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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月15日

高円宮杯プレミアリーグ参入戦2回戦 前橋育英×履正社@Eスタ

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1215esta.jpg雪で1日順延となった影響で、連日の戦いとなったプレミア参入戦もこれがファイナル。国内最高峰への殴り込みを懸けて、上州のタイガー軍団と浪速の無敵艦隊が激突する一戦はエディオンスタジアム広島です。
昨年は激戦のプリンス関東を見事に制したものの、王者として挑んだプレミア参入戦は1回戦でのPK戦敗退を余儀なくされ、トップディビジョンへの昇格はならなかった前橋育英。鈴木徳真(3年・FC古河JY)と渡邊凌磨(3年・クラブレジェンド熊谷)というU-17W杯を経験した2人も最上級生となった今シーズンは、夏のインターハイで全国ベスト4まで勝ち進むと、プリンス関東でも3位という好成績を収めてこの舞台まで。立正大淞南と激突した昨日の1回戦は、4-2という撃ち合いを制しての勝利。2年続けて広島から"手ぶら"で帰還する訳にはいきません。
昨年の高校選手権では全国初出場でいきなりベスト8まで躍進。今年の選手権予選も参加校の多さとそのレベルの高さから、国内最激戦区とも称されている大阪を堂々と連覇で潜り抜け、2年連続での全国切符を掴むと、リーグ再編に伴ってこちらも初めて参戦したプリンス関西で優勝に輝き、広島の地へ乗り込んできた履正社。こちらも1回戦はサッカー王国を牽引してきた静岡学園を、4-3という殴り合いの末に下して2回戦進出。「育英なんて全国区のチームで、どのチームからもリスペクトされているチームの1つ。『じゃあ俺たちの居場所を明確にするチャンスだよな』と送り出した」と平野直樹監督。名門に臆することなく全力勝負を挑みます。気温10.8度という、この時期にしては絶好のコンディションの中、注目の高体連対決は履正社のキックオフでスタートしました。


