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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年04月08日

J2第6節 大宮×熊本@NACK5

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0405nack.jpg序盤のヤマ場とも言うべき3連戦の3試合目。2勝2分け1敗で10位に付ける大宮と、1勝3分け1敗で13位に位置する熊本の一戦はNACK5スタジアム大宮です。
2005年にJ1初昇格を果たして以来、例年のように残留争いを繰り広げながら必ず落ちないというジンクスを10年近く続けてきた大宮。ところが、昨シーズンは監督交替という劇薬も空しく16位という結果で終わり、今シーズンからは11年ぶりのJ2で戦うことに。ここまでも5試合で2勝と決して好成績を上げているとは言い難く、「この連戦の一番最初、2試合目と引き分けだったので、『とにかく勝利を届ける』ということで選手にもそれを伝えた」と渋谷洋樹監督。序盤とはいえ負けられないホームゲームに臨みます。
ここ3シーズンは年々下がりつつあった順位も、前年の19位から昨シーズンは13位まで上昇。経験豊富な小野剛監督の下、チームのベースアップは間違いなく図られている熊本。今シーズンはここまで開幕からの連続ドローを含む3引き分けと勝ち切れないものの、前節の徳島戦は2点のビハインドを追い付いての勝ち点1獲得と粘り強いゲームを披露。ここまで五分の成績から一歩踏み出す上でも大事な90分間に挑みます。大宮の空は今にも雨の降り出しそうな曇天模様。16時4分、大宮のキックオフでゲームはスタートしました。


3分のファーストチャンスは大宮。カルリーニョスが右CKをショートで蹴り出し、渡部大輔のリターンをダイレクトで入れたカルリーニョスのクロスはゴールキックへ。5分のチャンスは熊本。「練習の所から去年1年間やってきて、今年はもっと試合に出なくてはいけないというのもある」という上村周平がヒールで左へ流し、齊藤和樹のクロスにニアへ飛び込んだ平繁龍一の前でDFがカットしましたが、双方がチャンスを創り合ってゲームは立ち上がります。
ただ、ここからは大宮に手数。7分にカルリーニョスが蹴った右CKを金澤慎が残した一連はシュートまで持ち込めなかったものの、10分にはルーズボールを拾った横谷繁がミドルレンジから枠の左へ外れるこのゲームのファーストシュート。11分には決定機。泉澤仁が左へ付け、ムルジャの正確な折り返しをカルリーニョスが叩いたボレーは枠の右へ。13分にも渡部の積極的なシュートでCKを奪うと、右から入れたカルリーニョスのキックを河本裕之は頭に当て切れませんでしたが、勢い付くオレンジ軍団。
ただ、様相が変化したのは2つのミスから。15分、渡部のミスパスをピッチ中央で拾った齊藤は、そのままドリブルで運んで左へ。マーカーを外して枠へ収めた平繁のシュートは、新守護神の加藤順大が抜群の反応でキャッチしましたが、16分も金澤がミスパスを犯してしまい、拾った中山雄登のスルーパスは嶋田慎太郎と合わなかったものの、大宮の続いたパスミスで熊本が引き寄せたペース。
18分は熊本。右サイド、ゴールまで約25mの位置で獲得したFKを、「去年は6試合に出て、だんだん自信も付いてきていますし、今年もずっと出続けられているので、自分のプレーというのは徐々に出せてきている」という嶋田が直接狙うもボールはわずかに枠の右へ。21分も熊本。高柳一誠、嶋田と繋ぎ、齊藤が左へ回すと、平繁の浮かせたシュートは和田拓也が懸命にゴールカバーへ戻り、一旦は破られた加藤が何とかキャッチ。24分も熊本。中山の左FKがこぼれ、片山奨典のボレーは大きく枠を外れましたが、「相手のディフェンス面、こちらの攻撃面で入り口は創らせてもらっていた」と小野監督。一気に形成は逆転します。
「連戦のせいなのかちょっとわからないですけど、ボールに対して全然プレッシャーに行けない、ラインが下がるという状況」と渋谷監督も振り返ったように、とりわけ15分以降の大宮はボールアプローチへほとんど行けない状態に。これに関しては嶋田も「結構中盤とかでもある程度時間を持てたので、あまりプレッシャーを掛けてこないなというイメージでした」と話しています。その中で4-1-2-3を敷いている熊本は、アンカーの高柳に加えて、その前に並んだ上村と中山で組んだ中盤でボールがしっかり動き、左右に揺さぶりながら大宮の穴を窺う流れに。「相手にペースを握られたかなという部分もありました」と話したのはリーグ初スタメンの大山啓輔。躍動するアウェイチーム。
36分には大宮にもようやくサイドアタックが。泉澤とのワンツーで左サイドを抜け出した和田がクロスを放り込み、ムルジャのヘディングはヒットしませんでしたが、ようやくこの日2度目となるクロスからのフィニッシュを。38分にもムルジャが左へラストパスを送り、泉澤のシュートは高柳にブロックされたものの、エリア内で崩す形も。40分にもカルリーニョスの右CKを、ニアで合わせた菊地のヘディングは枠の左へ逸れましたが、わずかに大宮が取り戻しつつあるゲームリズム。
42分はまた大宮のイージーミス。金澤が信じられない形でボールを失い、奪った中山は良く戻った大山へのファウルでカウンターには持ち込めませんでしたが、あわやというシーンにザワつくスタンド。45分は熊本のビッグチャンス。嶋田のパスを右へ開いた齊藤がクロスに変え、DFのクリアボールを中山が冷静に1人かわしてシュート。ここも加藤がファインセーブで何とか凌いだものの、「前半は後手後手でピンチを迎えていた」(渋谷監督)「前半はかなり優勢に進めることができた」(小野監督)という両指揮官の共通認識に、「前半は結構自分たちのペースでできたかなと思う」と上村も同調。全体的に熊本ペースの45分間はスコアレスでハーフタイムに入りました。


