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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年は決勝リーグで行われたダービーが今年はファイナルで実現。東京ヴェルディユースとFC東京U-18。永遠のライバルが頂点を懸けて戦う舞台は3年ぶりの西が丘です。
初戦で進境著しいFC町田ゼルビアユースに2-1で敗れたものの、藤吉信次新監督にとって就任初戦となった杉並アヤックス戦で16ゴールを叩き込んで勢いに乗ると、グループ首位を巡る三菱養和SCユース戦を3-0で快勝して、2年ぶりに新人戦ファイナルまで辿り着いた東京ヴェルディユース。「僕が見てから、出ているヤツも出ていないヤツも本当に全員モチベーションが高くて、それをずっと維持してきてくれているので、そこは良い競争が生まれているんじゃないかなというのはある」と話す藤吉監督に、今シーズン初タイトルをもたらすためにも負けられない90分間に臨みます。
「目標は日本一とプレミアのチャンピオンシップを獲ること」(佐藤一樹監督)。明確なゴールへ向けて、まずは新人戦の東京連覇で最高の船出を飾りたいFC東京U-18。初戦はジェファFC U-18を5-0、2戦目はFCトリプレッタユースを7-0と一蹴し、難敵の横河武蔵野FCユース戦は前半で2点を先制される苦しい展開ながら、新9番を背負う西元類(2年・FC東京U-15むさし)の2発で追い付くと、最後は新10番の佐藤亮(2年・FC東京U-15むさし)が決勝ゴールを奪い、大逆転で2年連続のファイナルへ。「去年の積み上げの部分をさらに積み上げていくのと、さらにU-18として築いてきている歴史を継承していくというのが今年のテーマ」と佐藤監督。こちらも今の立ち位置を測るには絶好のダービーに挑みます。強い雨が降り注ぐ悪天候にも関わらず、バックスタンドには緑の、ゴール裏には青赤のサポーターも集結。注目のファイナルはFC東京のキックオフでその幕が上がりました。
「頭の15分は先に点を取られてしまうとちょっとシンドいなというのもあったので、多少ラフでもいいのであまりリスクを負わないと。ただ、相手があまり出てこないようであれば、自分たちのリズムに引き込むという所だった」と佐藤監督が話した狙いはおそらく双方が一緒。あまり手数が出て来ない中で主導権を取り合う時間が続きます。
14分はFC東京。佐藤亮が蹴った左CKから、新キャプテンの渡辺拓也(2年・FC東京U-15深川)がゴール左スミへ飛ばしたヘディングは東京Vの松本幹太(1年・東京ヴェルディJY)がクリア。17分は東京V。左から冨樫凌央(2年・東京ヴェルディJY)が入れたFKは、東京のGK波多野豪(1年・FC東京U-15むさし)がしっかりキャッチ。18分はFC東京。右サイドから相原克哉(2年・FC東京U-15むさし)が狙ったミドルは枠の左へ。ややFC東京がボールを持つ時間も攻撃の回数も多い中で、主導権を完全に奪うまでには至りません。
なかなか攻撃の形が出てこない東京Vの中で、可能性を漂わせていたのは「あそこはコンビネーションとして凄く出来上がっている」と藤吉監督も認める左サイド。28分には左SHの林昇吾(2年・東京ヴェルディJY)が外に短く出し、回ったSBの松本がクロス。ここは中央でDFのクリアに遭いましたが、松本の躊躇ない積極的なオーバーラップはチームに小さくない推進力をもたらします。
一方の東京も左サイドに活気が。28分には大熊健太(2年・FC東京U-15深川)が左サイドで残し、小山拓哉(2年・FC東京U-15むさし)の鋭いクロスに佐藤が走り込むも、東京VのGK村田怜穏(1年・東京ヴェルディJY)が飛び出し、DFが何とかクリア。31分にも「面白いヤツも出てきていると思う」と話す佐藤監督が一番に名前を挙げた、ボランチの鈴木善丈(1年・FC東京U-15むさし)が左へ振り分けると、SHの生地慶充(1年・FC東京U-15むさし)はエリア内へ侵入。1人かわした後のドリブルが大きくなり、最後は村田にキャッチされましたが、東京もレフティたちの躍動で一気に掴みたいゲームリズム。
