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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年04月03日

J2第5節 東京V×北九州@味フィ西

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節目の第5節は今シーズン初となる水曜ナイター開催。1勝2分け1敗と五分の星で14位に付ける東京Vと1勝3敗の20位とやや出遅れた感のある北九州の対峙は味の素フィールド西が丘です。
シーズンを通じて苦しい戦いが続き、最後は20位でのフィニッシュで何とかJ2残留を果たした東京V。その昨シーズンの終盤にユースから"昇格"した格好の冨樫剛一監督が引き続き指揮を執る今シーズンは、「日頃の練習から自分たちが球際に行くとか、攻守の切り替えとか、そういう所を追求している中で、トレーニングの中ではなかなか選手も倒れないですし、連続性のある練習をできている」と指揮官も認めるように、トレーニングでの成果が五分という結果に直結。その数字を意味のあるものにするべく、「自分たちが一歩前に出て行くための戦い」(冨樫監督)に挑みます。
シーズンを通じて上位をキープし続け、結果は昇格プレーオフ圏内の6位。ライセンスの問題でプレーオフ進出はならなかったものの、日本サッカー界に一石を投じる素晴らしい成績を残した昨シーズンの北九州。ただ、迎えた今シーズンは内容こそ決して悪くないというチームの共通認識はあるようですが、ここまで黒星先行となかなか結果に恵まれていない日々を。3連戦の2試合目をしっかりモノにして、ホームへ帰りたい一戦です。西が丘は雨のみならず冷たい風も吹き付ける、観戦者には厳しいコンディション。少し寒さに震えるような気候の下、北九州のキックオフでゲームはスタートしました。


ファーストシュートは東京V。3分に中後雅喜が左足で枠へ飛ばしたミドルは、北九州のGK阿部伸行がファインセーブで応酬。その右CKを中後が蹴ると、キャプテンを託されている井林章のヘディングは枠の右へ外れましたが、早くも続けてフィニッシュを。6分にもコ・ギョンジュンが裏へ落としたボールから、アラン・ピニェイロが抜け出すもシュートは打てず、右へ落としたボールを中後が叩いたシュートはDFにブロックされましたが、ベテランボランチの積極的な姿勢がホームチームに勢いをもたらします。
一方の北九州も8分には右から内藤洋平がFKを蹴り込むも、ここは東京VのGK佐藤優也が確実にキャッチ。9分には左へ展開した流れからサイドパックの多田高行がクロス。内藤が頭で残し、渡大生のボレーはクロスバーを越えたものの、「渡も非常に良い調子だったので、(小松)塁を軸に渡がその前後や周りを動いてくれれば、2人のコンビネーションは使えるのかなと思っていました」と指揮官も話したストライカーがチームのファーストチャンスを。
そんな中で飛び出したのは目を見張るようなゴラッソ。14分、南秀仁が右へ流すと、上がってきたサイドバックの安西幸輝はクロスを中央へ。「ボールが上がって自分の近くに来た瞬間、ちょっと後ろだったのでヘディングするには難しいと思って、そこでアイデアが浮かびました」というアラン・ピニェイロがバイシクル気味に右足で放ったシュートは、GKも弾けずにゴールネットへ飛び込みます。「ベンチからだとかスタメンだとか関係なく、いつでも自分は準備しているつもりなので、入った時にどれだけチームに貢献できるかというのが大事だと思っています」と話すアラン・ピニェイロが3試合ぶりのスタメンでスーパーな一撃を。東京Vがスコアを動かしました。
以降は少しスリッピーなピッチコンディションもあってか、お互いになかなか攻撃の手数を繰り出せない膠着状態に。20分には北九州も風間宏希が左へ振り分け、多田がクロスまで持ち込むも井林がしっかりクリア。32分には小松が倒されて奪った中央左寄り、ゴールまで約25mのFKを内藤が直接狙いましたが、ボールはクロスバーの上へ。「クロスのワンチャンスを前半に決められて、それ以降も自分たちのペースではやれていた」と柱谷監督。どちらかと言えば少し北九州がボールを持つ展開が続きます。
33分は東京V。左から中後が入れたFKは阿部がパンチングで回避。35分は北九州。星原健太の右スローインからエリア内へ潜った内藤は、粘って粘って左足のシュートまで繋げたものの、ヒットせずにボールは枠へ飛ばず。「自分だけではなくてチーム全体で本当にみんなディフェンスをしていたと思います」とアラン・ピニェイロが触れたように、井林とコ・ギョンジュンのCBコンビとルーキーの三竿健斗と中後で組んだドイスボランチが守備で安定感を発揮した東京Vが、1点のリードを保ってハーフタイムに入りました。


