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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年02月08日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会3位決定戦 三菱養和SCユース×横河武蔵野FCユース@西が丘

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0208nishigaoka1.jpg近年の実績を考えてもこれが東京街クラブの頂上決戦。三菱養和SCユースと横河武蔵野FCユースが早くも雌雄を決する90分間は、聖地・西が丘です。
FC町田ゼルビアユースには勝利し、東京ヴェルディユースには敗れる、まさに"三すくみ"となったグループを2位で通過し、今日の3位決定戦に進出してきた三菱養和SCユース。 シーズン在籍したプレミアEASTからの降格を経験して、プリンス関東での戦いとなる今シーズンに向けて「当然やるからには上を目指すという大前提があるんですけど、一番はリーグに残留することじゃないですか。レベルで言ったら去年と変わらないと思っているし、そこの所で厳しい戦いになるのは間違いない」と話すのは山本信夫監督。リーグ戦前の最後の公式戦を勝利で飾り、新シーズンへの弾みを付けたい一戦です。
FCトリプレッタユースとは4-4と激しく撃ち合い、ジェファFC U-18には4-1で快勝を収め、グループ首位を懸けたFC東京U-18とのゲームは前半で2点を先制しながら、後半に3点を奪われる大逆転負けを喫し、グループ2位で西が丘へ進出してきた横河武蔵野FCユース。「今年のチームはそんなに下手じゃないのでボールも動かせるし、相手が嫌なことはできると思う」と増本浩平監督も新チームへの期待を口に。こちらは1週間後にT1リーグ開幕を控える中で、難敵の温度を体感する意味でも大事なゲームに臨みます。西が丘の上空は今にも雨が降り出しそうな鈍色。2月らしいコンディションの下、横河のキックオフで3位決定戦はスタートしました。


立ち上がりから勢いを持ってゲームに入ったのは「最初は良かったかなと思った」と増本監督も振り返った横河。ただ、その増本監督も「そこは養和さんが様子を見ていただけだった」と話した通り、ウォーミングアップを終えた養和が牙を剥いたのはわずか5分。右サイドでボールを持った瀬古樹(2年・三菱養和巣鴨JY)はカットインすると、GKの位置を見定めながら左足でループミドル。綺麗に描かれた軌道は、そのままゴール左スミへ吸い込まれます。去年の悔しさを知るナンバー7が早速結果を。養和が1点のリードを奪いました。
以降も「『いつも通りやれてるぞ』とちょっと思っちゃった」(増本監督)横河の出鼻を挫いた養和のペース。7分には瀬古の右CKをニアで根上鉄平(2年・三菱養和巣鴨JY)がヘディングで合わせるも、ボールは枠の右へ。11分には横河も右から渡辺基希(1年・横河武蔵野FC JY)がFKを蹴るも、養和のCF平山駿(1年・三菱養和巣鴨JY)がクリアすると、13分は再び養和のチャンス。瀬古の左FKは横河のCB宇野木晨平(2年・横河武蔵野FC JY)が弾き返し、飛び付いた杉山耕二(1年・三菱養和巣鴨JY)のヘディングはゴールキックになりましたが、「いつも先に点を取るまでは我慢だよと言っているんですけど、そういう意味では良い形でスタートを切れたと思います」と山本監督も話した養和が強める攻勢。
すると、19分の追加点は意外な形から。ルーズボールをエリア内で収めた横河のGKが、間を取ってからキャッチしようとしていた一瞬の隙を見逃さなかった松井輝純(2年・尚志高)は、そのGKのキャッチ寸前でボール奪取に成功。そのまま無人のゴールへ流し込みます。やや信じられないようなシーンに言葉を失う横河イレブンと、10番の抜け目ないゴールに沸き上がる養和イレブンの残酷なコントラスト。点差が広がりました。
「今年に関しては経験値の少ない子が多かったので、たぶん最初はバタつくし重いしというのは想像していた」(増本監督)横河が陥った断ち切れない負の連鎖。24分、やはりバックパスを捌こうとしたGKに平山が突っかけると、フィフティの競り合いから抜け出した平山をたまらずGKが倒してしまい、養和にPKが与えられます。自らキッカーを務める平山の選択した左スミへ、GKも必死に飛び付くも揺れたゴールネット。「予想外の感じでしたね」とは山本監督。スコアボードの数字は3-0に変わりました。
さて、3点のビハインドを追い掛ける格好となった横河は、渡辺基希と見木友哉(2年・横浜FC鶴見JY)がドイスボランチを組み、その前に梅原陸(2年・FC PROUD)を配した正三角形の中盤から、「この中でも後ろの人間で運ばせてやらせないと成長がないと思うので、見木を1個前に上げちゃって」(増本監督)渡辺基希がアンカーに入る逆三角形の中盤へシフトしますが、右SBで奮闘する田代雄大(2年・Forza'02)の積極的な姿勢ばかりが目立ち、生命線とも言うべき中央へと入っていく思い切りは依然として出てこず。26分には右サイドでSBの田嶋凜太郎(2年・三菱養和巣鴨JY)が松井との連携から好クロスを中へ。平山のインサイドボレーはクロスバーを越えましたが、養和が「ウチの左サイドの方で相手がボールを取りに来て、そこでうまく抜けて右サイドから行けていた時は良いプレーができていた」と指揮官も認めた右サイドのアタックから、さらに窺う次の得点。
32分に輝いたのは「味方を使うプレーは凄くうまいんですけど、自分で行く所は行くんだとか、自分でシュートを決めるんだという所がより出てくれば、もっと怖い選手になると思う」と山本監督も期待を寄せる1年生CF。ミドルレンジでルーズボールを収めた平山は、少し左に流れるとゴールまで約25mの位置から左足一閃。ボールは一直線にゴールネットへ突き刺さります。「あれだけ難しいシュートを決められるのであれば、その前の所で2点は取らなくてはいけないなという所ですね」と前置きした山本監督も、「でも、あれは本当に彼の良さが出たシュートで、あのタイミングで、しかも左足であそこに蹴るというのは素晴らしいプレーだと思います」と評価した一撃で4-0。試合の大勢は決しました。
「前半は気持ちが入り過ぎて、僕自身もそうなんですけど、足が止まってボールを目で追うような形になってしまった」とキャプテンの太田翔(2年・三菱養和調布JY)も悔やんだ横河は、ようやく39分にファーストシュート。見木の積極的なドリブルでの仕掛けから、梅原を経由して成実浩太郎(1年・Forza'02)のシュートは養和のGK塚田匡壮(1年・三菱養和巣鴨JY)がファインセーブで阻止。太田が詰めるもここは杉山がきっちりブロック。ゴールは許しません。
42分は養和の"右"。ボランチの齋藤一(1年・三菱養和巣鴨JY)が縦へ付け、和田賢人(2年・三菱養和巣鴨JY)、平山と繋いで瀬古が右へ流すと、上がってきた田嶋はエリア内からシュート。横河のGK福澤穂志亜(2年)もファインセーブで応酬したものの、直後に瀬古が入れた右CKから、杉山の落としに躊躇なく右足を振り抜いた和田のシュートはゴール右スミへグサリ。「今の時期だからというのも当然ありますし、行ける時には前から行くというのは当たり前のことだと思うので、特に今日の前半は良かったと思います」と指揮官も言及したように、前からのプレスも想像以上にハマった養和が大量5点をリードして、最初の45分間は終了しました。


