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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年02月17日

T1リーグ第1節 國學院久我山×駿台学園@駒沢第2

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0215komazawa4.jpg16時キックオフは共に今シーズンからT1リーグに戦いの場を移した両者の再会。全国常連の強豪と目覚ましい躍進を遂げている新鋭が対峙するのも駒沢第2です。
2年目のシーズンに入っていたプリンス関東では降格という憂き目を見たものの、同校初の2年連続東京制覇を成し遂げた選手権では全国で2つ勝ってベスト16まで進出するなど、改めて高校サッカー界にその名を轟かせた國學院久我山。今シーズンからは長年指揮を執ってきた李済華監督の勇退を受けて、「新しいチャレンジの場を作って頂いたので、やっぱり久我山らしさを残しつつも、前監督の足を引っ張らないように頑張ろうと思います」と謙虚に語る清水恭孝監督が就任。新生久我山の船出となる90分間に挑みます。
昨シーズンはT2リーグで都立駒場や東海大高輪台など、T1経験校を抑えて3位という好成績を収めると、年末の入れ替え戦では東京朝鮮をPK戦で下して、劇的にT1のステージへと駆け上がってきた駿台学園。「何しろサッカーを楽しく、元気良く、明るくやりたいなという所で、強気にやろうという所から始めて、まだまだですけど選手たちも非常に前向きに捉えてくれて、そういう部分は少しずつやれるようになってきたのかなと思います」と笑って話す就任2年目の大森一仁監督の下で、各コンペティションでも上位進出を窺うチーム力を着実に付けてきていますが、昨年の選手権予選ではベスト8で久我山に0-2で敗退を強いられており、まさにリターンマッチとも言うべきこのゲームは、新たな歴史を創るには絶好の舞台です。陽の傾きかけた駒沢にはもはや殺人的な寒風が。それでもスタンドを愛すべきフットボールクレイジーたちが埋める中、駿台のキックオフでゲームはスタートしました。


立ち上がりから一方的に押し込んだのは久我山。今シーズンのキャプテンを任された宮原直央(2年・FC多摩)と比留間公祐(2年・横河武蔵野FC JY)、名倉巧(1年・FC東京U-15深川)の中盤トライアングルを中心にボールを動かしながら、右の小林和樹(2年・ジェファFC U-15)、左の澁谷雅也(1年・ジェファFC U-15)と全国の舞台を経験したウイングがサイドから積極的に仕掛けてCKを続けて獲得。7分に左から山本研(2年・横浜F・マリノスJY)が蹴ったCKはゴールへ向かい、駿台のCB小澤拓弥(2年・Forza'02)が何とかライン上でクリアしたものの、あわや先制というシーンを。13分にも山本の左CKを内桶峻(2年・GRANDE FC)が残し、野村京平(2年・横河武蔵野FC JY)のシュートは枠の左へ外れましたが、東京王者が圧倒してゲームに入ります。
「やっぱり久我山さんがどこをとっても上手だった」と大森監督も認めたように、以降もポゼッションは久我山がずっと握っている状況で、それでも流れの中からフィニッシュにはなかなか至らず。清水監督も「凄く大事にし過ぎたというか、丁寧に行き過ぎて時間が掛かったというか」と言及した通り、スイッチを入れるポイントは探り切れずに、経過していく時間。25分には内桶のパスから比留間が右サイドをえぐってクロスを入れるも、飛び込んだ澁谷は一歩及ばず。先制点とはいきません。
すると、ファーストチャンスで牙を剥いたのはレッドタイガー。28分、「ああいう風に抜け出せる選手」と大森監督も評した小出匠(2年・練馬FC U-15)がうまい飛び出しから繋いだパスを、SHの池田英史(2年・足立第六中)はピンポイントで中へ。このクロスに宙を舞った原虎ノ介(2年・田口FA)が完璧なヘディングで叩き付けたボールは、ゴール左スミへ力強く飛び込みます。「何しろウチの大黒柱」と指揮官も話すキャプテンが堂々たる先制弾。ワンチャンスを生かした駿台が先にスコアを動かしました。
まさかのビハインドを負った久我山は31分、山本が左サイドをえぐって中へ戻すも、名倉のシュートはDFに当たって枠の右へ。直後のCKを知久航介(1年・浦和レッズJY)が蹴り込み、こぼれを拾った名倉のシュートもゴール右へ。さらに34分にも山本が左へ振り分け、澁谷が素晴らしいワンタッチコントロールで縦に持ち出しクロスを上げるも、DFがきっちりクリア。逆に35分には駿台に追加点のチャンス。原を起点にSBの山口遼太(2年・足立第四中)が右へ流すと、再び池田が入れたクロスに再び原が合わせたヘディングは枠を襲い、今度は久我山のGK岡田佑太(2年・モンテディオ山形JY村山)がファインセーブで阻止したものの、大森監督も「一応クロスからの練習はここ最近ずっとしてきた中で、練習通りやれたのかなと思います」と頷いたように、トレーニングの成果をこの舞台できっちり表現します。
40分は久我山。名倉、比留間とボールを回し、右サイドを上がってきた鈴木遥太郎(2年・東急SレイエスFC)のミドルは枠の右へ。41分も久我山。小林、内桶、名倉と細かく繋ぎ、澁谷が狙ったコントロールショットはゴール右へ。43分は駿台。右サイドからカットインしながら池田が放った左足ミドルは岡田が何とか弾き、こぼれに突っ込んだ小出はシュートまで持ち込めず。44分は久我山。ここも内桶、宮原、山本、澁谷とスムーズにパスが回るも小林はシュートを打ち切れず、名倉のシュートはDFがきっちりブロック。「実力的にも挑戦者なのでこういう戦い方は重々承知だった」とは大森監督ですが、先制後は追加点の香りも漂わせた駿台が1点のリードを奪って、最初の45分間は終了しました。


