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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年01月07日

高校選手権準々決勝 日大藤沢×静岡学園@駒場

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0105komada2.jpg桃色を纏う個性派集団と伝統の緑に包まれた"ガクエン"の対峙。神奈川王者と静岡王者の第2試合は、引き続き浦和駒場スタジアムです。
混戦の神奈川予選は4連覇を狙う桐光学園、インターハイ出場校の向上、3年前に夏の日本一に輝いた桐蔭学園と難敵を相次いで退け、決勝でも厚木北に1-0と競り勝って7年ぶりに全国の舞台へ帰ってきた日大藤沢。インフルエンザで欠場者が続出している今大会は、初戦の徳島市立戦で絶体絶命の状況に追い込まれたPK戦を奇跡的に制すると、高川学園と開志学園JSCを揃って中村恒貴(3年・川崎フロンターレU-15)、佐藤拓(3年・SC相模原JY)、田場ディエゴ(3年・FC湘南JY)という3選手の2戦連発による3ゴールで下して、クォーターファイナルまで。「全員が戻ってくるまでは負けられない」と話すのは、自身もようやくインフルエンザから戦線復帰した今井裕太(3年・SC相模原JY)。ピンチをチャンスに変えるメンタリティで初のベスト4進出を目指します。
2年連続の全国出場を狙う藤枝東をファイナルで下し、王国を4年ぶりに制圧して冬の選手権へ帰ってきた静岡学園。プリンス東海では最終節で2点のビハインドを引っ繰り返す劇的な逆転勝利で2位に滑り込み、プレミア参入戦こそ履正社との壮絶な撃ち合いの末に敗れたものの、大きな自信を獲得。迎えた今大会は初戦で佐賀東相手に6ゴールを叩き込んで好スタートを切ると、2日前の3回戦では夏冬連覇の懸かった大本命の東福岡を3-0と完全粉砕。「総体までは非常に失敗の方が多くて、失敗と改善の繰り返しだったが、ここに来て失敗の回数も減ってきて成功する確率が非常に上がってきた」と川口修監督。18年ぶりのベスト4へ士気は高まるばかりです。注目の対戦とあって駒場のスタンドには6596人の観衆が。埼玉スタジアムを巡る80分間は、日藤のキックオフでその幕が上がりました。


先にチャンスを掴んだのは日藤。2分、左から西尾隼秀(2年・バディーJY)が蹴ったCKはこぼれ、再び西尾が入れたクロスはDFがクリア。4分は静学。名古新太郎(3年・大阪東淀川FC)が右へ振り分けたボールを、薩川淳貴(2年・LIBERDADE FC)が中央に持ち込み、3列目から上がってきた後藤真(3年・静岡学園中)のシュートは日藤のCB金井勇人(3年・SC相模原JY)にブロックされましたが、5分には静学に決定機。本藤風太(3年・FC東京U-15深川)が頭で押し返し、エリア内へ潜った加納澪(2年・清水エスパルスJY)は1対1に。ここは日藤のGK鈴木孔明(2年・横浜F・マリノスJY追浜)がファインセーブで掻き出しましたが、まずは静学が勢いを持って立ち上がります。
11分は日藤。西尾を起点に田場がはたくと、「今は調子が良いので外せない」と指揮官も評した栗林大地(3年・FC湘南JY)はリターン。田場はオフサイドになりましたが、好調の縦関係が際どいシーンを。ただ、「前半は立ち上がりが悪くてハッキリとしたプレーができなくて、相手に飲まれた部分がある」と日藤のCB小野寺健也(2年・秦野南中)も振り返ったように、少しずつ攻勢を強めたのは伝統の緑。21分には後藤の左FKがこぼれると、拾った鹿沼直生(2年・GRANDE FC)は左へ流し、さらに加納が左へ持ち出しながら放ったシュートは、小野寺が体でブロック。22分にも後藤が左から入れたCKを、ファーで叩いた加佐怜人(3年・セレッソ大阪和歌山U-15)のシュートは枠の右へ外れたものの、「サイドがポイントになると思っていたんですけど、静学が思った以上に長いボールと、その後からのドリブル、パスのリズムを創ってきていた」と佐藤監督。続く静学のゲームリズム。
右の薩川、左の旗手怜央(2年・FC四日市U-15)とサイドの突破力が注目される静学で、攻撃のポイントとして目に付いたのは2つ。1つは2トップ下に位置する名古がサイドへ流れた時のドリブル。そもそも縦へと運べるアタッカーがいる上に、縦へも中へも行ける名古がサイドで基点を創る動きは効いていたなと。もう1つはボランチの一角を務めた後藤の攻撃参加。パートナーの鹿沼がある程度バランスを取る中で、小柄な22番がバイタルへ侵入した時は例外なくチャンスの萌芽が。この2人の存在がチームの推進力を高めていたように感じました。
23分は日藤。栗林のパスから田場がエリア内へ切れ込むも、加佐と光澤和人(3年・富士見プリメイロFC)がきっちり挟み込んでブロック。24分も日藤。左サイドから栗林が思い切って狙ったミドルは枠の右へ外れるも、これがチームのファーストシュート。32分は日藤のビッグチャンス。佐藤がシンプルに裏へ落としたボールに栗林が走り込むと、飛び出したGKはまさかの空振り。必死にカバーしたキャプテンの石渡旭(3年・ジュニオールJY)がタッチへ蹴り出しましたが、20分過ぎからはようやく日藤にも前へのパワーが出始めます。
それでも再びペースは静学へ。35分、鹿沼が右へ送り、薩川のカットインミドルは鈴木がキャッチ。36分、後藤を起点に旗手が右へサイドチェンジ。受けた薩川はシャペウで抜け出すと、さらにマーカー2人をぶち抜きながら放ったボレーはヒットしませんでしたが、そのアイデアにどよめくスタンド。「受け身にならないように入ろうと言ったんですが、前半は受けていましたね」と佐藤監督。静学が優位にゲームを進めた最初の40分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


