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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
勝ち点3を獲得したチーム同士のサバイバルマッチ。西が丘へと進出するために双方が絶対に落とせないキーゲームの舞台は、これまたおなじみの公益財団法人三菱養和会巣鴨スポーツセンターです。
夏のクラ選では1次ラウンドを全勝で抜け出すと、清水エスパルスユース、京都サンガU-18、コンサドーレ札幌U-18とJクラブユースの強豪に対していずれも3ゴールを叩き込み、2月に行われた西が丘のリターンマッチとなったFC東京U-18とのファイナルも1-0で制して、見事に全国制覇を成し遂げた三菱養和SCユース。通年のリーグ戦に当たる高円宮杯プレミアEASTでは無念の最下位で降格を経験しましたが、「選手たちにも『もう1回上を目指すという目標ができたんだから、そこに向けてサッカーに対して真剣に1日1日取り組むしかない』と言っています」と山本信夫監督。リスタートとなる1年の幕開けを東京制覇で飾るべく、西が丘行きを引き寄せたい90分間に臨みます。
地区トップリーグのグループリーグを全勝で突破し、勢いそのままに順位決定リーグでも2勝1分けと、シーズンを通じてリーグ戦では1つの黒星も経験することなく、T4リーグ昇格を勝ち獲ったFC町田ゼルビアユース。さらに、JユースカップでもプレミアWEST所属の名古屋グランパスU18に引き分け、横浜FCユースには勝利を収めるなど、もはやその実力は全国でも通用するレベルに近い所まで。「凄く良い積み上げがあって迎えた」(竹中穣監督)先週の決勝リーグ初戦では東京ヴェルディユースにも2-1で競り勝っており、東京制覇は現実的な目標に。「開幕でヴェルディに勝ったことが自信になっているんだとしても、やっぱり今日のこのゲームに勝たなかったら本物ではまだないと思っている」と竹中監督。その自信を結果で証明するための重要な一戦に挑みます。巣鴨は1月の19時キックオフにもかかわらず、まったく観戦が辛くない好コンディション。注目の90分間は町田のキックオフで幕が上がりました。
3分のファーストチャンスは養和。右から瀬古樹(2年・三菱養和巣鴨JY)が蹴ったFKは、町田のCB小池万次郎(2年・FC町田ゼルビアJY)がクリアするも鋭いキック。9分のセカンドチャンスも養和。今度は左から瀬古が入れたCKは、町田のキャプテンを務める加倉井拓弥(2年・FC町田ゼルビアJY)に弾き返され、再び瀬古が放り込んだクロスはゴールキックへ。12分のファーストシュートも養和。瀬古のパスから1トップに入った八木原匠(1年・東京ベイFC U-15)のシュートは町田のGK柴崎晃志(2年・横浜FC JY)にキャッチされましたが、セットプレーを中心にまずは養和が手数を繰り出します。
ただ、フィフティに近い展開の中で、ボールを握りながら動かしていったのは町田。「蓋を開けてみてちゃんと顔が上がれば、トレーニングはそういうことをやっているし、ヴェルディの時もそこそこやったので、ボールを持てるかなとは思っていました」という竹中監督の言葉を体現すべく、西前一輝(1年・FC町田ゼルビアJY)と小池のCBコンビにGKの柴崎も加わりながら、じっくりと後ろから繋いで窺うテンポアップ。14分には西前のフィードを青木義孝(1年・FC町田ゼルビアJY)が巧みに捌き、金子誠幸(1年・ランサメントFC)はシュートまで持ち込めずも好トライ。15分にも岡本怜央捺(2年・FC町田ゼルビアJY)、高橋渉(2年・FC町田ゼルビアJY)とパスが回り、加倉井のクロスはシュートまで繋がりませんでしたが、少しずつ出始めてきた攻撃のアイデア。
17分も町田。左サイドの高い位置まで飛び出していた小池のクロスを、ダイレクトで合わせた青木のシュートはゴールネットを揺らすも、小池のクロス直前にボールがタッチラインを割っていたという判定でノーゴールに。18分も町田。中村双哉(2年・FC町田ゼルビアJY)が積極的なインターセプトを敢行し、金子からのリターンを右へ持ち出しながら放ったシュートは養和のGK塚田匡壮(1年・三菱養和巣鴨JY)がファインセーブで回避したものの、「ヴェルディさんに勝っているくらいですから、ゼルビアさんも強いというのはわかっていました」と山本監督も話したように、町田が続ける積極的な攻撃へのスタンス。
