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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年12月13日

天皇杯決勝 G大阪×山形@日産

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1213nissan.jpg三冠に王手を掛けた大阪の青黒か。昇り竜の如く勢いに乗る山形の青白か。元旦国立が定着していた天皇杯ファイナルも、今年は12月13日。舞台は日産スタジアムです。
J2からの大逆襲。無念の降格からわずかに2年。まずは手始めに2点差を引っ繰り返す大逆転でファイナルを制し、ナビスコカップを獲得すると、中断前には降格圏を彷徨っていたリーグ戦でも、一時は勝ち点で14も離れていた浦和を引き摺り下ろし、見事に9年ぶりの王者に輝いたG大阪。2001年の鹿島のみが経験している国内三冠へ、いよいよ残すはこの天皇杯の1試合だけ。「今はやる前から負ける気はしない」と今野泰幸も揺るぎない自信を口に。長谷川ガンバの集大成とも言うべき、シーズン最後の90分間に堂々と挑みます。
6位からの大逆襲。中位に沈んだ過去2年のJ2生活を経て、16年ぶりに復帰した石﨑信弘監督の下で臨んだ今シーズンは、終盤に差し掛かると一気にスパート。大外から6位まで捲り上げ、昇格プレーオフ圏内へギリギリで滑り込むと、待っていたのは"山の神"の降臨。ゴールを守り、ゴールまで決める守護神・山岸範宏の活躍を筆頭に、厳しい練習に裏打ちされた全員のハードワークで、4年ぶりのJ1復帰を手にした山形。それでも、「決勝に出たからいいという空気は僕は絶対に嫌。やっぱりファイナルまで行ったら、勝たないと良い大会だった、良いシーズンだったと言えない」と言い切ったのは山岸。初タイトルと、その先に待ち受けるアジアへの道を手繰り寄せるための90分間を戦います。選手の入場時には、山形ゴール裏が青と白のコレオを創り、G大阪ゴール裏は大小さまざまな無数のフラッグをたなびかせて応酬。日産に集まった47829人の大観衆が見守る中、注目のファイナルはG大阪のキックオフでその幕が上がりました。


1分経たない内にスムーズな連携でチャンスを創出したのは山形。松岡亮輔が中盤でボールを奪うと、ディエゴを経由してロメロ・フランクがラストパス。シュートを枠の右へ外した松岡はオフサイドになりましたが、いきなり飛び出した良い流れからのフィニッシュワーク。以降もアグレッシブな姿勢を打ち出し、「『結構山形いいんじゃない?』と皆さんも思ったと思う」と宮阪政樹が話したように、山形が勢い良く立ち上がります。
問答無用の2トップ炸裂。4分、GKの東口順昭が自陣から蹴った長いFKにパトリックがきっちり競り勝つと、トラップした宇佐美貴史はDF2人の間から確実にミートしたボレーを枠内へ。山岸も懸命に弾いたものの、リバウンドへ誰よりも早く反応した宇佐美は、丁寧にボールをゴールネットへ送り届けます。「『やっぱりこういうので取れるのか』『あの2人で取れるのか』とはみんな思ったはず」と宮阪が話せば、「あれほどケアしていたんですが、最初の長いボールの所でやられてしまった」と石﨑監督。最強2トップが早くもスコアを動かしました。
衝撃的な先制弾を食らった山形は、それでもすぐさま反攻。5分には松岡が左へ送ると、3トップの一角でスタメン起用されたロメロ・フランクが運んで運んでシュートまで。ここは東口がファインセーブで掻き出すも、すぐさま惜しいシーンを。8分にも松岡、ロメロ・フランクとボールが回り、ディエゴが右へ流したパスを走り込んだ山田拓巳は思い切った左足ミドルまで。続けて12分にも細かいパス交換から山田の横パスを受け、右からディエゴが放ったミドルは枠の左へ。「試合の入り方は悪くなかったと思う」と石﨑監督。取られたら取り返すのみ。撃ち合う覚悟を。
それでも、G大阪が突き付けるカウンターの脅威。16分、中盤で宮阪へ寄せた大森晃太郎はボールを奪い切ると、すかさず左へ。走った宇佐美のドリブルシュートはわずかに枠の右へ逸れましたが、ワンプレーのイメージで相手の出足を縛ると、追加点はカウンターと2トップの合わせ技。22分、相手のCKをクリアした流れから、中盤でボールを絡め取った宇佐美は、少し運ぶとすかさず左へ。収めたパトリックが余裕を持って右足で振り抜いた球体は、ゴール右スミへ豪快に飛び込みます。「ガンバのストロングポイントはそこの2人」と敵将の石﨑監督も認める2トップが揃って1ゴール1アシスト。点差が広がりました。
さて、J1王者相手に小さくないビハインドを負った山形は、徐々にボールを相手に持たれる時間が長くなり、「若干前半の途中でチームの空気やテンションが落ちて、プレーがちょっと後ろ向きになってしまった」と山岸。25分に山田、宮阪と回ったボールから、左WBでスタメン出場していた伊東俊がアーリークロスを放り込むも、そのままゴールキックに。27分には宮阪が中盤で粘って残し、山田のパスをディエゴがトラップで反転しながらシュートまで打ち切るも、ボールはわずかにゴール左へ。「当てた後にイージーなミスで取られることが多過ぎた」と宮阪が話した通り、昇格プレーオフでは見られなかったようなミスも散見。リズムが生まれません。
チャンスは大半が即決定機という効率の良さはG大阪。30分はそのG大阪。宇佐美が右へ振り分け、倉田がミドルレンジから叩いたボレーは、DFをかすめてクロスバーの上へ。33分もG大阪。藤春廣輝が鋭い出足でインターセプトを成功させると、パトリックがしっかり繋ぎ、倉田の左足シュートは山岸が丁寧にキャッチ。37分もG大阪。ルーズボールを拾ったパトリックが戻し、大森が無回転気味に放ったミドルはクロスバーの上へ。「これだけ前から来てくれたら裏のスペースが空く」と今野。出なくてはいけない山形と、出なくても良いG大阪の噛み合わせは後者有利で完全にマッチ。
42分にもオ・ジェソクを起点に、宇佐美のクロスがパトリックへわずかに合わなかったシーンを経て、45分にG大阪へ訪れた3点目の絶好機はセットプレーから。遠藤の右CKはCBの岩下敬輔にドンピシャ。完璧なヘディングは、しかし山岸が足でビッグセーブ。45+2分もG大阪。パトリックがしっかりタメを創り、倉田がテンポをずらして放ったシュートは、DFに当たってゴール右へ。「相手がどんどん来なきゃいけなくなったから、展開的には楽になった」と今野。J1王者が2点のリードを奪い切って、最初の45分間は終了しました。