後半スタートから動いたのは佐藤監督。「後半は受身にならないで強気で行ってフィフティに戻そうと」と選手を送り出す中で、1人目の交替として佐藤を下げて投入するのは、今大会初めてのベンチ入りとなった今井裕太(3年・SC相模原JY)。「12月は本当に調子が良くて、得点も今井がディエゴがというくらい取っていたのに、直前でインフルエンザになってしまった」(佐藤監督)アタッカーを、この局面で大舞台へと解き放ちます。
43分は静学。左サイド、ゴールまで約25mの位置から名古が直接狙ったFKは枠の左へ。44分も静学。名古が今度は中央に入れたFKは鈴木がパンチングで回避。以降は55分に中村がドリブルシュートを放つも弱く、静岡学園のGK山ノ井拓己(1年・ジェフユナイテッド千葉U-15)にキャッチされるまで、お互いに10分近くフィニッシュを取り切れない膠着状態に。手数がなかなか出てきません。
56分は静学に久々のチャンス。後藤が右へ展開したボールを薩川が繋ぎ、上がってきた加佐のクロスにファーで合わせた旗手のヘディングは大きくクロスバーの上へ。直後には日藤に2人目の交替が。中村を下げて三明風生(3年・横須賀シーガルズFC)をそのまま左SHへ投入し、サイドの蓋を高い位置で。それでも60分も静学。高い位置でルーズボールを粘って収めた本藤が、そのままミドルレンジから左足を振り抜くと、鈴木がファインセーブで応酬して先制点は奪えなかったものの、ここから始まる静学のラッシュ。
61分、右から名古が蹴ったFKを、ファーに飛び込んだ鹿沼がフリーで叩くも、ボールはクロスバーの上へ。直後には川口監督も1人目の交替を。薩川と中澤史伝(3年・ESPORTE CLUBE JOGADOR)を入れ替え、サイドに施したさらなる縦への矢印。62分、右から名古が斜めに打ち込み、本藤の落としを名古が狙ったシュートは枠の右へ。63分、相手GKのキックを拾った名古がそのまま放ったシュートは枠の左へ。漂うゴールへの予感。
67分に佐藤監督が左SBの富山北斗(3年・FC厚木JY DREAMS)に替えて切ったカードは、前田マイケル純(3年・大磯中)。「富山の左のクロスも捨て難いが、三明という自分たちにとっての1対1のスペシャリストを左に置いて」(佐藤監督)中澤の突破をケアすると共に、前田をCFに置くことで「前田とディエゴ、そこに栗林が絡めればという攻撃」(同)も意図しつつ、勝負の一手を。68分には中澤が右サイドを切り裂き、上げたクロスに本藤が飛び込んだヘディングが枠を襲うも、鈴木ががっちりキャッチすると、訪れたピンクの狂喜。
69分に日藤が右サイドで獲得したFK。レフティの西尾が正確なキックを打ち込むと、「最初のマークの争いはあったんですけど、西尾君との繋がりというか、あそこにボールが来るというのはわかっていた」という小野寺がニアでヘディング。流れたボールをファーへ詰めた前田が胸で押し込むと、球体はコロコロとゴールネットへ転がり込みます。ここ2試合のスタメン落ちを受けて、「『俺しかいない。こんな所で終われない』という姿勢が昨日の練習でも現れていたので、マイケルで行こうというのは自分の中で決断していた。今日はやってくれるなと思っていました」という指揮官の期待に応える一撃。日藤がスコアを動かしました。
「ずっと今年の課題だったセットプレー」(川口監督)でビハインドを負った静学が、しかしすぐさま発揮したリバウンドメンタリティ。71分、旗手のパスを名古が右へ振り分けた展開から、中澤は中央へ少し切れ込みながら左足で枠内へ。鈴木も懸命にファインセーブで阻み、こぼれに反応した後藤のシュートも小野寺が体でブロックしましたが、さらに拾った本藤が冷静に左足を振り抜くと、綺麗な一直線の軌道を描いたボールはゴール右スミへ吸い込まれます。「我々も守るチームではないので」とプライドを覗かせた川口監督の執念実る。あっという間にスコアは振り出しへ引き戻されました。
「私も静岡出身なので、"ガクエン"相手にゼロで収まる訳ないと思っていました」と佐藤監督。「点数を取られてもそんなに焦りはなかったです」と今井。75分は日藤。小野寺のFKを田場が落とし、栗林がボレーで狙ったミドルは山ノ井がキャッチ。78分も日藤。西尾が右のハイサイドへ落とすと、飛び出した山ノ井より一瞬速く田場が頭で突くも、冷静に戻った石渡がカバーを見せ、山ノ井が何とかクリア。そして、わずかに傾いた流れを逃さないのが今の日藤。
78分、山ノ井のクリアで得たスローインを田場が投げると、栗林はダイレクトで外へ戻し、SBの福屋凌平(1年・横浜F・マリノスJY追浜)は正確に浮かせて中へ。走り込んだ田場がワンタッチで裏へ落としたボールを、今井は躊躇なくダイレクトで右足一閃。左スミへと向かったボールは確実にゴールネットを揺らします。ようやくチームへ再合流し、「その想いが昨日の練習に現れていたと思うので、誰よりもハードワークしていましたし、目付きが違っていました」と佐藤監督も認める8番の値千金弾。「チームに全然貢献できていなかったので、何としても決勝点を決めてやろうという気持ちでプレーしていた」と語る今井の一発で、再び日藤が1点のリードを強奪しました。
追い込まれた静学。このまま終われない静学。80分には中澤のパスから本藤がシュートまで持ち込むも、金井がきっちりクリア。直後に名古が蹴った右CKへ鹿沼が飛び込むも、DFが冷静にクリア。アディショナルタイムは4分という掲示。80+1分にも名古が右から放ったCKはオフェンスファウル。静学は2人目の交替として後藤と大坪岳(3年・静岡学園中)を、日藤は最後の交替として西尾と田中翔太(3年・FC湘南JY)をそれぞれ入れ替え、いよいよゲームは最終盤へ。
80+2分は静学。左から名古が蹴り入れたCKは、戻っていた前田がヘディングで決死のクリア。逆に80+4分は日藤のカウンター。中央を運んだ田場が左へ回し、今井がループで狙ったシュートはゴール右へ外れるも、最後まで追加点への意欲を見せた神奈川王者に凱歌。「正直まだ全然実感がないというのが本音です。私も静岡でずっと高校サッカーをやってきて、"ガクエン"がどれだけ強いかというのは知っていたので、ちょっとこの後で噛み締められる瞬間が来ればいいなと思います」と佐藤監督も話した日藤が、同校史上初となる全国4強へ進出する結果となりました。


