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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月30日

高校選手権開幕戦 都立三鷹×東福岡@駒沢

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1230komazawa.jpg蹴都移転。国立霞ヶ丘競技場の改修に伴い、オープニングマッチの舞台もかつての五輪会場へ。"都立の星"と"赤い彗星"の激突は駒沢オリンピック公園陸上競技場です。
起こし続けてきたジャイアントキリング。「半分は引退を覚悟して臨んだ」とCFの長島潤也(3年・渋谷広尾中)も話した東京都予選の準々決勝で優勝候補筆頭の駒澤大学高に1-0で競り勝つと、準決勝では昨年度の全国でベスト8まで駆け上がった修徳も2-1で蹴散らし、ファイナルは堀越に2点差を付ける快勝で、7年ぶりの全国まで勝ち上がってきた都立三鷹。栄えあるオープニングマッチと共にキャプテンの巽健(3年・SC相模原)が引き当ててきた対戦相手はインターハイ王者。ただ、「怖い部分はあるけど、どこまでできるかというのも楽しみ」とはその巽。相手にとって不足なし。東京のみならず、全国を揺るがすジャイアントキリングの準備は整っています。
6試合で26得点。驚異的な得点力を前面に押し出し、夏の全国制覇を堂々ともぎ取った東福岡。中島賢星(3年・アビスパ福岡U-15)、増山朝陽(3年・福岡板付中)と2人のJ1クラブ内定者に加え、インターハイ得点王の木藤舜介(3年・アビスパ福岡U-15)、赤木翼(3年・UKI-C.FC)を含むアタッカーの4枚は、ここ数年の高体連レベルでは間違いなく最強ユニット。本山雅志を擁して夏と冬の全国を制した17年前と同じ二冠達成に向けて、死角はまったくありません。都立校と全国王者の対戦とあって、既に前売りの段階でチケットはソールドアウト。史上初めて開幕戦の会場となった駒沢には、15083人の観衆が集結。注目の一戦は三鷹のキックオフで幕が上がりました。


独特の雰囲気に包まれてスタートしたゲームのファーストシュートは三鷹。4分、中盤のキーマン堀田将弘(3年・FC.GIUSTI世田谷)が出足良く頭で繋ぐと、長島はミドルレンジから思い切ったボレーを枠内へ。東福岡のGK脇野敦至(2年・WEST KIDS DUEL FC)が丁寧にキャッチしたものの、背中の番号が予選で付けていた19から10に変わったCFがゴールへの意欲を。チームメイトの緊張も「全然なかったです」とは堀田。三鷹がスムーズに立ち上がります。
8分は東福岡の決定機。ショートカウンター気味に右から赤木が中央へ流すと、木藤が独走から放ったシュートは、果敢に飛び出した三鷹のGK武田啓介(3年・東村山第二中)がファインセーブ。13分にも左SBの末永巧(3年・レオーネ山口U-15)が中央へ付けたボールを、近藤大貴(3年・サガン鳥栖U-15)は素早く縦へ。木藤のダイレクトパスを坂井翔太(3年・アビスパ福岡U-15)が狙ったシュートは吉野秀紀(2年・三鷹中等教育学校)がきっちりブロックして武田がキャッチ。16分にもこの試合初めて右サイドを増山がぶっちぎり、ファーに流れたクロスを中島が再び中へ入れるも、わずかに木藤は届かず。夏の王者もなかなかフィニッシュを取り切れません。