後半の頭から動いた渋谷監督。「金澤選手のボールの失い方が後ろ向きの所で取られていたので、少しそこを懸念して交替しました」と再三のミスが目立った金澤を下げて、横山知伸をそのままボランチの位置に投入。「前半は相手のパス回しも良くて、結構決定的な所まで持っていかれていたので、そこで防波堤になるというか、潰したいなという意識を持って入りました」というボランチに守備の安定を託すと、47分にはカルリーニョスの右FKから最後は横谷が熊本のGK原裕太郎にセーブを強いるシュートを放つなど、先制と勝利への意欲を明確に打ち出します。
「トップスコアラーが狙える選手」(渋谷監督)の強烈な一撃。51分に泉澤が相手の裏へパスを落とすと、どちらかと言えば体勢の良くなかったムルジャは園田拓也を吹っ飛ばしてボールを収め、1つ中へ持ち出すと右足一閃。軌道は大宮サポーターの目の前にあるゴールネットへ突き刺さります。「泉澤選手が良い形でボールを配球してくれたので、それをしっかり利用することができて良かったです」とは本人ですが、完全な個人の能力で奪ってしまったゴラッソ。負傷からようやく帰ってきたセルビア人ストライカーのスーパーな先制弾で、ホームチームがスコアを動かしました。
「全体的に結構みんな手応えを感じてハーフタイムを迎えていた」(上村)にもかかわらず、後半は開始早々からビハインドを追い掛ける展開となった熊本。失点直後の52分には藏川洋平を起点に平繁が右に振り分け、嶋田が利き足とは逆の右で上げたクロスを齊藤がヘディングで合わせるも、ボールは枠の右へ。54分に中山が右から鋭いFKを蹴り込むも、密集を抜けたボールは加藤が冷静にキャッチ。同点とはいきません。
56分に横谷とカルリーニョスの連続シュートを浴び、57分には横谷にミドルを打たれた熊本は、58分にここも右から入れた嶋田のクロスに平繁がシュートを打ち切れなかったシーンを経て、小野監督が1人目の交替を決断。「後半の入りがちょっと良くなくて、そこで失点をしてしまって相手の流れになったかなという感じ」と話した上村に替えて、養父雄仁をそのまま中盤に送り込み、もう一度好リズムを取り戻しに掛かります。
それでも流れは「後半はもう1回立ち上がりから行こうという話はしていたので、立ち上がりからアグレッシブに行けたんじゃないかなとは思います」と菊地も言及した大宮。62分、波状攻撃から大山が右クロスを送り、横山が続けて放ったシュートの2本目は高柳が何とかブロック。64分、横山が右へ巧みに流すと、大山のシュートは右サイドネットの外側に突き刺さり、ホームゴール裏からも大きな歓声が。66分には熊本も養父が35mクラスの無回転ミドルをわずかに枠の上へ外しましたが、68分は再び大宮。カルリーニョスの右FKを原がパンチングで掻き出すも、横山が残したボールを横谷が叩いたミドルはDFをかすめてクロスバーの上へ。完全にゲームリズムは大宮へ。
69分、カルリーニョスがマイナスに入れた右CKから、大山が放ったシュートは枠の左へ。72分、横山のボールカットから横谷が左へ回し、泉澤のシュートは原が何とかセーブ。すると、2度目の歓喜は流れを変えた18番が。73分、左からカルリーニョスが放り込んだCKが飛び出したGKを越えると、長い滞空時間から横山は頭でプッシュ。ボールはゴールネットへ弾み込みます。「点を取ってもどうしたらいいかわからないです。あまり点を取らないので(笑)」という横山を、ベンチメンバーも含めて多くのイレブンが取り囲みましたが「でも、ベンチはちょっと来るのが遅かったです(笑) それはシオさん(塩田)にも言いました。」とそのスコアラーはニヤリ。「やっぱりJ2の戦いはセットプレーが非常に大事」と渋谷監督。点差は2点に広がりました。
厳しくなった熊本は73分に2枚目のカードを。嶋田と常盤聡を入れ替えて前線のパワーを増強。79分には齊藤、平繁と繋ぎ、養父が右へ回したボールを平繁がシュートまで持ち込むも、ボールは枠の左へ。大宮も80分にムルジャと清水慎太郎をスイッチすると、81分には大山が右から好クロスを蹴り込み、フリーで飛び込んだ清水は歩幅が合わずにフィニッシュを取れなかったものの、3点目への姿勢を前面に押し出します。
83分には双方が同時に最後の交替を。大宮はイエローカードをもらっていた菊地が片岡と、熊本は巻誠一郎が中山と、それぞれ交替でピッチへ。熊本は巻と平繁が2トップに並び、サイドも常盤に齊藤という実質4トップ気味の布陣で最後の勝負を掛けましたが、90+1分に養父が右へ展開したボールから平繁がクロスを送るも、自ら飛び込んだ養父のヘディングは加藤のキャッチに遭い万事休す。「後半やっていたことをもう一度最初から、前半からできるようにしなければいけないですし、1つ1つのプレーの精度をもっともっと上げなくてはいけないというのは私自身凄く感じました」と渋谷監督からは反省交じりの言葉が出ましたが、後半に持ち直した大宮が勝ち点3を手にする結果となりました。


