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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
大晦日に行われるファーストマッチ。2014年最後の日に首都の名門と琉球の古豪が激突する舞台は駒沢オリンピック公園陸上競技場です。
渡辺夏彦(慶應義塾大)、富樫佑太(ウラカン・バレンシアCF)、平野佑一(国士舘大)という世代屈指の3人を擁し、優勝候補との呼び声もありながら国立の開幕戦で散ったのは昨年の選手権。あれから1年。「ほとんど毎日思い出していました」とキャプテンの内藤健太(3年・Forza'02)が話し、「寝ようかなと思うと、ふと思い出すこともある」と守護神の仲間琳星(3年・ジェファFC)も口にしたように、悔しい思い出を払拭すべく、またこの全国へ帰ってきた國學院久我山。例年通りの高いテクニックに加え、「今年は守備が強いチーム」と李済華監督も自信を覗かせた守備陣は、都予選4試合を無失点で完全制覇。その指揮官の監督勇退に華を添えるべく、まずは"昨年超え"の初戦突破を狙います。
35年ぶりに全国へ吹き込む琉球の新風。県新人戦を力強く制すると、インターハイ予選では準決勝まで4試合無失点と粘り強く勝ち上がって、36年ぶりの全国切符まで。勢いそのままに臨んだ選手権予選もファイナルでは西原相手に3-3と撃ち合い、最後はPK戦をモノにして県内三冠を達成し、冬の全国切符も堂々ともぎ取った前原。今年度から就任した和仁屋恒輝監督の下、目指すのは35年前に届かなかった全国初勝利です。快晴の駒沢は気温11.1度と日なたはポカポカ陽気。観戦者にも最高のコンディションの中、久我山のキックオフでゲームはスタートしました。
いきなりの衝撃は開始わずか3分。久我山は左へボールを展開すると、スーパールーキーの澁谷雅也(1年・ジェファFC)は積極的な仕掛けでサイドをえぐり切り、中央へグラウンダーのクロス。走り込んだCFの小林和樹(2年・ジェファFC)は難なくプッシュし、ボールをゴールネットへ送り届けます。「難しいウチにとっての開幕戦」(李監督)は最高の先制パンチから。早くも久我山が1点のリードを手にしました。
12分も久我山。澁谷のリターンを鈴木遥太郎(2年・東急SレイエスFC)が繋ぎ、小林がエリア内へ侵入したシーンはよく戻った安座間聖(3年・うるま具志川中)が何とかカットしましたが、あわや追加点というシーンを。ただ、10分過ぎからはようやく落ち着いた感のある前原にボールを回すリズムが。CBの仲本龍樹(3年・うるま与勝中)と奥間大和(3年・沖縄東中)を中心に最終ラインで繋ぎながら、中盤アンカーの前濱和道(3年・うるま具志川中)がサイドへ振り分ける形が徐々に。17分にはやはり前濱が右へ送り、祖堅拓耶(3年・FC琉球U-15)のクロスはDFをかすめてゴール右へ。そのCKを右からキャプテンの田里駿(3年・うるま高江洲中)が蹴ると、野村京平(2年・横河武蔵野FC JY)がクリアしたボールに上間夕輝(3年・沖縄東中)が反応し、狙ったシュートはDFにブロックされたものの、一連の流れで積極性を披露します。
さて、リードを奪いながらもボールの主導権は握られつつある久我山でしたが、「相手に支配されるというのは今年のチームは結構多いし、予選でそういう経験を積んできたのでそこまで焦ることはなかったかなと思う」と内藤。ある程度は守勢に回りながらも、機を見て狙うアタック。20分に左から鈴木、右から中盤アンカーに抜擢された知久航介(1年・浦和レッズユース)と、続けて入れたCKはいずれもDFに弾かれたものの、23分にも知久が右へ流すと、サイドを切り崩した飯原健斗(3年・横浜FC JY)のクロスは仲元のクリアに遭うも、「攻撃においては基本的に良かった」と指揮官も認めるサイドアタッカーが、発揮して見せたその突破力。