「『やらねえんだったら止めちまえ』『チャレンジしないんだったら止めちまえ』と。やって失敗するんだったらうまくなるかもしれないけど、やらないんだったらうまくならないし。『やらないでミスして5失点して何になるの?』って話した」と増本監督。「監督にそう言われたらみんなも奮起すると思う」と太田。残された45分間で問われる横河のメンタリティ。
51分に飛び出したのは「トレーニングでもよくやる形」(増本監督)。左サイドで時間を創り、中央で成実が落としたボールに反応したのは太田。「いつもだったら3人目とかなんですけど、自分のタイミングで行けるなと思った」7番のミドルは右スミへ。GKも懸命に飛び付きましたが弾き出せず、ボールはゴールネットへ収まります。「入ると思ったので迷いはなかったです」と振り返った太田の追撃弾。横河のスコアボードにようやく1の数字が灯りました。
56分に動いた増本監督。堀切川遼(2年・クラブテアトロ)と梅原を下げて、渡辺将矢(2年・浦和レッズJY)と初田優真(1年・横河武蔵野FC JY)をそのままCFと攻撃的な中盤の位置に送り込み、さらなる反攻態勢を整えると、57分には初田のパスを受けた見木が縦パスをピシャリ。前を向いた太田のシュートは枠の右へ外れましたが、「後半になってやっと中央の縦パス、真ん中に入れるクサビが入ってきた」と増本監督。62分には太田が左へ流し、うまくラインブレイクした渡辺将矢のシュートは枠の右へ外れたものの、やっと見え始めた横河らしいアタック。
それでも、「シュート自体は素晴らしいシュートだったからそれはそれとしても、特に横河さんは中へ中へ来る相手だと思うので、内側を基本閉めて中へのパスは通させないということ」(山本監督)を後半の15分前後できっちり共有した養和も、CBの杉山と清野拓斗(2年・三菱養和巣鴨JY)に左SBの佐藤大介(2年・三菱養和巣鴨JY)も加えた最終ラインの3枚は、中央をしっかり閉めながら、バイタルに入り掛けたボールへはきっちりアプローチしてフィニッシュは取らせず。66分には瀬古の外側を回った田嶋のクロスへ、飛び込んだ松井の前でDFがクリアしますが、守備の危険なポイントを潰しながら、自らのストロングで次の1点を狙う姿勢を堅持します。
66分に和田と冨川凌平(1年・三菱養和調布JY)の交替を挟み、67分のアタックは養和。中盤をドリブルで運んだ齋藤のミドルは、DFをかすめて枠の右へ。そのCKを瀬古が蹴ると、飛び込んだ杉山のヘディングはゴール右へ。69分も養和。瀬古の左CKがこぼれ、松井が利き足とは逆の右足で狙ったループはクロスバーの上へ。71分に根上と替わって投入された森田大喜(1年・三菱養和調布JY)はその1分後、冨川のクロスへニアに走り込んでボレー。ボールは枠の左へ逸れましたが、簡単にゲームリズムを譲り渡すつもりは毛頭ありません。
73分に初田がトライしたミドルがクロスバーの上へ外れると、養和は3人目の交替に着手。「一番得意なのはトップ下だと思うんですけど、やっぱり点を取る選手になって欲しいので、できればFWで結果を残して欲しいと思っています」という山本監督の期待に2ゴールという結果で応えた平山に替えて、増田隆祐(2年・三菱養和調布JY)を投入。この大会でトライしている4-2-3-1から、ボランチに瀬古と齋藤を並べ、最前線の森田の下に増田と松井を配した3-4-2-1気味の布陣に形を変えて、ゲームクローズに入ります。
82分は横河。太田のパスから「前半でいつも通りプレーしようとしていたのは友哉しかいなかった」と指揮官に評された見木がミドルを放つも、ボールはクロスバーの上へ。83分は養和。飛び出した相手GKのクリアを拾った瀬古が、そのまま打ち切ったミドルは無人のゴールには飛ばず、枠の左へ。89分には養和が小原拓磨(2年・三菱養和調布JY)と萩原大揮(2年・三菱養和巣鴨JY)をピッチへ解き放つ最後の交替を。90+1分は横河。「モビリティがあって、動きながら前を向いて受けられていた」(増本監督)初田のパスから、成実が打ったシュートはクロスバーの上へ。迫り来るタイムアップの瞬間。
90+2分に魅せたのは「メンバーも中学時代にほとんど一緒に3年間戦ってきたメンバーなので、負けたくないというのはずっとあったんですけど、今週ずっとワクワクしていた」という古巣対決に燃えるキャプテン。こちらも古巣との対戦となった左SBの森田幸紀(1年・三菱養和調布JY)が、おそらくはこのゲームで初めて効果的なオーバーラップを見せてグラウンダーのクロスを送ると、ダイレクトで叩いた太田のシュートはゴールネットをきっちり揺らします。「後半になってやっと何かやり出したけど、お前は前半からやれよっていう話」と太田に厳しい注文を付けたのは増本監督ですが、古巣相手の2ゴールはせめてもの意地。とはいえ、現時点での力の差を見せ付けた養和がきっちり勝ち切り、新人戦を3位で終える結果となりました。


