、詰めた岡崎仁太朗(3年・大宮ソシオ)のシュートはDFがブロック。6分にも道願の右CKを松山がパンチングで掻き出すと、再び道願が右から上げたクロスに、ニアへ突っ込んだ高橋快斗(3年・P.B.J)のシュートは枠の右へ外れるも、続けてビッグチャンスを生み出した関東第一の歓喜は11分。
左サイドでボールを持った浦川眞世(3年・三井千葉SC)が丁寧なスルーパスを縦に通すと、SBの大里将也(3年・レッドスター)は完全にハイサイドをえぐり切って中へ。走り込んできた岡崎は1つ持つと、すかさず振り足鋭くトーキックでプッシュ。ボールは勢い良くゴールネットへ飛び込みます。サイドバックを生かすお手本のようなアタックが結果に直結。関東第一がスコアを動かしました。
以降もペースは関東第一。17分には浦川のフィードに岡崎が抜け出し、そのまま放ったシュートは武蔵のCB大谷拓也(2年・武蔵中)がしっかりブロックしましたが、23分にはセットプレーから好機を。道願の右CKは一旦跳ね返されたものの、再び道願が上げた右クロスから、ニアに飛び込んだ中村翼(3年・大豆戸FC)はヘディングでボールをゴールネットへ送り届けます。さらに3分後の26分には中央をドリブルで運んだ冨山が、そのまま突破しながら左足でシュートを打ち切ると、ボールはゴール右スミへ綺麗に吸い込まれます。「浦川と道願と冨山を生かすとああいう形になる」と小野監督も言及した中盤センターの3枚がことごとくゴールに関与し、点差は一気に3点まで広がりました。
さて、キャプテンマークを巻いたCBの槙憲之(3年・武蔵中)が声を張り上げ、後ろから繋ぐ意識も垣間見えるものの、なかなか自分たちの形を創れない武蔵。28分には松本周平(2年・武蔵中)のパスを白藤優(3年・武蔵中)はダイレクトで裏へ。走った金子太貴(3年・武蔵中)の前で関東第一のCB鈴木友也(2年・VIVAIO船橋)がカットしましたが、ようやく悪くないアタックが。29分にも右サイドで松本周平が短く外へ流し、上がってきたSBの森陽暉(2年・武蔵中)は高速クロス。3列目から飛び出した神藤基(3年・武蔵中)はトラップし切れずにシュートまで至らなかったものの、右に張り出した松本周平をアクセントに、武蔵に見え始めた攻撃の芽。
そんな希望を打ち砕いたのは「1年の頃は自分中心でやっていたんですけど、去年上でやらせてもらってそういう自覚を持てた」という主将。32分、鈴木を起点に浦川がスルーパスを送ると、ギャップに潜った冨山はそのまま見送ってボールは裏へ。「3人目を使う練習は結構やっている」と話した鈴木はラインの裏で受け、そのままGKを確実にかわして無人のゴールへボールを流し込みます。「最近全然決めていなかったので丁寧に行きました」という鈴木のゴールは連動性溢れる"らしい"一発。関東第一に大きな4点目が記録されました。
攻撃の手を緩めないカナリア軍団。35分、鈴木が左へ展開したボールを高橋が叩いたシュートは松山がファインセーブで応酬し、こぼれを拾った鈴木のシュートはクロスバー直撃。37分、浦川のパスから冨山がマーカーを振り切って放ったシュートは松山がキャッチ。40+2分、浦川が果敢にトライしたミドルは枠の左へ。「前半は自分たちのやりたいことが結構やれていた」と鈴木。関東第一が4点のリードを奪って、最初の40分間は終了しました。
小野監督はハーフタイムに2枚替えを決断。CBの中村と存分に攻撃力を披露していた左SBの大里を下げて、野村司(3年・レッドスター)をCBへ、菅屋拓未(2年・POMBA立川FC)を右SBへそのまま投入。最終ラインを2枚替える格好で後半へ向かいます。しかし、後半のファーストチャンスは41分の武蔵。相手のミスを奪った白藤は右へスルーパス。走った袖山直志(3年・武蔵中)はわずかに届かなかったものの、まずは好トライを。42分は関東第一も岡崎がバイタルへ入り、高橋のパスから浦川が狙ったミドルはクロスバーの上へ。お互いに攻撃的な姿勢を出し合って後半は立ち上がります。
