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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
新指揮官を迎えた緑の勇者にとって絶対に負けられない90分間。東京ヴェルディユースが杉並アヤックスを迎えて戦うホームゲームは、おなじみヴェルディグラウンドです。
昨年は高円宮杯プレミアEASTで9位という結果を突き付けられ、4年間在籍してきたトップディビジョンから陥落。トーナメントコンペティションでも夏のクラ選は1次ラウンドで敗れ去り、冬のJユースカップではグループリーグ敗退と、厳しいシーズンを過ごしてきた東京ヴェルディユース。迎えた今シーズンは「ヴェルディに戻ってこれて僕は本当に嬉しくて、クラブのために何でもしたいなと思う」と話すクラブOBでもあり、ユースのOBでもある藤吉信次氏が新監督として就任。ただ、藤吉監督不在の中で行われた先週の初戦では、FC町田ゼルビアユースに1-2と黒星を喫したため、今日のゲームは絶対に落とせない上に、より多くの得点も求められる重要な一戦です。
1次リーグは進境著しいジェファFC U-18の後塵を拝して2位通過。"杉並ダービー"となった杉並FCとの決勝リーグ進出決定戦を2-1で制して、2年連続となるこのステージへと勝ち上がってきた杉並アヤックス。昨年の大会では横河武蔵野FCユースやFCトリプレッタユースといったT1勢を相手に接戦を演じ、その奮闘ぶりは多くの人の知る所に。今大会の初戦は三菱養和SCユースに1-11と大敗してしまいましたが、中学生をスタメンに含んだ若いチームで今日も東京の名門クラブへ果敢に挑みます。会場のヴェルディグラウンドは、1月とは思えないくらいのポカポカ陽気。西が丘を視界に捉えるためにも大事な90分間は、東京Vのキックオフでスタートしました。
「月曜日にこっちに来て、火曜日から練習に出てきたので、あえてコーチからも情報を聞かないようにしてやっていますね」という藤吉監督がピッチに送り出したメンバーは「ちょっと前までレギュラーとかは関係なしに全部ごちゃまぜ」。そんな東京Vは序盤こそ相手の勢いをいなし切れないシーンも見られましたが、徐々に落ち着きを取り戻してゲームを支配。7分に相手のクリアを拾った林昇吾(2年・東京ヴェルディJY)がわずかにゴール右へ外れるミドルを放つと、8分には冨樫凌央(2年・東京ヴェルディJY)の浮き球から信太玲哉(1年・東京ヴェルディJY)が、9分には右SBに入った平田竜士(1年・東京ヴェルディJY)のクロスから郡大夢(2年・東京ヴェルディJY)が、10分には左SBの羽賀颯太(2年・東京ヴェルディJY)が上げたクロスを佐藤瑠己安(2年・ヴェルディSS花巻)が、ゴールには繋がらなかったもののそれぞれフィニッシュまで持ち込み、一気に攻勢を強めます。
すると、12分に飛び出した先制弾。右サイドから平田が中央へ放り込むと、バイタルに潜った冨樫は中央へ。林が得意の左足で振り抜いたボールはゴール右スミへ飛び込みます。「1試合はしたけど新たなリスタート」(藤吉監督)と位置付けて戦う新チームにとって、貴重な先制ゴールはレフティの左足から。東京Vが1点のリードを奪いました。
何とか立ち上がりの10分を凌ぎながらも、追い掛ける展開となった杉並アヤックス。15分にはセンターサークル付近でボールを持った藤井渉吾(1年・杉並アヤックスU-15)がスルスルと中央を持ち運び、最後はDFのカバーに遭ってシュートまで行けませんでしたが、個の力を披露。16分にもやはり藤井がハーフウェーライン周辺でマーカーをかわし、最後は東京VのGK佐藤久弥(1年・東京ヴェルディJY)が果敢に飛び出してクリアしましたが、5番を背負ったFWの藤井が漂わせる可能性。
それでも次の得点を記録したのも東京V。17分、オーバーラップしてきた羽賀が左から中へ付けると、郡は中央へカットインしながら右足一閃。ボールはゴール右スミへ豪快に突き刺さります。「選手たちは本当に技術が高くて、誰がやってもうまくいくんだろうなと思いますけどね」と笑ったのは藤吉監督。点差は2点に広がりました。
