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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年01月02日

高校選手権2回戦 國學院久我山×日章学園@駒沢

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0102komazawa.jpg2014年のラストマッチを勝利で飾り、2015年のファーストマッチに臨む両者の対峙。首都の白と宮崎の赤黒が激突する一戦は駒沢オリンピック公園陸上競技場です。
東京都予選は4試合連続無失点での戴冠。3バックと4バックを併用しながら、「守備は本当に頑張っていると思う」と李済華監督も認めた通り、今年のチームは"エレガントな守備"が特徴の國學院久我山。初戦となった2日前の前原戦は、相手にボールを持たれる時間が長い中でも、「相手に支配されるというのは今年のチームは結構多いし、予選でそういう経験を積んできたので、そこまで焦ることはなかった」とキャプテンの内藤健太(3年・Forza'02)も話したように、しっかり耐えながら開始早々の1点を守り切って、まずは"昨年超え"を達成。さらなる躍進を虎視眈々と狙います。
昨年の全国では2勝を挙げて、4年ぶりにベスト8まで駆け上がった日章学園。そのチームからは守備陣が総入れ替えとなり、今シーズンの立ち上げ当初を「とんでもなかったですよ」と笑って振り返るのは早稲田一男監督。インターハイの全国出場こそ逃したものの、難敵揃いのプリンス九州1部で4位に入るなど徐々に自信を付けると、選手権予選は課題だった守備陣が奮闘して、5試合2失点で堂々と宮崎連覇を。2日前の1回戦では新屋を相手に河野翔太(3年・日章学園中)のドッピエッタが飛び出し、守ってはきっちり無失点でネクストステージへ。"去年以上"を目指す中で、まずは「その試合その試合を120%、130%くらいの力で」(早稲田監督)戦います。会場の駒沢は1回戦と同様にうららかな冬晴れ。6.2度という数字以上に日なたは暖かさを感じる気候の中、ゲームは久我山のキックオフでスタートしました。


4分のファーストチャンスは久我山。右サイドをドリブルで崩した飯原健斗(3年・横浜FC JY)のパスは、エリア内へ潜った小林和樹(2年・ジェファFC)へわずかに届かず、日章学園のGK松井朝輝(2年・日章学園中)がキャッチ。5分のファーストシュートは日章学園。藤堂貴久(3年・日章学園中)が右へ送ると、當瀬司(2年・日章学園中)のクロスにキャプテンの村田航一(3年・日章学園中)が合わせたヘディングは枠を越えるも、注目のストライカーが1つフィニッシュを。6分も日章学園。當瀬のパスからスタメンに復帰した竹脇雄大(2年・セレソン都城FC)のシュートはDFに当たり、久我山のGK仲間琳星(3年・ジェファFC)がしっかりキャッチしましたが、まずは手数を繰り出し合います。
お互いにシンプルなフィードも織り交ぜる中で、揃ってそこからのチャンスも。10分は日章学園。松井のロングキックに村田が競り勝つと、走った當瀬はわずかに及ばず仲間がキャッチ。11分は久我山。左サイドから30m近い距離をドリブルで独走した野村京平(2年・横河武蔵野FC JY)はそのままスルーパス。小林のトラップは前方へ流れて松井にキャッチされたものの、双方が探り合うのはスイッチを入れるポイント。
この日の久我山は「前回は3-4-3だったんですけど、それだと外がちょっと対応し切れないんじゃないかなと」(李監督)いう判断から、都大会の準決勝と決勝で採用した4-2-1-3でスタート。「DFラインにとったら3バックより4バックの方が守りやすい」と内藤も認めたように、守備のバランスを取りやすい布陣で村田と河野という相手のストロングを警戒しながらも、ボールの周り自体は1回戦よりもスムーズに、悪くないリズムでゲームを進めていきます。
21分は日章学園。CBの杉尾竜太郎(3年・日章学園中)が放り込んだフィードを村田が収め、藤堂が左へ持ち出して狙ったシュートは仲間ががっちりキャッチ。直後の22分も日章学園。藤堂の右CKをファーで拾った村田がクロスまで持ち込むと、竹脇のコントロールショットは右スミを襲うも、仲間が冷静にキャッチ。26分は久我山。鈴木遥太郎(2年・東急SレイエスFC)が右へ振り分け、上がってきたSBの鴻巣良真(3年・ジェファFC)を経由し、飯原がサイドをえぐり切って折り返したボールは、小林の目前でDFが何とかカット。フィフティのままで推移する流れ。
32分には「久我山の美しいサッカーができればと思っていた」と話す2番が破調を。ボランチの宮原直央(2年・FC多摩)が横に繋ぐと、左CBの花房稔(3年・横河武蔵野FC JY)は突如として縦にドリブル。鈴木のリターンをそのまま打ち切った花房のシュートは、体を投げ出した日章学園の右SB黒川龍也(3年・FC中津グラシアス2002)がブロックしましたが、攻撃参加にも特徴を持つ花房が果敢にフィニッシュまで。35分は日章学園。バイタルでボールを引き出した村田が流し、竹脇がマーカーをずらしながら放ったミドルは仲間がキャッチ。藤堂の前へ出てくる推進力と、竹脇の連携が目を引く日章学園もゴールへの意欲は十分。
40+1分は日章学園。右サイドに開いた村田のクロスを中央で竹脇が収めるも、久我山ディフェンスの中でも集中力の高さが目立った野村が間一髪でクリア。40+2分も日章学園。藤堂の左CKをファーで村田が折り返し、黒川が叩いたシュートはDFが飛び込んでブロックし、こぼれを仲間が確実にクリア。「前半が終わって『ウチのチームとしては凄く良いよね』と話をしていた」(李監督)「『悪くてもゼロゼロで、リードを奪えたらいいね』というゲームプランは話をしたんですけど、特に守備の所で後手に回る対応の仕方が目立った」(早稲田監督)。シュート数や手数とは裏腹に、どちらかと言えば久我山イレブンが手応えを得た前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


