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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
わずかに4つだけ開けることを許された、トップディビジョンへと続く扉を巡るラストマッチ。静岡の伝統校と東京の青赤が扉の鍵を奪い合う一戦は広島広域公園第一球技場です。
高校サッカー界において知らないものはいない、冬の全国制覇3回を誇る"キヨショウ"からの校名変更は昨年のこと。王国の難敵を筆頭に強豪ひしめくプリンス東海を、最終盤の3連勝で劇的に制して、このステージへと駒を進めてきた清水桜が丘。地元の瀬戸内と対峙した前日の1回戦は、大石竜平(3年・ジュビロ磐田U-15)が後半アディショナルタイムに決勝弾を叩き込み、堂々2回戦へ進出。リーグ戦から続く最高の流れを味方に付け、一気にプレミアまで駆け上がる覚悟で今年最後の公式戦へ挑みます。
プレミア陥落から早3年。以降はなかなか参入戦まで辿り着くことも叶わず、雌伏の時を過ごしてきたFC東京U-18。変化の兆しは「選手と一緒に楽しめたらなというスタンスでずっと来ている」と笑う佐藤一樹監督の就任。東京の新人戦制覇。クラブユース選手権の全国準優勝。そして、プリンス関東も準優勝で参入戦出場権を獲得。前日も苦しみながら徳島市立をトップ昇格が決まっている佐々木渉(3年・FC東京U-15むさし)の一発で振り切り、戻るべき舞台へ王手を懸けています。スタンドには「広島までわざわざ来てくれた」と蓮川雄大(3年・FC東京U-15深川)も感謝した東京サポーターが大挙して。柔らかい陽射しがピッチに差し込む中、清水桜が丘のキックオフでゲームの幕が上がりました。
ファーストシュートは東京。4分、左WBに入った小山拓哉(2年・FC東京U-15むさし)のパスを大熊健太(2年・FC東京U-15深川)がダイレクトで捌くと、渡辺龍(3年・FC東京U-15深川)のシュートは枠の左へ外れましたが、流れるような形からフィニッシュまで。6分にも安部柊斗(2年・FC東京U-15むさし)のパスから、大熊がゴール右へ外れるミドルへ果敢にトライ。11分にも長澤皓祐(3年・横河武蔵野FC JY)の左CKがこぼれ、蓮川が打ったシュートはDFにブロックされましたが、「昨日は硬さがちょっとあって、やっぱり参入戦は甘くないなと全員わかっていた」と大西拓真(3年・FC東京U-15深川)も話した東京が、ゲームリズムを掴んで立ち上がります。
さらに、このゲームへの積極性が見えたのは19分。右サイドで一旦はボールを失った長澤が執念で奪い返して縦へ。グラウンダーの折り返しを渡辺がスルーで流すと、ここに走り込んだのは蓮川。「決まればいいかなくらいの気持ちで蹴った」シュートは大きく枠の右へ外れたものの、「後ろに安部がいて、そこに出そうか迷ったんですけど、やっぱりシュートを打たないと怖くないなと思って打った」フィニッシュに滲む勝利への意欲。
なかなか攻撃の形が創れない清水桜が丘のチャンスは20分。後方から水野歩夢(2年・ジュビロSS掛川)がクサビを打ち込み、篠崎顕(3年・ジュニオールJY)がダイレクトで落とすも、エリア内へ入った森田一世(3年・清水エスパルスJY)はオフェンスファウルで、シュートまで持ち込めず。逆に22分は東京。長澤の左CKを清水桜が丘のGK遠藤凱也(3年・御殿場中)がパンチングで弾くと、渡辺のミドルはゴール右へ外れましたが、続く東京の時間帯。
すると、先にスコアを動かしたのはやはり青赤。26分、3バックの中央を任された高田誠也(3年・FC東京U-15むさし)が縦パスでスイッチを入れると、安部がダイレクトではたき、渡辺もダイレクトでラストパス。走り込みながらこれまたダイレクトでコースを突いた大熊のシュートは、完璧な軌道を描いてゴール左スミへ吸い込まれます。押し込みながらも「昨日と同じような流れになりかけていた」(佐藤監督)中での先制点は、指揮官も「あれが理想なんですけど、なかなか最近決まらなくて」と笑うゴラッソ。流れそのままに東京が1点のアドバンテージを手にしました。
