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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月11日

インカレ1回戦 仙台大×常葉大浜松キャンパス@江戸川

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1211edogawa.jpg西が丘のファイナルを目指して24校が鎬を削る冬の祭典。全日本大学サッカー選手権大会、通称"インカレ"の1回戦は寒風吹き付ける江戸川陸上競技場です。
重ねた連続出場は今回で14回。東北地域では無敵と言っていい程の実力を有し、今年もリーグ戦全勝優勝を手土産に全国の舞台へ帰ってきた仙台大。ただ、「私が監督になった5年前は、いきなり総理大臣杯でベスト4まで行ったんですけど、その次の年のインカレで1回勝ってから、全国では2年間まったく勝っていないんです」と話すのはチームを率いる吉井秀邦監督。過去最高のベスト4、そしてそれ以上を狙う上でも、まずは3年ぶりのインカレ勝利を手にしたい一戦に臨みます。
元日本代表の澤登正朗監督を指揮官に招聘し、激戦の東海地区を何とか突破。校名変更後は初めてとなるインカレへ2年ぶりに戻ってきた常葉大浜松キャンパス。コーチ陣にも山西尊裕氏や山本浩正氏が名を連ねるなど、日本のトップレベルを知る指導陣の下、総理大臣杯こそ地区予選敗退を強いられたものの、このシーズン最後の全国大会で旋風を巻き起こす準備は整っています。ピッチを覆うのは朝から降り続く冷たい雨。厳しい寒さというコンディションを強いられる中、ゲームは常葉大のキックオフでスタートしました。


6分のファーストチャンスは仙台大。宮澤弘(1年・柏レイソルU-18)と斎藤恵太(4年・聖和学園)のパス交換で奪った左CKを山田満夫(1年・松本山雅F.C.)がショートで蹴り出し、蓮沼翔太(3年・柏レイソルU-18)のリターンを山田が入れたクロスは中央と合わずゴールキックへ。7分は常葉大にチャンス。浜田康寿(4年・中京大付属中京)のパスから遠藤維也(3年・清水商業)が抜け出し掛けるも、ここは仙台大のCB中條渡(4年・東北)がきっちりカバーしてGKの松岡峻(4年・矢板中央)がキャッチ。一進一退。初戦ということもあってか、やや双方ともセーフティーに立ち上がります。
ところが、最初の決定機をきっちり成果に結び付けたのはみちのくの赤。13分、左サイドでボールを持った宮澤はサイドチェンジ。受けた川島章示(2年・柏レイソルU-18)が右へ流すと、「練習をやっていてもすぐにサイドチェンジは来るので、ここも来るなというのはわかっていた」という右SBの川上盛司(1年・鹿島アントラーズユース)は思い切り良くシュート。常葉大のGK長谷川和(4年・豊田北)もよく弾きましたが、こぼれに反応した蓮沼は豪快にゴールネットへ突き刺します。「左でゲームを創って右で攻撃というのがウチのスタイル」と川上も胸を張った、まさに狙い通りの一撃。仙台大が1点のリードを手にしました。
さて、ビハインドを負う展開となった常葉大は、16分に右から大道桂三(4年・清水商業)が蹴ったFKも弾かれ、窪田達哉(4年・東海大翔洋)が上げたアーリーは松岡がキャッチ。逆に16分は仙台大にフィニッシュ。「体の強さは自分の持ち味」と語る川島がきっちり収め、蓮沼を経由して斎藤が狙ったミドルは長谷川がキャッチするも、悪くないアタックを。中盤の蓮沼と児玉昇(3年・柏レイソルU-18)が中盤でパスを捌き出し、少しずつゲームリズムはボールが動き始めた仙台大へ。
同点弾は唐突に。19分、渡邉翔太(1年・ジュビロ磐田U-18)と登崎雅貴(2年・常葉橘)がCB同士でパス交換すると、登崎のフィードを遠藤は高い打点でそのままヘディング。ボールはゴール左スミギリギリのポイントへ吸い込まれます。ほとんどそこまで攻め手のなかった常葉大が、このゲームで初めて放ったシュートがゴールに直結。スコアは振り出しに引き戻されました。
俄かに動き出したゲーム。仙台大の反攻はすぐさま。22分、それまで相手の厳しいプレスになかなか前を向かせてもらえなかった熊谷達也(4年・柏レイソルU-18)が左へ絶妙スルーパス。中山和弥(4年・コンサドーレ札幌U-18)のピンポイントクロスに頭から中條が飛び込むと、ボールはゴール右スミへ勢い良く転がり込みます。CB2人で挙げた勝ち越し弾。再び仙台大がリードを奪いました。
均衡は束の間。またも追い掛ける格好の常葉大。ただ、2失点目の前後からは前田陽平(4年・湘南ベルマーレ)と窪田で組む右が機能し始め、ハイサイドまで侵入するシーンが頻発。27分には窪田が右ロングスローを投げると、混戦から遠藤が叩いたシュートはDFに当たって枠の右へ。直後にも浜田が右CKを2本続けて蹴り込み、さらに窪田も際どい右ロングスローを。30分には右寄り、ゴールまで約25mの距離から浜田が直接狙ったFKは、松岡が何とかパンチングで回避。またも浜田が蹴ったCKはシュートまで持ち込めなかったものの、「スカウティングしている時のセットプレーでは、ああいうゴールに向かってくるボールを蹴っていなかったので、正直最初は面食らったし、さらにボールも凄く良いボールだった」とは吉井監督。セットプレーの脅威は鮮明に。
38分も常葉大。浜田の右CKはDFのクリアに遭うも、もはや右サイドは完全に制圧。45分も常葉大。左から若松靖之(4年・磐田東)がシュート気味に放り込んだCKは、松岡がわずかに触ってクロスバーにヒット。そして押し込む流れで生まれた歓喜は、やはりセットプレーから。45+1分、右から浜田が入れたこの日5本目のCKは一旦松岡にパンチングされましたが、そのボールにいち早く反応した前田はダイレクトボレーを敢行。軌道はエリア内の密集を抜けて、ゴール右スミギリギリへ飛び込みます。終了間際に常葉大が意地で追い付き、激しく撃ち合った最初の45分間は2-2でハーフタイムに入りました。


