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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月22日

インカレ決勝 流通経済大×関西学院大@西が丘

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1221nishigaoka.jpgどちらが勝っても初戴冠。東の闘魂軍団と西の実力派集団が覇権を懸けて激突するファイナル。舞台は「関東の大学の聖地」と流通経済大を率いる中野雄二監督も表現した、味の素フィールド西が丘です。
真夏のキンチョウスタジアムでカップを掲げたのは4ヶ月前。総理大臣杯連覇という勲章を引っ提げ、復調したリーグ戦を経て、インカレへと乗り込んできた流通経済大。九州産業大をジャーメイン良(1年・流通経済大柏)のドッピエッタで、東海学園大も土壇場で追い付かれながら延長の末にそれぞれ退けると、「過去2年の公式戦で一度も負けがない」と指揮官も胸を張るPK戦で大阪体育大も撃破。3日前は江坂任(4年・神戸弘陵学園)のドッピエッタを含む4ゴールでびわこ成蹊スポーツ大を一蹴して、過去4度跳ね返されたセミファイナルの壁も破壊済み。「このタイトルだけは獲れていなかった」(中野監督)冬の全国制覇はもうすぐそこです。
夏の総理大臣杯では創部初となるベスト4進出。3年連続で出場した天皇杯でも2回戦でヴィッセル神戸を葬り去り、創部初となるJ1撃破。今シーズンの関西では阪南大と並んで、最強との呼び声も高い関西学院大。今大会は初戦でIPU・環太平洋大相手に3-0の快勝を収めると、昨年は準々決勝で敗れた鹿屋体育大にも2回戦できっちりリベンジ達成。雨の平塚で苦戦を強いられた仙台大戦もウノゼロで乗り切り、今季4度目の対戦となった阪南大とのセミファイナルでは、後半終了間際に池田優真(3年・作陽)が劇的な決勝点を叩き出して初の決勝まで。「決勝で勝つために1年間全部員で取り組みをしてきた」と言い切ったのは成山一郎監督。初優勝への準備は整いました。両者は総理大臣杯の準決勝でも対峙しており、その時は流経大がスコアレスドローから得意のPK戦で辛くも勝利。リターンマッチの西が丘は6026人の観衆が集結する壮観のフルハウス。日本一を巡る最後の1試合は、関学大のキックオフでその火蓋が切って落とされました。


4分のファーストチャンスは流経大。キャプテンの鈴木が左からスローインを短く放り、江坂のリターンをそのままクロス。こぼれに反応した江坂のシュートはDFにブロックされたものの、4年生の連携でチャンスを創出すると、7分も流経大。GKの中島宏海(3年・筑陽学園)が大きく蹴ったボールを江坂が収め、反転から打ち切ったミドルは関学大のGK村下将梧(3年・東海大仰星)にキャッチされましたが、「チーム内で一番シュートがうまい」と中野監督も認める江坂が、まずは先制への意欲を打ち出します。
関学に最初のチャンスが訪れたのは9分。右サイドをレフティの森俊介(2年・東山)が運び、池田のシュートは流経大のCB田上大地(3年・流通経済大柏)がブロックするも、惜しいシーンを。そのCKを右から井筒陸也(3年・初芝橋本)が放り込むと、こぼれを今大会初出場初スタメンのボランチ小野晃弘(3年・藤枝明誠)が残し、井筒の左クロスはDFのクリアに遭いますが、関学大もジワジワと窺う好機。
16分には際どいシーン。左サイドから関学大のキャプテンを務めるSB福森直也(4年・金光大阪)が裏へ落としたボールへ、走ったのは注目のストライカー呉屋大翔(3年・流通経済大柏)。ここにすかさず田上が寄せてブロックすると、ボールは転倒した呉屋の前で村下がキャッチ。主審の笛は鳴らず。「呉屋君はウチの付属校出身で、ウチの3年生たちと非常に仲が良いだけに『フェアなプレーの中で呉屋を抑えたい』と。夏も今回も、呉屋君には点を獲らせないということにすべてを軸にして戦いました」と中野監督。再三マッチアップする高校時代の同級生は早速火花をバチバチと。
17分は流経大。山岸祐也(3年・尚志)の右クロスを、ニアで合わせた江坂のシュートは枠の左へ。18分は関学大。呉屋が高い位置でルーズボールを収めると、森が思い切って狙ったミドルは枠の左へ。26分も関学大。左サイドで相手ボールを奪った池田が、そのままカットインから枠の右へ外れるミドルまで放つと、この一連で池田と接触して倒れた森保圭悟(3年・サンフレッチェ広島ユース)が足を痛めてプレー続行不可能に。29分に中村慶太(3年・流通経済大柏)との交替を余儀なくされてしまいます。
なかなか大きな動きのない中で、このゲームの大きなポイントはやはり呉屋を巡る攻防。「僕らが呉屋さんにつられたら、小幡選手が空くというシーンは見られたと思う」と話したのは1年生ながら流経大のCBを任されている今津佑太(1年・流通経済大柏)。その状況は「今日は呉屋が2枚引き連れて、その落とした所に中盤がうまく関わってボールを動かせた」と福森も手応えを。ただ、「それでも慌てないで対応して、最終的には呉屋さんに入ってくるというのはあったと思うので、最後は意地じゃないですけど、やらせなければ相手は点を取れないし、逆にそこで守り切ればどんどん自分たちの勝利の可能性は広がっていくと信じて1つ1つ守った」と続けて今津。ある程度ラインも下げながら、サイドやミドルゾーンは捨てても、最後は中央で跳ね返すという意識を徹底した流経大。ボールは握る関学大もシビアなゾーンへと侵入することはなかなかできません。
39分は流経大。鈴木の左ロングスローをニアで中村がすらし、こぼれを叩いた塚川孝輝(2年・広島観音)のボレーはクロスバーの上へ。41分も流経大。中村が左サイドからアーリークロスを放り込み、山岸が頭で繋いだボールを、右に持ち出しながら打った渡邉新太(1年・アルビレックス新潟ユース)のシュートは、DFが懸命に体で弾いて村下がキャッチ。43分も流経大。中村の左CKを今津が頭で折り返すと、山岸がバックヘッドで枠に収めたシュートは村下が何とかキャッチ。ボールは関学大が持ちながら、手数はシンプルにゴール前へ運ぶ流経大。拮抗した最初の45分間はスコアレスでハーフタイムへ入りました。


