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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年01月06日

高校選手権準々決勝 履正社×星稜@駒場

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0105komaba.jpg2年連続ベスト8の新鋭と3年連続ベスト8の名門がこのステージで対峙。大阪王者と石川王者が激突する会場は浦和駒場スタジアムです。
昨年の選手権は初出場ながら秋田商業、徳島市立、青森山田と常連校ばかりを蹴散らし、最後は平野直樹監督の母校でもある四日市中央工業にPK戦の末に敗れたものの、いきなり全国8強まで駆け上がってみせた履正社。迎えた今シーズンはインターハイ予選こそ早期敗退を余儀なくされましたが、激戦のプリンス関西を制すると、勢いそのままにプレミア参入戦でも連勝を飾って、来年からトップディビジョンへと昇格する権利を獲得。今大会も初戦で大谷室蘭をPK戦で退けると、一昨日の中津東戦は林大地(2年・ガンバ大阪JY)のドッピエッタを含む大量5ゴールを奪って、2年連続でこの舞台まで。去年見た景色のその先へと進むべく、重要な80分間を戦います。
ほとんど日本一の座をその手中に収めながら、後半終了間際に追い付かれると、延長後半の失点で逆転を許し、全国準優勝という悔しい経験をちょうど1年前に突き付けられた星稜。捲土重来。インターハイの全国8強、プリンス北信越準優勝、プレミア参入戦での敗退を経験し、県予選16連覇という偉業を引っ提げて臨んでいる今大会は、初戦となった2回戦で鹿児島城西をPK戦で振り切ると、2日前の3回戦では米子北にエース大田賢生(3年・星稜中)の決勝ゴールで競り勝って、3年連続でこの舞台まで。河﨑護監督不在の中でも昨年超え、すなわち頂上へと辿り着くために、まずはここ2年突破している8強の壁に挑みます。会場の駒場は11.0度と、コートを脱いで試合を見守る観衆の姿も。実力者同士の一戦は星稜のキックオフでスタートしました。


先にチャンスを創ったのは履正社。2分に左サイドで獲得したFKを牧野寛太(2年・ガンバ大阪JY)が蹴り込むと、ニアへ飛び込んだ小川達也(2年・高槻FC JY)のヘディングはクロスバーの上へ。8分は星稜にもフィニッシュが。原田亘(3年・ヴィッセル神戸U-15)のパスを受けた阿部雅志(2年・FC四日市U-15)がスルーパスを通し、走った原田が切り返しから放った左足シュートはゴール右へ外れましたが、まずはお互いにシュートシーンを繰り出し合います。
履正社は「相手がおそらくは途中から出てくるだろうというのを想定した中で、交替で出した時も面白いパフォーマンスを出してくれていたので、そろそろやってくれるんじゃないかなという想いで」指揮官が今大会初めてスタメンで送り出した瀧本高志(3年・FCB2)が、前で体を張って基点創りに奔走。9分に牧野が蹴った左CKは星稜のGK坂口璃久(2年・星稜中)にパンチングで弾かれたものの、16分にもSBの大迫暁(2年・ヴィッセル神戸U-15)と林の右サイドコンビでFKを奪うと、多田将希(3年・FC PASENO ITAMI)が右から蹴ったボールも坂口にキャッチされましたが、前へのパワーはやや履正社に。
20分は星稜にもセットプレーのチャンス。右から前川優太(3年・セレッソ大阪西U-15)が入れたCKを、ニアで合わせた原田のヘディングはゴール左へ逸れましたが、右は阿部と原田で、左は藤島樹騎也(3年・名古屋グランパスU15)と宮谷大進(3年・ヘミニス金沢FC)で組んだSHとSBの関係性は良好で、クロスやフィニッシュにはあと一歩の所で繋がらないとはいえ、サイドアタックに可能性を滲ませます。
24分には履正社に決定的なシーンが。大迫がボディアングルを変えて、右から中央へクサビを打ち込むと、林はワンテンポ溜めて左へ。エリアのすぐ外で受けた牧野は、左へ1つ持ち出しながらシュートまで持ち込むも、ボールはクロスバーの上へ。「ちょっとした最後のプレーの精度」(平野監督)は伴わなかったものの、3トップの2人が関与して創出したアタックは迫力十分。
流れの中からはシュートまで持ち込めない星稜も、ハイサイドを取ってのセットプレーは何回も。30分、左から前川が入れたボールは履正社のGK安川魁(3年・藤井寺FC)がパンチングで回避し、最後はキャプテンの小川明(3年・FCB2)が大きくクリア。31分、ここも右から前川が蹴ったFKは安川ががっちりキャッチ。33分には藤島、阿部、原田が絡んで奪った右CKを前川が蹴るも、一転して履正社のカウンター。安田拡斗(2年・ガンバ大阪JY)が頭で掻き出すと、大迫は左へ。瀧本がエリア内へとドリブルで仕掛け、こぼれを狙った小川達也のシュートは高橋佳大(3年・FC.SOUTHERN U-15)が何とかブロックしましたが、ゴールトゥゴールの局面に沸き立つスタンド。
ギアの上がった履正社の3分間。34分、牧野の左CKはいったんDFに弾かれましたが、拾った多田が左へ振り分け、牧野のシュート気味クロスは坂口が何とかフィスティングで回避。35分、右から多田が放り込んだCKは、ファーでフリーになった小川明まで。キャプテンのヘディングは坂口が懸命に掻き出し、反応した安田のシュートも坂口が果敢にブロック。36分、ここも多田が自ら蹴った右CKのこぼれを拾い、カーブを掛けたピンポイントクロスを送り込むと、飛んだ林のヘディングはヒットせず、ボールは枠の左へ外れましたが、「前半は押し込まれる時間帯があったんですけど、よくディフェンスが耐えてくれたなと思います」と指揮官の留守を任されている木原力斗監督代行も話したように、終盤は履正社が押し込んだ前半はスコアレスでハーフタイムへ入りました。