東福岡のサイドアタックは想定していたものの、「そういう相手だとはわかっていたので練習はしていたんですけど、どこまでという想像はできていなかった」と本音を明かしたのはCBの湯浅辰哉(3年・プロメテウスEC)。それでも、増山にボールが入った時には左SHの巽と左SBの安田航(3年・FC.GIUSTI世田谷)が必ず2人できっちり対応。それは逆サイドで赤木に入った際のSB傳川祐真(3年・東村山第七中)とSH河内健哉(3年・FC駒沢)も同様で、サイドは2枚でケアしながら、中央に送られたボールはCBの湯浅と吉野が跳ね返し、セカンドを堀田と田嶋優也(3年・八王子瑞雲中)で回収という狙いを徹底。「いつもは『最初の10分』と言うんですけど、今回は『最初の20分』と言いました。10分で点を入れられないようにして、20分まで抑えたら相手も焦るだろうから」とは佐々木雅規監督。その『最初の20分』が過ぎても、スコアボードの数字に変化なし。
25分は三鷹。「いつも俺がボールをもらう時にはガツンと来るような場面でも来なかったりして、凄い戸惑っていた」と語る長島がボールを収め、堀田のスルーパスに2列目から平光太一(3年・FC.GIUSTI世田谷)がラインブレイク。タイミング良く飛び出した脇野がクリアしましたが、裏への脅威も1つ。直後は東福岡の決定的なチャンス。末永がシンプルに左のハイサイドへ落とし、赤木のピンポイントクロスをニアで木藤が合わせたシュートは、武田が右足1本で超ファインセーブ。その左CKを末永が蹴り込み、加奈川凌矢(3年・UKI-C.FC)がドンピシャで振り下ろしたヘディングは武田ががっちりキャッチ。「1人が抜かれてもその後にしっかりカバーという意識でみんなができていた」と湯浅。スタンドに広がる好ゲームの予感。
28分は三鷹。長島が獲得した右FKを巽が蹴ると、ここは脇野が確実にキャッチ。30分も三鷹。巽のパスを傳川が裏へ放り込み、DFラインと入れ替わった平光がクロスを上げるもDFがクリア。33分は東福岡。末永の右CKに飛び込んだ加奈川の強烈なヘディングは、武田が倒れ込みながらしっかりキャッチ。34分には三鷹も巽が連続で左CKを蹴り込むなど、「自分たちがこのままやればハマッている所もあった」と堀田が口にしたように、三鷹にもセットプレーを含めてチャンスの萌芽が。
サイドもそこまで崩し切れず、やや停滞感の漂っていた東福岡も前半終盤に怒涛のラッシュ。35分、近藤と木藤との連携でエリア内へ切れ込んだ増山のシュートは武田が懸命にファインセーブ。こぼれを木藤が頭で押し込むも、よく戻っていた傳川がきっちりクリア。36分、右から末永が入れたCKをファーで加奈川が折り返すも、DFが大きくクリア。39分には三鷹も中盤でボールを奪った堀田が、35m近いミドルにトライしたものの脇野にキャッチされると、40分も東福岡。赤木、木藤と繋いだボールから近藤は強烈なミドル。「大貴らしい狙い所だったなと思う」と森重潤也監督も話した一撃は、しかしクロスバーを直撃。40+2分は中央右寄り、ゴールまで25m近い位置から中島が直接狙ったFKはカベがブロック。「やる前にビビッたら終わりだと思っていた」という湯浅と武田を中心に粘った三鷹は得点を許さず。「見ていて面白かったです」と佐々木監督も笑った最初の40分間は、0-0でハーフタイムへ入りました。


「もう『行けるぞ』という感じで。全然力んでなかったので、ハーフタイムは短かったんですけど『勝つぞ』という。『あと40分だぞ』という雰囲気でしたね」と佐々木監督が明かした三鷹のロッカールーム。700人近い純白の応援団にも自然と力が。負けじと逆側のバックスタンドでは真紅の応援団も迫力のある声量を。10分間を挟んで、いざ残された40分間へ。
後半のファーストシュートは開始から1分経たず。41分、右サイドでルーズボールを拾った増山はそのまま中へ。中島が叩いたハーフボレーはヒットせずにクロスバーの上へ消えましたが、まずは先制への渇望感を積極的なフィニッシュに滲ませると、赤き歓喜はそのすぐ直後。
42分、左サイドで東福岡が獲得したこの日5本目のFK。末永の高精度キックが中央へ届くと、ここに入ってきたのは中島。「彼には得点王を狙えると言っている」と指揮官も期待を寄せる10番がヘディングで叩き付けたボールは、カバーに入っていたDFとGKの間に弾み、ゴールネットへ飛び込みます。「相手キーパーの出るタイミングと、シュートを打つプレーヤーとの間合いが非常に良かったと。キーパーが凄くファインセーブをしたなと思う」と森重監督も賞賛した武田もここは成す術なし。東福岡がようやく1点のリードを奪いました。
