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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
掲げる日本一への第一歩は首都制圧から。1月2月のお楽しみ。東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝リーグのオープニングマッチは、おなじみ小平グランドです。
コーチから昇格した佐藤一樹監督の下、プリンス関東を2位で抜け出すとプレミア参入戦では2勝を挙げて、「より高いレベルの所でやって欲しかった」と蓮川雄大(早稲田大進学予定)も話した大きなお土産を後輩へ。さらに、夏のクラ選では全国準優勝、冬のJユースカップでは全国4強と、再び常勝軍団への道を歩み出した感のあるFC東京U-18。それでも「昨年と一緒のスタートではダメだと思っているので、去年の積み上げの部分をさらに積み上げていくのと、さらにU-18として築いてきている歴史を継承していくというのが今年のテーマ」と佐藤監督に抜かりなし。まずはこの"新人戦"でシーズン初タイトルを獲得するべく、新チームの初陣へ臨みます。
対するはチーム設立初年度となった昨年は全敗だった1次リーグでなんと全勝を飾り、堂々とこの決勝リーグのステージへと駒を進めてきたジェファFC U-18。「今の2年生が1期生で、同学年で勝負するのも今回が初めてなので、そういう部分でも少しでも西が丘に近付けるようにというモチベーションの中で、この1年や2年くらいは取り組んできています」と話すのは大久保孝監督。東京の聖地をその視界に捉えるべく、「それが一番の良さかなと思います」と指揮官も認める"明るさ"を武器に、都内における世代最高峰の巨人へ臆することなく挑みます。新チームの開幕戦ということもあって、ゴール裏のスタンドには少なくない観衆も。2015年の幕開けを告げるキックオフ。 ジェファがボールを蹴り出して、ゲームはスタートしました。
3分のファーストチャンスは東京。左サイドをSBの岩本直也(2年・プレジールSC入間)とのワンツーで抜け出した南大輔(2年・クマガヤSC)がエリア内へ。シュートはよく戻ったジェファの右SB信川拳(2年・足立第六中)がブロックしましたが、レフティ同士でフィニッシュまで。7分のファーストシュートはジェファ。キャプテンマークを巻くGK萩原力(2年・ジェファFC)のフィードを収めた三輪周平(2年・南葛飾高)はミドルレンジから躊躇なくボレーにトライ。ボールは大きくクロスバーを越えたものの、まずはお互いに1つずつシュートを見せ合います。
9分は東京。CBの柳貴博(2年・FC東京U-15深川)が左へサイドチェンジを送り、岩本の折り返しに吉村寿輝(1年・鹿児島霧島国分中)が飛び込むも、ジェファのCB園木怜(2年・FC PROUD)がきっちりブロック。直後の左CKを伊藤純也(1年・FC東京U-15むさし)が蹴ると、こぼれを岡崎慎(1年・FC東京U-15深川)が打ったシュートは枠の右へ。12分はジェファ。左サイドから船橋勇貴(2年・FC PROUD)が中へ付け、三輪が思い切って放ったミドルは大きくクロスバーの上へ外れたものの、ジェファも負けじと繰り出す手数。
当然厳しい展開は覚悟していた中で「0-0でどれだけ時間を持っていけるかという所と、相手がどれだけ困ったようなゲームができるかという部分で入っていった」(大久保監督)ジェファ。14分には伊藤を起点に大熊健太(2年・FC東京U-15深川)が右から中央へ送り、この日のキャプテンマークを託された佐藤亮(2年・FC東京U-15むさし)が叩いたボレーは、萩原がファインセーブで回避。16分にも大熊の落としから、佐藤が狙ったミドルは枠の上へ。18分にも伊藤が右からカットインしながら放ったミドルは萩原が好セーブで阻み、詰めた伊藤のゴールもオフサイドの判定に。逆に20分にはジェファも川嶋悠起(2年・ジェファFC)が25m近い枠外ミドルを。守護神の萩原、CBコンビの園木と久保田悠斗(2年・FC PROUD)を中心に、守備面での集中を保ち続けるチャレンジャーは自らのゴールを割らせません。
さて、「手探りで初戦はああなるのかなというのは予想していましたけど、思った以上にバラバラだったので『あれ、どうしちゃったの?』って感じはあった」と佐藤監督も振り返った東京。ボールを左右に動かしながら、特に岩本と南の左サイドを軸に攻め込むものの、「点の入る気配がまったくなかった」と指揮官も苦笑する時間が続きましたが、こういう時の強みはやはりセットプレー。28分、左から伊藤が蹴り込んだCKを、ファーできっちり合わせたのは岡崎。ボールはゴールネットへ柔らかく収まります。昨年からレギュラーとして経験を積んできた1年生CBがさすがの一撃。東京が1点のリードを奪いました。
