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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年01月14日

高校選手権決勝 前橋育英×星稜@埼スタ

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0113saitama.jpgがむしゃらに戦った後に待っているのは、果たして涙か笑顔か。夢にまで見た日本一を巡る高校サッカー頂上決戦。その舞台は大会史上初めての開催となる埼玉スタジアム2002です。
77回。78回。80回。87回。挑むこと4度。どうしても超えられなかったベスト4という壁へ、5度目の正直を懸けて臨んだ2日前も終了間際まで1点のビハインド。その5度すべてで指揮を執っていた山田耕介監督も「『ああ、今年もこれでやられるんだろうなあ』『何がダメなんだろうな』と思っていた」後半アディショナルタイムに、チームを救ったのは伝統の14番を託されたキャプテン鈴木徳真(3年・FC古河JY)の劇的な同点弾。勢いそのままにPK戦を制して、とうとうファイナルの舞台まで駆け上がってきた前橋育英。タイガー軍団として、そして群馬県勢として新たな歴史を切り拓く覚悟を抱いて、最後の1試合へ向かいます。
89分まで手にしていたリードと日本一への権利は土壇場で与えたPKによって霧散し、もつれた延長では決勝ゴールを奪われ、国立競技場の芝生で立ち尽くしたのは1年前。「選手の中で去年の悔しい思いを経験している子もいるし、新チームになってから日本一になりたいということで彼らもやってきている」と木原力斗監督代行も話したように目指すのはただ1つ。頂点のみを見据えて臨んだ今大会は、PK戦を含めて接戦をモノにしながら確実に勝ち上がり、セミファイナルでは日大藤沢を3ゴールで圧倒して、1年ぶりに約束のステージへ。ロッカーアウトの5分前には「絶対監督のために勝つという気持ちをより持てたと思う」とキャプテンの鈴木大誠(3年・SOLESTRELLA NARA 2002)も話した河﨑護監督からのメッセージも魂へ取り込み、大きな忘れ物を取り戻すための環境は完璧に整いました。埼玉の地に集まった観衆は何と46316人。最後の勝者を決める90分間は、育英のキックオフでその幕が上がりました。


開始1分経たないチャンスは育英。鈴木が右からアーリークロスを放り込むと、エリア内へ青柳燎汰(3年・クマガヤSC)と胃腸炎で無念の離脱となった関戸裕希(3年・横浜F・マリノスJY)の代役として、今大会初スタメンとなった野口竜彦(2年・高槻FC JY)が殺到し、両者の交錯もあってシュートには至りませんでしたが、ゴールへの意欲を前面に。2分のチャンスは星稜。左からSBの宮谷大進(3年・ヘミニス金沢FC)が入れたクロスはファーへ流れ、角度のない位置で拾った大田賢生(3年・星稜中)のシュートは右のサイドネット外側へ突き刺さったものの、まずはお互いに勝利への強い気合いを見せ合って立ち上がります。
ただ、時間が進むにつれて見えてきたのはファイナル独特の緊張感。なかなかボールの落ち着かない展開が続く中、10分に星稜が創った絶好の先制機。「大会前に足首を怪我して、それがずっと続いていたんですけど、だいぶコンディションが良くなったということと、結構彼の場合は戦える選手なので、こういうゲームでは戦えるんじゃないかなと思って」と山田監督にスタメンで送り出された育英の左SB渡辺星夢(3年・クマガヤSC)がバックパスを送るも小さく、かっさらった大田をGKがエリア内で倒してしまい、岡部拓人主審は星稜にPKを与えます。「選手たちで決めています。自信を持っている選手が蹴っているんじゃないですかね」と木原監督代行も話したキッカーは前川優太(3年・セレッソ大阪西U-15)。GKが左へ飛ぶと、前川が蹴ったボールは右スミへ鮮やかに飛び込みます。2年連続で全国ファイナルのピッチに立った9番が冷静に成果を。星稜が1点のリードを手にしました。