「前半は4番、4番でやってきて、あのシーンは10番でしたね」と失点シーンを振り返った佐々木監督。問われる三鷹のリバウンドメンタリティ。48分は東福岡。末永の右CKは一旦ファーへ流れ、拾った中島のクロスに近藤が頭で合わせるも武田がファインキャッチ。51分も東福岡。ここも末永の右CKから、こぼれを赤木がそのまま狙い、ゴール前で小笠原がコースを変えたシュートは武田がキャッチ。ハイサイドへの侵入が一気に増加し、セットプレーも多く獲得した東福岡の高まる圧力。
沸騰した純白。51分にカウンターから堀田が左へ振り分け、フリーで放った巽のミドルは脇野にキャッチされましたが、53分にも三鷹にビッグチャンス。中央で田嶋が縦に入れたボールから、DFともつれながら平光が抜け出してGKと1対1に。大事な局面にもここまで動きの良さが際立っていた平光は、冷静にゴール左スミへボールを送り届けます。同点。同点。真っ白なバックスタンドも大歓声に包まれると、しかし池内明彦主審は平光が抜け出した場面でのハンドをジャッジ。歓喜は一転して溜息に。タイスコアとは行きません。
56分の決断は森重監督。坂井を下げて、インターハイでは優秀選手にも選出されている中村健人(2年・UKI-C.FC)をピッチへ。58分はやはりセットプレーからビッグチャンス。末永のストレートボールを、フリーの小笠原が頭で撃ち抜くも軌道はゴール右へ。直後も高い位置で増山が相手のパスを奪い、木藤がドリブルから打ち切ったシュートは湯浅が何とかブロック。一段階上がった東福岡のギア。
追加点はやはり「かなり大きいと思います。彼の特徴でもありますし、キックの質は高いですから」と森重監督もその精度を評価した3番の右足から。59分、9本目のCKを右から末永が綺麗な軌道で蹴り入れると、高い打点で撃ち下ろした小笠原のヘディングがゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。「悔しいは悔しいですけど、悔しさ半分でしょうがないかなというのはあった。コーナーの練習はしていたんてすけど、向こうが何個も上でした」と湯浅も素直に認めたセットプレーが炸裂。点差は2点に広がりました。
63分にも右SBの堀吏規伸(3年・レオーネ山口U-15)を起点に中村が左へ流し、中島のシュートがわずかに枠の右へ外れると、両ベンチが同時に交替へ着手。三鷹は河内と渡部圭(2年・三鷹F.A.)を、東福岡は赤木と藤井慶樹(3年・アルバランシア熊本)を、それぞれ入れ替えて残された15分へ。66分には吉野のFKがゴール前の混戦を生み出し、最後は長島が粘って左CKを獲得。傳川が蹴ったボールは、一転東福岡の高速カウンター。中島が中央へ通し、ドリブルで運んだ藤井は右へ。1人かわした末永のシュートはクロスバーを越えましたが、あわや3点目というシーンに赤い応援団のボルテージも上昇します。
71分は東福岡に3人目の交替が。CFの木藤を下げて、三小田宏輝(3年・バレイアSC U-15)を送り込み、さらなるゴールへの勢いを。同じく71分には「後半ちょっと足が止まっちゃったというか、みんな足が攣っていて、あれだけ回されると結構シンドかった」と堀田も話した三鷹に2人目の交替が。奮闘した傳川に替えて、都大会の決勝では優勝に大きく貢献した金澤宏樹(3年・府ロクJY)をピッチへ解き放ち、DFラインのバランスを整えながらまずは何とか1点を。双方に残された時間は5分とアディショナルタイム。