牙を剥いた青赤。29分、佐藤が右へ流したボールから、SBの相原克哉(2年・FC東京U-15むさし)がピンポイントクロスを上げると、中央で待っていた大熊は綺麗なヘディングをゴールへ突き刺し、2-0。32分、左サイドへ展開した流れからボランチの鈴木善丈(1年・FC東京U-15むさし)が縦に鋭く打ち込み、ターンした南は強烈なシュートをゴール右スミへ打ち込み、3-0。「経験値というか、1点取られてショックという気持ちの部分が大きく出たかなと思います」と大久保監督。一気に点差は3点に広がりました。
「守備の所でもう少し奪いたいなというのがあって、ベンチでもコーチと『もう少し取り方ないかな』という話をしている中で、1点取られて陣形を変えたので、そういう部分で選手の間でも集中し切れない部分があったかなと思います」と大久保監督が話した通り、4-3-3から4-4-2へと布陣をシフトした流れから、一気に失点を重ねたジェファでしたが、折れなかったメンタル。35分に岩本のクロスから大熊が打ったシュートも、直後に伊藤の左CKから佐藤が合わせたボレーも、共にDFが体でブロック。36分に伊藤のラストパスから吉村が枠へ収めたシュートも、萩原がファインセーブで応酬。44分には神宮寺励(2年・ジェファFC)のパスを引き出した三輪がスルーパスを狙い、本田英寿(2年・FC PROUD)にはわずかに届かず、東京のGK松嶋克哉(2年・FC東京U-15深川)にキャッチされるも、中央突破への狙いを1つ。45分に佐藤、大熊と繋いで南が放ったミドルはわずかにゴール右へ。「昨年もそうですけど、初戦なので多少硬さがあって合わなくて、自分たちで『ヤベーぞヤベーぞ』みたいに自分たちの首を絞めていた」(佐藤監督)立ち上がりを経て、怒涛の4分間でラッシュを見せた東京が3点のアドバンテージを持って、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムでは東京に4人の選手交替が。ボランチに内田宅哉(1年・FC東京U-15深川)、右SHに菱山晃稔(2年・FC東京U-15深川)、左SHに生地慶充(1年・FC東京U-15むさし)、1トップ下に城ヶ瀧友輝(2年・FC東京U-15深川)がそれぞれ入り、ボランチの鈴木がCBへ、CBの柳が右SBへ、右SBの相原が左SBへスライド。「システムの概念はあるけどないようなものという所からスタートしているので(笑)、それなりに自由度が高い中で自分をまずは表現してくれという中」(佐藤監督)で、後半の45分間に向かいます。
一方、「守備は一生懸命やっていたと思うんですけど、シュートが凄い外れているのに『ナイスシュート』と声が出たり、ちょっと消極的というか、本当に勝とうとしているのかなという部分は見られたので、ハーフタイムでその部分は『どうなの?』という話をした」という大久保監督。真剣に3点を狙いに行く中で、後半の立ち上がりも少し押し込まれる状況を見定め、52分に1人目の交替としてドラメ勉(中学3年・葛飾ブルトンSC)を2トップの一角に送り込み、狙う前線での基点創出とスピードアップ。
「見ている人がワクワクするようなプレーはします」と指揮官も認める22番のゴラッソ。菱山のクロスを受け、自ら右ポストに当てたシュートの1分後は55分。相手陣内へ入ったエリアでボールを持った佐藤がルックアップすると、視界の先にはやや前に出ていたGKとゴールマウスが。決断。フワリと浮かせた球体はGKの頭上を破り、美しい起動を描いてゴールネットへ吸い込まれます。「あまり褒めちゃうと調子に乗るんで、僕は見なかったことにしてるんですけど(笑)」と笑った佐藤監督も「でも素晴らしかったですね」と続けて。髪を切って精悍さも増した中で、新エース候補に名乗りを挙げる佐藤のループミドルが飛び出し、スコアは4‐0に変わりました。
何とか1点を返したいジェファも、メンバーが替わって連携の糸自体はほどけつつある相手を前に、少しずつチャンスの芽が。60分には高い位置でボールを奪った船橋がドリブルで勝負。最後は鈴木のカバーに阻まれるも、果敢な姿勢を前面に。直後に佐藤の枠内ミドルを萩原がキャッチすると、61分には船橋が蹴ったFKのこぼれを左サイドで神宮寺が拾い、そのまま右足でクロス。本田のヘディングはヒットしませんでしたが、セットプレーからフィニッシュの一歩手前まで。63分にはドラメが獲得した左FKを船橋が蹴り入れ、ボールは松嶋の正確なキャッチに押さえられるも、わずかながら攻撃のテンポが出てきます。
64分には東京が再び4枚替え。右SBに高橋海人(1年・FC東京U-15むさし)、CBに蓮川壮大(1年・FC東京U-15深川)、2トップに松岡瑠夢(1年・FC東京U-15むさし)と鈴木郁也(1年・FC東京U-15深川)と4人の1年生を送り込み、城ヶ瀧はボランチへ。69分にはフィールドプレーヤーのスタメン2年生で唯一ピッチに残っていた相原が積極的なミドルを枠の上へ。昨年の悔しさを胸に、24番がシュートへ滲ませた今年への決意。