「勇気が足りなかったんじゃないですかね。もうちょっと繊細さを持ちながらダイナミックにというか積極的にというか、やっぱりそれがもうちょっとできないと、相手もしっかり守ってきますので崩せないのかなと思いました」と前半を見ていた清水監督は後半開始から1人目の交替を。内桶に替えて安藤謙生(2年・横浜F・マリノスJY)をそのままCFへ投入。「スーパーリーグで結構点を取っていたので、今回はスーパーサブ的に使ってみようと思っていた」19番にゴールという役割を託します。
それでもボールは相変わらず久我山が支配する中で、手数は駿台に。50分に猪田光人(2年・田口FA)が蹴り込んだ右CKはシュートまで行けませんでしたが、51分にはボランチの渡辺龍也(1年・Forza'02)が左へ流すと、原のミドルはクロスバーの上へ。55分には久我山も2枚目の交替として比留間とスイッチした岡田真夏斗(2年・ジェファFC U-15)を右SBへ送り込み、鈴木を中盤にスライドさせて配置に変化を付けたものの、57分も駿台。左SBの中西航大(1年・武南JY)が打ち込んだクサビを原が捌き、渡辺が積極的にトライしたミドルはクロスバーを越えたものの、「ウチは明るくやるしかない」(大森監督)という駿台が照らした光が浮き上がらせる勝利への道筋。
58分の決断は大森監督。「いかんせんこういうゲームだったので、ウチの戦術的な問題」で最大の脅威となっていた原を下げて、「調子が上がっていた」という持地陽介(2年・新宿牛込第二中)をそのまま前線に投入。さらに63分にも左SHの片岡良介(1年・フレンドリー)と飯泉翔太(2年・練馬貫井中)をスイッチして、フレッシュなアタッカーで少ないチャンスを生かす覚悟を打ち出します。
70分は久我山。野村のフィードを受けた澁谷は左サイドを鋭く切り裂いてクロスを送ると、名倉のヘディングはクロスバーの上へ。71分も久我山。澁谷のパスを安藤は中央へ折り返し、2列目から飛び出した鈴木のシュートは駿台のGK鈴木映司(2年・Forza'02)がキャッチしましたが、確実に一段階踏み込んだアクセル。清水監督も72分に名倉を下げて、戸田圭佑(1年・FC多摩)に勝負を託すと、反撃の狼煙はその1分後。
73分に左サイドで獲得した久我山のFK。スポットに立った山本が高精度キックを中央へ送り込むと、ここに頭から突っ込んだのはCBの知久。ボールは一直線にゴールネットへ突き刺さります。「選手権が終わってから時間もなくて、今準備が出来上がらないのはしょうがないと思っていましたけど、少なくとも子供たちを見ていて、自分たちが理想とする形を模索しながらはやってくれていた」と清水監督も認めた久我山が意地の一撃。両者の点差は霧散しました。
小澤と野村睦樹(2年・板橋志村第二中)のCBコンビを中心に高い集中力で相手のアタックを凌ぎ続けるチームを見ながら、「行けるかなとも思いましたけど、そうは行かないだろうなという気持ちも半分はありました」と素直に明かした大森監督。74分は駿台。右サイドで1人かわした小出は、角度のない位置からクロス気味のシュートを枠の上へ。78分には指揮官も3枚目のカードとして、伊藤良祐(2年・練馬FC U-15)の投入で最前線に再びパワーを。残された時間は10分間とアディショナルタイム。何かが起こりそうな雰囲気の充満する駒沢。
80分は久我山。岡田の正確な右クロスを安藤はトラップから軽快なターンで持ち出し、放ったシュートは鈴木映司がキャッチしたものの、途中出場の2人でチャンスを創出。82分は駿台。小出がドリブルで持ち運ぶも、最後は久我山ディフェンスも的確なカバーリングでゴールキックへ。直後も駿台。飯泉が粘って繋ぎ、小出のパスから左へ流れた池田のシュートはDFが何とかブロック。駿台も勝利への意欲は依然十分。
煌いたのは途中投入のアタッカーコンビ。85分に宮原のパスで前を向いた戸田は、躊躇なくそのまま縦にスルーパス。反応した安藤がアングルを創り直してボールを運び、エリア内から叩いたシュートは正確にゴールネットを揺らします。「勝負は甘くないですし、東京はみんな強いですからラクはさせてくれないなと」(清水監督)改めて痛感させられる展開の中で取り切った逆転ゴール。久我山が土壇場でスコアを引っ繰り返しました。
諦めない王子の赤。85分、猪田のFKがエリア内で弾み、ゴール前の混戦に小澤が詰めるもライン上でカバーしたDFが間一髪でクリア。88分には大森監督も4枚目のカードとして泉澤樹(2年・葛飾金町中)をピッチへ解き放ち、何とか同点へ追い付きたい気持ちを押し出しますが、90+1分には小林が鈴木映司にファインセーブを強いる際どいシュートを放つなど、最後まで追加点を狙った久我山に凱歌。「みんなに今日も『初陣でしょ』と言われて、『そう言われればそうだな』と思いながら、あんまり気負いもなかったんですけどね」と笑った新指揮官の初陣を勝利で飾る結果となりました。


