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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年02月21日

T1リーグ第2節 都立東久留米総合×実践学園@東久留米総合G

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0221kuruso.jpg確かな実力を有する昇格組と昨シーズンの王者が激突する注目の一戦。都立東久留米総合と実践学園の対峙は前者のホーム、都立東久留米総合高校グラウンドです。
T2優勝に選手権予選でもベスト4。今村優太に朝倉一寿という都内最強2トップを筆頭に、多くのタレントが揃っていた3年生が抜け、新たなチーム創りに着手している都立東久留米総合。日曜日のT1開幕戦は駒澤大学高に0-1で惜敗したものの、後半は圧倒的にボールを握って攻め込むなど、早くもその持てる本領の一端を。「この2ヶ月でディフェンスもオフェンスもある程度理解できている部分もあるので、あとは止める蹴ると判断の所のベースアップを図っていくしかないと思います」と齋藤登監督。3-4-3という新システムも含めて、チャレンジの時期で2試合目の公式戦に挑みます。
前任の野口幸司コーチも「別に能力があるから勝てる訳じゃなくて、取り組みとか謙虚さとかが大事だと改めて教わった」と言及した昨年のチームは、その実力に疑問符を付けられながら立ち上がりましたが、結果的にT1リーグでは堂々東京制覇を達成した実践学園。迎えたプリンス関東参入戦ではあと一歩で昇格を逃したものの、「去年のチームはまとまりという所で自分の理想」と勝田勇気(2年・東急SレイエスFC)も言及した前チームを受けて、今年も当然狙うはリーグ戦での頂点と2つの全国出場。4-0で多摩大目黒を圧倒した開幕戦に続き、2連勝で今後に弾みを付けたい一戦です。うららかな陽射しに包まれた会場は好コンディション。13時30分に楽しみな90分間はキックオフを迎えました。


ファーストシュートは4分の実践。前線に入った丸田健太郎(2年・FC Branco八王子)が左へ流し、石井幸太(2年・Forza'02)が丁寧に折り返すと、ニアへ入った野崎航大(2年・AZ'86東京青梅)のアウトサイドボレーは枠の左へ外れましたが好トライ。5分にも丸田がGKの位置を見ながら約30mのミドルを枠へ飛ばすなど、まずは「前回の試合からケガ人も含めて4人ぐらい入れ替えた」(深町公一監督)という実践が続けてフィニッシュを取り切ります。
以降は「ちょっと入りが悪かったし、正直もっと前から行きたかった」と深町監督が話した実践も、少し長いボールが増えていった久留米もお互いになかなか攻撃の形を打ち出せず、膠着状態になりかけていた中で、そんな状況を打破したのは1つのセットプレー。14分は実践の左CK。「分析もあって、2日前からあそこに蹴る形を練習していた」という黒石川瑛(2年・AZ'86東京青梅)がニアサイドへ蹴り込むと、突っ込んだ海老名優作(2年・JACPA東京FC)のヘディングは反応したGKも弾き切れず、そのままゴールネットを揺らします。「本当に思い通りの、練習通りの感じ」(黒石川)のセットプレーから奪った先制弾。実践が1点のリードを手にしました。
実践が連続して掴んだ決定機はやはりセットプレー。15分、左からここも黒石川が入れたCKはニアへ。突っ込んだ海老名がマーカーより先に触ったヘディングはクロスバーを越えましたが、「相手のニアゾーンが低かったので、あそこが空いているよねということがわかった」と深町監督も認めたスカウティング通りのセットプレーで続けてチャンスを。16分にも野崎航大が右から斜めに送ったスルーパスに、走った石井はわずかに届かず、久留米のGK井上大地(2年・杉並西宮中)にキャッチされたものの、あわやというシーンを創出します。
追い掛ける久留米も17分には右サイドで宮崎紘也(2年・府ロクJY)が粘って運び、最後は武田海青(2年・JACPA東京FC)が放ったシュートは実践のGK永見彰吾(2年・FC.VIDA)にキャッチされましたが、ようやくファーストシュートを記録するも、20分は再び実践。右サイドで野崎智寛(2年・杉並FC)がスルーパスを狙い、抜け出した丸田の折り返しはDFにクリアされたものの、前線の2トップとサイドハーフが斜めの動きを繰り返し、脅かし続ける相手ゴール。
ただ、開幕戦ではリズムを立て直すのに前半の45分間を丸々擁した久留米も、「この間のゲームに比べれば落ち着いていたというのもあったし、そういうことを言って入っていったからね」と齋藤監督も振り返ったように、最終ラインまで落ちるボランチの岩田航平(2年・FCエクセル)や右CBの飯塚小次郎(2年・東京久留米FC U-15)を中心に20分過ぎからはボールがしっかり回り出し、徐々に攻撃のテンポが。とりわけ開幕戦を欠場していたWBの宮崎が、果敢に仕掛ける姿勢を打ち出し続けた右サイドはホットゾーンに。22分に獲得した右CKは山川涼(2年・レッドスターFC JY)のキックがラインを割ってしまい、25分に岩田が放り込んだ右FKも永見にキャッチされたものの、「持ち運びの所の魅力はあるから面白いのよ」と指揮官も評価する宮崎の推進力で、ホームチームが流れを一気に押し戻します。
33分も久留米。左サイドでボールを持った篠藤晃大(2年・東京久留米FC U-15)が縦に付け、キャプテンの川村涼太(2年・FC府中U-15)がボランチラインから飛び出し、中へ入れたクロスは戻った海老名が何とかクリア。34分も久留米。左から岩田が蹴ったCKはニアでDFが大きくクリア。37分は久々に実践の好機。丸田が左へ振り分け、石井の折り返しに丸田が飛び込むも、間一髪で飯塚がクリア。守備でも飯塚、熊倉海都(2年・帝京FC)、吉田恭平(2年・三鷹FA)で組む3バックの集中力も増し、譲らない自らの時間帯。
忍ばせたストライカーの矜持。37分、右サイドでボールを運んだ大庭諒介(2年・東京ベイFC U-15)がシンプルに裏へ送ると、絶妙のラインブレイクで抜け出した武田は飛び出したGKを見極め、インサイドで頭上を越すループを選択。ボールはバウンドしながらゴールネットへ吸い込まれます。現校名でのT1初ゴールは11番を背負ったストライカーの右足から。45分に黒石川が放り込んだ実践3本目の左CKも、今度はニアで岩田がきっちりクリアした久留米がスコアを振り出しに引き戻して、最初の45分間は終了しました。


