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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合はフレッシュな顔合わせ。初めての全国に挑む秋田の俊英と前回大会でベスト8に入った宮崎の実力派が対峙する一戦は、引き続き駒沢オリンピック公園陸上競技場です。
インターハイでの県制覇は過去に2度経験していたものの、選手権予選は6度に渡ってファイナルで敗退するなど、冬の全国出場にはなかなか届かなかった新屋。迎えた今大会の県予選は準決勝でディフェンディングチャンピオンの秋田商業を2-0で退けると、決勝は2年前の王者でもある西目をPK戦の末に下して、悲願の全国挑戦権を見事獲得。登録メンバー30人全員が秋田出身というだけでなはく、楢岡直志監督も秋田南高から秋田大へ進学というキャリアを持っており、まさにオール秋田とも言うべき顔触れで、県勢10年ぶりの初戦突破を狙います。
昨年度の選手権では2年ぶりとなった全国で、西の横綱との評判も高かった東福岡をPK戦で倒して、堂々たるベスト8進出を経験した日章学園。今シーズンのインターハイ予選は、永遠のライバルとして鎬を削る鵬翔にファイナルで敗れて4連覇を逃したものの、「プリンスで3連敗から5連勝したあたりで、手応えというのはちょっと感じた」と早稲田一男監督も話すプリンス5連勝を達成して夏場以降にチーム力もアップ。目標は「去年以上は行きたいなという想い」と指揮官も話した"去年以上"。すなわち埼玉スタジアムのピッチです。気温11.9度と相変わらず駒沢には暖かな陽射しが。全国のファーストマッチは新屋のキックオフでスタートしました。
お互いにセットプレーからチャンスを窺い合う中で、少しずつ攻勢を強めたのは日章学園。17分に右から野﨑悠(2年・日章学園中)が蹴ったFKはGKがファンブルしながらキャッチしましたが、直後にも右CKを獲得すると、ここも野﨑が入れたキックは新屋の左SBを務める鈴木文也(1年・ブラウブリッツ秋田U-15)が何とかクリア。19分にも野﨑は左へ振り分け、藤堂貴久(3年・日章学園中)が上げたアーリークロスにキャプテンの村田航一(3年・日章学園中)が合わせたヘディングは新屋のGK小嶋玲央(3年・FCあきたAspride)にキャッチされるも、まずはプリンス九州1部の得点王を獲得した注目のストライカーがフィニッシュを取り切ります。
「今日の前半あたりは距離感が非常に悪かった」と話したのは早稲田監督ですが、24分も日章学園。全力で寄せた村田は小嶋のキックを体に当てましたが、ここは何とか小嶋がキャッチ。25分も日章学園。右サイドでSBの黒川龍也(3年・FC中津グラシアス2002)が縦に付け、谷口智彦(3年・日南吾田中)がクロスを上げると、こぼれを村田が狙ったシュートは再び鈴木がブロック。24分も日章学園。野﨑の左CKをファーで村田が折り返し、黒川はシュートまで持ち込めなかったものの、日章学園が掴んだゲームリズム。
すると、先にスコアを動かしたのも、この日は白いユニフォームを纏った宮崎の赤黒軍団。29分、當瀬司(2年・日章学園中)がDFラインの裏をフィードで狙うと、DFのクリアは後方へ。このボールへいち早く反応した村田が収め、右から左足で上げたクロスは「鋭角に動こうと思ったんですけど、ディフェンスが中に絞ったので、村田が左足に持ち替えた瞬間に大外に動きを変えた」河野翔太(3年・日章学園)へ。フリーとはいえ、難しいハーフボレーで叩いたボールは、綺麗な軌道でゴール右スミへ突き刺さります。「去年の全国も経験してベスト8という結果は残せたんですけど、個人としては悔しい想いしかしていない」と1年越しの活躍を誓った9番が早くも結果を。日章学園が1点のアドバンテージを手にしました。
さて、ほとんど相手のボックス付近にも侵入できないまま、ビハインドを追い掛ける展開となった新屋は、30分にも野﨑に約30mの直接FKをクロスバーの上へ打ち込まれるなど、苦しい時間を強いられる中で、ようやく30分過ぎからはドイスボランチの五十嵐英司(3年・秋田桜中)と高橋泰夢(3年・秋田桜中)、キャプテンの武田勇人(3年・FCあきたASPRIDE)を中心にパス回しにテンポが。
32分にはCBの伊藤直也(3年・FCあきたASPRIDE)がFKを蹴り込むと、走った加藤零士(3年・エスポルチ秋田)はわずかに届かず日章学園のGK松井朝輝(2年・日章学園中)がキャッチ。37分にも加藤が入れたボールを武田がヒールで残し、目黒貴大(3年・秋田御野場中)がエリア内へ飛び込むも、DFが何とかクリア。39分には日章学園も藤堂が左へ振り分け、河野のクロスを村田が当てたヘディングは小嶋ががっちりキャッチ。終盤はやや新屋にも攻撃のリズムが出てきましたが、早稲田監督が「前半はほとんどシュートを打たれていないと思う」と口にした通り、相手のシュートをゼロに抑えた日章学園が1点をリードして最初の40分間は終了しました。