10分間のブレイクを挟んでも流れは変わらず。42分は履正社。小川明のパスカットから多田を経由し、牧野が左へ振り分けたボールを、瀧本は変化を付けたタイミングでクロス。ここは林の前で宮谷にカットされるも、45分も履正社。小川達也を起点に牧野が右へ流し、林のピンポイントアーリーは絶妙。ダイレクトで叩いた瀧本のシュートは弱く、坂口にキャッチされましたが、完全に崩した形を創出。46分にも小川明の左ロングスローから、瀧本が敢行したオーバーヘッドはヒットせず、流れから小川達也が狙ったミドルは枠の左へ。48分にも小川明の左ロングスローがこぼれ、田中駿汰(2年・ガンバ大阪JY)が打ったミドルは前川が体でブロック。大阪王者の続くラッシュ。
「ボールを回される時間も長いという話をしていたが、自分たちが攻撃になった時は勇気を持って前に出て行こうと話をした」と木原監督代行も言及した前への勇気の結実。50分、左サイドで藤島がタメを創って後ろに下げたボールを、出場停止から帰ってきた森山泰希(3年・名古屋グランパスU15)が右足でニアへクロス。飛び込んだ大田はマーカーの前に潜ると、巧みに出した右足でプッシュ。柔らかく揺れたゴールネット。これがプリンス北信越得点王のゴールセンス。押し込まれていた星稜が先制点を手にしました。
「昨日練習したんだけどなあ。『速いボールが入ってくるよ』『ニアで合わすよ』『だから慌てるな』と練習したんだけど」と失点シーンを悔しがった平野監督。54分には高い位置で田中がボールを奪うも、右サイドを狙ったパスはキックミスに。57分にも安田のパスから小川達也が右へ送り、瀧本が重心の低いドリブルでサイドをえぐり切って折り返したボールは、牧野の前で鈴木大誠(3年・SOLESTRELLA NARA 2002)がきっちりクリア。60分にも瀧本、田中と右サイドへ繋ぎ、林が上げたクロスも坂口がキャッチ。CBの安田と長尾悠平(3年・FC PASENO ITAI)を中心にボールは支配するものの、持ち込めないフィニッシュ。
60分に平野監督が決断したのは2枚替え。「選手の出来が良いとか悪いとかじゃなくて、相手もいっぱいいっぱいでやっているのはわかったし、そういう意味でフレッシュな選手を入れて、さらに活性化して攻撃したいという意図」で林と瀧本を下げて、田上翔太(3年・FC ARISTA)と角野光志朗(3年・摂津FC)を送り込み、もう一度ワイドの推進力増強に着手。一方の星稜も62分に大田がミドルレンジからチームにとって後半2本目となるシュートを枠の上へ外すと、直後には森山に替えて大倉尚勲(2年・ツエーゲン金沢津幡U-15)を投入。得点直後にベンチから伝えた「もう一度守備からしっかり入ること」(木原監督代行)の徹底を図り直します。
64分は履正社。田上のパスから牧野が右へ持ち出して狙ったシュートは枠の右へ。65分には履正社に3人目の交替。奮闘した小川達也と川畑隼人(2年・ガンバ大阪JY)を入れ替え、中盤から前に出るパワーを一層。66分も履正社。多田の右CKもDFが弾き返し、拾った多田のパスも田上は繋ぎ切れずにボールロスト。72分に平野監督が最後の交替選手として菅原大空(2年・大阪東淀川FC)をピッチへ解き放つと、73分に木原監督代行も阿部と加藤諒将(3年・星稜中)をスイッチ。双方がカードを切り合って、ゲームはラスト5分間とアディショナルタイムへ。
75分は履正社。菅原のパスを多田は角度を変えて中央へグサリ。受けた川畑が縦に付けたボールに、菅原が走るも鈴木がカバーに入ってシュートには至らず。79分は星稜。ボールを奪った加藤がそのままドリブルで持ち運び、放ったシュートはわずかにクロスバーの上へ。キャプテンの鈴木と高橋で組んだCBコンビと、アンカー気味に中盤を引き締める平田健人(3年・千里丘FC)を軸にした星稜ディフェンスは限りなく鉄壁。第4審判がピッチサイドで掲げた数字は"3"。付け加えられた180秒間の攻防は如何に。
80+1分は履正社。左から小川が渾身のロングスローを投げ入れるも、坂口がパンチングで回避し、混戦の中から大田が大きくクリアすると、これが両チーム通じて最後のチャンス。180秒間が消費された後に吹き鳴らされた試合終了のホイッスル。「やはり相手の方が技術の面だったり、気持ちの面で勝っていた所があったと思うんですけど、そういう相手に対して集中力を切らさずによく耐えたなと。みんなで声を出し合って協力してできた所は成長したと思います」と木原監督代行も選手たちを賞賛した星稜が、3年連続となるベスト4へと駒を進める結果となりました。