27分も久我山。知久の右CKに野村が頭で合わせるも、飯原に当たってしまい前原のGK新城隆矢(3年・DIVERTIR JY)がキャッチ。30分も久我山。澁谷が左から中へ付けると、GKの鼻先でボールを持ち出した飯原は、そのままキックフェイントで再びGKを翻弄してシュート。祖堅に当たったボールはカバーに入った奥間が何とかクリア。32分も久我山。3バックの右CBに入った花房稔(3年・横河武蔵野FC JY)がサイドをスルスルと持ち上がり、鴻巣良真(3年・ジェファFC)がヒールで残すと、花房のシュートは新城がキャッチ。ハーフカウンタ-気味のチャンスを探る中で、しかし「あれだけ状況判断が悪くて、ボールコントロールをミスするとは」と李監督。「こういう舞台だと緊張したのか、普段やらないようなミスもあった」と内藤も話したように、イージーミスの多発でテンポが上がりません。
逆に33分には前原のショートカウンター。當山隆馬(3年・北谷桑江中)、田里と回ったボールは、左ウイングの大保周一郎(2年・うるま石川中)も混戦の中でシュートを打ち切れず、田里が強引に打ち切ったシュートは花房が何とかブロックしたものの、このゲームの中では珍しく縦に仕掛けた一連が、わずかに呼び込んだ破調。李監督は自ら「じっと見ていられないゲーム」と評した展開にシビレを切らし、テクニカルエリア最前列でピッチに厳しい声を投げ掛けます。
35分は久我山。知久の右CKは中央へこぼれるも、澁谷はシュートまで行けず。37分も久我山。鴻巣が右サイドを切り裂いてクロスを送り、澁谷の落としを小林が叩いたシュートはヒットせずに枠の左へ。39分は久我山のビッグチャンス。鈴木を起点に宮原直央(2年・FC多摩JY)が左サイドで縦へ流し、澁谷のグラウンダークロスは絶妙。飛び込んだ小林はわずかに届かなかったものの、実り掛けた追加点への意欲。ボールは前原がしっかり回す中で、「相手は自分たちより上手いなと思って入って、前半は前から行こうと言っていたので良い形で行けた」と内藤も話した守備陣はしっかり対応した久我山が、1点のアドバンテージを握ってハーフタイムに入りました。
後半はスタートから両チームに交替が。「中盤から前が本当に良くなかった」と判断した李監督は、小林を下げて内桶峻(2年・GRANDE FC)をそのままCFの位置へ。対する和仁屋監督は負傷もあってか、アンカーの前濱を金城拓帆(3年・読谷中)と入れ替える苦渋の決断を。金城は左ウイングに入り、左ウイングだった大保はCBへ、CBだった仲元は中盤アンカーへそれぞれスライドして、残りの40分間へ向かいます。
なかなかお互いに手数を繰り出せない中、49分は前原。祖堅と田里の連携で奪った右CKを田里が蹴るも、野村がきっちりクリア。50分も前原。安座間、金城とボールが回り、田里が狙ったシュートは内藤が体でブロック。51分も前原。安座間のパスから當山が放ったミドルは仲間がキャッチしましたが、「自分が思っていたよりも速くて上手かった」と内藤も認める田里が積極的にボールへ関与し、同点への意識を打ち出す琉球の青に増える手数。
久我山の連続フィニッシュは52分。右サイドを得意のドリブルで運んだ飯原のシュートがDFに当たって枠の右へ逸れ、内桶が蹴り込んだ右CKから野村が叩いたヘディングもやはり枠の右へ。逆に54分には前原も安座間が右へはたき、祖堅がドリブルで持ち出しながらマイナスに折り返したボールを、安座間が合わせたシュートは仲間がキャッチしましたが、ここで「もううまい具合に点数は取れない」と判断した李監督は次の一手を。55分に鈴木に替えて名倉巧(1年・FC東京U-15深川)を送り込むと、「しっかりダブルボランチを置いて4バックにして、守備の安定感を持たせようと」3-3-1-3気味の布陣から、鴻巣良真(3年・ジェファFC)を最終ラインの右へ落とし、知久と宮原を並べた前に名倉を配する4-2-1-3の形で守備バランスの維持へ着手します。
すると、直後には久我山に決定的なシーン。56分に飯原が左から中央へ戻したボールを、内桶が枠へ収めたシュートは新城がファインセーブで応酬。「うまく2点目が取れればラッキー」という李監督の思惑も成就しかけましたが、ここは沖縄王者を支えてきた守護神の好守で踏み止まる前原。