後半はスタートから実践に交替が。野崎航大に替わって、「試合前から『後半から行く』と言われていて、その準備はできていたし、走力には自信があるので45分で全部出し切ろうという気持ちで後半に入りました」と話す、開幕戦でもゴールを決めた勝田を投入すると、48分にはビッグチャンス。左寄り、ゴールまで約25mの位置で獲得したFKを黒石川が直接狙うと、枠を襲ったボールは左ポストを直撃して勝ち越しとはいきませんでしたが、50分にも黒石川の右ロングスローに勝田が競り勝ち、石井のオーバーヘッドはヒットせず、その流れから今度は左でボールを拾った石井のクロスに、飛び込んだ丸田のヘディングはゴール左へ外れたものの、「前半からなかなか相手をハメられなくて、自分たちの攻撃ができなかった」(黒石川)実践が、後半も立ち上がりは手数を繰り出します。
それでも、その立ち上がりが経過すると勢いは再び久留米へ。54分には飯塚のシンプルなフィードへ武田が走り、ここは飛び出した永見が一瞬早くクリアしましたが、CFが裏への高い意識を。57分には右サイドで溜めた大庭のパスから、大外を回った宮崎がえぐって中へ。篠藤はシュートまで持ち込めなかったものの、やはり右サイドのアタックは相変わらず脅威に。59分に石井と浅貝崇裕(1年・VIVAIO船橋)を入れ替える実践2人目の交替を経て、60分には久留米にFKのチャンス。エリアすぐ外は中央左。ゴールまで20m強の位置から岩田が狙ったボールはわずかに枠の右へ。沸き上がるピッチの周囲。ホームチームが滲ませる逆転への強い意欲。
62分に動いたのは齋藤監督。アグレッシブなプレーで奮闘した宮崎を下げて、坂本泰雅(1年・東京ベイFC U-15)をボランチに送り込み、「今はキャプテンという重責を担って、それがプレッシャーになっているのかな」と指揮官も見ていた川村を本職の右サイドへスライドさせて、右翼へ一層の推進力を。63分には実践も丸田と中島陸(2年・練馬三原台中)をスイッチさせる3人目の交替を。66分は久留米。川村がDFラインの裏へ送り、走った武田のドリブルは食らい付いた実践のCB長谷川颯斗(2年・AZ'86東京青梅)が必死のカバーで凌ぎましたが、フィフティに近い展開の中でも、ワイドにポジションを取った大庭が時間をうまく創った分、久留米に攻撃の主導権が傾きます。
「思ったよりセカンドや競り合いの部分で勝ち切れなかったのと、もっと高い位置で守備したかったんですけど、ちょっと怖がって下がっちゃったかなという所」を押し込まれた要因に挙げたのは深町監督。その状況下で少しずつ効力を発揮し始めたのは、「自分はそんなに技術はないんですけど、収めるフィジカルの所にこだわってやっているので、とりあえずタメを創って他のうまい選手を生かしていこうという気持ちでやっていました」と語る勝田のポストプレー。「勝田に収まるようになってからは結構攻撃できたと思います」と黒石川も認めた通り、少しゲーム全体の運動量が下がった70分過ぎからは、より勝田の強さを生かしてセットプレーの獲得も増加。72分から76分までの4分間で5本のCKを集めるなど、この時間帯に差し掛かってドイスボランチの和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)と菊池恭平(2年・青山サッカークラブ)も高い位置を取り始め、ハイサイド攻略にも勢いの出てきた実践が握り始めたゲームリズム。
76分に実践はCBの長谷川を下げ、上倉晃司(2年・FC町田ゼルビアJY)を4枚目のカードとして左SHへ投入。左SHの浅貝が左SBへ、左SBの海老名が玉井涼(2年・confiar町田)とパートナーを組むCBにスライドして、攻守のさらなるバランス向上に着手。83分にはレフティの上倉が入れた右CKがDFにクリアされたものの、GKは越える鋭いボールを披露。84分には最後の交替カードとして中島暁人(2年・青山サッカークラブ)もピッチへ解き放ち、実践は最後の勝負へ。逆に荻野稔(2年・レッドスターFC JY)を投入し、川村と山川の位置も入れ替えていた久留米は「足が止まったというよりは体が重くなったような」(齋藤監督)劣勢を何とか凌ぎ続けます。
煌いた勇気。89分は実践にとってこの日全体で9本目、左からは5本目のCK。キッカーはもちろん黒石川。「ニアだけ狙って蹴ろうと思っていたので、他には何も考えていなかった」という5番が渾身のキックをニアに打ち込むと、ここに突っ込んだのは「ニアで勝負しようというのは試合前から話していた」という勝田。頭で完璧にミートしたボールは、ゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。「言葉で表せないです。鳥肌もんですね。こんなことはなかなかないので」と笑ったストライカーの劇的な決勝弾で勝負あり。「こういう時もあるんじゃないですか」と笑顔を見せた深町監督。実践が2本のセットプレーで開幕連勝を飾る結果となりました。