お互いに少し慎重な立ち上がりを経て、先にチャンスを創ったのは育英。6分、高い位置でボールを奪った渡邊は、左から中央へ流れながら右へラストパス。坂元達裕(3年・FC東京U-15むさし)のシュートは、履正社のキャプテンを託された左SBの小川明(3年・FCB2)が何とかブロック。9分は履正社。CBの安田拡斗(2年・ガンバ大阪JY)の縦パスを川畑隼人(2年・ガンバ大阪JY)は左へ展開。田中駿汰(2年・ガンバ大阪JY)の折り返しはマイナスに入り、走り込んだ川畑のミドルはDFがブロック。どちらもファーストシュートは相手ゴールへ届きません。
12分は育英。関戸裕希(3年・ヴェルディSS小山)が左のハイサイドへ落とし、オーバーラップしたSBの渡辺星夢(3年・クマガヤサッカースポーツクラブ)がクロスを送ると、こぼれをダイレクトで叩いた渡邊のボレーはクロスバーの上へ。13分は履正社。牧野寛太(2年・ガンバ大阪JY)、菅原大空(2年・大阪東淀川FC)と回ったボールを川畑が右へ送ると、林大地(2年・ガンバ大阪JY)がシュート気味に入れたグラウンダークロスはゴールラインを割ったものの、スムーズなアタックを。ボールを回すのは育英。ただ、サイドでしっかりスイッチが入る履正社に得点の匂いが。
すると、19分に生まれたのは「もう『ブラボー』という感じですよね」と平野監督も笑ったゴラッソ。左サイドでボールを持った田中のサイドチェンジから、林はエリア内へスルーパス。潜った川畑がダイレクトで右へ落とすと、上がってきたSBの大迫暁(2年・ヴィッセル神戸U-15)もダイレクトで絶妙クロス。ファーで待っていた菅原は、ヘディングで難なくボールをゴールネットへ送り届けます。サイドアタックのお手本のようなパーフェクトゴールは「普段練習でああいうようなことはよくやっているので、それがそのまま出た」(平野監督)という積み重ねの成果。履正社が1点のリードを奪いました。
追い掛ける展開を強いられた育英は22分、左サイドで獲得したFKを渡辺が蹴ると、ファーで坂元が競り勝つも、ここは履正社のCB長尾悠平(3年・FC PASENO ITAMI)がきっちりクリア。25分は履正社。GKの位置を見た林が40mミドルにトライするも、ボールはクロスバーの上へ。32分も履正社。左サイドを抜け出したアンカーの多田将希(3年・FC PASENO ITAMI)が中央へ折り返し、牧野のシュートはDFが懸命にブロック。さらに右サイドでボールを拾った林が、縦に持ち出しながら狙ったシュートは枠の右へ外れるも波状攻撃は迫力十分。33分も履正社。川畑が左へ流し、菅原がドリブルから放ったシュートは、育英のCB上原大雅(3年・FC厚木JY DREAMS)が何とかブロックしましたが、「あそこは練習からガンバ同士でメッチャ相性が良い」と牧野も認める、中盤前目の川畑と田中が前に出てくる回数も増加し、ゲームリズムは一気に履正社へ。
やや焦れるような展開の中、攻撃の形が出てこない育英は37分に同点機。CBの宮本鉄平(3年・前橋FC)がフィードを送ると、「身長は高くないけどヘディングは強い」と山田耕介監督も評する坂元が、高い打点のヘディングで中へ。こぼれに反応した鈴木のミドルはDFに当たってコースが変わり、ゴール右スミを襲い、最後は履正社のGK安川魁(3年・藤井寺FC)がファインセーブで掻き出すも、1本のロングボールから惜しいシーンを。この前後からようやくボール回しにスムーズさが出てきた育英に反攻の予感も。
ところが、次に歓喜の輪を創ったのも浪速の白。41分、林を起点に田中が裏へ蹴ったボールから、菅原は完璧なラインブレイクで右サイドを独走。中央を確認しながら、丁寧にグラウンダーのクロスを送り込むと、待っていたのは牧野。「キーパーも相手の位置も良く見えていた」10番が選択した、「突っ込んでくるとわかっていたので、ちょこんと浮かすだけ」のシュートはイメージ通りにGKを柔らかく飛び越え、ゴールネットへゆっくり収まります。アイデアとテクニックが高次元で融合した追加点にも、「あれぐらいは彼は普通にできる」と指揮官は冷静に。履正社が2点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムを挟み、迎えた後半のファーストシュートは攻めるしかない育英の48分、右サイドを駆け上がったSBの岩浩平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)は前に出ていたGKの頭上を狙う35mミドルを枠の上へ。50分も育英。左CKを渡邊が蹴り込むと、ファーで坂元がここも競り勝ち、詰めた岩のシュートは安川が間一髪でファインセーブ。52分も育英。相手DFの連携ミスをかっさらった関戸が抜け出し、ミドルレンジから思い切って打ったミドルはクロスバーをハードヒット。明らかに回転数の上がったタイガー軍団のトップギア。
56分には履正社もチャンスを。林が右サイドで粘って残し、菅原を経由して大迫が裏へ送るも、走った菅原は一歩及ばず育英のGK吉田舜(3年・クマガヤサッカースポーツクラブ)がキャッチ。57分は再び育英。青柳燎汰(3年・クマガヤサッカースポーツクラブ)、関戸とボールが回り、前線へポジションを移した渡邊が右へ送ると、坂元のフィニッシュは小川が何とかブロック。60分に枠を大きく越えた林のミドルを挟み、63分は育英の決定機。右サイドで坂元が裏へ蹴り込み、岩のピンポイントクロスに青柳がドンピシャのヘディングで応えるも、ボールはまたもクロスバー直撃。とはいえ、勢いは間違いなく育英に。
両ベンチが同時に動いたのは66分。育英は右SHへスライドしていた関戸を下げて、野口竜彦(2年・高槻FC JY)をそのままの位置へ投入。履正社は林に替えて、角野光志朗(3年・摂津FC)をこちらもそのまま右ウイングへ。69分に早くもその角野を起点に、多田のパスから右へ流れた牧野のシュートがサイドネットの外側を襲うと、直後には2人目の交替も。「今日は凄く頑張った」と指揮官も賞賛した菅原と瀧本高志(3年・FCB2)をスイッチして、「ちょっと足が止まって長いボールに終始してしまった」(平野監督)流れを変えるべく、前線にフレッシュな空気を吹き込みます。
73分は育英。岩、坂元と繋いだボールを青柳がヒールで残すも、突っ込んだ長尾が大きくクリア。78分は履正社。川畑、瀧本のヒール、川畑と回したボールを、瀧本は左足シュートで豪快にクロスバーの上へ。78分に山田監督が切った2枚目のカード。青柳と横澤航平(2年・前橋FC)を入れ替え、前線には渡邊と坂元が並び、右に野口、左に横澤を配してアジリティで勝負を。
「僕らのサッカーを貫き通そうと思っていたんですけど、自然と蹴ることが多くなって守備に回ってしまった」(牧野)履正社を押し切りたいタイガー軍団。82分も育英。野口、岩、坂元と繋ぎ切り、野口が入れたクロスは大迫がクリア。この一連を見て、山田監督は184センチの長身CB宮本へ前線に上がるよう指示。85分も育英。渡辺のFKに宮本が競り勝つも、大迫がしっかりクリア。87分も育英。渡邊が蹴った連続左CKの2本目は、ファーの上原へ届くもハンドの判定。「『パワープレーはあるぞ』というのはハーフタイムに言っていたので、そこはもう予想通り。ボールに対して弾いた後のセカンドを拾うことが大事だと話していた」と平野監督。長尾と安田のCBコンビを中心に、途切れない履正社ディフェンスの集中力。
88分も育英。吉永大志(3年・JFAアカデミー福島)のフィードを宮本が落とすと、野口が走り込むも安田は体できっちりカバーして安川がキャッチ。89分も育英。渡辺の左FKは安川が直接キャッチ。アディショナルタイムの掲示は3分。「ほとんど主力が残りますから、彼らの成長を考えるとレベルの高い所でやりたい」という平野監督の大願成就はもうすぐそこまで。
90+1分は育英。右CKを渡邊が蹴り込むと、スタンディングで当てた野口のヘディングはクロスバーの上へ。逆に90+3分は履正社に決定的なシーン。瀧本が左サイドから中央へ流すと、牧野が狙いすまして打ち切ったシュートは左ポストを直撃。「ああいうのを決めないとチームとしても苦しくなっていくと思うので、しっかり決めていかないといけない」と本人は反省したものの、これがこのゲームのファイナルシュート。「厳しいゲームを国内のトップレベルで経験できるというのは非常に貴重な経験だと思うので、そこでゲームができることに対しては嬉しく思っています」と平野監督も喜びの表情を見せた履正社が、プリンス昇格初年度で一気にプレミアまで駆け上がる結果となりました。