ハーフタイムに手を打ったのは石﨑監督。左WBの伊東を下げて、同じポジションに舩津徹也を投入し、サイドの守備を増強しながら反撃を期しますが、後半のファーストチャンスもG大阪。開始早々の46分、大森が右サイドの裏へ送ると、パトリックがダイレクトで叩いたボレーはわずかに枠の左へ外れたものの、相変わらずの脅威を後半も立ち上がりから。
48分は山形。石川の右CKは一旦DFに弾かれましたが、山田が拾ってクロスを上げると、當間建文のヘディングはゴール右へ。53分はG大阪。今野を起点に宇佐美が右へミドルパスを通し、受けたパトリックが左へ流れながら打ったシュートは、懸命に付いていった石川が体でブロック。55分は山形。宮阪が左へきっちり振り分け、舩津が入れたクロスをロメロ・フランクが頭で落とし、DFのクリアに飛び込んだ松岡のボレーはクロスバーの上に外れるも、「サイドからクロスというウチの武器」(宮阪)も繰り出すなど、ゲーム自体はG大阪がコントロールする中でも、手数はフィフティに近い所まで。
58分に遠藤保仁、大森、倉田と繋いで、宇佐美が狙ったシュートを松岡がブロックで回避し、59分にも倉田、パトリックと回ったボールから宇佐美がミドルを枠の左へ外したのを見て、石﨑監督は2人目の交替を決断。山﨑に替えて林陵平を最前線に送り込み、ディエゴをシャドーの位置に1列落として、攻撃陣の顔ぶれと配置に変化を加えると、60分にはディエゴがうまく捌き、ロメロ・フランクの展開から舩津が左クロス。飛び込んだディエゴはシュートまで持ち込めませんでしたが、活性化しつつあった左サイドとディエゴの連携から漂うゴールの可能性。
すると、青白の狂喜は直後の62分。「クサビとサイドはバランスを見ながら」使い分けていた宮阪は左へ。舩津が縦に付けると、ここに走り込んでいたのは「2点取られちゃったので、攻撃の意識を高めてやった」という3バックの左CBを務める石川。高精度クロスをニアで松岡がすらし、最後はロメロ・フランクが左足で叩いたボールがゴールネットを揺らします。追撃開始。たちまち点差は1点に縮まりました。
「林が入ってから、相手にとって嫌なバイタルのパス、クサビのパスがどんどん打ち込めるようになった」(山岸)「相手もちょっと疲れてきて、あそこにスペースができ始めていたのは外から見てわかっていた」(林)「林さんは前線にいるので、当てて落としての連動性やリズムが出てきたと思う」(宮阪)。69分はディエゴが獲得したFK。左寄り、ゴールまで約30mの距離から宮阪が左スミギリギリへ飛ばしたボールは、東口がしっかりキャッチ。70分は決定機。石川が縦にクサビを打ち込み、ロメロ・フランクの丁寧なリターンから打ち切ったディエゴのシュートは、ここも東口がファインセーブで立ちはだかりましたが、「1点を取られて、そこから山形が押せ押せになった」と長谷川監督。一段階上がった青白ゴール裏のボルテージ。
74分はG大阪。遠藤の左CKを山岸がパンチングで弾くと、倉田が枠へ収めたボレーは山岸ががっちりキャッチ。77分は山形。完全に攻撃の起点として機能していた石川のパスから、舩津とロメロ・フランクを経由して、ディエゴが右足で放ったシュートは枠の右へ。直後にG大阪を襲ったアクシデント。CBの岩下が倒れ込むと、ドクターからバツ印が出てしまい、急遽キム・ジョンヤがそのまま最終ラインへ。80分には山形に最後の交替が。奮闘したロメロ・フランクと中島裕希をスイッチさせ、純粋なFWタイプを前線に3枚並べて最後の勝負へ。81分はG大阪。パトリック、倉田と繋いだボールを、フリーで捉えた宇佐美のミドルはわずかにクロスバーの上へ。残り10分。次のゴールは果たしてどちらに。
至宝再び。山形は山田が足を攣ったため、最終ラインを4バックにしながら10人での戦いを余儀なくされていた85分、倉田、オ・ジェソク、倉田、遠藤と細かく繋いだボールは宇佐美の足元へ。エリア外でも躊躇なく右足を振り切ったシュートは、ブロックに入った當間に当たってコースが変わり、そのままゴールネットへ突き刺さります。今シーズンの公式戦21ゴール目は、愛するクラブの三冠を決定付ける大きな大きな一撃。87分に"仕上げの"リンス、90+2分に明神智和と、最後はシーズンを通じてクローザーの役割を全うしてきた2人がピッチに送り込まれ、完遂したゲームクローズ。「選手全員が、今シーズン復活をということで気持ちを出してトレーニングに励み、試合に臨んでくれた結果だと思います」と胸を張ったのは長谷川監督。G大阪が天皇杯も制し、J1復帰1年目で三冠達成という快挙を見事に成し遂げる結果となりました。


