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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年01月05日

高校選手権3回戦 前橋育英×山梨学院大附属@駒沢

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0104komazawa.jpgプリンス関東のリターンマッチは全国の16強で。「いつもやっているチームなのでお互いにわかっている」(山梨学院大附属・吉永一明監督)両雄の再会は駒沢オリンピック公園陸上競技場です。
選手権出場は18回。その中でベスト4進出が4度と、全国にその名を知られる上州のタイガー軍団・前橋育英。ただ、意外にも過去4度のベスト4ではいずれも黒星を喫しており、ファイナル進出は1度もなし。今シーズンはインターハイでベスト4まで勝ち上がり、プリンス関東も3位という好成績を残したものの、12月のプレミア参入戦では悔しい敗退を経験するなど、この最後の大会に懸ける想いは格別。初戦の初芝橋本戦はCBの宮本鉄平(3年・前橋FC)がヘディングをねじ込み、1-0の辛勝で3回戦へ。「目標は日本一です」とその宮本も明言する頂を見据えながら、この一戦に臨みます。
全国制覇経験校同士の激突となった滝川第二との初戦を1-0でしぶとく制すると、2回戦の岐阜工業戦では9人目までもつれ込んだPK戦を粘り強くモノにして、4年ぶりにベスト16へと駒を進めてきた山梨学院大附属。チームの10番を背負う岐阜内定の小川雄大(3年・ヴァリエ都留)が負傷でベンチスタートを余儀なくされる中、スタメン全員を3年生で固めた「みんなで頑張って守備するチーム」(吉永監督)はここまで2試合で無失点。組織だった守備をベースに、プリンス関東では1勝1敗だったライバル相手の勝ち越しと、ベスト8進出を同時に狙います。観衆は1試合目よりさらに膨れ上がった9727人。注目の関東対決は育英のキックオフでスタートしました。


開始26秒のファーストシュートは育英。この日は左SBでスタートした岩浩平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)のクサビから、関戸裕希(3年・ヴェルディSS小山)がドリブルでフィニッシュまで。山梨学院もすかさず56秒にファーストシュート。カウンター気味の流れの中で、宇佐美佑樹(3年・アストロンSC)が右サイドを運んでそのままシュート。1分以内にお互いがフィニッシュを取り合う、アグレッシブな展開でゲームは立ち上がります。
ただ、直後からリズムを掴んだのは「前半始まってからウチのペースでやっていた」と山田耕介監督も話した育英。2分に坂元達裕(3年・FC東京U-15むさし)が右からカットインシュートを放つと、3分にも関戸がやはり右から持ち込んでシュートを打ち切るも、ここは山梨学院のGK古屋俊樹(3年・ヴァンフォーレ甲府U-15)が好セーブ。6分にもエリア内でトリッキーなドリブルから、関戸が枠を外れるシュートまで。さらに8分にも、ボランチの吉永大志(3年・JFAアカデミー福島)がラインの裏へ落とし、走った青柳燎汰(3年・クマガヤSSC)のシュートは、再び古屋がファインセーブで立ちはだかりましたが、タイガー軍団が集中させた手数。
さて、「立ち上がりはちょっとウチも重い感じがある中で攻め込まれた」と吉永監督も話した山梨学院は、10分にチャンスを。中盤でボランチの多田倫浩(3年・M.FC高松JY)がボールを引っ掛け、そこからのカウンターで走った宇佐美のシュートは枠外も、1つの狙いをフィニッシュで体現。14分には育英も渡邊凌磨(3年・クラブレジェンド熊谷)の右CKを、青柳が頭で合わせるも古屋にキャッチされると、訪れた山梨学院の決定機。
17分、中央を多田が打開して右へ送ると、溜めた宇佐美のクロスはファーサイドまで。ここで待っていた188センチの大型ストライカー原拓人(3年・Uスポーツクラブ)がヘディングで叩いたボールは、しかし左ポストを直撃して枠外へ。先制とはいかなかったものの、惜しいシーンを創出します。
この前後から「ちょっとハッキリとプレーを切ることができない苦しい時間」(吉永監督)を凌いだ山梨学院も、少しずつ攻守にパワーが出始め、フィフティに近い展開まで。22分は育英。右サイド、ゴールまで約25mの距離で獲得したFKは、渡邊凌磨が直接狙うもクロスバーの上へ。27分は山梨学院。左からのFKをフリック気味に頭で合わせた宇佐美のシュートは枠外へ。ここは膠着した時間帯に。
30分は山梨学院。多田が中央からテンポを変えて縦パスを送り、受けた伊藤大祐(3年・ヴァンフォーレ甲府U-15)のシュートは枠の右へ外れるも、34分のビッグチャンスも山梨学院。右サイドでボールを引き出した伊藤は、中央へ切れ込みながら左へ。フリーで抜け出した福森勇太(3年・FC東京U-15深川)のシュートは、ふかしてしまい枠外へ。36分も山梨学院。縦へと短いパスで仕掛けると、宇佐美が繋いだボールを多田が狙うも、浮いてしまったボールはクロスバーの上へ。とはいえ、30分以降はボールアプローチの速さと強さで上回った山梨学院にペースが傾いた前半は、スコアレスのままでハーフタイムへ入りました。