1ゴール1アシストの活躍を見せて、プレミア昇格に大きく貢献した菅原は1回戦のスタメンから外れていましたが、「後片付けだとか、裏方に回った時にも一生懸命やっていた」のを見ていた平野監督は、「じゃあ大空行くぞ」と今日のスタートからの起用を決断。チームの結果も出た上に、菅原も一層自信を付けたのは明らかであり、さらに試合後にも指揮官が囲み取材に応じていると、そのすぐ横を歩いて行った菅原は、その指揮官が試合中に使っていた大きな作戦ボードをしっかりと運んで、ロッカールームへと引き上げて行きました。「やっぱりいる場所が人を育てるんだな」と少し嬉しそうに呟いた平野監督は、続けて「あれを機嫌が悪い時でも、イヤイヤでもいいからできるようにならないとね。今は勝って、点も入れて、そこそこ活躍もしたから、そんなのは誰だってそうで、いい時には誰だってやる。では、良くない時にどういうプレーができるのか、どういう行動が取れるのかという。そこが一番求めている所かな。僕ら社会人も同じですからね。やりたい仕事ばっかりという訳ではないし、『明日授業かよ』と思いつつね(笑) と思ってもやっぱり休んじゃダメだから、ちゃんとやらないといけないと。それは子供も僕らも同じで、皆さんも同じじゃないですか(笑)」と我々取材陣にも素晴らしいメッセージを。選手たちが羨ましくなるような監督を頂いた履正社が挑む、日本最高峰のステージでの活躍が今から楽しみになるような90分間プラスアルファでした。          土屋

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