「インフルエンザでいない選手の分までという気持ちが強いし、結構罹った選手に3年生が多いので、何としても繋げてあげようという気持ちは強いですね」と2年生の小野寺が話したように、代わった選手が活躍を見せれば、この日が復帰初戦となった今井が決勝ゴールを叩き出すなど、主力が次々とインフルエンザで離脱したことも、「絶対コイツら戻ってくるんだから』という雰囲気や一体感がある」と佐藤監督も認めるポジティブな要素に変えつつある日藤の勢いは、とどまる所を知りません。また、「ムードも雰囲気も最高潮の中、自分もちょっと浮かれていたのに、キャプテンの吉野が『静学は今ロッカールームで絶対に泣いているぞ』と。『自分たちはその想いも受け継いで、さらに準決勝も締めて掛かろう』と言っていて、吉野もインフルエンザからやっと今日戻りましたから、少し成長してくれたんだなと思う瞬間でしたね。自分が何を浮かれているんだろうと、また反省しました」と指揮官も明かした通り、チームも個人もこの大会を通じて様々な成長を遂げている様子も窺えます。「あと5日間もあればもうちょっと伸びるかもしれないのでもう1回見直して、準決勝は出ていない選手が出るかもしれませんよ(笑) それは冗談ですけど、今日も2人初めてベンチ入りした子もいるので、その子たちも本当に1つになって戦っていきたいと思いますね」と佐藤監督が話せば、「今日も今井君が復帰したし、まだ"隠し球"と言うか全然いるので、ここからノーマークの選手が出てくると思います」と小野寺もニコリ。日藤旋風がどこまで吹き荒れるのか。5日後のセミファイナルも要注目です。      土屋

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