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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
黒星先行の1勝2分け3敗とまったく同じ成績で苦しんでいる19位と18位の対峙。水戸が徳島をホームに迎える一戦は懐かしの笠松運動公園陸上競技場です。
開幕3試合は1分け2敗。第4節ではホームの愛媛戦で3ゴールを奪う快勝を収めたものの、ここ2試合は再び未勝利となかなか波に乗り切れないここまでの水戸。とはいえ、前節の福岡戦は結果こそ出なかったものの、内容には間違いなく復調の兆しが。2009年までホームスタジアムとして使用されていた笠松では、今シーズンも1勝1分けとここまで負けなし。その好相性を堅持したい90分間に臨みます。
大きな希望を抱いて乗り込んだ初めてのトップディビジョンは茨の道。厚く高い壁に跳ね返され、最下位でのJ2降格を強いられることとなった昨シーズンの徳島。小林伸二監督続投で挑んだ今シーズンは、長谷川悠、木村祐志、佐藤晃大など計算できる実力者と、広瀬陸斗や内田裕斗など将来性豊かな若駒を補強しながら、ここまでは期待外れと言うしかない成績に。何とか浮上のキッカケを掴むべく、大事なアウェイゲームを戦います。笠松の上空からは冷たい雨が降り注ぎ、12.3度という気温よりは体感も間違いなく寒いコンディションの中、徳島のキックオフでゲームはスタートしました。
先にチャンスを創ったのはホームチーム。2分に田中雄大が左から蹴ったCKを、キム・ソンギが高い打点で叩いたヘディングはオフェンスファウルを取られましたが、5分にも右サイドで獲得したFKを岩尾憲が中央へ。ここはDFのクリアに遭ったものの、まずは前への意識を押し出した水戸が2つのセットプレーで相手ゴールを窺います。
8分には徳島も藤原広太朗が左へ付け、内田のクロスから中央でのこぼれを拾った濱田武がミドルを枠内へ収めるも、水戸のレジェンド本間幸司が体で弾き出し、新里亮がきっちりクリア。逆に9分には水戸も吉田眞紀人が枠の左へ外れるミドルを放つと、14分には内田航平の右CKをルーキーのCB今瀬淳也が粘って残し、再び内田航平が上げたクロスに飛び込んだキム・ソンギのヘディングはDFがブロック。直後にも内田が2本続けて右CKを蹴り込むなど、「立ち上がりから思い切ってプレスを掛けに行って、流れを取れたと思います」と柱谷監督も言及したように、続く水戸のゲームリズム。
20分も水戸。右に流れた石神幸征のクロスを馬場賢治が正確に落とし、「前節よりも凄く攻撃的な感じでできたんじゃないかなと思います」と話す田中がエリア外から狙ったシュートは枠の左へ。25分も水戸。馬場が左へ展開したボールを、ここも3列目から飛び出した石神がマイナスに折り返し、吉田のシュートはゴール左へ外れたものの、ある程度シンプルに前へボールを入れながら、「3人の関係というのをずっとやっていたので、今日は意識してやっていた」と話す三島康平を頂点に、馬場と吉田の"3人"で組んだ1トップ2シャドーが良い距離感で関わり合い、そこへ石神や岩尾も積極的に飛び出して行くことで、攻撃にダイナミズムが生まれていきます。
一方の徳島は「全体的に裏へ抜けるような動きが少なかった」と斉藤が話したように、木村や濱田を中心にボールは回るものの、そこからスイッチを入れるポイントがなかなか見つからず、テンポアップができない状態に。岩尾が「ボールを動かせる選手がいるというのはわかっていましたし、それで最初から引いてしまうのは僕らのサッカーじゃないと監督も言っていた」と口にした水戸のプレスにエリアへは近付けず。30分には内田裕斗の左クロスから、ルーズボールを斉藤が叩いたボレーミドルも枠の上へ。語ゴールへの糸口を掴み切れません。