決勝ゴールのシーンには伏線がありました。45分に実践が獲得した左CK。先制点もその直後の惜しいヘディングも、連続して黒石川のボールにニアで海老名が競り勝っていたのですが、「2本目に少し相手のストーンが前に出てきたような感じがした」(黒石川)ために、前半終了間際にあった3本目の左CKは「入り方を変えてしまった」(勝田)ことで、あっさりとニアで相手にクリアされてしまいます。これを見た深町監督はハーフタイムに「途中で余計な違うことをやったんだけど、『うまくハマるんならそれを徹底的にやれよ』とアドバイスをした」とのこと。迎えた後半最初の左CKは75分までなかったものの、その4本目で「また同じ感じでやったら結構良い感じだった」と手応えを得た黒石川は、89分に迎えた土壇場の5本目もニアで勝負に。ここに「『相手が対応し切れていない場合は、そのままそれでやり続けてどんどんチャンスを創っていこう』という話があった」という勝田がチームの共通理解通りに飛び込んで見事な決勝ゴールを。ピッチでの肌感覚とベンチワークが融合した、手応え十分の1点だったようです。「今朝になってサイドバックが出られないって言ってきたし、サイドハーフもメンバーを決めて発表した時に『ムリです』と(笑) とんでもない代ですよ」と苦笑した深町監督も、「ただ、そういう子たちなので化ける可能性はありますよ」と続けて。「とにかくこのチームは個性が強い選手が多い」と勝田も話した新生・実践学園が、今年も東京を牽引していく存在であることは間違いなさそうです。         土屋

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