ただ、以降は「後半は少しバタついた」と小野監督と鈴木が声を揃えた関東第一を尻目に、武蔵が一段階踏み込んだアクセル。50分には松本周平のドリブルで獲得した右CKをレフティの大塚信吾(2年・武蔵中)が蹴り込むと、ファーに入った袖山のシュートはヒットせず枠の左へ。直後にその袖山と山田雄貴(2年・武蔵中)の交替を挟み、59分には素晴らしい崩しが。白藤、神藤と回ったボールを松本葉(2年・武蔵中)が左へ付け、山田が上げ切ったクロスはよく戻った鈴木がブロックしましたが、スムーズなサイドアタックで窺うゴールチャンス。
嫌な流れを断ち切ったのはまたもキャプテン。60分、直前に大須賀琢磨(3年・FC東京U-15深川)と替わったばかりの佐々木功輝(3年・アルドール狭山FC)が左のハイサイドへ侵入し、中央へ完璧なクロス。ここに頭から飛び込んだのは鈴木。綺麗なダイビングヘッドが豪快にゴールネットを揺らします。これで9番のキャプテンはドッピエッタ。スコアは5-0に変わりました。
65分は関東第一。浦川のスルーパスに岡崎が抜け出すも、1対1は武蔵の守護神を託された松山がファインセーブで仁王立ち。69分は武蔵に決定的なシーン。高い位置でボールを奪った白藤がドリブルで運び、狙ったシュートは野村が確実にブロックしましたが、右へ流れたボールを松本周平はえぐってフィニッシュまで持ち込むも、初めてと言っていい見せ場を関東第一のGK円谷亮介(3年・FC東京U-15深川)はファインセーブで回避。お互いに繰り出し合った狙いのあるアタック。
6点目へのラッシュ。72分、右からカットインした鈴木のシュートは松山がファインセーブ。75分、相手のミスパスをかっさらった岡崎のシュートは左ポストにハードヒット。76分、冨山のパスで抜け出した岡崎の1対1は松山がこの日5度目となるビッグセーブでシュートストップ。77分、ここも冨山のパスを引き出した鈴木は完璧なループを見舞い、さすがの松山も見送った軌道は、しかし右のポストに阻まれてハットトリックとはいきません。
80分は武蔵のラストチャンス。最後尾から槙が鋭いクサビを打ち込み、ギャップで受けた白藤は素早い反転からシュートを枠へ収めるも円谷がキャッチすると、これがこのゲームのラストシュート。最後は円谷と山口公太郎(2年・横河武蔵野FC JY)もスイッチさせた関東第一が公式戦8連勝を飾り、ベスト4へと勝ち上がる結果となりました。
結果的には大差が付いてしまいましたが、武蔵はここまで勝ち上がってきたことも十分に頷ける好チームでした。再三のファインセーブを見せたGKの松山は高さもキック力も有する好素材。キャプテンの槙と2年生の大谷で組んだCBの2人も高さとアジリティを兼ね備えた好コンビで、一瞬の局面では関東第一に劣勢を強いられたものの、守備面では一定以上に戦えていたと思います。基本的に体格に優れた選手が多く、時折見せるパスワークは丁寧な練習を想起させるそれ。今後の伸び率次第では、今年の東京を掻き回す存在になっていく可能性を秘めているチームだという印象を受けました。
関東第一は個々の基本技術が非常に高く、スムーズに相手を崩した時のインパクトから攻撃面の派手さが目立つものの、好調の鍵は守備力だと思います。「守備から入ることも今年はできるんですよ」と小野監督が話せば、「自分たちの代は1,2年の頃に、走ったりフィジカルだったり守備の面を強化してきたので、11人全員が守備の意識がある」と胸を張ったのは鈴木。こういう大差のゲームで失点を喫するシーンは、ある意味で良くも悪くも関東第一の伝統だった気もしますが、今季はこの大会のみならず2点差以上を付けたゲームはいずれも完封勝利と、例年以上の安定感も身に着けつつあるようです。ただ、そんな好サイクルを問われた鈴木は「どんどん強くなっていくしかないとみんなで話し合っている所で、まだまだ勝っているという意識はないですね」とキッパリ。地に足の着いた雰囲気を醸し出しつつある"15'関東第一"の今後が非常に楽しみです。 土屋
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