「頑張って引っ繰り返してくれたのは大きなことだと思います」と清水監督も言及したように、リスタートとなる新チームの開幕ゲームを逆転で制した久我山が、今年も都内屈指の実力を持つことに疑いの余地はありません。野村と宮原の経験あるセンターラインに加え、鈴木や小林、澁谷など全国で喜びと悔しさを味わった選手たちも多数在籍し、リズムを掴んだ時の流れるようなパスワークは既に相当なレベルまで。「去年はあれだけ守備守備と言われていたので、全然違うものをというか、やっぱり攻撃面での久我山らしさを取り戻せればと思っています」と清水監督。"15久我山"の今後にも大いに期待したいと思います。
「ウチにはこれしかない」(大森監督)というやり方で、都内きっての難敵をあわやという所まで追い詰めた駿台にとって、「勝ち点1が惜しかったなという所ですかね」という指揮官の言葉は、選手も誰もが感じていることでしょう。それでも、「守備はでき過ぎなくらいだったと思うんですけど、もうちょっと言えばウチがもう少しボールを持つ時間が欲しいというのが僕らの欲」という指揮官の言葉もやはり選手たちは感じているはず。「ウチは今年は何かインパクトを残して、あわよくば残留してやるぞと頑張っていきたいですね(笑)」と豪快に笑った大森監督率いる駿台が、あるいは今年のT1に旋風を巻き起こすのではないかということを予感させる、そんな90分間だったのではないでしょうか。        土屋

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