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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年03月02日

ATHLETAマッチ2015 栃木×松本@グリスタ

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0301tochigi.jpg開幕を1週間後に控えた段階で迎える最後の実戦経験は黄緑決戦。栃木SCのサプライヤーでもある"ATHLETA"の冠が付いたプレシーズンマッチは栃木県グリーンスタジアムです。
育成型クラブとして決意を新たに臨んだ昨シーズンは12位。阪倉裕二監督体制も2年目に突入し、さらなるステップアップを狙う栃木SC。大久保哲哉や近藤祐介などアタッカー陣が移籍した中で、この日もスタメンに起用されたハン・ヒフンやパク・ヒョンジン、阪野豊史をはじめ、20代前半の選手を数多く迎え入れる補強を敢行。「開幕1週間前ということで今のチームの仕上がり具合がどれくらいかという位置付けのゲーム」(阪倉監督)ではあるものの、サポーターと勝利を喜び合う試合後まで含めて、来週の予行演習と行きたい一戦であることは間違いありません。
J2参入からわずかに3シーズン目。国内最高クラスの劇場とも言うべきアルウィンという後ろ盾も得て、トップディビジョンへの昇格を勝ち取った松本山雅FC。昨シーズンの躍進を支えた船山貴之は川崎フロンターレへの移籍を決断し、犬飼智也と山本大貴はレンタル元へ帰還することになりましたが、後藤圭太や酒井隆介、池元友樹、前田直輝など昨年のJ2で活躍の目立った選手を獲得するなど、地に足の着いた戦略を元にバージョンアップへ着手。「昨年なんてこの時期に大宮とやった時には違うシステムでやったんだから、今日の結果で一喜一憂する必要はないよ」と反町康治監督は相変わらずですが、J1での戦いへ向けて弾みを付けるべく結果も求めたい90分間に挑みます。試合前にはスタンドからグリスタおなじみの『栃木県民の歌』が。気温7.6度に降りしきる雨という観戦者には厳しいコンディションの中、松本のキックオフでゲームはスタートしました。


4分のファーストシュートは松本。喜山康平がエリアのすぐ外で倒されて獲得したFK。ゴールまで約25mの位置から岩上祐三が直接狙ったキックはカベに阻まれましたが、松本にとってのストロングでもあるセットプレーで1つチャンスを。ただ、徐々にペースを握ったのは「前半は非常にテンポも良かった」と阪倉監督も認めた栃木。11分にはCBの尾本敬からクサビを引き出した湯澤洋介が、左サイドをドリブルで運びながら思い切り良く放ったミドルは強烈に枠を襲い、松本のGK村山智彦も何とかセーブしたものの、あわやというシーンを。13分にも湯澤のドリブルから左CKを獲得するなど、ホームチームが攻勢に打って出ます。
一方、「最初は向こうの方がゴールに向かってましたし、勢いもなかった」と喜山も話した松本は、得意のハイサイドを取れずにセットプレーの脅威もチラつかすことができず、逆に15分にはハン・ヒフンのフィードから廣瀬浩二にハイサイドへ潜られ、最後は本間勲にクロスバーを越えるミドルを許すなど、続いた耐える時間帯。
すると、20分には栃木にセットプレーのチャンス。松本のビルドアップに乱れが生じ、「ちょっと相手も来ていてボールも浮いていたので、コントロールにちょっと時間が掛かった」喜山のロストを中美慶哉がかっさらうと、戻った酒井がたまらずファウル。中央右寄り、ゴールまで25m強の距離からパク・ヒョンジンが右スミを狙ったFKは、パーフェクトな軌道を描いてゴールネットへ吸い込まれます。広島から加入したレフティが名刺代わりの鮮やかな一発を。栃木が1点のリードを手にしました。
ビハインドを追い掛ける展開となった松本は、21分に喜山のパスから池元がミドルを放つもクロスバーの上へ。逆に23分には栃木も湯澤のドリブルで獲得したCKを右からパク・ヒョンジンが蹴ると、ハン・ヒフンが競ったこぼれを叩く阪野のシュートはわずかに枠の右へ。さらに26分にもパク・ヒョンジンがFKをクイックで右へ流し、廣瀬の折り返しに阪野がフリーで合わせたシュートはここもわずかに枠の右へ外れましたが、「それは個人的な部分」と言いながらも「我々のキッカーの質が上がるというのはありがたいこと」と阪倉監督も話したように、パク・ヒョンジンというキッカーを得た栃木が松本のお株を奪うような格好で、セットプレーから連続してチャンスを創出します。
27分は松本。岩上が右へ流し、田中隼磨のクロスにオビナが合わせたボレーはDFがブロック。「去年は特に(船山)貴之なんかは取った後にすぐ裏に抜けるプレーが多かったんですけど、今年はイケさんもちょっと違うタイプかなと思いますし、そういう部分で裏へのランニングが去年に比べて少なくなっているのかなというのは感じている」と口にした岩間が29分に送ったフィードは、まさにフリーでギャップに潜った池元へ届きかけるも、少しタイミングが合わずに栃木のGK桜井繁がキャッチ。「今日はオビナがヘディングの所であまり勝てていなかったので、結構どうしてもこっちの陣地でやることが多かった」と喜山。上がらない攻撃のテンポ。
それでも、ようやく35分を過ぎたあたりからは松本もハイサイドへの侵入がチラホラ。40分に喜山が左から蹴ったFKを、後藤が折り返したボールはDFにクリアされましたが、42分にはセットプレーから決定的なシーン。相手との接触でピッチ外に出ていた岩上に代わり、岩沼が蹴り入れた左CKは飛び出したGKが触れず、後藤が丁寧に枠へ収めたヘディングは気の利く位置取りでチームを引き締めていた小野寺達也がライン上で掻き出しましたが、ここに来てセットプレーの威力が。
43分は前半最大のチャンス到来。酒井のフィードにオビナが競り勝つと、裏への飛び出しを意識しているという岩間が3列目から走って中へ。池元を経由して田中が放ったシュートはDFのブロックに遭い、その田中が残したボールを上がってきていた飯田真輝がシュートまで持ち込むも、DFをかすめたボールは右のポストを直撃。最後の5分間はラッシュを見せたものの、「前半なんかは相手に押し込まれる時間も長かったですし、攻撃の面でも前に前にというプレーが少なかったですし、精度もあまり高くなかった」と岩間も言及した松本に対して、ホームチームの良い所が随所に目に付く展開で最初の45分間は終了しました。