ファーストハーフよりも田里が広範囲にボールを引き出し、パスワークのスムーズさは増した感もあった前原。それでも「後半は1個低い所で、点を取られなければ勝てるという形でやっていました」と内藤が明言した通り、今年の久我山は割り切る守備も1つの大きな持ち味。「相手チームの攻撃が遅かった」という指揮官のイメージはピッチ上の選手も共有しており、「クロスがそんなに来ないチームだとわかっていたので、逆にサイドはちょっと我慢させて、1対1で仕掛けさせて縦を切れば、また下げてもう1回作り直すという繰り返しだった」と仲間が話せば、「相手も取ったらとりあえず後ろに下げてパスを回してくる形だったので、DFラインとしては助かったかなと思っています」と内藤。捨てる所は捨てながら、中央のブロックは強固に築く形を徹底し、相手にフィニッシュは取らせず。67分には知久の右CKから、内桶がヘディングをゴール左へ外すと、直後に指揮官は好パフォーマンスを見せた澁谷を小林祐貴(3年・Forza'02)と入れ替え、サイドの守備力強化もきっちり施します。
72分は前原。安座間、上間と細かく繋ぎ、金城の落としを上間が狙ったミドルはクロスバーの上へ。74分は久我山。左寄り、ゴールまで約20mの位置で奪ったFKを知久が小さく出すと、飯原が打ったコントロールショットは枠の左へ。75分は前原。當山が蹴った長いFKは確実にDFがクリア。「去年1回戦で負けてしまっていて、私自身も勝ちたいということがあったので、1-0はOKという気持ちに後半25分くらいからなっていました」という李監督の意識はピッチにも十分浸透。「DFラインには結構自信を持ってやっています」と言い切る内藤を中心に、開かない久我山堤の穴。ゲームはいよいよ4分間のアディショナルタイムへ。
80+2分は前原。仲元、田場輝(3年・沖縄宮里中)、田里とボールが回り、安座間が放ったシュートは、左SBへスライドしていた野村がきっちりブロック。80+4分は前原のラストチャンス。大保のパスから當山を経由して田里が左へ流し、田場が入れたクロスのこぼれにいち早く反応した田里のシュートがクロスバーの上に消えると、大晦日の駒沢に響いたタイムアップのホイッスル。「良いゲームをやって負けるのが良いのか、悪いゲームでも勝った方が良いのか、ちょっとわからない所ですね。本当は良いゲームをして勝ちたいんですけど、勝ったから良いゲームをできるもうワンチャンスを戴いたと考えています」と李監督は渋い顔を見せたものの、久我山が昨年は超えられなかった初戦の壁をまずは打ち砕き、2回戦へと駒を進める結果となりました。
「自分的には内容もひどかったですし、全然自分のプレーもダメだったので、去年の悔しさを晴らせたとは思っていないです」と内藤も首を振るなど、思ったような内容のサッカーは披露できませんでしたが、とりあえずは次のステージへと勝ち上がった久我山。それでも「相手も結構ボールを回す同じようなスタイルで来て、ちょっと苦しい場面もあったんですけど、守備は去年の教訓を生かして、絶対集中を切らさないようにみんなで声を掛け合っていた」と仲間が話した部分がしっかりと勝利に繋がったことは、李監督も「去年1回戦で負けたというのをずっと引きずっていたんですよね。そこから今日やっと解放された」と言及したように、チーム全体が抱えていた1年前の開幕戦敗退によるショックを、わずかながら払拭したことは間違いありません。「久我山に入って1年の頃は試合に出れなくて、2年も開幕戦で負けちゃって、ここまで"良い年越し"をしたことがなかった。絶対にここを勝って"良い年越し"をしようねとみんなで言っていたので嬉しいです」とは仲間。まずはこのメンバーで"良い年越し"を初めて味わった久我山。その視線の先にはさらなる高い頂を見据えています。 土屋
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