レギュラーシーズンの終了から、2度の準決勝と2度の決勝を戦うなど、濃密な3週間あまりを過ごしてきた山形。「本当にこの数週間はなかなか経験できないことを一気に経験できましたし、もちろん自分がこれから成長していくためには大事な経験だったと思うんですけど、この前のプレーオフは勝てて、結果も出たので良かったとはいえ、特に今日の決勝は結果も出なかったし、そこで結果を出せるようにレベルアップしなくてはいけないなというのも感じたので、今日も非常に良い経験はしましたけど、同じような経験はしたくないなと思いました」と山田が話せば、「明日から練習がないので、明日くらいから色々な実感が来るんじゃないですか」と笑った宮阪も「やっぱりお客さんがこれだけ入ると、それだけで変なプレッシャーってあると思いますし、その中で平常心を持ってできたと思う。でも、楽しいですよ、やっぱり。シビれますね」と覗かせた本音。最後にミックスゾーンへ出てきた山岸も「先に前置きさせて頂きたいのは、来季の僕のことは何も決まっていない」と口にしながら、「これからクラブの新たな歴史を創る上で、『今日準優勝したから良かったね』では絶対に終わらせたくないと思います」とキッパリ。三者三様。でも、視線は前へ。来シーズンは4年ぶりのJ1が待っています。
「今はやっと長いシーズンが終わったという想いです」と長谷川監督も語ったG大阪は、Jリーグ創設以降で見ると史上2クラブ目となる三冠獲得のメモリアルイヤーに。「なかなか攻撃の形も創れなかったし、序盤は苦しかったですね」と今野も認める中断前までの苦戦を考えれば、そこからの復活は劇的ですらありました。チームのDNAとも言うべき攻撃的なスタイルに加え、指揮官が根気強く植え付けてきた守備意識もミックスされたチームは、「要所、要所を知ってるというか、今やらなくちゃいけないっていうのもわかるし、選手の意思統一はグラウンド内でわかり合っているし、本当に戦い方が大人のサッカーというか、サッカーを知ってるなっていうチームになってきた」という今野の言葉そのものズバリ。「ガンバが三冠を獲って今後も常勝軍団であり続けるには、来季こそ大事なんじゃないかなと思うので、大事に戦いたいと思う」とは宇佐美。常勝軍団の復権。2014年シーズンは終わってみれば青黒が、颯爽と全てを奪い尽くした1年になりました。       土屋

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