後半開始早々のビッグチャンスは流経大。47分、左サイドで鈴木が縦に流したボールを、中村はマイナスにクロス。ダイレクトで狙った江坂のシュートは、村下が抜群の反応で掻き出しましたが、いきなりの決定機に沸き上がるゴール裏。直後にも右サイドから渡邉が入れたクロスを、ここも江坂がフリーで打ち切ったシュートは弱く、枠の右へ外れたものの、「ハーフタイムに各自に自己採点をしなさいということで質問をしましたら、半分以上の選手が60点、70点の所で手を挙げました。ということはうまくいっていないということ」とは中野監督ですが、迎えた後半は上々の勢いで立ち上がります。
49分も流経大。田上が裏へ入れたフィードから、渡邉が右に流れながら思い切り良くシュート。ボールは枠の左へ向かい、飛び込んだ中村も一歩及ばず。手数を流経大が繰り出しますが、それでも50分過ぎからは徐々に関学大のパスワークがスムーズに。「サイドハーフが持った時に、横や斜め前のサポートを取ったら絶対相手のディフェンスも動いてくるので、そういうのを意識していた」というボランチの福冨孝也(3年・宝塚北)と小野を中心にボールを回しながら、アジリティの高い4-2-3-1の"3"がいつスイッチを入れるかは関学大の生命線。
57分にはやはり福冨を起点に、左から福森が斜めに入れたボールをバイタルで受けたのは小野。反転しながら放ったシュートは中島がキャッチしましたが、ここはボランチが前に潜ってフィニッシュまで。62分にも井筒のフィードから福森がCKを獲得すると、左から福冨が蹴ったボールはDFに跳ね返されるも、「ゴール前までは結構行けていたイメージ」と福森。ギアを一段階上げつつあるブルーの戦士たち。
押し込まれつつあった流経大が、3分間に凝縮した強烈な圧力。68分、山岸と湯澤聖人(3年・流通経済大柏)のコンビネーションでCKを奪い、左から中村が蹴ったボールをファーで拾った今津のクロスは、DFが何とかクリア。同じく68分、中村が左から上げたクロスがこぼれると、中盤を引き締め続けた古波津辰希(3年・流通経済大柏)がエリア外から狙ったハーフボレーは枠の左へ外れるも、大歓声の応援団。71分、中村の左CKは福森に弾かれるも、渡邉が拾って繋いだボールを中村は再びクロス。DFの頭をかすめた軌道は、右のポスト外側に当たってCKに。同じく71分、中村の右CKは江坂がドンピシャヘッドで枠の右へボールを飛ばしますが、カバーに入っていた小幡元輝(4年・名古屋グランパスU18)がライン上で超ファインクリア。「試合前には『走り負けない』とか、『球際で負けない』とか、『攻守の切り替え』とか、そういう風に言ってきた」と江坂。3分間のラッシュに滲ませる初優勝への執念。
先に動いたのは成山監督。72分、森に替わって泉宗太郎(4年・桐蔭学園)を投入すると、中野監督もすかさず1枚目の交替に着手。75分に山岸を下げてジャーメインを送り込み、最前線にさらなるパワーを。77分は関学大。村下のフィードを呉屋が捌き、池田は右へ展開。走った泉のクロスがこぼれると、走り込んだ福冨のシュートはDFがブロック。80分も関学大。福冨の左CKから、GKのパンチングを拾った小野のボレーはクロスバーの上へ。「1つのミスで失点してしまうというのがこのレベルの戦い」と福森。85分は流経大。渡邉のパスを受けたジャーメインが、右からカットインしながら放ったミドルは枠の上へ。勝負の行方は最後の5分間とアディショナルタイムへ。
88分の静寂と狂喜。右サイドで相手のクリアを拾った江坂は、そのままスルスルと中央へカットイン。「相手が足を開いて股が空いたのも見えたし、ジャーメインもファーで引っ張ってくれて、GKもファーに流れてというのもあったので、迷わず打った」左足のシュートが狙い通りにマーカーの股下を抜けると、ボールはスローモーションのようにゴール右スミへ吸い込まれます。あまりに綺麗に入ったこともあって、「一瞬時が止まりました」と江坂。スタジアムに一瞬静寂が訪れた後、江坂が一直線に向かったゴール裏の応援席は狂喜乱舞。「ジャーメインを先発させるか、江坂を先発させるか一番悩んだが、コーチ陣とも話し合って江坂を使った」という指揮官の起用に応える4年生の先制弾。土壇場で流経大が1点のリードを手にしました。
最終盤でビハインドを追い掛ける展開となった関学大。失点直後から「関西学院、強く強く」と歌い続ける応援団。成山監督はすぐさま池田を下げて浅香健太郎(4年・サンフレッチェ広島ユース)をピッチへ解き放ち、「負けている時は俺を前に上げて、そこでパワープレーをしてというのは練習でも何回かやっている形だった」と自ら話した福森を最前線に上げて、何とか1点をという姿勢を前面に。イレブンを大声で鼓舞し続けるのは「ああいう存在を見るから俺も頑張ろうって周りもなると思うし、本当に背中でも語ってくれる」と今津も絶対的な信頼を寄せる闘将の鈴木。ファイナルはいよいよクライマックスの4分間へ。
90+2分に浅香が果敢なドリブルから奪ったFK。リーグ戦の最終節からこの日までスタメンを守り続け、「それまではずっとサブでベンチ外とかもあったんですけど、試合に出られない時もボランチの2人に何かあったらちゃんとできるようにしようというのは心掛けていた」と話す福冨が左から入れたボールは、しかしDFがきっちりクリアすると、これが関学大のラストチャンス。時計の針が94分を回り、榎本一慶主審のファイナルホイッスルが師走の寒空へ鳴り響くと、その瞬間に鈴木はピッチへ突っ伏して男泣き。「全部員がそれぞれ自分たちが出場するカップ戦に対して、頂点に立つというのはどういうことなのかを目標にやってきた」(中野監督)流経大が9度目の挑戦にして初めてインカレを制し、全部員が揃って西が丘の地で日本一のラインダンスを踊る結果となりました。          


