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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年02月24日

TM 千葉×山形@フクアリ

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0222fukuari.jpgトップディビジョンへの挑戦権を巡る最後の切符を争った両者が2ヶ月ぶりに再会。千葉と山形のトレーニングマッチは、おなじみフクダ電子アリーナです。
2010年に足を踏み入れたJ2でのシーズンも今季で6シーズン目。ここ3シーズンは続けて昇格プレーオフまで進出したものの、2012年、2014年と2度の決勝敗退を強いられているジェフユナイテッド千葉。今シーズンは最終ラインを束ねてきた下部組織出身の山口智を放出し、キャプテンを務めてきた山口慶も現役引退を決断。新主将には同クラブとして22年ぶりの外国籍選手の主将となるパウリーニョを指名し、関塚隆監督の下に小倉勉コーチと里内猛フィジカルコーチと、ロンドン五輪のスタッフも集結するなど、新たな改革を施しながら、不退転の覚悟で自動昇格を狙います。
劇的過ぎる守護神の決勝ゴールでセミファイナルを制すと、勢いそのままにファイナルでも千葉を下して、4年ぶりのJ1復帰を決定。さらに天皇杯でも日産スタジアムで行われた最後の1試合まで辿り着くなど、クラブ史に刻まれるようなシーズンを過ごした昨年の山形。来たるべき再チャレンジの1年に向けて、昨シーズン終盤の快進撃を支えた山岸範宏と川西翔太を完全移籍で改めて迎え入れ、CBには渡辺広大、中盤にはJリーグでのプレー経験を持つアルセウと効果的な補強を敢行。「今日の目的いうのは90分サッカーをやるということ」とは石﨑信弘監督ですが、サポーターも見守る中で開幕へ向けて弾みを付けたい一戦に臨みます。「去年から鎬を削っている」(松岡亮輔)両雄の激突を一目見ようと、スタジアムには5365人のサッカージャンキーが集結。あいにくの冷たい雨の中、11時にゲームはキックオフを迎えました。


先にチャンスを創ったのはアウェイチーム。4分、左からキム・ボムヨンが高いクロスをややアバウトに放り込み、林陵平が競り合ったこぼれを山田拓巳は左足でミドル。ボールは枠の右へ外れましたが、積極的な姿勢を打ち出すと7分にもフィニッシュが。松岡が左へ展開したボールから、キム・ボムヨンは鋭く中へクサビを当て、ディエゴが粘ったこぼれを山﨑雅人が叩いた左足シュートもゴール右へ外れたものの、「先手を取れたのかなというような入り」と當間建文も話した山形が、まずは勢い良く立ち上がります。
以降も手数は山形。13分に左CKを石川竜也が蹴ると、ファーで山﨑が折り返し、ディエゴのシュートは弱く千葉のGK岡大生にキャッチされたものの、デザイン通りのセットプレーを。14分には石川が左のハイサイドへ送り、キム・ボムヨンはフリーでクロス。これもフリーで合わせたディエゴのボレーはヒットせず、岡にキャッチされましたが、サイドアタックも機能。16分にも當間のフィードから、こぼれを山田が素早く拾ってゴール右へ外れるミドルまで。「前から連動してのプレスというのはこのキャンプでもやってきた」(林)というプレスもしっかりハマり、続く山形の好リズム。
そんな中でもとりわけ目立ったのは「しっかり前も走るし後ろも走るし。まだまだ雑な所はあるけどね。積極的にやろうという所は見えたんじゃないの?」と指揮官も認めた左WBのキム・ボムヨン。アップダウンの回数も多く、守備の取り所で前に出る思い切りとタイミングは秀逸。21分には左サイドでキム・ボムヨンが残したボールをアルセウがクロス。こぼれを再び石川が左からアーリーで蹴り入れ、林のヘディングは岡がキャッチしましたが、「(右サイドの守備は)言ってはいたんですけど、なかなかうまくいかなくて」と千葉のCB大岩一貴も言及したように、ホットゾーンは山形の左翼。
さて、24分にパウリーニョが30m近いミドルを枠内へ収め、ボールは山形のGK山岸範宏にキャッチされたものの、ようやくファーストシュートを放った千葉は「我々がプレスを脅威に感じてしまった所があったと思います」とそのキャプテンも話したように、山形のハイプレスになかなかパスを効果的に繋げません。さらに、「ああなるんだったら蹴った方が良いと思う」と大岩も語った通り、中途半端な横パスをかっさらわれてカウンターへ結び付けられるシーンが頻発。30分に谷澤達也のパスを受けた佐藤勇人は、右の裏へ狙いのあるパスを放ちましたが、新加入のネイツ・ペチュニクとはタイミングが合わずにチャンス逸。攻撃のテンポも上がりません。
34分は千葉。ルーキーながらスタメンに名を連ねたSBの北爪健吾が右サイドを上がると、森本貴幸は背面クロス。相手のクリアをペチュニクがそのまま打ったボレーは山岸がキャッチ。36分は山形。「仙台のような相手でも、あのハイプレッシャーを続ければチャンスは増えるかなと思います」と振り返った林とディエゴが高い位置でボールを奪い切り、林が左へ付けたボールをディエゴがボレー。最後は大岩にクリアされたものの、狙い通りの形から決定機を。37分も山形。石川の左CKは岡にキャッチされましたが、その岡のパスに猛然と突っ込んだキム・ボムヨンはボールカットに成功。山﨑を経由してディエゴが放ったシュートは岡にキャッチされるも、「まあ良かったんじゃない?あれはあれでね」と石﨑監督も独特の表現を使ったディエゴと林の連携も良好に、ゴールへ迫り続ける山形。
劣勢の千葉にさらなるアクシデント。39分にペチュニクがケガでの交替となり、そのままのポジションにオナイウ阿道が入ります。ただ、前半で最も良い形はそのオナイウも絡んだ43分。水野晃樹とのワンツーからパウリーニョが右へサイドを変えると、オナイウは頭で巧みに落とし、走り込んだ北爪より一瞬速く松岡がカットしましたが、ワイドを使った攻撃からあわやというシーンを。それでも「前半は凄く良い形の攻撃でゴールまで迫る場面がたくさんあった」と林が言及した通り、山形のハイプレスがハマった格好のスコアレスで最初の45分間が終了しました。