歓喜の主役は「自分もどんどんゴールに絡んでいきたいと思っていた」3番。33分、最終ラインでのパス回しで橋内優也がもたつくと、馬場があっという間に寄せてボール奪取。三島が右へ流し、「今のボランチは守っているだけでもダメですし、攻めているだけでもダメですし、あの瞬間はチャンスだと思ったので飛び出していった」という岩尾が駆け上がってクロス。必死に戻った橋内がクリアしたボールは、「競った感じを見ていたら『このへんにこぼれてくるんじゃないかな』というのがあった」という田中の足元へ。左足一閃。1秒後に揺れたゴールネット。「『あの憲があんな所行くんか』って(笑) 『大丈夫かな』と思ったんですけど、そこでオイシイ所を俺が狙わないと」と笑った田中の一撃に、岩尾も「凄く手を抜かない選手なので、彼の良い部分に神様がご褒美をあげたんじゃないかなと思います」と独特の表現で祝福。勢いそのままに水戸が1点のリードを奪いました。
畳み掛けた蒼龍。35分、岩尾のピンポイントフィードを呼び込んだ吉田は、後方からのボールをダイレクトボレーでクロスバーの上へ。36分、岩尾、田中と繋ぎ、馬場のクロスは中央で味方のハンドとなったものの、「憲とか賢治さんとかと3人で関係を創って突破できたりというのもあった」(田中)シーンを経ると、2度目の咆哮は37分。ここも徳島が「ボランチに付けるボールのミス」(小林監督)で濱田が収め切れずに自陣で石神にボールを奪われると、水戸のカウンターが発動。岩尾、三島、吉田とすべて前へボールを運び、仕上げは馬場がゴール左スミへ完璧なシュートをグサリ。「良い奪い方をしてタッチ数も少なく出て行くことができました」と胸を張ったのは岩尾。点差が開きました。
「相手に崩された形ではなかったですし、今から自分たちで繋いでビルドアップしようという所で引っ掛けられた失点だったので、ちょっと精神的にガクッと来てしまった部分はあったのかなと思う」と斉藤も悔やんだ徳島は、同じような形での2失点で明らかに意気消沈。45+1分に大﨑淳矢が獲得したFKを左から木村が蹴り込み、こぼれを回収した福元洋平のパスから大﨑がエリア内で仕掛けるも、DFがきっちりカット。「何気なく繋いでいるというか、相手の嫌な所に侵入していけなかった」(斉藤)徳島を尻目に、狙いが綺麗にハマッた水戸が2点のリードを手にして、最初の45分間は終了しました。
「長谷川と木村がキチッと球際の所を抑え込まれていた」と見ていた小林監督は後半開始からの交替を決断。2失点目に絡んだ濱田を下げ、佐藤晃大を送り込んで長谷川悠との2トップへシフト。最もボールを引き出せていた木村をボランチへ落として、「何とか点を取らないといけない状況」(斉藤)の45分間へ挑み直します。
54分は徳島。内田裕斗のパスから大﨑がドリブルで運び、木村が枠へ飛ばしたミドルは本間がファインセーブで回避。56分も徳島。セットプレーの流れから橋内が粘り、木村が右足での左クロスを放り込むと、佐藤の落としを大﨑が叩いたシュートは枠の左へ。57分に田中の左CKを長谷川がクリアしたシーンを経て、58分も徳島。広瀬がタイミングの良いパスカットから左へサイドを変え、カットインした内田裕斗はフィニッシュまで持ち込めませんでしたが、「後半少し足が止まった部分はあった」と柱谷監督も認めた水戸から、徳島が奪い返し始めたペース。
一瞬で牙を剥いた蒼龍。60分、斉藤が「横パスを淳矢に出そうとした所で引っ掛けられて」ボールが流れると、「パッと顔を上げたら賢治さんが走り出しているのは見えた」田中はダイレクトで中央へ正確なスルーパス。完全なフリーで抜け出した馬場は、GKとの1対1も力を抜いて浮かせたループをチョイスし、ボールはフワリとゴールネットへ吸い込まれます。「たまたまルーズボールが来ただけかもしれないですけど、あそこで俺もしっかり前を見ていたというのもあったし、賢治さんが走ってくれていたというのもあったので、2人の関係が一致した」と頷いたのは田中。馬場の3シーズンぶりとなるドッピエッタが飛び出し、さらにリードは広がりました。