追い掛ける清水桜が丘は29分にFKのチャンス。水野の左FKに金山晃典(3年・ジュビロ磐田U-15)がヘディングで合わせるも、ボールは枠の右へ。32分は東京。安部が中央を力強く運んで左へ送り、蓮川が左からカットインしながら打ったシュートは枠の左へ。34分は清水桜が丘。大石がクイックでFKを蹴り込むと、金山はフリーでしたがダイレクトで叩いたボレーはクロスバーの上へ。わずかに繰り出し始めた清水桜が丘の手数。
ところが、次の歓喜を呼び込んだのは青赤の9番。35分、左サイドで渡辺のパスを受けた小山はすかさず蓮川へ。「決め切れるかという所で昨日は2回くらい外しちゃった」蓮川はカットインでエリア内へ潜ると右足一閃。 ボールをゴール右スミへ確実に送り届けます。「自分が引いてサイドバックを前に出したりというのも、練習の中だったり試合の中でも確認しているし、ゴールの形も何度か練習していた」(蓮川)という左サイドのコンビネーションから真打ちがグサリ。東京のリードは2点に広がりました。
畳み掛ける東京。37分、左から蓮川が中央へ入れたパスを大熊はヒールで流し、3列目から飛び込んだ安部のシュートは、右のポストを直撃して枠外へ。41分、渡辺のパスを引き出した高橋宏季(3年・FC東京U-15むさし)が枠内へ収めたミドルは遠藤がキャッチ。44分、高田の縦パスから蓮川、渡辺と右サイドへ繋がり、長澤が左足で狙ったシュートはクロスバーの上へ。「自分たちがディフェンスラインで持っている時に、あまり来なかった」と大西も振り返ったように、2点のビハインドにも前への姿勢が出てこなかった清水桜ヶ丘も、45+2分には金山を起点に大石が縦へ付け、信末悠汰(3年・DEMAIN SOLEIL福岡)がシュートを放つも、寄せた高田がきっちりブロック。最初の45分間はゲームを優位に進めた東京が2点差を付けて、ハーフタイムへ入りました。
後半開始から動いたのは東京。先制アシストを決めた渡辺に替えて佐々木を送り込み、アタッカーの顔触れに変化を加えるも、後半のファーストシュートは清水桜が丘の決定機。47分、自らのクロスから獲得した右CKを大石が蹴り込むと、篠崎のヘディングは枠を襲い、最後は東京のGK伊東倖希(3年・FC東京U-15深川)がキャッチしましたが、まずは1点を返すための高い集中力を鮮明に。50分にはベンチも森田と野木智大(2年・SP-フッチSC)の交替を決断し、サイドの推進力を高めに打って出ます。
52分には東京もフィニッシュを。大熊が基点を創り、高橋が右へスルーパス。走った長澤のクロスを大熊が頭で狙ったシュートは枠の上へ。53分は再び清水桜が丘。信末とのパス交換から、大石が中へ入れたボールを金山はシュートまで持ち込み、ここは「試合に出てどんどん良くなっているのが僕もわかる」と大西も太鼓判を押した東京の右CBを務める岡崎慎(1年・FC東京U-15深川)が体でブロックしたものの、「後半の方がどちらかというと来ているのかなという感じ」と佐藤監督も言及したように、清水桜が丘に攻撃のリズムが。
56分は東京のトリックCK。右から長澤がグラウンダーのボールを蹴り入れると、ニアへ走った大西はまたいでスルー。待っていた蓮川がシュートを叩くも、読んでいたDFが体でブロック。57分はスリリングな攻防。先に清水桜が丘。金山の右CKは鋭く入り、ニアへ突っ込んだ篠崎のヘディングは、伊東がファインセーブで何とか回避。後は東京。そこからのカウンターで右サイドを長澤が運び、上げたクロスを大熊が頭で合わせるも、ボールは枠の上へ。やり合う両者。ゲームリズムはフィフティかやや清水桜が丘へ。
「試合の入りから点が取れる気はしていたので、仲間を信じていたというか、今日は自分のやることをやればいいかなと思っていた」キャプテンの気合注入。60分、高橋のパスを高い位置で受けたのは左CBの大西。そのまま蓮川からのリターンを受け取ると、右へラストパス。佐々木のミドルは遠藤にキャッチされましたが、「ロッカールームも試合中も含めて、厳しい言葉をチームメイトに投げかけられるウチでは唯一の存在」と指揮官も信頼を寄せる大西が、自らのオーバーラップでチームの雰囲気を引き締めます。