やや気落ちした杉並アヤックスを一気に飲み込む緑の荒波。19分に佐藤の右クロスに郡が合わせたダイビングヘッドは枠を外れましたが、2分後の右CKを林が蹴り込むと、郡がリベンジのヘディングをフリーで叩き込んで3点目。24分にもボランチの相馬雄大(1年・東京ヴェルディJY)が右へ展開したボールを、平田が上げ切ったクロスはバーに当たったものの、林がきっちり詰めて4点目。25分にも冨樫が縦パスをグサリと打ち込み、佐藤が中央へ流したボールを林はミドルレンジからゴール左スミへきっちり沈め、チーム5点目と共に自身は早くもハットトリックを達成。さらに29分にも平田が斜めに入れたボールから、信太はトラップでマーカーを剥がしてマイナスに中へ。これを佐藤が左スミへ流し込んで6点目。10分間で怒涛の4ゴールが生まれ、大勢は決してしまいました。
31分に杉並アヤックスは早くも1人目の交替を決断。左SHの塩川貴大(1年・練馬大泉第二中)に替えて、松本海太(中学2年・杉並アヤックスU-15)を投入。これでGKの田中貴大(中学2年・杉並アヤックスU-15)、CBの藤井塁(中学2年・杉並アヤックスU-15)、左SBの森村太渡(中学2年・杉並アヤックスU-15)、中盤の奥山璃空(中学3年・杉並アヤックスU-15)に松本と、実に5人の中学生がピッチ上に。33分に左から藤井が蹴り込んだFKは、佐藤が何とかフィスティング。直後に藤井が入れた左CKはオフェンスファウルになりましたが、改めて立て直したい全体のバランス。
手を緩めないホームチーム。35分には右サイドで平田を起点に佐藤がスルーパスを繰り出すと、抜け出した平田のシュートは枠の右へ外れたものの、36分にはその逆の左サイドを林がえぐり切って折り返し、3列目から飛び出した冨樫のシュートはゴール右スミを確実に捕獲します。38分には藤井が右へ回したボールを村上弘太(1年・杉並アヤックスU-15)が縦に流し、DFともつれながら右へ持ち出した藤井がチームファーストシュートを放つも、ここは佐藤が丁寧にキャッチ。直後にもミドルレンジから村上がミドルを枠の右へ外すなど、杉並アヤックスもようやくフィニッシュシーンを取りましたが、衰えない緑の意欲。40分には冨樫のアウトサイドパスから、郡が反転ミドルをわずかに枠の右へ。43分にはCBの品田龍之介(2年・東京ヴェルディJY)が縦パスを通し、冨樫の浮き球を郡がループ気味に狙うも、田中が果敢に体へ当ててCKへ。そのCKを林が右から蹴り込み、郡のヘディングは枠の左へ。「リスタートしたという気持ちで、みんなが良いモチベーションで入ってくれた」と藤吉監督も言及した東京Vが大量7点のリードを奪い、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムで「全員で切磋琢磨して全員のレベルが上がっていくような、そういうチームを創りたい」藤吉監督は4人の交替を。右SBへ小幡裕稀(1年・東京ヴェルディJY)、CBへ深澤大輝(1年・東京ヴェルディJY)、左SBへ松本幹太(1年・東京ヴェルディJY)、ボランチへ修学旅行から帰ってきたばかりの井上潮音(2年・東京ヴェルディJY)を送り出し、最終節で対戦する養和のことも意識しつつ「試合前には言わなかった点差のことも話して」後半のピッチへイレブンを送り出します。
切り替えた杉並アヤックスも反撃への意識を前面に。46分に森村が蹴った左FKはDFにクリアされますが、48分に林のパスから外を回った松本の折り返しに郡が合わせたシュートも守護神の田中ががっちりキャッチ。49分には右サイドでボールをしっかり繋ぎ、村上の短いパスから池田仁哉(1年・杉並アヤックスU-15)が鋭いミドルを枠の右へ。何とか返したい"はじめの"1点。
容赦ないホームチーム。50分、佐藤のパスから小幡が右サイドをえぐって折り返し、井上のシュートはDFにブロックされたものの、リバウンドを再び井上が冷静にゴールへ流し込んで8点目。52分には杉並アヤックスにこの日最大のチャンスが。池田の縦パスを松本が粘って落とすと、池田のミドルは鋭い軌道でゴール方向へ。ボールはわずかに枠の右へ外れましたが、惜しいシーンに沸き上がったジェファサイドの応援席。ただ、56分には林の右CKを、中央でCBの東山亮(2年・東京ヴェルディJY)が豪快なヘディングで叩き込んで9点目。57分に池田がクロスバーの上へ外したミドルを挟み、58分には小幡のアーリークロスがピンポイントでDFの頭を越え、郡が叩いたダイレクトボレーはゴール右スミへ吸い込まれて10点目。後半から登場の小幡が早速2ゴールに絡むなど、「違う選手が入ってきたら違うコンビネーションが出てくる」という指揮官の言葉を体現する東京Vは、とうとう二桁ゴールを達成しました。
