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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年03月18日

ACLグループステージ第3節 柏×山東魯能@日立台

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0317kashiwa.jpgグループステージ突破に向けてお互いが絶対に譲れない折り返しのサードマッチ。首位を走るレイソルが中国の曲者を迎え撃つ舞台は当然聖地・日立台です。
吉田達磨新監督体制初戦となったのはいきなりのACLプレーオフ。先行しながら追い付かれる展開を2度繰り返した末に、延長でチョンブリを下して、2年ぶりにアジアの舞台へ舞い戻った柏。アウェイに飛んだ初戦の全北現代戦では、5バックに近い布陣で現実的に勝ち点1をものにしたチームは、ホーム開幕のビン・ズオン戦で工藤壮人のドッピエッタを含む5ゴールで大勝を収め、苦戦が続くJリーグ勢の中でも確固たる存在感を発揮。「選手も今日のゲームのポイントが物凄く大事なのは理解していた」と大谷秀和も話したように、ここを制すれば一気に決勝ラウンドの見えてくる大事なホームゲームを戦います。
昨シーズンは中国スーパーリーグで4位。中国FAカップ王者として、7回目のACLへとストレートインで乗り込んできた山東魯能。指揮官はアトレチコ・ミネイロを率いて2013年のコパ・リベルタドーレスを制するなど、ブラジル国内でも各方面から非常に評価の高い名将のクーカ。スカッドにも現役ブラジル代表のジエゴ・タルデッリ、アルゼンチン代表歴を持つワルテル・モンティージョなど、高年俸の外国籍選手を擁しており、難敵には間違いありませんが、ここ5回のACLはいずれもグループステージ敗退。逆に過去2回の出場時はいずれも決勝ラウンドまで勝ち上がっている柏にとっては、負けられない相手と言っていいかもしれません。アウェイのゴール裏には500人近いオレンジのサポーターも。その声量を掻き消す黄色いサポーターの絶叫が轟く中、柏のキックオフでゲームはスタートしました。