32分には平田竜士(1年・東京ヴェルディJY)が左へ回し、林を経由して松本の上げたクロスは渡辺がきっちりクリアしましたが、35分の歓喜はやはり左サイドから。上がった松本が縦に付け、開いていた平田がニアへクロスを送ると、うまく潜った郡大夢(2年・東京ヴェルディJY)のヘディングはゴール右スミへ弾み込みます。きっちり仕事をしたのは19番を付けたストライカー。「左サイドの崩しが凄く良くて、入るタイミングも良かった」と藤吉監督も賞賛した一撃で、東京Vがスコアを動かしました。
「何となくボールを持っているようで入れられてしまった」と佐藤監督が表現したFC東京は1点を追い掛ける展開に。44分には佐藤亮のパスから相原が入れたクロスは、戻った冨樫がきっちりクリア。45+1分には左サイドから小山が放り込んだクロスに、大熊がヘディングで合わせるも当たらず、村田が丁寧にキャッチ。最初の45分間は少し耐える時間の長かった東京Vが、わずか1本のシュートを成果に結び付け、1点のアドバンテージを手にした格好でハーフタイムに入りました。
後半スタートから動いたのはリードしている東京V。ボランチに入っていた相馬雄大(1年・東京ヴェルディJY)と井上潮音(2年・東京ヴェルディJY)を入れ替え、さらに右SHの佐藤瑠己安(2年・ヴェルディSS花巻)とU-17日本代表のベラルーシ遠征から帰ってきた渡辺皓太(1年・東京ヴェルディJY)もスイッチして、少し空き気味だった中盤のスペースケアも含め、全体のバランス維持に着手します。
47分はFC東京のチャンス。生地が左から中へ戻すと、大熊が枠へ飛ばしたシュートは村田がファインセーブで回避。その左CKを佐藤亮が入れるも、混戦から郡が大きくクリア。「全員レフティで揃えちゃおうかなみたいな」と佐藤監督も笑うほど、レフティの多い青赤のアタッカー陣が、その高い技術を生かして前面に押し出す同点への意欲。
56分は東京Vのチャンス。鋭い中央突破で渡辺皓太が獲得したFK。ゴールまで約20mの距離から、渡辺皓太が自ら狙ったキックはカベに当たり、すかさずCBの品田龍之介(2年・東京ヴェルディJY)が頭で押し返すも、波多野が何とかキャッチ。59分も東京V。右から林が蹴ったFKは波多野が直接キャッチ。60分も東京V。林の右CKを相原が弾き出し、こぼれを拾った林の再クロスは波多野が何とかパンチング。セットプレーの連続で応酬する緑の勇者。一進一退。譲らない両雄。
62分に安部柊斗(2年・FC東京U-15むさし)のパスから生地がミドルをクロスバーの上へ外すのを見て、佐藤監督は一気に2枚替えを決断。相原と西元を下げて、「周りのコンビネーションを生かしながらグッと前に入って行けるという所と、スケール感もあるのでセットプレーとか、そういう所で威力を発揮してくれればなという所」と期待を寄せる柳貴博(2年・FC東京U-15深川)と伊藤純也(1年・FC東京U-15むさし)を送り込み、攻撃へのアクセルを一段階踏み込むと、66分にはそのFC東京にビッグチャンス。生地が左から上げたピンポイントクロスに、3列目から走り込んだ安部は渾身のボレー。懸命に飛び付いた村田がファインセーブで叩き落とすも、きっちり佐藤亮が押し込んで同点かと思われた直後、やや遅れて上がった副審のフラッグは佐藤亮のオフサイドという判定。サイドアタックからの決定機もゴールとはいきません。
藤吉監督が言及したのは「今日はちょっと右サイドが引き出されて、中に寄っちゃって2対1を作られることが多くて、僕の采配の所で流れの中でなかなか修正が難しかった」部分を、ハーフタイムでその右サイドの中盤とボランチのラインで人を入れ替えながら、「後半になってからボランチがあまり引き出されないようにしようということでだいぶ収まった」ということ。66分のピンチは東京Vの右サイドからでしたが、それも後半に入ってそのサイドからのピンチはおそらく初めて。気になる部分の修正はきっちり図りながら、「やっぱりこのスタジアムでサポーターやみんなの応援がいて、選手と一緒に戦いたいという気持ちはあるんですよね。アイツらは『うるせえな』と思ったかもしれないけど(笑)」と時にテクニカルエリアを飛び出しながら選手を鼓舞する指揮官のほとばしる情熱。