後半もスタートから勢いは常葉大。47分、大道が左から中央へ付けると、走り込んだ前田がそのまま縦に持ち出しながら枠へ収めたシュートは、松岡が好反応でファインセーブ。その左CKは若松のボールがゴールラインを直接割ってしまいましたが、49分にも左FKを若松が蹴り込むと、遠藤のオーバーヘッドはDFともつれてヒットせず、大道の折り返しはDFが懸命にクリア。50分にも若松の左CKから、浜田が右足で放ったミドルはわずかに枠の左へ。51分にも遠藤がドリブルからDFに当たって枠の右へ逸れるシュートにトライするなど、アクセルを一段階踏み込んだ感が。
53分は仙台大。山田が左へ流すと、川島が少し強引なドリブルでカットインしながら枠内シュート。長谷川が丁寧にキャッチしましたが、これが仙台大にとって後半のファーストシュート。54分は常葉大。前田がドリブルからシュートを狙うも、中山が体で必死にブロック。その左CKを若松が入れたボールはDFにきっちりクリアされるも、1分後には若松も切り返しでマーカーを外しながら、枠の右へ逸れるミドルにトライ。59分は仙台大。児玉が狭いスペースを丁寧に通し、受けた熊谷の反転ミドルはDFをかすめてクロスバーの上へ。手数は繰り出し合う中で、それでも主導権はまだ常葉大に。
61分に登崎の左FKから、遠藤が距離のある高打点ヘッドを枠の左へ外すと、先に動いたのは澤登監督。62分、最前線の宮崎竣也(4年・文徳)に替えて大野耀平(2年・帝京)を送り込み、前線のパワー増強に着手。63分には児玉のスルーパスから川上がクロスを上げ切り、熊谷のボレーが枠の左へ逸れたのを見て、仙台大も69分に1人目の交替を。蓮沼を下げて、「ちょっとセカンドが拾えてなかったので、ロングボールに対してのセカンドを何とかという形」で同じく中盤に秋葉侑思(4年・モンテディオ山形ユース)を投入し、中盤の引き締めに着手。お互いに流れを引き寄せるべく、交替カードを切り合います。
すると、交替が奏功したのは後者。77分、山田のボールを引き出した川島は左サイドを力強く切り裂き、中央へ丁寧で柔らかいクロス。ここで待っていたのは8分前にピッチへ解き放たれたばかりの秋葉。まったくのフリーからヘディングで叩いたボールは、ゴール右スミへ綺麗に吸い込まれます。「セカンドボールを拾ってくれるだけじゃなくて、繋ぐ所もずいぶん落ち着いてできていたので、本当にあれがターニングポイントだったかなと思いますね」と吉井監督も認めたように、流れを変えた秋葉が一気に勝ち越しゴールまで。仙台大がまたも一歩抜け出しました。
大きな流れは手放していなかったにもかかわらず、この日3度目のリードを許した常葉大。79分には若松、遠藤とボールが回り、前田がエリア内へ切れ込むも、中條が間一髪でクリア。80分、窪田の右ロングスローはDFがクリア。81分、窪田の今度は左ロングスローもDFがクリア。82分、浜田が左サイドから直接狙ったFKはDFがブロック。直後に窪田が左から投げたロングスローもDFはクリア。「最初はバタバタしましたけど、だんだん慣れてきた部分もあったので、セカンドだけちゃんとやっていれば大丈夫かなという所を、みんなで確認はしていました」と吉井監督。仙台大に生まれたセットプレーへの確かな"耐性"。
83分は常葉大。左から若松が直接狙ったCKは、松岡が懸命にフィスティング。直後の左CKをファーで濱一誠(2年・藤枝明誠)が折り返すも、ボールは枠の右へ。84分は仙台大に2人目の交替が。少し傷んだ中山と乾智貴(4年・桐生第一)をスイッチするCB同士の入れ替えで、きっちり最終ラインに蓋を。残すはわずかに5分とアディショナルタイムのみ。
86分は常葉大。窪田の左ロングスローを乾が必死に掻き出し、拾った若松のシュートは川島が果敢にブロック。88分は常葉大。若松の左CKはそのままゴールキックへ。澤登監督も2枚目のカードとして、若松を下げて宮内拓未(3年・神村学園)を送り込み、最後の勝負へ。89分は仙台大に決定機。高い位置でのルーズボールを斎藤が頭で折り返し、宮澤の枠を捉えたシュートは、しかし長谷川がファインセーブで立ちはだかり、トドメの1点とは行きません。
アディショナルタイムの掲示は3分。やり切りたい常葉。90+3分、窪田が左から投げ込んだロングスローはDFがクリア。90+4分、ここも窪田が左から入れたロングスローを秋葉が確実にクリアすると、程なくして聞こえたタイムアップのホイッスル。「応援もそうですけど、今年は本当に良い雰囲気ができているので、何とか勝たせてあげたいなと思っていた」という吉井監督の抱いた願いは成就。仙台大が3年ぶりのインカレ勝利を収め、2回戦へと駒を進める結果となりました。