甲斐ブルーの沸騰は後半開始早々。42分に右サイドで伊藤からボールを受けた宇佐美は、果敢にドリブルでエリア内へ。DFに囲まれながらバランスを崩さずに持ち堪えながら放ったシュートは、ゴール左スミへ見事に飛び込みます。エースの小川欠場以降はスタメンを守り続けてきた小柄なアタッカーが執念の一振りで大仕事。山梨学院が1点のリードを奪いました。
「今日の失点も自分が絡んでいた部分があったので、あそこは責任を持って取り返そうと思って狙っていました」というCBのリベンジ。50分は育英の左CK。渡邊凌磨が蹴り込んだボールがファーまで流れると、ここに飛び込んだ宮本のヘディングは緩やかな軌道を描きながら、逆サイドのゴールネットへ到達します。「最初からファーが空いていたら意識すると思うので、その1個前に入ればフリーで行けるかなと思って前にしっかり入れた」と話す宮本の、お手本にしているというセルヒオ・ラモスばりの一撃は貴重な2戦連発となる同点弾。たちまちスコアは振り出しに引き戻されました。
追い付かれるシーンを見た吉永監督は52分に即決。先制弾の宇佐美を下げて、「同点に追い付かれてちょっとチームにパワーが欲しかったので、彼ならそれができる選手だと考えて」小川を早くもピッチへ解き放ち、取り戻しに掛かったゲームリズム。直後の52分は山梨学院。右サイドをドリブルで切り裂いた伊藤が、そのまま放ったループミドルは枠の左へ。57分は育英。関戸の縦パスを、鈴木は反転しながら絶妙スルーパス。抜け出した青柳の1対1はゴール右へ外れましたが、双方が次の得点を巡ってやり合います。
60分は山梨学院。左サイドで得た25m近い距離のFKを、大場祐樹(3年・フォルトゥナSC U-15)が直接狙ったキックはカベを直撃。61分は育英。左からカットインしながら関戸が放ったミドルは枠の右へ。山田監督も相次ぐ交替を。62分、関戸に替えて横澤航平(2年・前橋FC)を送り込むと、64分にも吉永と渡辺星夢(3年・クマガヤSSC)を入れ替え、左SBが本職の渡辺星夢はそのままボランチへ。なかなか相手の堅陣を打ち破れない状況で、中央に配したレフティの展開力。
スタンドがどよめいたのは65分。多田が展開したボールを左サイドでもらった小川は、少し中に切れ込みながらコントロールショット。綺麗な弧を描いたシュートはGKを破るも、右のゴールポストに弾かれましたが、「コンディション的にはあまりよくなかったけど、彼らしさは出してくれたんじゃないかなと思う」と指揮官も言及した10番が、さすがの実力を1万人近い観衆へ見せ付けます。
68分は育英にアクシデント。CBの上原大雅(3年・FC厚木JY DREAMS)が足の負傷でプレー続行が難しくなり、小泉佳穂(3年・FC東京U-15むさし)をボランチの位置へ投入。渡辺星夢が左SBに、岩がCBにそれぞれスライドして、守備隊形のバランスを維持。69分には山梨学院に2人目の交替。池添勘太郎(3年・東久留米西中)をターゲットの原とスイッチして、終盤は機動力で最後の勝負に。69分は育英。渡辺星夢のピンポイントクロスを、渡邊凌磨が押し込むもオフサイドの判定。70分も育英。SBの下山峻登(3年・クマガヤSSC)の右クロスを、渡邊凌磨が合わせたヘディングは枠の右へ。育英が攻撃の迫力を打ち出しながら、ゲームはいよいよラスト10分間へ。
78分は育英。CKの流れから右サイドで坂元が粘って残し、渡邊凌磨も粘って繋ぐと、宮本のシュートは古屋が確実にキャッチ。79分も育英。ミドルレンジでルーズボールを収めた渡邊凌磨は、コンパクトなスイングで左足ミドルを打ち込むも右ポストをかすめて枠外へ。アディショナルタイムの掲示は3分。意地の張り合いも正真正銘のクライマックスへ。
80+2分も育英。鈴木がシンプルにDFラインの裏へ送り、走った渡邊凌磨はマーカーともつれてエリア内で転倒するも、主審のホイッスルは鳴らずノーファウル。80+3分も育英。岩のフィードを拾った渡邊凌磨の強烈なミドルは、古屋が横っ飛びのファインセーブで回避。その左CKも小泉が蹴ったボールを古屋がパンチングで掻き出すと、聞こえたのはタイムアップを告げるホイッスル。竜虎譲らず。駒沢会場の2日間で4回目となるPK戦に、ベスト8進出の権利は委ねられることになりました。