「前半の内にしっかりと決めることができれば、まったく逆の展開になっていたかもしれないという風に思っています」と小野監督が言及したように、熊本はリズムを一気に引き寄せた15分以降からハーフタイムまでの30分間で、少なくとも3度はあった決定機を生かせなかったことが、結果的に勝ち点を奪えなかった要因になってしまいました。とはいえ、その30分間で見せたパフォーマンス自体は間違いなく今後へ向けての明るい材料。「ずっと一緒にやってきたので慎太郎がいるというのは心強いですし、慎太郎がどういう時にボールが欲しいとか、どういう時にパスを出したいかというのは、たぶん他の誰よりもわかっていると思う」と話した上村と嶋田の19歳コンビには無限の可能性が。対戦相手にしてみると厄介なチームになり得る要素を、この日の熊本からは感じました。
大宮は横山の投入がキーポイントになりました。前半は金澤の不安定さを熊本が奪うポイントにしていた中で「ハーフタイムに替わるというのを聞いて、ちょっと狙うポイントをどこにするかというのをチーム全体でまた考え直すという感じだった」と話したのは熊本の上村。自身が入ってからのチームを「守備の面で後手を踏んでいた所を全体で修正できた所が大きいかなと思います」と横山が話せば、「ヨコが前にいることで結構ロングボールとかも跳ね返してくれますし、球際もヨコはガツガツ行ってくれるので、そこでフィフティフィフティのボールもウチにこぼれたりという場面も増えましたし、後ろとしては本当に頼もしいです」と口にしたのは菊地。ムルジャの決定力や「昨日の夜はあまり寝られなかったですけど、今日は思い切ってあまり緊張することなくできました」という大山の初スタメンフル出場など、いくつかの目立つトピックスの陰に隠れがちですが、横山のような選手がベンチに控えていることが、大宮の強さを最も表している部分だという印象を受けました。     土屋

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