72分はFC東京。小山の左クロスに佐藤亮が飛び込むも、わずかに届かず。75分もFC東京。鈴木を起点に佐藤亮が右へ流し、柳が蹴り込んだクロスは東京Vの右SBを務める小幡裕稀(1年・東京ヴェルディJY)がしっかりクリア。76分もFC東京。伊藤の左CKを岡崎慎(1年・FC東京U-15深川)が懸命に残すも、素早く反応した林が確実にクリア。このままでは終われないFC東京も、70分を過ぎるとさらにテンポを上げた感はありましたが、「らしさはちょっとしか出なかった」(藤吉監督)中でも、むしろ球際での執念や寄せる速さで上回った東京Vが、品田と東山亮(2年・東京ヴェルディJY)のCBコンビを中心に高い集中力でがっちり受け止めて弾き返す展開に。逆に76分には右サイドをドリブルで運んだ井上のシュートが枠を襲い、波多野がファインセーブで掻き出したボールを渡辺皓太が中に戻すも、DFのクリアに阻まれましたが、ちらつかせる2点目への渇望。進めていく時計の針。
80分はFC東京。渡辺がシンプルなフィードを蹴り込み、3人目のカードとして送り込まれたばかりの半谷陽介(1年・FC東京U-15深川)が走るも、飛び出した村田がキャッチ。87分もFC東京。相手の横パスをかっさらった小山が、そのままドリブルから放ったミドルは枠の左へ。88分は双方に交替が。FC東京は内田宅哉(1年・FC東京U-15深川)を、東京Vは大久保智明(1年・東京ヴェルディJY)をそれぞれ投入し、白熱のダービーもいよいよクライマックスへ。
89分はFC東京。なかなか良い形を創れなかった大熊が伊藤のパスを引き出し、自ら右サイドをぶち抜いてエリア内へ突入するも、飛び出した村田が果敢にボールをキャッチすると、これが青赤にとって最後のアタック。アディショナルタイムも粘り強く消し去った緑に凱歌。「決勝で優勝するという所を目標にみんなが頑張ったというのは良かったなと思うし、良い経験になったと思う」と藤吉監督も話した東京Vが、2年ぶりに新人戦の東京を制する結果となりました。
ライバル相手のダービーに敗れ、連覇はならなかったFC東京。佐藤監督は「ヴェルディの気持ちを凄く感じた試合だったと思いますし、さすがヴェルディだなと。かたやウチは少しうまいことをやろうとする選手が増えてきて、謙虚にサッカーに向き合っている選手がヴェルディの方が多かったのかなという印象を僕は持ちました。そこの差だと思います」とゲームを振り返っていました。ただ、「特にこの大会に向けてコンディション調整してきた訳じゃなくて、昨日も今日もバンバンやっているので、思った以上に体が動いていなかったなというのは見ていて思った。僕の中ではもちろん優勝するに越したことはないので、それはもちろん目指すんですけど、もっと先を見た中でこのゲームを通して、ヴェルディさんに鍛えて頂ければなという所もあるので、そういう意味では凄く色々と膿が出た」と本音もチラリ。去年はこの同じステージで負けた養和が夏の日本一に輝いた例を引き合いに出しつつ、「負けた試合からのリバウンドメンタリティじゃないですけど、『サッカーはそんなに甘くないんだよ』というのをここでしっかり教えてもらったというのは凄く良かった」と話す佐藤監督には、プレミアという日本最高峰のステージへ挑むチームの輪郭がしっかり見え始めているようです。
「やっぱりいいもんですね。みんなが喜んでいて」と優勝の喜びを語った藤吉監督には、「負けても今日は決勝をやるというのが僕の中では凄く大事で、これで負けて課題が出ていたらそれはそれで凄く良いものになるし、悔しさというのは次に繋がるものは絶対あるから、結果はどっちでも100パーセントでやってくれたらいいなと思った」というイメージが試合前からあったとのこと。その決勝が勝利で終わったことを受けて「勝って内容をさらに求めていくというのは、さらに良いかなと改めて思ったんですけどね」と既にこの90分間を今後へどう生かしていくかの青写真は浮かんでいるようです。就任してからの3週間あまりを「こういう質の高い選手たち、志の高い選手たちを指導できるというのは幸せですし、良いスタッフに恵まれているというのは幸せですし、非常にやっていて幸せですね。幸せを感じてやっていますね」と何度も"幸せ"というフレーズを使って表現した指揮官は、「さっき試合後に『藤吉ヴェルディ』とか言われた時に『何かやっちゃおうかな』と思ったけど、選手たちも『おっ、おっ』みたいな顔をしたから『いや、まだ止めとこう』と思って(笑)」と、"らしい"エピソードで我々を笑わせる一幕も。「そういうのはもうちょい上に行った時にね。ちょっと抑えてます(笑)」という藤吉監督の"封印"が解かれる日も、決して遠い日のことではないかもしれません。 土屋
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