以降もゲームリズムは石川王者。鈴木と高橋佳大(3年・FC.SOUTHERN U-15)で組んだCBに加え、「あれだけボールに激しく行けるプレーヤーは全国の中でもそうはいない」と鈴木も絶対の信頼を寄せるボランチの平田健人(3年・千里丘FC)で中央にはきっちり蓋をして、育英アタッカー陣をバイタルから排除。18分には前川の右CKへニアに平田が突っ込み、こぼれに藤島樹騎也(3年・名古屋グランパスU15)が飛び込んだ流れは育英GK吉田舜(3年・クマガヤSC)が何とかキャッチしましたが、20分にも右サイドを杉原啓太(3年・名古屋グランパスU15)が独力で切り裂き、そのまま狙ったシュートはわずかに枠の左へ。星稜が主導権を譲りません。
さて、「お互いの距離感がすごく間延びしていた」と指揮官も話した育英は、攻撃陣が有機的に絡めない中で、ようやく25分にファーストシュートが。吉永大志(3年・JFAアカデミー福島)が左へフィードを送り、DFのクリアをそのまま叩いた渡邊凌磨(3年・クラブレジェンド熊谷)のボレーは枠の左へ。直後の26分にも青柳のパスを坂元達裕(3年・FC東京U-15むさし)がヒールで落とし、渡邊が枠内へ収めたシュートは星稜のGK坂口璃久(2年・星稜中)がキャッチしたものの、ようやく10番が2つの手数を繰り出します。
28分は星稜。森山泰希(3年・名古屋グランパスU15)が右へ振り分け、杉原がドリブルから放ったシュートはわずかに枠の右へ。29分も星稜。杉原との連携で右サイドを原田亘(3年・ヴィッセル神戸U-15)が抜け出して中へ。森山を経由して前川が打ったシュートは枠の上へ。31分は育英。CBの宮本鉄平(3年・前橋FC)を起点に渡辺が右へ最高のサイドチェンジを送ると、中へ巧みに潜った坂元のシュートは坂口がファインセーブで回避。32分も育英。渡辺が中へ付けたボールを青柳がヒールで落とし、渡邊が左へ持ち出しながら放ったシュートは坂口がキャッチ。やり合う両雄。上がったゲームのテンポ。
34分に宮本のフィードを野口が落とし、渡邊がワントラップボレーをわずかに枠の左へ外したシーンを経て、見応え十分の攻防は36分。宮本のパスを渡邊がダイレクトではたくと、青柳がマーカーを振り切って独走。決定的なシーンになり掛けた直後、「鈴木がクリアミスした時のためのカバーが周りを見てもいなかったので、自分はちょっと後ろ目にポジションを取って準備していた。案の定クリアミスした形になってピンチになったんですけど、良い準備ができていたかなと思う」と話した平田がクリーンなスライディングでボールを掻き出します。「誰よりもこの決勝に懸ける想いというのは強かったと思いますし、去年経験していない分、今年しっかり楽しんで、この舞台、このピッチでできることを幸せに感じてやるというのは決めていました」という、昨年の決勝を出場停止で経験できなかった8番が守備で見せたファインプレー。何気ないワンシーンだったかもしれませんが、非常にレベルの高い攻防だったと思います。
37分は再び星稜。平田が30m近い距離から直接狙ったFKはクロスバーの上へ。38分は育英。渡辺が鋭いパスカットからそのまま中央へ送り、青柳の果敢なミドルは枠の右へ。45分は星稜。前川が裏へ落としたボールをDFが弾くと、森山のボレーは吉田がキャッチ。直後の45分も星稜。藤島が狭いスペースへスルーパスを通し、大田が狙ったシュートはわずかに枠の左へ。育英も25分以降はやや盛り返したものの、やはりエリア内までは侵入し切れず。「選手権の事前合宿では守備の連携に取り組んだ」(鈴木)という守備面の安定感も光った星稜が1点のアドバンテージを保ったまま、最初の45分間は終了しました。