過去の大会を振り返り、「インカレは4回準決勝で負け、最後の2回はPK戦で敗れました。PKになった時点で『何で勝ち切れなかったんだろう』という気持ちでいつもPK戦を見ていました。『PK戦は運だ』と思う自分がいました。でも、そうじゃなくて、トーナメントで勝つというのは、トーナメントで勝つ方法を指導者がしっかり持たなくてはいけない、PK戦に絶対に負けない方法をずっと練習してきました」と話した中野監督。その結果、前述したようにこの2年間は今大会も含めて、7度あったPK戦は全勝。4度あった全国大会で3度の優勝を飾りました。「大学のインカレであっても、ワールドカップやオリンピックであっても、最後はトーナメントになります」と話した中野監督は続けて、「トーナメントを勝ち抜く力をこのチームは持っていたと思います。選手1人1人が自分の好きなことを選択する前に、チームとして自分がどう貢献するのかという所で、今のチームはみんなそういう想いで戦ったくれたので、過去のスター選手を揃えた時よりはそこが違うんじゃないかなと思います」とも。「総理大臣杯とインカレ、1年間で2回日本一になりましたが、僕が言うのもおこがましいですけど、まぐれや奇跡ではそういうことはできないと思います」と胸を張った中野監督。"まぐれ"でも"奇跡"でもなく、トーナメントを勝ち抜く力を磨き続けてきた流経大の夏冬制覇は、間違いなく必然の結末でした。      土屋

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