迎えた後半のファーストシュートは日章学園。43分に左サイドで河野が外へ流し、オーバーラップしてきたSBの長尾将太郎(3年・日章学園中)のクロスを、ダイレクトで狙った當瀬のシュートは枠を捉え切れずも好トライ。43分は久我山。右サイドで飯原が粘り強くボールを残し、小林が思い切って打ったミドルは松井にキャッチされましたが、46分にはこの試合始めての決定機。右へ鈴木が展開したボールを、走り込んできた鴻巣は縦に運んでフィニッシュ。ボールはわずかにゴール左へ外れたものの、久我山にもゴールへの香りが漂い始めます。
ところが、50分に歓喜の瞬間を享受したのは宮崎王者。村田が高い位置できっちり落とし、藤堂は左サイドへ素晴らしいサイドチェンジ。「裏への動き出しというのを増やしたら、その分相手との駆け引きをする中で、自分の間合いでドリブルを仕掛けたり、余裕を持ってプレーすることができるようになった」という河野はマーカーをあっさり振り切ると、中にカットインしながら右足一閃。ボールは綺麗な軌道を残してゴール右スミへ突き刺さります。「『このままじゃやられちゃうぞ』という話をハーフタイムにして、そこで気持ちの切り替えというか、チームとしての方向性が見えかかった所での得点」と早稲田監督も言及した、修正の効き始めた時間帯での貴重な先制弾。日章学園が1点のリードを手にしました。
「こちらが流れをうまく創れるんだけど、こういう時に落とし穴があるんだよねと話していた」李監督は、失点を受けて早々に交替を決断。53分には初戦に続いてのスタメン起用となった知久航平(1年・浦和レッズJY)を下げて、同じく1年生の名倉巧(1年・FC東京U-15深川)を送り込むと、59分にも小林に替えて「0-0か0-1のゲームだったら、彼を投入しようというのは3日前に決まった」(李監督)という檜垣寧宏(3年・Forza'02)がピッチへ。檜垣は左ウイングへ入り、その位置の澁谷雅也(1年・ジェファFC)がCFへスライド。中盤も宮原をアンカーに置いて、その前に名倉と鈴木を並べる逆三角形にシフトして勝負に出ます。
59分は日章学園。村田が左から折り返し、當瀬が左足で狙ったミドルはクロスバーの上へ。62分は久我山。右サイドで名倉、澁谷とボールを繋ぎ、飯原が少し中へ切れ込みながら放ったシュートは、右スミギリギリを襲うも松井がキャッチ。62分には早稲田監督も1人目の交替を。右SHの當瀬を谷口智彦(3年・日南吾田中)とそのままの位置に入れ替え、サイドの推進力アップを狙うと、64分には河野と村田が絡んで藤堂がトライしたミドルは枠の右へ。64分には李監督が鈴木に替えて、内桶峻(2年・GRANDE FC)を3枚目のカードとして送り込み、67分に澁谷が放った積極的な枠内ミドルを挟んで、68分にも内桶を起点に名倉が中央へスルーパス。飛び込んできた野村はわずかに届かなかったものの、左SBが最前線まで飛び出すなど「ディフェンスの積極的な上がりで相手のゴール前に圧力を持って行けた」と李監督も評価したように、久我山の形振り構わないアタックが、少しずつ押し下げていく日章学園のライン。
「相手の前掛かりな攻撃に対して、受身になってしまったかもしれない」と振り返った早稲田監督は、終盤に差し掛かって相次ぐ交替を。69分に西郷瑠人(3年・日章学園中)から野﨑悠(2年・日章学園中)、70分に竹脇から池田周平(2年・セレソン都城FC)と続けざまにカードを切って、中盤の運動量向上を意図しながらラスト10分間へ対する備えも万全に。71分に名倉、澁谷、名倉と細かく繋いだパスから、檜垣が放ったシュートも黒川が決死のブロック。杉尾竜太郎と竹中愁人(3年・岩出FCアズール)のCBコンビも声を絶やさず、乗り切りたい最終盤。
「とにかく点を取るしかないと思っていた」(内藤)想いの結実は73分。檜垣の右CKはDFにクリアされましたが、再び左から檜垣がCKを蹴り入れると、ここに飛び込んだのは「いつもは野村と内藤がヘディングを決める感じなんですけど、今回は自分も絶対に決めるという想いで上がっていった」花房。執念で叩いたヘディングは、バウンドしながらゴールネットへ吸い込まれます。大会直前でベンチメンバーに滑り込んだ18番は、「危険なボールを蹴れるのは彼しかいない」と指揮官も認める秘密兵器のプレースキッカー。「檜垣が入ったから攻撃の選手はコーナーを狙っていたのかなと思う」と内藤もその狙いを。久我山が力強くスコアを振り出しに引き戻しました。
勢いは完全に首都の覇者へ。76分は久我山。ここも檜垣が右CKを蹴ると、ゴールへ向かったボールはわずかに枠の左へ。80分も久我山。ここも檜垣の左CKから、DFのクリアを名倉が残し、檜垣が打ったシュートはDFが何とかブロック。その直後の左CKは檜垣のキックも松井にキャッチされましたが、「1-1になってからも本当に点を取り切るんだという意志を見せてくれた」と李監督。久我山が押し切るか。日章学園が耐え切るか。
80+2分は久我山に決定的なシーン。飯原からのリターンを引き出した名倉が、思い切ってエリア外から打ち切ったシュートは、しかし右ポストを直撃。80+4分は日章学園に決定的なシーン。野﨑が左へ振り分け、河野が右足で放り込んだクロスは絶妙のコースへ。飛んだ村田のヘディングがわずかに枠の右へ逸れると、これが両チーム通じてのラストシュート。双方譲らず。3回戦進出の切符はPK戦へ委ねられることになりました。