「チームとして奪いに行けるという感じを受け取ったらみんなが行くし、危ないと思えば戻るし、というような所はできていたかなと思います」と前半を振り返った阪倉監督は後半開始から2枚替え。前半でイエローカードをもらっていた本間と西澤代志也、GKの桜井と竹重安希彦をそれぞれ入れ替え、残された45分間へ向かいます。
49分に松本は岩上が裏を浮き球で狙い、池元が走るもハン・ヒフンと尾本敬のCBコンビに挟まれ、最後は竹重がキャッチしたシーンを経て、51分は栃木。パク・ヒョンジンが入れた右FKは村山にキャッチされるも、鋭いボールを中へ。53分も栃木。左サイドで湯澤のリターンを受けた中美がクロスを送るも、阪野のヘディングは当たり切らずに枠の左へ。55分には岩間、池元と繋ぎ、オビナが中へ戻したボールを小野寺が鋭くインターセプトすると、パスを引き出した湯澤は左から50m近いドリブルで右まで運び、阪野のクロスはDFにクリアされたものの、「ハメに行ってもちょっと外されて運ばれて、またラインが下がってという場面も結構あった」と岩間も言及した通り、湯澤がチームへもたらす縦への推進力。60分にも西澤が縦に付けたボールを、ギャップで受けた廣瀬が繋ぎ、湯澤はオフェンスファウルを取られて相手ボールになりましたが、「全体的に出足とかそういうのは球際の部分も含めて、栃木さんの方が1枚も2枚も上かなという感じ」とは反町監督。大きな流れは変わりません。
嫌なムードを変えるのはやはりセットプレーで。61分に岩上の左CKをニアへ突っ込んだ酒井がヘディングで枠へ飛ばし、ここは小野寺が体を張ったブロックで何とか凌ぎ、直後に再び岩上が蹴った左CKは阪野がクリアしたものの、続けてCKで相手ゴール前を窺うと、65分に魅せたのはブラジリアンストライカー。FKの流れから上がっていた後藤が左クロスを放り込み、酒井がフリックしたボールにオーバーヘッドで飛び付いたのはオビナ。わずかに竹重が触ったボールはクロスバーにハードヒットするも、「凄いのを打ったな」と反町監督も口にしたダイナミックなワンプレーで、松本のギアが一段階上がります。
65分に池元と前田直輝が交替した松本は、69分にも大きなチャンス。飯田がさすがの打点で競り勝ったこぼれを、岩沼は右足ダイレクトでズドン。惜しくもボールは枠の左へ逸れたものの、「後半は走り負けないという自信もある」(喜山)アウェイチームへ主導権は移行。70分に酒井と坂井達弥を、74分に喜山と石原崇兆をスイッチした松本に対し、栃木も74分に湯澤と廣瀬のサイドハーフコンビを下げて、西川優大と河本明人を送り込み、試合は最後の15分間へ。
仕事をしたのは新加入の22番と決意の3番。75分は左スローインの流れ。溜めたオビナからのパスを岩上が左へ浮かせて岩沼が繋ぐと、前田は鋭い切り返しでマーカーを外して、利き足とは逆の右足でクロス。飛び込んだ田中のヘディングは竹重も素晴らしい反応で弾き出しましたが、リバウンドにそのまま頭から突っ込んだ田中の執念が勝り、ボールはゴールの中へ転がり込みます。「前田はカラータイマーが付いているので。ウルトラマンよりは長いカラータイマーですけどね。ただ、そのカラータイマーが点滅する前ぐらいまでは良い仕事をするので、その90分のカラータイマーが売っていれば買いたいんですけど、売ってないんですよね」と反町節も飛び出した前田の一仕事で、田中はいわゆるオフィシャルのゲームでは加入後の初ゴール。松本がスコアを振り出しに引き戻しました。
78分に岩上の蹴った右FKは竹重が収め、82分にパク・ヒョンジンが蹴り込んだ右CKからハン・ヒフンがヘディングをゴール左へ外すと、両チームにさらなる交替が。82分の松本は新たに10番を背負うことになった塩沢勝吾がピッチへ。85分の栃木は高精度キックで存在感を発揮したパク・ヒョンジンと阪野が下がり、中野洋司とイ・デホンがそれぞれ左SBとCFに入ります。
86分は松本。横パスをカットした岩上が、そのままドリブルから狙ったミドルはクロスバーの上へ。88分は栃木。2本連続で獲得した左CKの2本目を短く蹴り出した西澤が、中美からのリターンをクロスに変えると、西川のヘディングは枠の左へ。89分に昨年は栃木の特別指定選手だった柴田隆太朗が岩上に替わって登場するシーンを挟み、ラストチャンスは松本。90+2分、岩沼が深い位置から蹴ったFKに塩沢が競り勝つも、先に反応した尾本がクリアすると、しばらくして村上伸次主審が吹き鳴らしたタイムアップのホイッスル。両サポーターが声を嗄らした雨中の90分間は、1-1の引き分けという結果になりました。