後半も立ち上がりは東京Vペース。47分にはブルーノ・コウチーニョのパスから、右へ開いたアラン・ピニェイロがクロスを放り込み、阿部にキャッチこそされたものの、「彼とはコミュニケーションの部分で凄くやりやすい」とアラン・ピニェイロも認めるブラジルコンビでチャンスの芽を。51分にも中後を起点に澤井直人が左へ送り、福井諒司が好クロスを入れるもブルーノ・コウチーニョは打ち切れず、アラン・ピニェイロのシュートもDFにブロックされましたが、53分には中後が直接FKで、54分には中後の左CKからブルーノ・コウチーニョがヘディングでそれぞれゴールを狙うなど、セットプレーも含めて攻勢を続けます。
ただ、55分に星原の右クロスを多田が残して、内藤が放ったシュートがDFに当たってゴール右へ外れた辺りから、ペースは徐々に北九州へ。その右CKを内藤が蹴り入れ、こぼれを西嶋弘之が落としたボールはオフェンスファウルになりましたが、59分にも内藤がDFのクリアに遭うも右FKを中央へ。東京Vも65分に中後のパスから安西が思い切ったドリブルでシュートを狙うもヒットせず。62分には北九州に決定機。星原のクロスに対するDFのクリアが小さく、こぼれに反応した渡のシュートは佐藤が抜群の反応で掻き出したものの、その右CKを内藤が蹴り込み、ファーで前田和哉が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。「久しぶりの先発でしたけど、前線で非常に良く動いてチャンスもうまく創り出してくれたんじゃないかなと思います」と指揮官も言及した渡も絡んでゲームリズムは再び北九州へ。
冨樫監督は63分に「自分たちがなかなかボールが落ち着かなかったことと、ブルーノが下がってくることによってなかなか前線でタメができなかったので」2枚替えを決断。ブルーノ・コウチーニョと先制弾のアラン・ピニェイロを下げて、平本一樹と永井秀樹を投入し、「自分たちが少しボールを持つ時間を増やそうと」(冨樫監督)いう狙いをピッチへ落とし込みます。
それでも手数を繰り出すのは北九州。64分には右サイドを抜け出し、GKと1対1になった小松のシュートは飛び出した佐藤がファインセーブ。70分にも加藤弘堅のパスを風間は縦に打ち込み、渡が狙ったクロスは井林がさすがのクリア。柱谷監督も72分には渡に替えて切り札の原一樹を投入すると、73分には小手川宏基を下げて「最近練習ゲームや紅白戦でかなり点を取っていて、左利きなんですけど間でボールを受けたりできるしスピードもある」と評価した小谷健悟をJリーグデビューとなるピッチへ解き放って、打ち出す同点への強い意欲。
76分は北九州。原のパスから加藤が放ったシュートは、DFがブロックして枠の右へ。77分は東京V。中後の右CKはDFにクリアされ、三竿のミドルはクロスバーの上へ外れたもの悪くないトライを。「ちょっとシステムを4-1-4-1みたいな形にして、三竿をアンカーに永井と中後の距離感を良くしたことで、テンポ良くボールを失わない時間が増えて、また自分たちの時間になったかな」と冨樫監督。確かに75分前後からは「ヴェルディのリズムをしっかり創らなくてはいけない時間帯だったので、そこを凄く意識してやったつもり」という永井が低い位置まで下がってボールを受けながら、ショートパスでリズムを創るようなシーンも散見。良い意味でのリードしている余裕が見え始めると、輝いたのは"塾長"と"塾生"。
83分、平本がヘディングで基点を創ると、南は素早く永井へ。一瞬溜めて自分の空間を創った刹那、左サイドへ120点満点のスルーパスをグサリ。「絶対に出てくると思っていたのでボールを信じて走った」澤井は、飛び出すGKを冷静に見極めながら「普段の練習のイメージ通り」でゴール右スミへボールを流し込みます。「狙い通りでしたけど、澤井君だったんでね。まあ外すだろうなと思っていたんですけど(笑)」と笑った大先輩の期待を、良い意味で裏切る19歳の貴重な追加点。「あそこを逃さない永井秀樹の視野の広さというのは、本当に自分がやって欲しいこと以上のことをやってくれたと思います」と指揮官も絶賛のアシストで、点差は2点に広がりました。
終盤でダメージの大きい失点を喫した北九州。85分には多田と近藤祐介を入れ替え、「北九州に入ってサイドハーフだけじゃなくてサイドバックとかボランチとか色々やっていたので、自分の中でそんなにびっくりはしなかったです」と話した小谷を左サイドバックへスライドさせて、「もう行かなくては行けない」(柱谷監督)姿勢を鮮明に。90分にはその小谷が左から右足でクロスを送り込むも、原は収め切れずにボールロスト。刻々と消えていく残された時間。
44歳は狡猾に。90+1分、永井はたっぷり時間を使って右へ回し、安西のパスから途中出場の中野雅臣がドリブルで運び、シュートは打てなかったものの数十秒はきっちり消費。90+2分、中後の右ショートコーナーを三竿が戻し、中後が短く付けたボールを永井は鋭いスルーパス。ここは三竿のオフサイドを取られましたが、ここでも確実に数十秒を消費。「2人の所でボールが溜められる」(三竿)「俺らが浮き足立っていた所をあの2人が落ち着かせてくれて、自分たちもやりやすくプレーできました」(澤井)と2人が声を揃えたように、平本と永井の経験が引き寄せたゲームの流れ。
90+3分、「サイドハーフの時は周りが見えていなくて、試合の流れにしっかり入っていけなかったですけど、サイドバックになってうまく周りが見えるようになったので、そういう点で自分なりのプレーというのが少しは出たと思う」と振り返った小谷が左クロスを上げ、収めた小松のシュートがわずかに枠の左へ外れると、ほどなくして聞こえたのは河合英治主審のファイナルホイッスル。「やっぱり西が丘というスタジアムの中で、ファンの熱い想いというのが非常にダイレクトに自分たちに伝わってきて、後押しをもらったと思う」と冨樫監督も感謝を口にした東京Vが勝利し、サポーターとのラインダンスを雨の中で踊り切る結果となりました。