「DFラインからトップの距離をもっともっとコンパクトにしなければ、おそらく我々の優位には進まないと思って、もう1回DFラインを押し上げて、トップもプレスバックしなきゃいけないと、そんな話をしました」と山田監督。後半開始16秒のチャンスは育英。坂元が裏へ落とし、走った青柳のボレーは高橋が体でブロックしましたが、48分にも鈴木がボールカットから25m近いボレーミドルを枠内へ飛ばすと、51分にも上原大雅(3年・FC厚木JY DREAMS)のFKを野口が落とし、鈴木のミドルは大きく枠を越えたものの、キャプテンが積極性に滲ませる得点への想念。
同点弾は唐突に。53分、その正確無比なパントキックで幾度となくスタンドを沸かせてきた吉田が、少しエリアを飛び出して蹴り込んだフィードは正確に前へ。競った鈴木と青柳はどちらも触れずボールが後方へ流れ、反応した野口は体を入れて懐に収めながら左足を振り抜くと、球体は静かにバウンドしながらゴール右スミへ転がり込みます。「前半はたぶん我慢の時間帯だと思っていて、後半から自分たちのサッカーが少しずつできた」と鈴木。今大会初スタメンの2年生がこの舞台で大仕事。スコアは振り出しに引き戻されました。
止まらないタイガーの咆哮。55分、自陣エリア内で相手のドリブルに「絶対に仕掛けてくる場面だったので仕掛けてきたら奪おうと思って」足を出した鈴木が綺麗にボールを奪い、左サイドでパスを受けた渡辺はすかさず縦へ。ハーフウェーライン付近からドリブルを始めた渡邊は、ハイサイドまで持ち込みながら切り返しでマーカーを振り切ると右足一閃。巻いたシュートはそのままゴール右スミへ華麗に吸い込まれます。ここまで大会ノーゴールだった10番にようやく出た一撃は貴重な逆転弾。準決勝後に「凌磨は決勝でゴールを決めて全部持っていくヤツだと思います」と話した坂元の予言的中。育英がわずか3分間で鮮やかにスコアを引っ繰り返しました。
先制しながら逆転されるのは1年前と同じ。ただ、当時と違うのはまさにその1年前の経験。「みんなまだ時間があるのはわかっていたので、『日本一を獲るのは俺らだ』と話をあの中ではしていた」(森山)「失点した後に集まるのは習慣なんですけど、別に誰も諦めている訳じゃないし、そこはチームのまとまりを高めた分、言葉を介さなくても全員の目標が1つになっている」(鈴木)。残された時間はあと35分近く。去年に比べれば十分過ぎるほど。57分には大田、藤島、森山と細かく回してエリアに入り、宮本のクリアも再び拾うと、原田の右クロスに飛び込んだ前川のトラップは大きく、吉田にキャッチされましたが好トライを。58分にも杉原が右からカットインミドルをバーの上へ打ち込み、59分にも藤島のパスから平田が宮本にぶつけるミドルまで。「選手が最後の最後まで諦めていない姿勢を持っていたので、僕らも選手を信じて一緒に戦おうという気持ちはありました」と木原監督代行。奮い立たせる気持ち。
先に交替カードを切ったのは山田監督。60分に渡辺星夢を下げ、下山峻登(3年・クマガヤSC)を右SBへ送り込み、右SBに入っていた岩浩平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)を左SBにスライドさせて、「そこから崩されることが多かった」(山田監督)左サイドの守備強化を。62分に渡邊が相手のクリアを拾ってミドルをクロスバーの上に蹴り込むと、63分には替わったばかりの下山が右CKを獲得。「押し込まれる時間帯も来るだろうし、我々にもチャンスがあったので、次の点が大切なんだろうなと思った」と山田監督。狙いつつ、防ぎたい"次の点"。
「失点したとしてもスタメンで出ているメンバー、ベンチのメンバー、ベンチ外のメンバーを含めて誰1人負けるという感じは持っていなかったですし、絶対に同点に追い付いて逆転できるという確信はありました」というキャプテンの言葉の証明。64分、相手のCKを原田がクリアした流れからのカウンター。右へ展開した平田は「とりあえずいつもオーバーラップしているはずの原田がいなかったので、『もうこれは確実に中におるな』と自分は思っていました」と回想。受けた大田が左足でクロスを上げ切ると、CBを越えたボールに飛び込んだのは駆け上がっていた原田。確実に頭で捉えたボールは左スミのゴールネットへ到達します。「カウンターの時は誰が出てもいいと思うので、あのシーンは原田が良くあそこにいたなと思います」と平田が話せば、「失点シーンは渡邊凌磨選手と1対1で切り返されてやられて、その後で凄い落ち込んでいて『大丈夫かな』と思ったんですけど、絶対自分が返してやろうという気持ちでおったと思うので、ようやってくれたなという感じです」と鈴木大誠。再び両者の点差は霧散しました。