後半開始から先に動いたのはリードしている日章学園。早稲田監督はセットプレーのキッカーも務めていた野﨑を下げて、同じボランチに西郷瑠人(3年・日章学園中)を送り込む采配を振るいますが、42分のビッグチャンスは新屋。縦パスを収めた目黒が右へ流し、フリーで受けた鈴木崚大(3年・秋田城南中)のシュートは枠の左へ外れたものの、このゲームのファーストシュートは決定機に近いシーンに。45分にも右サイドをドリブルで運んだ目黒はそのままスルーパス。加藤があと一歩及ばなかったとはいえ、新屋が立ち上がりは攻勢に打って出ます。
46分に日章学園も當瀬のパスから村田がエリア内へ潜って、シュートをクロスバーの上に外したシーンを経て、新屋も1人目の交替を。鈴木に替えて1年生の柳田凌吾(1年・ブラウブリッツ秋田U-15)をボランチに投入し、ボランチだった五十嵐を右SHへスライドさせて狙う同点ゴール。51分に高橋が入れた右CKはDFに弾かれたものの、52分には高橋を起点に加藤が左のハイサイドへ送り、目黒の折り返しに武田が合わせたシュートはヒットせず、松井にキャッチされましたが、直後には右SBを奥山聖也(3年・秋田御所野学院中)から四津谷優輔(2年・秋田御所野中)にスイッチして、やや押し込まれがちな右サイドのケアも。先手先手に滲ませる勝利への執念。
それでも、「後半は前線の囲い込みとか、パスコースを限定してとか、そういった所がある程度できるようになった」と早稲田監督も認めたように、日章学園も前半よりは前線と中盤のプレスが効き始め、良い形で奪ってからのアタックも徐々に。55分には村田が左へ振り分け、縦に仕掛けた河野のクロスに當瀬が当てたヘディングは枠の上へ。60分にもSBの杉尾将太郎(3年・日章学園中)が絡んで奪った左CKを藤堂が蹴ると、村田が残したボールを河野が打ち切ったシュートは味方に当たって枠の左へ。61分にも當瀬が右へ付け、谷口のシュートはわずかにゴール右へ外れるも、再びゲームリズムは日章学園へ。
62分の主役は「県大会からずっと調子が良いし、それが自信に繋がっている」と語るドリブラー。中央をドリブルで運んだ村田が左サイドへラストパスを送ると、受けた河野はそのまま縦へと勝負。躊躇ない左足から振り抜かれたボールは、逆のサイドネットへ綺麗に飛び込みます。「今日も切り崩し役というか、キレていたのは彼でしたね」と早稲田監督も賞賛した河野のドッピエッタ。日章学園のリードは2点に広がりました。
少し余裕の出てきた早稲田監督は得点直後の63分に2人目の交替へ着手。谷口に替えて、県予選の準決勝と決勝でゴールを挙げている竹脇雄大(3年・セレソン都城FC)を投入すると、藤堂のパスからハットトリックを狙った河野のシュートがDFに弾かれた67分のシーンを挟み、69分には3人目の交替として當瀬と横山寛(2年・廿日市FC JY)もスイッチして、「中盤からプレッシングを掛けて、奪われてもそこでまた奪い返す」狙いを終盤に掛けても徹底し直します。
70分には新屋も3人目の交替を。五十嵐と熊谷琢登(2年・FCあきたASPRIDE)を入れ替え、まずは1点を取り返しに行く姿勢を。72分に熊谷が右から蹴ったFKはDFのクリアに遭い、その左CKを高橋が蹴り入れると、舞ったCB藤澤勇太朗(3年・秋田西中)のヘディングはわずかにクロスバーの上へ。杉尾竜太郎(3年・日章学園中)と竹中愁人(3年・岩出FCアズール)で組むCBコンビを中心に、日章学園ディフェンスの途切れない集中力。
78分は日章学園。右から黒川がストレートボールで送ったクロスに、村田がフリーで合わせたヘディングは小嶋が懸命にキャッチ。80分も日章学園。村田のパスから藤堂がトライしたミドルはゴール右へ。80+1分に早稲田監督は最後の交替カードを。腰痛を抱える竹脇を下げて、池田周平(2年・セレソン都城FC)をピッチへ解き放ち、ゲームクローズを任せます。
80+3分は新屋のラストチャンス。右から熊谷が放り込んだFKへ、殺到した選手も懸命に飛び付きましたが、ボールはそのままファーへ流れると、直後に聞こえたのはタイムアップを告げるホイッスル。「試合じゃ100%以上のものでやるんだというスタンスでやらせてますので、妥協もさせたくないし、その積み重ねが逞しさやタフさに繋がっているものはある」と早稲田監督も話した日章学園が、昨年に続いての初戦突破を勝ち取る結果となりました。
開口一番「コンディションも含めてなんですけど、こっちに来てから良いトレーニングができていなかったです」と話した早稲田監督。「今日の朝も選手を集めて朝食を食べながら、こっちに来てからの状況、状態も含めて『こんなんじゃ勝てねえぞ』という話をして送り出しました」と続けて。「良い時の雰囲気よりは良くなかったし、みんな納得している練習もできていなかった」と河野も認める中でも、1つ勝利を手にしたというのは今後に向けて大きな良薬になりそうです。「そんなスーパースターがいる訳じゃないので、守備になれば全員で、攻撃になれば全員でという意識は忘れないようにはさせたいなと思います」と"話す指揮官が見据えるのは去年以上"。「去年と比較するとかなり低いんですけど、チームがまとまってきたので、もしかすると化ける要素もあるんですよ」と手応えも掴みつつある赤黒軍団が化けるのか否か。2回戦で激突するのは國學院久我山です。 土屋
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