いきなりの決定機はアウェイチーム。4分に鈴木大輔のイージーなミスを見逃さず、かっさらったモンティージョがGKと1対1に。ここは飛び出した菅野孝憲が顔面セーブで回避しましたが、直後の左CKもモンティージョの蹴ったボールは中央へこぼれ、ワン・チアンが押し込んだシュートも菅野が何とかブロック。守護神の好守で回避したとはいえ、柏はいきなり2つのピンチを迎えます。
9分には柏も大津祐樹が粘って残し、武富孝介のパスからレアンドロが放ったシュートはDFに当たって枠の左へ。11分に山東が迎えたチャンスも柏のミスから。自陣の低い位置でパスワークの連携が乱れると、奪ったリー・ウェイ、モンティージョと繋ぎ、ワン・ヨンポーが打ったミドルはモンティージョに当たって枠の右へ外れましたが、ミスをチャンスへすぐさま結び付ける山東のしたたかさ。
ただ、「ミスが出たことに対してみんなネガティブに思っていないし、奪い返せばいいだけだけど、そのミスが連鎖して1つ2つ3つって続いていっちゃうのが問題」と大谷が言及した柏にも訪れた決定的なチャンス。12分、キム・チャンスが右サイドから素晴らしいクロスを送り込み、ゴール方向へ向かったDFのクリアはワン・ダーレイが弾き出し、詰めた武富が至近距離から狙ったシュートはここもワン・ダーレイが凄まじい反応で超ファインセーブ。16分、武富が右へ振り分けたボールをキム・チャンスが裏へ流し、レアンドロがマイナスへ折り返す完璧な崩し。工藤壮人のシュートはワン・ダーレイがファインセーブで掻き出したものの、2つの決定機で一気に変わったスタジアムの空気。
すると、23分に飛び出した先制弾。エドゥアルドが鋭いパスを縦に付けると、「エドゥが僕のマークに付いている選手が届かないようなボールを出してくれた」という大谷が素晴らしいターンで前を向いてスルーパス。受けた工藤のシュートはDFにブロックされましたが、詰めた武富のシュートはサポーターが陣取る目の前のゴールネットへ突き刺さります。「エドゥのパスが良かったので
、その後は工藤とタケの頑張りだと思います」と振り返った大谷のターンで勝負あり。柏が1点のリードを奪いました。
「試合のオープニングに何回もチャンスを掴んだがモノにできなかった」(クーカ監督)流れの中で、ビハインドを追い掛ける展開となった山東。27分にはモンティージョが中央右、ゴールまで約30mの距離からFKを直接狙うも菅野がキャッチ。29分にはリュウ・ビンビンがスピードを生かして左から中央に潜り、ジャン・チーが狙ったミドルは味方に当たって枠の右へ。「ちょっとレベルが違いましたね。ニーヤンみたいに初速が物凄い速いので、フラフラしてからボールを持つと間を突破されちゃうドリブルがある」と大谷も評したモンティージョやリュウ・ビンビンのドリブルはアクセントになるものの、なかなかグループとして崩す形は出てきません。
33分は柏。輪湖直樹の右FKに鈴木とDFが競り合ったボールは、ゴール方向へ飛ぶもクロスバーに当たり、エドゥアルドのボレーはヒットせず。35分も柏。鈴木の縦パスをきっかけに工藤、レアンドロ、武富を挟んで大津とヒールパスが繋がり、工藤のシュートはDFが何とかブロック。直後にもエドゥアルドが30mミドルをわずかに枠の左へ外すと、39分も柏。輪湖が入れた右FKのこぼれを工藤が落とし、大津のシュートはDFが何とかブロック。ようやくイージーミスも減少した柏の続く攻勢。
山東も42分には左からモンティージョがFKを蹴り込み、ジャン・チーが頭で合わせたシュートはクロスバーの上へ。45分にもモンティージョが放り込んだ右FKから、フリーになっていたジャオ・ミンジエンのヘディングはわずかに枠の右へ消えましたが、オフサイドの判定。「普段Jリーグで出てこないタイミングで足が出たり届いたりという所で、少しバタバタしてしまった前半はもったいなかった」と大谷は話しましたが、「気持ち良いくらいのマンツーマン」(工藤)を山東が敷いてくる中で、徐々に「自分のマークさえ外れて相手が後手後手にずれてくれば、1点目みたいにどんどんマークが空く」(大谷)という部分のアタックが出てきた柏が1点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムに動いたのは「柏はディフェンスも非常に堅かった」と話したクーカ監督。右SHのジャン・ウェンチャオを下げて、前線に長身ストライカーのハン・ポンを投入し、ワン・ヨンポーを右SHへスライドさせて後半へ向かうと、オレンジの咆哮は51分。右サイドへの展開からSBのワン・トンがクロスを送り込み、鈴木のクリアが小さくなったこぼれへ素早く反応したモンティージョは右足一閃。強烈な弾道が揺らした右スミのゴールネット。10番の一振りで山東がスコアを振り出しへ引き戻しました。
ホームでの勝ち点3はマストに近い柏。57分には大津、武富と回し、工藤が左足で枠へ収めたシュートはワン・ダーレイが好セーブ。60分にも左からカットインしながら工藤が放ったミドルは、ジャオ・ミンジエンに当たって枠の右へ。逆に61分は山東。ワン・ヨンポーがシンプルに裏へ落とし、リュウ・ビンビンのクロスに走り込んだ左SBのジョン・ジョンはシュートをゴール左へ外すも、積極的なオーバーラップでフィニッシュまで。「1回のチャンスをモノにしてゴールすることができた」(クーカ監督)山東にも勝ち越しへの雰囲気が。
続けて裏へ飛び出したのは「裏に走ればパスを出せる選手はたくさんいるので、お互いに信頼し合っていると思います」と語る現役韓国代表。65分、工藤のパスから大谷が裏へフワリと浮かせると、走り込んだキム・チャンスはヘディングで中へ。わずかに武富の動き出しが遅れ、GKにキャッチされたシーンを見て珍しく悔しさを露にした右SBは、66分にもレアンドロとのワンツーで右サイドを抜け出すと、ループ気味にフィニッシュ。やや当たりが薄く、ここもGKにキャッチされましたが、「去年まではオフシーズンにケガが重なったり、準備する期間が短かったんですけど、今年に関しては今の所順調に来ているのでコンディションの面でうまくいっている」というキム・チャンスのアタックは達磨レイソルの大きな武器に。ただ、スコアボードに並んだ"1"の数字は変わりません。
70分の決断は吉田監督。いつもに比べてミスの目立った茨田に替えて、太田徹郎をシャドーの位置へ送り込み、「セカンドを拾うのと相手が10番と18番を残していたので、まずはそこにアタックに行けるポジションを取りながら、バランスを崩すよりはそこの基点を潰す意識でやった」大谷がアンカーへスライド。73分にクーカも2枚目のカードを。ボランチのジャン・チーとハオ・ジュンミンをスイッチして、どちらかと言えば中盤の強度アップに着手します。
76分は山東にチャンス。ワン・ヨンポーが左へ振り分け、リュウ・ビンビンのクロスにフリーで合わせたハン・ポンのヘディングは枠の右へ。77分は柏。太田が右から蹴り入れたFKは、工藤が何とか頭で合わせるもボールはクロスバーの上へ。78分は柏に2人目の交替。武富に替わってクリスティアーノをピッチへ解き放ち、そのクリスティアーノが右FWへ陣取ると、シャドーに入ったのは「練習でもやったことはない」という工藤。慣れない位置にも「より攻撃的にゴールを狙っていった」9番の新ポジションは勿論指揮官のアグレッシブなメッセージ。79分にモンティージョが中央を運んで狙った25mミドルも枠の左へ。いよいよゲームは最後の10分間とアディショナルタイムへ。
82分にモンティージョが蹴った左CKも、85分に太田が蹴った右CKも、共にフィニッシュには結び付かず、86分には山東に最後の交替が。リュウ・ビンビンとウー・シンハンが替わりましたが、その交替時にかなり時間を掛ける流れを見ても、「何とか引き分けに持っていきたい感じ」(工藤)は明らか。87分には柏の波状攻撃が続き、最後は大谷、太田と繋いだボールをクリスティアーノがDFに当てた直後に、その一連で山東の選手がピッチに倒れていたため、ラフシャン・イルマトフ主審が試合を一旦止めると、両チームの選手が入り乱れて一触即発の雰囲気に。スタンドにも大きな怒号が飛び交います。
90分は柏。丁寧に繋いで太田が右へ流すと、クリスティアーノがニアサイドを狙った強烈なシュートは、ワン・ダーレイがさすがの反応でファインセーブ。直後の右CKを太田が蹴り込み、こぼれを叩いた大谷のシュートはDFが決死のブロック。左サイドで残したエドゥアルドのクロスを、中央で収めた大津の反転シュートは枠の右へ。アディショナルタイムは4分。積み上げられるポイントは"1"か、"3"か、はたまた"0"か。
ドラマの主役は自ら「今までプロに入って2点しか取っていない」と笑った22番。90+2分、時間帯の割には落ち着いたパスワークから太田の短いボールを工藤は右へ展開。受けたクリスティアーノが一瞬溜めて柔らかいクロスを放り込むと、ここへ突っ込んできたのは「クリスと目が合ってボールが来ると思った」という輪湖。「見えたコースにヘディングするだけでした」という軌道はゆっくりと、それでいて不思議に力強くゴール右スミへ吸い込まれます。「何で自分があの位置にいたのかわからない」という殊勲の輪湖が走り出すと、メインスタンド側にはベンチメンバーも全力疾走。「右からのクロスなのでオーガナイズとしては間違っていると思いますけどね。右のクロスに左のサイドバックが合わせるサッカーをしていないので」と冷静に振り返った大谷も、「輪湖の嗅覚が素晴らしかったんじゃないかなと思いますし、小さいから相手が気付かなかったんじゃないかなと思いますけど(笑)」と一応は賞賛を送り、「サポーターも最後の最後まで応援してくれたことが輪湖を後押ししてくれたのかな(笑)」と工藤もあえてサポーターの力を強調する中で、それでも「ゴールを褒めるしかない」と名将クーカも認めた"脇役"の大仕事にイレブンもスタッフも満面の笑み。「勝利を引き寄せるものをチームが持っているのかなと思う」と工藤。柏がホームで大きな大きな勝ち点3を奪い取る結果となりました。