先攻の育英1人目は伝統の14番を背負う鈴木。短い助走から蹴り込んだキックは、GKの逆を突く完璧な一撃。後攻の山梨学院1人目は大場。プレースキックも務める6番の選択はど真ん中。育英2人目の渡邊凌磨は余裕たっぷりのクッキアイオでふわりとゴールネットへ。山梨学院2人目の渡辺剛(3年・FC東京U-15深川)も冷静に成功。続けて3人目も育英は渡辺星夢、山梨学院は福森が相次いで成功。3-3。PK戦もお互いに譲りません。
育英4人目の坂元はGKが飛んだ逆の右へ成功。山梨学院4人目のキャプテンマークを巻いた山中登志郎(3年・インテルオールFC)もGKの逆へ蹴って成功。育英5人目の青柳は左スミへ確実に沈め、プレッシャーの掛かる山梨学院5人目の小川は右スミへきっちり成功。前日のPK戦では痛恨の失敗を経験した10番の咆哮。突入するサドンデス。
育英6人目は同点弾の宮本。「プレッシャーはありましたけど、絶対大丈夫だと思っていたので、自信を持って蹴ることができた」キックは左スミを捕獲。山梨学院6人目のCB大野佑哉(3年・AZ'86東京青梅)は左を狙うと、「自分では『僕はPK得意なんですよ』って言ってましたけど、全部逆に飛んでましたよね」と山田監督も笑った吉田は、6本目にして初めてキックと同じ方向に飛び付き、ボールを弾き出して激闘にピリオドを。「PK戦は3連敗中だったので、これでやっと払拭しました」と山田監督も安堵の表情を浮かべた育英が13年ぶりに冬の全国のPK戦を制して、ベスト8へ名乗りを上げる結果となりました。


「昨日のゲーム内容と比べれば今日の方が全然良いですよ」と山田監督も話した育英ですが、ここまでの2試合はいずれもセットプレーからの1得点止まり。「良いクロスが入ったのに誰も飛び込まずに見ている。それではダメだと。もっとボックスの中で強い気持ちだとか、執着心とか、ボールに行く、クロスに対して入れとか、もうちょっとシュートの積極性がないとダメだと」指揮官もシュートへの意欲向上を明確な課題として指摘しています。とはいえ、ハマッた時の破壊力が全国トップレベルであることは、インターハイの5試合12得点という数字で証明済み。「前線がもう少し点を取れると思うし、次はやってくれると思う」と宮本。タイガー軍団初戴冠の鍵は、爆発のキッカケを待っているアタッカー陣が握っています。       土屋

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