栃木は新加入選手も数多く試合に出場していた中で、加入6シーズン目となる生え抜きの小野寺達也が印象に残りました。パク・ヒョンジンと湯澤という攻撃性の高い左サイドのカバーも的確に行いながら、42分に61分と2度に渡って決定的なピンチを個人の嗅覚で防ぐなど、その貢献度は抜群。廣瀬の交替後はキャプテンマークを託されるなど、首脳陣からの信頼の高さも感じられます。また、全体としても「守備になった時や攻撃になった時のチームとしての意思統一」(阪倉監督)は既に一定以上の水準に。「『選手同士がしっかりと良い関係を創って1年間戦うんだ』と。良い時もあれば悪い時もあると。その中でチームが一体となって戦っていく、戦い続けるということをストロングポイントにしたいということは選手たちには訴えています」と語る指揮官の下、今シーズンの栃木も対戦相手にとっては厄介なチームになりそうな雰囲気は十分に漂っていました。
「自分たちのやりたかったサッカーがなかなか今日は出せなかったのかなとは思いますね」と岩間も振り返った松本は、特に前半に関しては終盤の5分前後を除いては難しい時間帯が長く、「ペナルティエリアのすぐ近くでFKを与えてしまうと、こういうことになるというのはずっと話をしていました」と反町監督も話した"こういうこと"で失点まで許してしまうなど、反省材料の多い45分間だったのかなと。ただ、移動も含めて「結構タイトなスケジュールで今日まで来た」(喜山)こともあって、「色々な意味で体が重たかったというのは否めない」(反町監督)ことも想定済み。試合後の囲み取材で反町監督も「俺は別に悪い試合だったなんて思ってないぞ」と明言していました。「やっていることは積み重ねてきたものなので、これからもそれを精度を上げてやっていく」と喜山は話せば、「ソリさんの下でやっていることができれば、J1のどの相手にもどの選手相手にも完封できるような戦い方だと思っていますし、それは自分たちも自信を持ってやっているので、あとはそれを自分たちがどれだけ90分間を通じて100パーセントでできるかという風に思っています」と岩間も自信の一端を。松本の新たな歴史は1週間後の豊田スタジアムでその幕が上がります。        土屋

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