それでも、清水桜が丘が踏み込んだアクセル。64分は右寄り、ゴールまで約30mの位置から金山が直接狙ったFKは枠の右へ。65分にも右CKを大石が蹴ると、金山が頭で触ったボールはDFがクリア。66分にも信末のパスから大石が放った枠内ミドルは、伊東のファインセーブに阻まれましたが、「ボランチの2枚が奪えるかなという感じで行って、奪い切れないというのがあった」と佐藤監督も振り返った通り、キャプテンの杉本隼(2年・ACNジュビロ沼津)と清水桜が丘のドイスボランチを組む大石が果敢に前へ出てくることで、東京はそのマークでやや後手を踏んだ格好に。前半とは打って変わって、清水桜が丘のアタックに溢れる躍動感。
70分も清水桜が丘。金山の左CKに、合わせた越水旋太(3年・掛川JFC JY)のヘディングはヒットせず。74分も清水桜が丘。ルーズボールを中盤で拾った金山は、思い切ったボレーをクロスバーの上へ。77分も清水桜が丘。金山、大石と回したパスワークから、信末がエリア内へ侵入するも、何とかDFがクリア。78分も清水桜が丘。金山の左CKは跳ね返されるも、再び金山が入れたクロスへ、突っ込んだ野木のシュートは枠を捉えられなかったものの、「来てくれるといなしやすくはなるけど、逆に食われちゃった部分も出てきた」(佐藤監督)東京を飲み込み切れるか。
「あまり僕が火を付けるよりも、自分たちで勝手に火が付いて、しっかりとコミュニケーションを取りながらゲームを進められる選手たちなので、そういう意味では自立している部分を今日は発揮してくれたと思う」と佐藤監督。「受け身にならずに局面局面で対人で勝つ強さというのがこのチームにはあるので、そういう所で怖がらないでしっかり試合中も対応できていた」と話す大西を中心に、間違いなく劣勢と言える時間帯でも本当に危ないシーンは数える程。逆に80分には長澤のパスから、佐々木が遠藤にセーブを強いるシュートを打ち込めば、84分にも長澤の左FKから大西がフリーでヘディングを放ち、遠藤にファインキャッチで阻止されたとはいえ、苦しい展開の中でもしっかり追加点機まで創出して見せます。
89分には佐藤監督が2人目の交替を。先制弾の大熊を下げて、田宮碧人(3年・FC東京U-15)に託すゲームクローズ。刻々と近付く"戻るべき場所"。90+1分には「2年生には来年プレミアでやって欲しいし、よりレベルの高い所でやって欲しかった」という想いをゴールで表現した蓮川と、15歳の半谷陽介(1年・FC東京U-15深川)の交替で、来年以降のチームを担っていくであろう次世代も大舞台の経験を。
90+3分は清水桜が丘のラストアタック。大石のパスを越水が右へ回したボールは、走り込んだ野木に届かず、伊東が確実にキャッチすると、広島の寒空に吸い込まれたタイムアップのホイッスル。「我々は1回落ちている訳なので、這い上がれたということにまずは凄く価値があると思う」と佐藤監督が話したように、東京がプレミア降格を経験したチームとしては初めて、またその舞台に復帰する権利を堂々と勝ち取る結果となりました。
「僕たちはプリンスにいるべきじゃないと思っていた。プレミアに復帰できてここからがスタートだと思うし、しっかり東京の力を見せ付けられればいいかなと思っているので、来年は頑張って欲しいですね」と話した大西を筆頭に、東京はこの1年で本当に力強いチームになったなという印象を受けています。「参入戦が決まったからということで、ちょっと気が抜けちゃっていたプリンス最後の3試合だったので、そこからの持ち直しというか、チームを引き締め直すという意味では3年が引っ張っていかなきゃいけないなというのはあった」とは蓮川。昨年から主力を務める選手の多かった3年生が、きっちり責任感を持ってチームを牽引する姿は、ここに来て言いようのない逞しさを纏っていました。そして、そのチームを創り上げてきたのは、「途中でおかしな方向に行きそうになったら僕が軌道修正するだけという感じになってきた」と話しながら、サポーターが持参した"ドロンパ"を指差して「たぶんあの"ドロンパ"の人形をベンチに置いておいても、同じようなゲームになったと思いますよ」と笑った佐藤監督。選手と指導陣が確かな絆で結ばれたサトウトーキョーが、いよいよプレミアの舞台へ帰ってきます。 土屋
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