後半はスタートから千葉に2人の交替が。北爪と佐藤勇人に替わって、田中佑昌と佐藤健太郎を投入。前者は右SBに、後者はドイスボランチの一角にそのまま入ると、46分の後半ファーストシュートは千葉。谷澤のパスを引き出した佐藤健太郎は、ミドルレンジから積極的なシュートにトライ。當間がコースに飛び込んでブロックしたものの、いきなりのフィニッシュで残された45分への意欲を見せると、53分からは水野が3本連続で左CKを蹴り込むなど、ホームチームが好リズムを掴みます。
さらに、その攻勢に拍車を掛けたのが60分に水野との交替でピッチへ飛び出した井出遥也。「隙間隙間で結構受けられるようになった」(當間)「相手もやっぱり僕たちのプレスが出にくい所にボールを受けに来た」(松岡)と2人が声を揃えたように、井出と谷澤が相手の間に顔を出しながら、オナイウも縦への推進力を打ち出してスムーズなアタックの芽が。63分にはオナイウが獲得した左サイド、ゴールまで約25mのFKを直接パウリーニョが狙い、カベに当たったボールを中村が右足で打ったシュートは枠の左へ外れましたが、63分にも森本が35m近い枠外ミドルを放つなど、「もうちょっとボールを動かそうというのは監督が言っていて、そういうのはみんなが意識した」(大岩)という千葉にゲームリズムが。
「後半なかなかザキとディエゴと陵平でチャンスができていなかった」と見ていた石﨑監督は、63分に1人目の交替として山﨑と伊東俊を入れ替えると、66分にはその伊東のドリブルで奪った左FKを石川が蹴るも、林はシュートまで持ち込めず。「前から行っても奪えなかったし、それで相手にうまくいなされた」と松岡が話せば、「後半は相手も選手を替えてきましたし、自分たちが前からプレスという場面も作ることができなかった」と林。「取られた時は中盤の選手が怒っていた」と大岩も触れた千葉のイージーな横パスのミスも格段に減少し、山形はショートカウンターをほとんど繰り出せなくなってしまいます。
68分も千葉。田中の右スローインをオナイウがダイレクトで捌き、パウリーニョが左足で放ったシュートはDFに当たり、わずかにゴール左へ逸れるも惜しいチャンスを。70分も千葉。井出、佐藤健太郎と繋いで、中村が上げたクロスにオナイウが飛び込むも、ここは山岸が何とかパンチングで回避。林とロメロ・フランクをスイッチする山形2人目の交替を経て、74分は千葉のビッグチャンス。井出のパスを谷澤が左へ流し、エリア内まで上がってきた中村のシュートは山岸が懸命に弾き出したものの、「もっと太亮の方にボールを送らなきゃなと思っていたんですけど、なかなかうまくいかなかった」(大岩)状況から、ここに来てようやく中村のストロングも出始めた千葉のラッシュ。
また、そのホームチームの流れを後押ししたのは「後半はチャンスを多く創ってゴールに近付くにつれて、みんなが盛り上がってくれたのも凄く感じた」とパウリーニョも言及した黄色のゴール裏。「この素晴らしいスタジアムで、公式戦さながらの良い雰囲気の中でやれた」と松岡も話すなど、山形のサポーターも含めてスタジアムが"実戦感"を醸成していった中で、ゲームはいよいよ終盤へ。
75分は山形。キム・ボムヨンのパスから伊東が1人かわして中へ送ると、ディエゴのミドルは岡が正面でキャッチ。77分は千葉。中村の右CKにニアへ森本が飛び込むも、ヘディングでコースを変えたボールはクロスバーの上へ。78分は山形。「練習の中だけじゃわからない部分もあるからね。やっぱりこういうゲームでジェフに対してどれだけできるかいう所をやっとかないとね」と指揮官も話す中で、相変わらずの強靭なフィジカルで奮闘していたアルセウを起点に、ディエゴ、伊東、ロメロとボールが回り、ディエゴのミドルはここも岡ががっちりキャッチ。79分も山形。キム・ボムヨンの短いパスを伊東がうまく右へ。フリーで狙ったディエゴの右足ミドルはわずかにゴール右へ外れ、思わずベンチも天を仰ぎますが、少しオープンな流れの中で山形にも勝機が。「結構疲れてきてバイタルが空いてきたかないう」(石﨑監督)79分には山形も3枚目のカードとしてアルセウと宮阪政樹を入れ替え、中盤の強度を高めて向かう最後の10分間。
試合を決めたのは「自分がプレスに行っても必ずボールを奪える訳ではありませんが、それによって相手がビビッてその後のミスに繋がったりとか、そういう影響を与えないといけないと思います」と話す闘将。88分、「時間帯を考えればセーフティゾーンにクリアでも良かったし、そこであえて持ち直して無理に繋ごうとした自分と。相手をかわせれば良かったですけど、そこの技術的ものもなかったですし、技術的なものと判断的なもののミスですね」と悔やんだ松岡へパウリーニョが高い位置で鋭く寄せると、ボールは右サイドにいたオナイウの元に。少し運んで対角線に打ち込んだシュートは、山岸も反応したもののゴールネットを揺さぶります。「ゲームが始まる前に自分の心の中で『良いスタートが切れるように』という祈りを捧げました」というキャプテンの持ち味が凝縮された劇的なゴールで勝負あり。千葉がフクアリでのシーズンファーストゲームで、きっちり勝利を収める結果となりました。