「少し幅広くボールを回しながらという所ができそうなんですけど、その先が見付けられないというような感じ」(小林監督)の中で3点のビハインドを負った徳島は、61分に大﨑に替えて廣瀬智靖を投入して、サイドの推進力に変化を加えましたが、大枠の流れは変わらず。63分には馬場が潰れて三島がラストパスを通すも、吉田のシュートはヒットせず。直後にも岩尾がミドルを枠の右へ。68分には徳島も木村がゴールまで約30mの距離からFKを直接狙うも、枠を捉えたボールは本間ががっちりキャッチ。変わらないスコアボードの数字。
75分には両者に交替が。柱谷監督は最前線で奮闘した三島と宮市剛をスイッチ。小林監督は内田裕斗とアレックスを入れ替え、やや攻撃の芽は見えていた左サイドに新たなパワーを。80分にはその左サイドで奪ったCKを木村が蹴り入れ、ニアへ潜った橋内のヘディングはゴール左へ。「失点してからの攻撃の迫力に欠ける部分だったり、アイデアに欠ける部分があった」と斉藤。この日は果てしなく遠い1点。
80分で馬場はお役御免。替わって山村佑樹がピッチへ解き放たれると、84分には田中を起点に吉田がスルーパスを送り、その山村がラインの裏へ。角度のない位置から放ったシュートはわずかに枠の右へ外れましたが、さらなる追加点への意欲は衰えず。徳島は85分に斉藤が右へ展開し、広瀬のクロスから最後は長谷川悠がボレーを放つもボールはクロスバーを越え、これがこのゲームのラストシュート。90+1分には山﨑貴雅がJリーグデビューとなるピッチへ駆け出し、万全のゲームクローズで聞いたファイナルホイッスル。「全体的に一番良かったのが攻守に渡って意思統一があったということ」と柱谷監督も話した水戸が、ホームで快勝を収める結果となりました。
「個人は一生懸命やっていると思うんですけど、グループだったり組織でボールを運んだり、全員で戦ったりという所に凄くムラがあって、なんか新旧の選手が一体化されていないような気がしてならないです。そこには私の持って行き方に責任があるのかなというのは今日思いました」と小林監督も話した徳島は、「3失点とも自陣で自分たちが繋ぐ所で引っ掛けられてという形」(斉藤)と失点のパターンも最悪に近く、「自分たちでゲームを壊してしまった」(斉藤)面は否めません。その斉藤は「まだまだチームとしてやるべきことがハッキリしていないというか、どうやって崩すのかという部分が見えてこなかったゲームだった」と語り、「今日で7節目になるんですけど、戦ってくれていないという風な気がしてならないです。戦う、走る、球際とかそういう所が全部欠落しているという所で、どうやって勝つんだろうという」とは小林監督。J1を経験してきた四国の雄が苦しんでいます。
「やられたというシーンは僕の中ではほとんどなかったんですけど、そういう部分では守る時はしっかり守る、どうやって守るというのは意思統一できたと思う」と柱谷監督も話したように、安定感のある3バックが後方に控え、中盤でのプレスも効いたこともあって、良い守備からのカウンターで3点を奪い切った水戸。「前が速くボールを動かしてゴールに迫っていくという所が、今日は一番の収穫だったかなと思います」と岩尾も認めるなど、縦に速く攻め切る姿勢はこの試合でも随所に感じられました。とはいえ、「ホームだったからできたとかじゃなくて、コンディションがとかじゃなくて、これをベースにやっていけるのが強いチームだと思うので、勘違いしないようにもう1回やっていきたいと思います」と改めて手綱を引き締めたのは中盤を完全に掌握していた岩尾。水戸の逆襲はこの笠松の地から既に始まっています。 土屋
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