仙台大の勝負強さが際立った90分間だったのかなと。「技術の高い選手が多いので、普段は繋いで繋いでという試合をやっている。正直今日はウチのサッカーじゃないんですけどね」と吉井監督も苦笑したように、どちらかと言えば今までの仙台大が苦手とするようなフィジカル勝負が求められる一戦を強いられ、本来のポゼッションサッカーも鳴りを潜め、苦しい時間も長かった展開の中でしっかり勝ち切ったことは、「色々な戦い方ができる風にはなってきたんじゃないですかね」という指揮官の言葉の証明なのかなと感じました。また、「特に4年生たちは本当に苦労して、色々なことがある中で凄くまとまってきていた」(吉井監督)という、その4年生が交替出場の秋葉も含めて活躍したことも、今後に向けて大きな追い風になりそうです。次の相手は激戦の関東を2位で通過し、過去5年のインカレで実に3度もベスト4まで勝ち上がっている明治大。「明治ってやっぱり有名で、僕らのチーム内でも強いというイメージはあるんですけど、自分たちはチャレンジャーだし、何も失うものはないので、どんどん前へ行きたいなと思っています」という川島の言葉は間違いなくチームで共有する想い。自ら"田舎の戦士たち"と称して歌う仙台大の躍進は果たしてどこまで。       土屋

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