「今は課題も出ないとダメですし、今が良くて本番になってダメだったらどうしようもないですし、今はあまり良くない方がいいかなとも思いますけど、結果は出したいですし、そういう面では凄く良かったなと思います」と大岩が話したように、千葉にとっては収穫と課題のハッキリした90分間だったと思います。特に目立った課題は中途半端な繋ぎのミスから、再三カウンターを食らった前半のゲーム運び。「セキさんにも『まず前を見よう』と言われている」(大岩)中で、縦パスが狙われている時に飛ばすパスやシンプルに局面を回避するような臨機応変さは、特に前からプレスを掛けてくるチームの多いJ2では絶対に必要になってくる部分かなと。それでも、パウリーニョ以外は昨年から在籍していたメンバーが顔を揃えた後半は、「やっぱりジェフの選手は個々の能力が高い」と當間が口にしたように、個を生かした連携も頻繁に出てきて、基本的なペースは掌握。「前半はチームとして少し圧力を掛けられて苦しい時間帯もあったんですけど、そこで失点をしなかったと。そして終盤は逆にプレスを掛けてゴールを奪えたと。今日はデビュー戦、1試合目として我々がゴールを決めて、勝利者としてここを去ることができるというのは本当に嬉しいことですし、良い印象があります」とパウリーニョ。残された2週間でディテールを詰めて、長崎とアウェイでぶつかる開幕戦へ向かいます。
開幕戦を想定していたかという質問に「いや、全然。だって今日初めてだもん、90分やるの」と答えた石﨑監督は、開幕戦に向けて見えてきたものに関しても「ないね。だって開幕戦がすべてじゃないし、仙台だっけ?開幕戦が大事だいうのは知ってるけど、リーグ戦の中で34試合の中でどう戦っていくかだから」と相変わらずの石﨑節。それでも「前半と後半で運動量いうのが随分落ちたよね。そういう所も、合宿が4週間続いているのもあるかもわからないけど、まずまずの感じだったんじゃないかな」と一定の手応えは掴んだ様子でした。山形で目を引いたのは、最終ラインでの落ち着いたビルドアップ。昨シーズンの終盤は急造システムだったこともあってか、ややイージーに大きく蹴ってしまう場面も多々見られましたが、この日の前半は山岸も使いながら危ない場面は後方を使って組み立て直すなど、冷静なビルドアップも披露。ただ、「もっとジェフの選手が追ってくると思っていたので、その分前半はあまり来なかった部分はあったし、それを考えたらまだ繋げていない方かなとも思いますし、ボランチを使ってもう少し回せたらもっと前は楽なのかなという。ちょっと申し訳ない気持ちもありましたけど、それはここからですね」(當間)「どちらかというと今はサイドから僕の所に入っているという場面があるので、もう少しボランチと話をして、ボランチの所から縦パスを受けて崩すというのも大事になってくると思います」(林)とボランチを使ったビルドアップへの意欲も十分。J1で戦うシーズンへ向けて、1つ上のプレーを目指す意識も確実に向上してきているようです。「ミスが出るのが練習ゲームだから、そこをどうしていくかというのがポイントじゃないの」と話す熟練の指揮官にはそのポイントもはっきり見えている様子。モンテディオ旋風を虎視眈々と狙う彼らの今シーズンにも注目していきたいと思います。        土屋

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