今日は少し幸運に恵まれた面もあったかもしれませんが、やはり養和の嵩に掛かって攻める意思が統一された時の迫力はさすがだなという印象です。また、比較的CFにポストプレーヤータイプがどっしり構え、そこへ入ったボールに選手が関わっていく今までの養和のイメージとは少し違って、この日の平山や森田が最前線に入るとゼロトップ気味に流動性も出てきますし、FC町田ゼルビアユース戦で起用された八木原匠(1年・東京ベイFC U-15)のようなCFらしいタイプも控えるなど、攻撃のバリエーションは例年より出てきそうな雰囲気は感じました。「今まで以上に謙虚に地に足を着けて1日1日の練習をやって、試合を通して成長していくというのは今までと何ら変わることはない」とは山本監督。1年でのプレミア復帰という茨の道へ、2015年シーズンの養和が走り出しました。
前半の5失点は痛恨の一言。それでも、その苦境をただでは終わらせないのが増本流。「後半はどんな話をしてもこういうゲーム展開になるのは目に見えていたし、システム上のこととかやり方とかはスゲー暗くて重い雰囲気の中でも選手同士で何か話はしていたから、『そこはいいや』と思ってほとんどハーフタイムは戦術の話はしていない」とのこと。当然相手も5点差で緩んだという面は差し引く必要はあるものの、選手たちで考えた"やり方"で「後半になると吹っ切れてみんなも前から行き出して、いつもみたいになった」(太田)という点は1つの光明だったのではないでしょうか。「FC東京さんとやらせてもらって何となくできていた部分が今日まったくできなくて、やっぱり波がこれだけあるというのは弱いチームだし、本物じゃないということ。でも、本物のチームの波のなさという所で、彼らが足りない部分を感じてくれればいいし、この時期なんでここから何を目指していくかという所で、彼らにとってみれば深く心に残るゲームだったんじゃないかなと思います」と増本監督。5点を取られ、2点を返して残った"3点差"。この時期に突き付けられた"3点差"の意味を少しずつ埋めるべく、横河には来週から早くもT1リーグという新たな航海が待っています。        土屋

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