60分も東京V。深澤が右へサイドチェンジを送り、小幡のクロスをニアへ飛び込んだ佐藤が頭で枠へ飛ばすも、ここは田中が意地のファインセーブ。61分も東京V。林の右CKはファーへ届き、またも飛び込んだ東山のドンピシャヘッドは枠の左へ。63分も東京V。ここは小幡が右へ短く出し、佐藤のクロスを郡がダイビングヘッドでぶち込んだゴールはオフサイドとジャッジされましたが、前半の平田にも負けず劣らず躍動する小幡。
そうなれば黙っていない左サイド。67分、井上が左へ振り分けたボールを林が鋭く折り返し、ニアへ飛び込んだ信太のダイレクトシュートはニアを破って11点目。72分、冨樫が左へ展開した流れから、林の外側を回った松本のクロスがこぼれると、井上がゴール右スミへ丁寧に流し込んで12点目。奥山と原田竜汰(1年・バモス)を入れ替える杉並アヤックスの交替を挟んだ74分、ここも積極的に上がってきた松本の左クロスから、最後は井上がハットトリックとなる一撃を右スミへ突き刺して13点目。80分、冨樫がFKをクイックで左へ正確に送り、林を追い越した松本のクロスをファーで思い切り良く打ち切った小幡のミドルは、そのままゴールネットを豪快に揺らして14点目。左サイドからのアタックで生まれた4連続ゴールの大トリは、後半から投入されたサイドバック同士の連携で。「良いタイミングで出て行くのも教えるまでもなくできている」という藤吉監督の言葉通り、まさにお手本とも言うべきサイドからの崩しがとにかく面白いようにハマッていたのは間違いありません。
85分には杉並アヤックスに3人目の交替が。左SBで奮闘した森村に替わって、窪田浩也(1年・杉並西宮中)がピッチへ解き放たれ、残された時間は5分とアディショナルタイム。86分は東京V。小幡の右クロスを冨樫が胸で落とし、郡が枠へ収めた強烈なシュートは田中もよく弾きましたが、林がきっちり押し込んで15点目。89分も東京V。相手ラインの裏へ抜け出した郡が、GKとの1対1も冷静に制して16点目。「点差が付いても最後までやり切るというのは素晴らしいなと思いました」と藤吉監督。貪欲に次の1点を求め続けます。
何とか次へと繋がる1点を奪いたい杉並アヤックスも最後の力を振り絞ってアタックを。90分には中盤アンカーで戦い続けた大倉洋央(1年・杉並アヤックスU-15)がミドルレンジから枠へ飛ばすも、佐藤が確実にキャッチ。90+1分には村上のショートパスを原田がヒールで残し、松本が強引に狙ったミドルが佐藤にキャッチされると、これが両チーム通じて最後のシュート。「自分たちがやろうとした切り替えの所、ゴールを目指す所、ゴールを守る所と、そこを重点的にやってくれと言ったらみんなが最後の1秒までやってくれたので、良い90分だったなと思いましたね」と納得の表情を浮かべた新指揮官の初陣を、16ゴールという大量得点による大勝で東京Vが飾る結果となりました。
「俺が求めているプレーというか雰囲気、こういうプレーが好きなんだよというのが一緒なんですよね。そこは昔と変わってないんですよ。逆を取るとか、相手の予想も付かないプレーが良いプレーだとか、そこが凄く一緒で、そういう感覚ってなかなか創れるようで創れないですからね」と嬉しそうに笑った藤吉監督率いる東京Vからは、例年以上の躍動感が発散されていたような印象を受けました。主力と目される数人の選手が欠けている中でも、就任直後ゆえのフラットな目線で指揮官にピッチへ送り出された選手たちがことごとく期待に応えていくさまは、16ゴールという数字以上に大きな収穫だったんじゃないかなと。「僕が在籍してきたチームは凄く愛しているし、好きなチームはいっぱいあるんだけど」と前置きしながら、「僕も小さい頃からこのよみうりランドに通っていたし、他のクラブに行って改めて『やっぱりこのクラブが好きなんだな』とわかったので、『帰ってきたな』という気持ちは大きいですね」と明かした藤吉監督も、どういう部分を高めていきたいかという質問に対しては、「世界の同じ年代のヤツとやったらどうか、トップチームに行ったらそれが通用するのか、そういうことを意識させてやれたらいいなと思いますね」とキッパリ。最高の船出となった藤吉ヴェルディの今後には要注目です。 土屋
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