両雄が創った気合の円陣も解け、運命のロシアンルーレットは日章学園が先攻。1人目を任されたキャプテンの村田はきっちり左サイドへ成功。後攻の久我山1人目は飯原が託されましたが、冷静にGKの逆を突いて成功。2人目も日章学園の河野、久我山の鴻巣と確実にゴール。3人目も日章学園は藤堂がねじ込むと、「最近はPKでも緊張しなくなりましたし、落ち着いて蹴れたかなと思います」と話した久我山3人目の内藤も左スミへ流し込み、力強いガッツポーズ。どちらも1つずつ着実に、数字をスコアボードへ積み重ねていきます。
日章学園の4人目は途中出場の谷口。丁寧にセットしながら蹴ったボールは、しかし左ゴールポストの外側へ。久我山4人目の檜垣はさすがのキック精度であっさり成功。ここに来て崩れた均衡。外せば終わりの日章学園5人目は黒川。仲間も方向は合っていましたが、ここは黒川が優った執念。スタンドの全視線は久我山5人目の花房へ注がれます。「自分はほとんど4番目のキッカーなんですけど、ヤス(檜垣)が途中で入って、ヤスの方が決める確率が高いと思っていたので」自ら5人目を志願した男が選択したのは、なんとこの局面でど真ん中。1秒後に激しく揺れたゴールネット。「プリンスリーグは負けが続いていたんですけど、最後に来て底力が出せているかなと思います」と内藤も話した久我山が、粘り強くPK戦を制して3回戦へと勝ち進む結果となりました。


先制点を奪われた直後に、ピッチ中央へ集まった久我山イレブン。「久我山の悪い癖で、あそこでバラバラになるとどんどん引きずって失点してしまうので、あと30分くらいあったし『悔いの残らないようにやろう』と。『パスも全然回っているし点は取れるから、ラスト30分をやり切ろう』という話はしました」とその円陣を振り返ったのは内藤。「残りの20分くらいに強い意志を示してくれたのは本当に良かったと思います。非常に頑張ったと思いますよ」と李監督も評価したように、今年の久我山には例年のチームが弱点として指摘されがちだった強い"リバウンドメンタリティ"が備わっていることを、十二分に証明するような1勝だったのではないでしょうか。「ディフェンスラインは今日よりももっとできるし、もっと相手を抑え込めるので、集中して1本も決定機を創らせないくらいの気持ちでやりたいと思います」と次戦への意気込みを語った内藤。冬の全国における同校史上最高位のベスト8、そしてその先のまだ見ぬ景色を手繰り寄せるべく、"闘える"久我山の冒険はまだまだ続きます。        土屋

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