73分にはジェファに2人目の交替が。左SHで奮闘した菅原健吾(中学3年・柴又KIDS)と韓秀星(1年・淵江高)をスイッチして、攻撃への推進力を高めに掛かりましたが、次の得点を記録したのもホームチーム。80分、菱山が右サイドへ振り分けると、縦に運んだ高橋は低めのクロス。ファーへ抜けた所で待っていた城ヶ瀧がダイレクトで叩いたシュートは、ゴール右スミへ飛び込みます。佐藤からキャプテンマークを譲り受けていた2年生が、途中出場できっちり結果を。東京に5点目が入りました。
既に8人の交替選手が出場している中、この日の東京のベンチメンバーは全部で17人。GKが2人いて、中学3年も3人がメンバー入り。残りの4人は2日前に修学旅行から帰ってきた渡辺拓也(2年・FC東京U-15深川)と渡部卓(2年・FC東京U-15深川)に、前日にやはり修学旅行から帰ってきた安部柊斗(2年・FC東京U-15むさし)と西元類(2年・FC東京U-15むさし)。いずれも今シーズンの主要キャスト候補であり、とりわけ渡辺と安部は最後の交替枠を巡って、必死のアピールをベンチ脇で続けます。ところが、5点目が入った直後に9枚目のカードとして呼ばれたのは品田愛斗(中学3年・レジスタFC)。「俺が『マナト』って呼んだ時のシュウトとタクヤの顔はヤバかったですよ」と笑うのは佐藤監督。シュウトとタクヤの開幕は次戦以降へお預けになりました(笑)
「たぶんシーズン頭なので、ちょっとやらせてくれた部分というか、出ていた選手も『これくらいは大丈夫だろう』とやっていたと思う」と大久保監督は言及しましたが、60分以降のジェファには間違いなくそれまで以上の積極性が。83分には神宮寺からボールを引き出した船橋が右サイドへ絶妙なスルーパスを通し、走ったドラメの折り返しは鈴木にブロックされましたが、大久保監督は「後半はもうちょっと積極的に、攻撃的に行こうという意識は出たかなとは思います」とも。90+3分にはジェファにとってこの試合で最大のチャンスが。右から船橋が蹴ったFKがファーへ流れると、ここにフリーで走り込んでいたのは左SBの原裕佑(2年・豊島明豊中)。右足から繰り出されたシュートは、しかしサイドネットの外側に突き刺さって万事休す。「去年は初戦で凄く苦労したので、今年も甘くないよと言う形で入って、結果は結果ですけど、それ以上に9人交替枠を使って前後半で色々な選手を試せたし、見れたというのは良かったと思います」と佐藤監督も語った東京が、新シーズンの開幕戦を快勝で飾る結果となりました。
「コンディションも良い悪いがあるし、個人もバラバラだったりチームもバラバラだったりするシーンがあって微笑ましさもありましたし、ズッコケてしまうようなシーンもあったりで、良いシーンもあったし、良い選手も見れました」とゲームに関する盛りだくさんの感想を話してくれた佐藤監督。試合当日が修学旅行最終日だった小山拓哉(2年・FC東京U-15むさし)も含め、昨年の主力クラスが数人欠けた中でも、一定以上のゲームを披露したチームからは小さくない期待感が漂っています。「『昨年と同じチームを求めていたら昨年のチームには追い付けないし、昨年のチームに求めていたさらに先のものを求めていかないと昨年のチームは追い越せないよ』という話はして、納得してくれていると思うんですけどね。あとはやるかやらないか。自分たちもわかっていると思います」と佐藤監督。「大西が寮で同部屋なのでキャプテンの帝王学を教えたらしく、ロクな帝王学じゃないと思いますし(笑)、何を教えたかわからないんですけど。今日もキャプテンマークを巻いて試合後の練習をやっていて、意味がわからないんですけどね(笑)」と指揮官にイジられた新キャプテンの渡辺を中心に、『日本一とプレミアのチャンピオンシップを取る』という明確な目標を掲げた新生FC東京U-18がこの日、小平のピッチから遥かなる航海へと漕ぎ出しました。
印象的なシーンがありました。試合終了直後、最後のシュートを外した原に、「オマエさ~、得意の左足でズバンとやっちゃえば良かったのにさ~」と笑顔で駆け寄ったのはFKを蹴った船橋。サッカーを楽しんでいることがよくわかるそのやり取りから、ジェファのチームが持つスタンスが一瞬で垣間見えた気がしました。そのことを話すと「昨日の練習で原が同じような角度でズバーンと入れてたんですよ」と教えてくれた大久保監督は、「それが一番の良さかなと思います。逆に僕がそれに救われている部分や気付かされている部分も凄くあります。僕も楽しいですね」とニコリ。「立ち上げて2年目なので頑張っているというか、僕らがと言うよりは彼らが何もない状態で入ってきてくれて、少ない人数で一生懸命やってきてくれているので本当に選手に感謝だと。それこそ代表の李(済華・國學院久我山前監督)もことあるごとに来ては、そういうことを伝えてくれています」と続けた指揮官の言葉には、選手たちとの強い信頼関係が感じられました。「ボールを大事にしてエネルギッシュにやって、攻撃的にサッカーを楽しもうよというコンセプト」(大久保監督)を貫いているジェファの今後にも大いに注目したいと思います。 土屋
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