75分は東福岡。中島、中村とスムーズにパスが回り、三小田のシュートは戻った渡部が体でブロック。その右CKを末永が放り込むと、三たび舞った小笠原のヘディングはクロスバーの上へ。76分は三鷹。吉野が大きく蹴ったFKはオフェンスファウルに。79分は東福岡。末永が右へ送り、増山が力強く押し出したミドルはクロスバーにハードヒット。直後の79分も東福岡。増山が右から上げたクロスに、飛び込んだ三小田のヘディングは枠の左へ。掲示されたボードの数字は"3"。80+2分も東福岡。中村が左へ回し、末永のクロスを振り抜いた中島のボレーは枠の左へ。近付いてくる赤き凱歌。
80+3分、吉野がセンターライン付近からゴール前に蹴り込んだFKに金澤が飛び付き、こぼれをキャプテンの巽がハーフボレーで叩いたシュートが枠の上へ外れると、しばらくして駒沢の青い空へ吸い込まれたタイムアップのホイッスル。「ドラマの連続の3ヶ月」(佐々木監督)にも終わりの時が。「優勝候補に挙げて頂いているので、相手もたぶんそういう気持ちで来ると思いますので、すべてのゲームがウチのチームにとっては決勝戦という形になると思う」と森重監督も話した東福岡が、苦しみながらも初戦をきっちりとモノにする結果となりました。


「前半は割とそこまで仕掛けて来なかった」と堀田が話したように、前半はやや開幕戦の緊張感もあってか、なかなか本来の強烈なサイドアタックも鳴りを潜めた感のあった東福岡でしたが、さすがに後半はハイサイドへの侵入が頻発。そこで獲得したセットプレーから2発と、苦しい展開の中でもしっかりと勝ち切る強さを見せ付ける格好となりました。特に豪華な攻撃陣が目立つ中でも、中盤アンカーを務める近藤の存在感は一際。指揮官も「しっかり大会を経験しながら、コンディションをもっと上げていって欲しいなと思います」と言及したように、彼の戦列復帰は優勝を視野へ入れるチームにとっては何より大きいかなと。周囲の包囲網も熾烈を極める中で「1つずつ勝ち上がっていくのはかなり厳しいなとは思いますけど、やはりこれを乗り越えて勝ち上がることによって真のチャンピオンになれると思います」と森重監督。夏冬連覇へ。"赤い彗星"が好スタートを切りました。
試合終了の瞬間を問われて、「まず、ピッチの上では泣かないようにと。最後までやり切ったとは思うので。でも、正直歓声を聞いちゃったら... 何とかこらえました」と話したのは湯浅。「強かったです。本当に強かったので。でも、流れの中でやられていないというのがロッカーの中でずっと話題になっていて、『全然やれんじゃん』『最終的には体格差だよ』みたいなことを笑って言っていたんですけど。自分自身は楽しめたと思います」と堀田が笑い、「本当にこのスタジアムでできたのは自分の中で一番の思い出ですし、悔しかった部分はいっぱいあるんですけど、それでもやっぱり楽しかったし、今までの18年間の人生の中でも一番印象に残っている試合でもあるので、この駒沢でプレーできて本当に良かったなとは思っています」と少し目を赤くしながら言葉を紡いだのは長島。「正直ここまで自分たちが来れるとは思ってなかった」(湯浅)三鷹の3年生にとっての"部活"は、駒沢のピッチで幕を閉じました。ただ、試合後の選手たちに漂っていたのは、少しの悔しさと大きな満足感。「最高です!こんな観客がいて、開幕戦ならではというか、今となっては本当に開幕戦を引いてくれた巽に感謝したいです(笑)」(堀田)「最高でした(笑) あんな観客の前でやることもないので」(湯浅)と2人も最後は笑顔を見せると、「生徒も楽しかったと言っていました。『楽しかったか?』と聞いたら『ハイ』と。『じゃあそれで良かったな』と言いました。今日は5、6発決められるかなと思ってましたけどね(笑)」と佐々木監督も相変わらずのとぼけた笑顔。都予選から周囲の予想を裏切る快進撃を見せ、最後は全国王者相手に持ち味を十分発揮して食い下がった"普通の"高校生たちに、大きな拍手を送りたいと思います。     土屋

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