やはりこのゲームのハイライトは83分の2点目でしょう。「本当に超優しいパスだったので(笑) 『来た~』と思って。あの人ならではのパスだと思います」とスコアラーの澤井も話したスルーパスは、「アレを決めてくれなかったらね(笑) どうにもならないので良かったですよ」と永井も納得の1本。「あれで外した後にどうやって怒ろうかと考えていたんですけど、決めてくれたので良かったです(笑)」という先輩の言葉からも、後輩への信頼が窺えます。この澤井は何を隠そう"永井塾"の塾生。「最初は1人でシュート練習をやっていたんですけど、その時に永井さんがずっと見てくれていて、『これはダメだ。ただ打ってるぞ』ということをアドバイスしてくれて、そこから永井さんがパスを出して自分が打ってというのが始まった」と澤井。それを聞かれて最初は「まあ"永井塾"という名前のものがちょっとブームになってきているので(笑)」とかわした永井も、「でも、本当に若い選手で才能があると言われても、それをきちんと努力し続けないとやっぱり宝の持ち腐れになると思うし、自分たちも自分の経験も踏まえて『もっとやっておけば良かったな』という想いを若手に託したいということもあって、なるべく練習には付き合うようにしているんですけどね」と本音もチラリ。「もう永井さんには感謝しかないです」という澤井以外の"塾生"にとっても、"塾長"から学べるものの大事さをゲームの中で実感することがこれからも大いに出てくることは疑いようがありません。      土屋

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