試合後は開口一番に「悔しいですね。非常に悔しい...」と感情を露にした平野監督。「ゲームのプランもこちらがイメージした通り」だっただけに、ワンチャンスでの失点に対するやり切れない想いが、言葉の端々に滲んでいました。それでも初出場だった前回に続いて、2年連続で全国のベスト8へ勝ち上がってきたという結果は大いに誇っていい勲章。「積み上げは間違いなくあると思っています。どんなチーム相手にもボールをしっかりと繋いで、チャンスも創ってという。あとはフィニッシュ、結果、得点をという所での精度をもうちょっと上げていかないといけない」と話した指揮官は、ベスト4への壁という質問に対しても「壁があるとは思っていないです。見えない壁じゃなくて、明らかな課題がありますから。難しいこととは思っていないです。より自信を持ってプレーすること。自分たちのやってきたことは間違いないし、星稜さんにも冷静になり出した後はボールも動かせるし、チャンスも創れるし、やっていることはまだまだ彼らの将来に繋がることだなとは思っています」とキッパリ。最後には2年生中心のアタッカー陣に向けて、「期待感はあるけど波があり過ぎるから、調子に乗るんだったら天まで昇るくらい調子に乗ってくれればいいんだけど、中途半端なんだな。こんなお灸を据える機会はないでしょう。2年生はお灸です」といつもの平野節も。情熱の指揮官に率いられ、戦国の大阪を勝ち抜いて全国8強まで辿り着いた履正社が、今後も注目すべきチームであることは間違いありません。        土屋

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