「流れの中でボールウォッチャーになって2点目はやられたましたね。あのへんが甘さ」と話した山田監督は65分に2枚目のカードを。吉永に替えて「リズムを変える時に投入しようということで今回は考えた」小泉佳穂(3年・FC東京U-15むさし)を同じボランチへ送り込み、中盤の強度とパスワーク向上に着手。同時に木原監督代行も1人目の交替を。杉原と加藤諒将(3年・星稜中)を入れ替え、サイドの矢印に1つの変化を。66分には星稜も平田がボレーミドルをクロスバーの上に外すと、71分には小泉のボールカットから最後は坂元が枠の左へ外れるミドル。フィフティフィフティ。激闘もあと20分あまりの勝負に。
75分に渡邊が直接FKをカベにぶつけると、1分後に山田監督は3人目の交替を。先制ゴールを挙げた野口を下げて、ジョーカーのドリブラー横澤航平(2年・前橋FC)を左SHへ送り込み、渡邊が満を持して青柳との2トップへスライド。79分には下山が拾ったボールを小泉が坂口にキャッチを強いるミドルまで。80分にも坂元のパスから横澤が縦に潜ってクロスを送り、最後は高橋にクリアされましたが、交替で切ったカードも躍動した育英が手数を繰り出します。
「前橋育英さんの選手投入より、自分たちが今までやってきたこと、途中から出る子が本当にサブの選手の責任を背負ってピッチに立って、自信を持ってプレーできるか、僕はそこだけしか考えていなかった」という木原監督は2枚目のカードを切る気配なし。83分に右から前川が蹴ったCKは、ニアへ飛び込んだ原田もシュートまで持ち込めず。85分に前川が左から入れたCKはDFがクリア。直後は決定的なシーン。前川の左CKを吉田がパンチングで弾き出すと、拾った平田は斜め後方へ。待っていた大田のシュートは枠を襲うも、吉田が指先に当てたボールはクロスバーにハードヒット。悔しがる10番。ギリギリの斬り合い。
90分は育英。吉田が右へ蹴ったボールを、坂元は粘って運びながらマイナスへ。渡邊がダイレクトで枠へ収めたシュートは坂口が丁寧にキャッチ。90+1分も育英。攻守に積極的な姿勢が目立った小泉のインターセプトから、鈴木が放ったミドルは坂口がキャッチ。90+4分は星稜。坂口のフィードをDFが弾くと、大田のボレーは大きくクロスバーの上に消え、これが結果的に後半最後のシュートに。壮絶なファイナルは4大会続けて延長戦へともつれ込むことになりました。


5分間のブレイクを経ると、この日3度目の円陣を創ってピッチへ向かう選手たち。「あれだけの中で試合をするのは、プロとかじゃないとできないので凄い幸せでした」と鈴木徳真。「点を決めたら会場全体が『ワーッ』と大歓声になったじゃないですか。それを聞いた時に『去年に似てるな』って。なんか去年と同じ舞台に来た実感というのがやっと沸いた」と鈴木大誠。春からは同じ大学へ通うことになる両キャプテンの握手を交えたコイントスが終わり、いよいよ勝敗の行方は前後半10分ずつのエクストラタイムへ。
主役はここまで大会ノーゴールだったストライカー。95分、左サイドから宮谷が投げたスローインが中央へ流れると、エリア内でボールを収めた森山はすかさず左へ流れながら左足でシュート。GKを破ったボールはゴールネットを激しく揺さぶります。「去年の決勝は交替してから逆転されてしまったので、今年1年はフル出場できる選手になるというのを最初に目標に立ててやりました」と語る11番が2年連続となるファイナル弾。「『コレ、俺らがやり返したら凄い試合になるな』と思っていた」鈴木大誠の想いはチームの共通した意思。星稜が再逆転に成功しました。