劇的な勝利で決勝ラウンド進出へ大きな一歩を踏み出した柏ですが、「ホームで勝ち点3を積み上げられて、結果はすごく満足できますけど」と前置きしながら、「正直個人的にも物足りない試合。内容はもっともっとできると思うので、自分はそんなに良かったとは思わないですけどね」と話したのは大谷。「球際とかセカンドボールはどんなサッカーでも絶対に必要なことだし、決してJリーグが緩いとは思わないですけど、個人個人の戦いがフォーカスされるのがACLだと思うので、そういう所はやっていかないといけない」と強調したキャプテンは、途中出場で入ったクリスティアーノへ球際の緩さを指摘したとのこと。「どれだけボールに執着できるかというのが、今日のゲームで言ったらまだまだ物足りないと思う」と気を引き締める姿が印象的でした。例えばリズムに乗り切れていない茨田を見て、「バラをちょっと前に行かせて自分がどんどん降りてきて、バラにワンタッチで俺にリターンさせるようなボールでも触らせて、ちょっとミスを忘れさせるような所は意識しました」というような気の利かせ方や、「前半は後ろでボールを持ててもCBからレアンドロに入れるパスが長くて、かっさらわれた時にカウンターになりやすかったので、もうちょっと後ろのパス回しを高い位置でして欲しいという話はした」という現状把握の正確さをとっても、大谷のサッカーにおけるインテリジェンスは間違いなく国内最高峰。ハリルホジッチ監督率いる新生日本代表へ最も推薦したい選手だと個人的には思っています。       土屋

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