一瞬で動いたスコア。動かしたホームチーム。19分、相手のCKを凌いだ養和はクリア気味のフィードを前方へ。このボールを完璧なトラップで収めた瀬古は、そのまま右サイドを運びながらシュートチャレンジ。ニアサイドへ飛んだ軌道はGKも弾き切れずに、ゴールネットへゆっくりと飛び込みます。昨年からレギュラーを任されている7番がこの大事な一戦で大仕事。養和が1点のリードを奪いました。
さて、ある程度は思い通りにゲームを進める中で、ビハインドを負った町田。25分には右SBの小熊颯(2年・東京チャンプ)が上げたクロスに岡本が飛び込み、こぼれを狙った高橋のシュートは枠の左へ外れましたが、ボールアプローチの速さと強度は失点後も衰えず。30分には養和も松井輝純(2年・尚志高)、齋藤一(1年・三菱養和巣鴨JY)と繋ぎ、小熊のクリアを直接打ち切った瀬古の枠内シュートが柴崎にキャッチされるシーンを創ったものの、直後の30分は再び町田。小熊の右スローインから、中村がクロス気味のシュートを枠の上へ。38分も町田。小熊を起点に中村を経由して金子が頭で残し、中へ潜った小熊のボレーはクロスバーを越えるも、「技術だけで比べたらたぶん持たないので、そこはカチッとやった後にどうなるか」という竹中監督の"カチッ"を体現する球際の迫力で、主導権は明け渡しません。
とはいえ、「新チームが立ち上がって間もない時期で、メンバーと戦い方、システムもまだまだ試している状況」(山本監督)の養和も幅をきっちり使いながら反撃を。42分、松井が右へ展開したボールを瀬古が放り込み、八木原がダイレクトで落とした所へ走り込んだ松井のボレーはヒットしませんでしたが、サイドアタックからフィニッシュを1つ。43分にも瀬古のパスから上がってきたSBの冨川凌平(1年・三菱養和調布JY)が左クロスを送るも、八木原はわずかに届かず。44分にはゴールまで約25mのFKを松井が獲得すると、瀬古が左スミギリギリへ収めたキックは柴崎のファインセーブに阻まれるも、あわや追加点というシーンにどよめく会場。ハイテンションで推移した前半は養和が1点のアドバンテージを握って、ハーフタイムに入りました。
後半はスタートからわずか20秒で養和にファーストシュート。中央でボールを持った八木原は積極的なミドルで柴崎にキャッチを強いると、50分にもCBの杉山耕二(1年・三菱養和巣鴨JY)が縦に鋭く付け、松井が裏へ落としたパスを完璧なトラップで収めた八木原は、そのまま落とさずボレーにトライ。ボールは枠の左へ外れたものの、「まだまだ器用じゃないのでもっともっと練習しなくてはいけないですけど、確かにのびしろはあると思います」と山本監督も認める1年生ストライカーが、そのスケールの片鱗を2つのシュートシーンに滲ませます。
早く追い付きたい町田は55分、岡本が左へ流したボールを加倉井が中へ戻すも、エリアへ飛び込んだ金子はシュートまで至らず。60分にも西前のフィードから金子が奪ったFKを右から岡本が蹴り入れ、ファーへ突っ込んだ西前と小池は揃ってわずかに届かず、頭を抱えた2人。同点ゴールとはいきません。
以降も町田がボールを動かす構図自体は変わらないものの、際立つのは養和の「全員で粘り強く守るという昨年度のチームに足りなかったこと」(山本監督)。指揮官も「ここ2年はほとんど3バックでやってきたので、そういう意味では完成度というか選手たちの慣れがあるにはある」と認めつつ、「その応用ができる、キャパを広げるという意味で、今はDFラインも4枚にしている」中で、CBの杉山と清野拓斗(2年・三菱養和巣鴨JY)が中央でどっしりと構えながらシビアなゾーンへの侵入は未然に防止。「正直最後の20メートルくらいは何もしていないので。相手の待っている所にボールが入っているだけ」とは竹中監督。右の田嶋凛太郎(2年・三菱養和巣鴨JY)、左の冨川という両SBもどちらかと言えばスペースをきっちり埋めることを優先に。逆に68分には瀬古の右FKを清野が叩いたヘディングはわずかに枠の左へ。追加点への意欲もきっちり披露しながら、時計の針を確実に進めていきます。
先に動いたのは竹中監督。69分、中村に替えて木下哲星(1年・FC町田ゼルビアJY)をそのまま右SHへ送り込むと、73分には逆サイドの左でチャンス。加倉井が縦に付けたボールから、金子が巧みな反転で抜け出しかけるも、最後は田嶋がカバーに入って冷静にスイープ。75分も町田の左。上がった加倉井が中へ送り、小池が約30mのミドルを放つもボールはクロスバーの上へ。「グループとしてやろうとしていることはみんな感じていて、ベクトルが同じ方向に向いている」(竹中監督)状況で、出てきて欲しいのは「こっちの期待を良い意味で裏切るプレー」(同)。