「凄く素晴らしいチームで、点を取っても点を取り返してくるという中で、勝負強さというのを凄く感じました」と素直に相手を認めた鈴木徳真。96分に育英も小泉がミドルにトライしましたが、坂口が丁寧にキャッチ。97分は星稜に2人目の交替。効きまくっていた平田と中條直哉(3年・アルビレックス新潟JY)をスイッチさせて、中盤の引き締めに改めて着手。100分は育英の決定機。青柳がDFラインの裏へ送ったパスに、走った渡邊のダイレクトボレーはしかし大きくクロスバーの上へ。入れ替わるエンド。木原監督代行は大田に替えて、大倉尚勲(2年・ツエーゲン金沢津幡U-15)をピッチへ解き放ち、勝負は最後の10分間へ。
102分に坂元と佐藤誠司(2年・FC東京U-15むさし)を入れ替えた育英に、絶好の同点機が訪れたのはその直後。左から渡邊が蹴ったCKはGKを越えて中央へ。低いボールにも丁寧に迎えに行った青柳のヘディングは、無人のゴールを越えてクロスバーの上へ。派手に引っ繰り返った山田監督。すると、そこから星稜は右サイドで圧巻のボールキープを披露して時間を着実に消費。「今日の最後の所でコーナー付近でキープしている場面があったじゃないですか。あれでもう後半の10分の内の5分くらいは稼いだと思うんですけど、ああいう技も監督が教え込んだ技なので。普通にキープしているように見えたと思うんですけど、あそこには監督がたくさん教えてくれたことが詰まっているんです」と鈴木大誠。確実に選手の中へ息衝いていた河﨑イズム。栄冠の瞬間はもうすぐそこ。
110分のトドメは「時間はそんなに細かくはわからなかったですけど、延長後半のラストぐらいだなというのは思っていました」という11番。右サイドでのボールキープから藤島がパスを繋ぐと、「1点差で何があるのかわからないので、積極的に打ったら2点差になるし、それでゴールを越えてもボールは切れるので、もう1回戻る時間があるかなと思っていました」という森山が思い切り良く右足を振り抜き、凄まじい弾道を描いたボールはゴールネットへ文字通りに突き刺さります。「得点を取る以上にチームのために必死に走って、誰よりも体を張ってチームを勢い付けるという、彼にしかできない役割がある」と木原監督代行も評した男の意地が詰まったドッピエッタ。リベンジ完遂。「星稜高校の今年のサッカー部の一員として居れたこと、そのチームでキャプテンをさせてもらったということがまず最高で、今日勝ったら本当にどんだけ良いチームでサッカーさせてもらってるんだって感じやったので、そこはもう最高の一言ですね」と鈴木大誠も笑った星稜がとうとう悲願の日本一へと辿り着く結果となりました。


両者に実力差は存在していなかったと思います。勝敗を分けた部分に関しては、延長でのパフォーマンスについてチームの成長を問われたこの鈴木大誠の回答にすべて集約されているのかなと。「チームとしての成長と言うよりは、去年の経験がモノを言っていると思います。自分であったり、前川、平田、原田、森山であったり、実際に今日点を決めたのも去年を経験している前川、原田、森山であって、去年の経験は凄く生きています。円陣を組んだり、ベンチに少し下がってブレイクがある時に、そこで話すのはほぼ去年の話で、『去年はこういうことがあったけど、今はこういう風にしよう』とか、去年の経験に基づいた自分たちの言葉の声掛けというか、そういう部分が前育より少し上回った部分かなと思っています」。1年前の国立で森山が話してくれた言葉が忘れられません。「3年生には本当にサッカー面でも私生活でもお世話になっていて、日本一を取らせてあげたかったので本当に悔しいです。来年は本当に今の先輩のような姿を自分たちも後輩に見せたいし、今度は日本一を取る姿を見せることができたらいいと思います」。有言実行。全国4154校の頂点に立ったのは、日本一の悔しさをバネに再び立ち上がった、河﨑監督率いる星稜でした。       土屋

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