78分の"あわや"は養和。齋藤が左へフィードを送ると、受けた八木原はドリブル開始。運んで運んでカットインしながら放ったシュートは枠を越えましたが、「スピードとパワーに加えて一生懸命さもある」(山本監督)八木原が積極的な姿勢を。これを見た竹中監督は右SBの小熊をボランチへ、ボランチの高橋をCBへ、CBの西前を右SBへ、それぞれスライドさせて後ろのバランス維持に着手。意地と意地のぶつかり合う熱戦もいよいよ最後の10分間へ。
83分は養和。瀬古の左CKをボランチで奮闘した根上鉄平(2年・三菱養和巣鴨JY)がヒールで残すも、シュートには持ち込めず。84分も養和。SHの戸張颯太(1年・三菱養和巣鴨JY)がグラウンダーでクロスを流し込み、こぼれに反応した八木原のシュートはクロスバーの上へ。直後の84分は町田。中盤で闘っていた佐々木そら(1年・ヴェルディSS AJUNT)の浮き球を青木が頭で繋ぎ、金子がダイレクトで打った25mボレーは枠の右へ。86分も町田。岡本のパスを小熊が右へ流し、1つ溜めた木下のカットインミドルは塚田が丁寧にキャッチ。迫り来るクライマックス。勝敗の行方は果たして。
89分は町田。ミドルレンジからボレー気味に青木が狙ったシュートは塚田がしっかりキャッチ。直後に竹中監督は2枚目の交替カードとして山崎北斗人(1年・FC町田ゼルビアJY)を最前線に送り込みますが、町田のフィニッシュは青木の一撃が最後。90分に松井が枠の右へ打ち込んだミドルがこのゲームのファイナルシュート。「うまくいかないことは多くあったかなと思うんですけど、選手たちが今できることを一生懸命やってくれたかなと思います」と山本監督も一定の評価を口にした養和がきっちり勝ち切り、西が丘行きを大きく手繰り寄せる結果となりました。
「基本的には選手の個性が生きるようなシステムを考えたいとは思います」と山本監督が語った養和は、前述したように最近のベースとなっていた3-6-1ではなく、4-2-3-1にここ2試合はトライ。「昨年度のチームは3-6-1の形で攻撃に出る形も回数も多かった分、カウンターだったりセットプレーで失点して勝ち点を落としているというのが実際だったと思うので、『割り切って守る時は守るんだ』という試合ができたのは、彼らにとって良かったんじゃないかなと思うんですよね」と指揮官も口にしたように、決定機をほとんど与えずに無失点で勝利を収めたというのは自信に繋がっていきそうだなと。今シーズンの目指す所を問われ、「上を目指すという気持ちにはみんな変わりはないですし、実際降格してしまったのは本当に痛手ですけど、プリンスリーグ関東に関しては相手のレベルが下がる訳ではないので、今まで以上に謙虚に地に足を着けて1日1日の練習をやって、試合を通して成長していくというのは今までと何ら変わることはないですね」と言い切った山本監督の方針に一切のブレはなし。今年の養和も何かをやり遂げそうな雰囲気が十二分に漂っています。
「相手の方がやっぱり経験値があって試合巧者というか、攻めさせられたという感じです」と試合を振り返った竹中監督に、"最後の20メートル"をやり通すためのアプローチを伺うと、「経験から来る自信もあるでしょうし、こっちの我慢もあるでしょうし、その内に出てくるとは思うんですけどね。でも、それが本当にトップトップの子と比べてどうなのかという所で」とのこと。チームとして目指す所がもはや"トップトップ"に差し掛かりつつあることは、明確になってきているようです。後半に向かう選手たちが創った円陣の中から「良い試合とかいらないぞ」「勝たないと意味ないぞ」という言葉が聞こえてきたチームの目的地は、「中学校の頃には養和に勝ったことがない子たちばっかりだし、ウチの育成はヴェルディには一度も勝ったことがないんですよね。ウチの育成から上がってくる子も結構増えてきて、そうするとどちらかと言うと試合前からネガティブな要素というのはたぶん心の中に多いはずなので、そこを消し去っていくことが今年の作業なのかなという風に感じていて、それを彼らは非常に前向きにやってくれている。長いスパンでこのクラブを考えた時には、彼らにとっても非常に大事な1年だと思います」という指揮官の言葉からも明らか。今年のクラブユース界にゼルビア旋風が吹き荒れることがあっても、この90分間を目撃した人にとっては何の不思議もないでしょう。 土屋
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