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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月18日

T2リーグ第10節 都立東久留米総合×東海大高輪台@東久留米総合G

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1116kurume.jpg選手権ファイナルの翌日に行われる、もう1つの"優勝"を懸けた一戦。2月に開幕したT2リーグの延期分に当たる、正真正銘の最終戦は都立東久留米総合高校グラウンドです。
既に所属する10チームの内、8チームは全日程を終えているT2リーグ。本来は6月に行われる予定だった第10節の都立東久留米総合対東海大高輪台のみが、この選手権終了後というタイミングまで延期されていましたが、このラストゲームがリーグにとって非常に大きな意味を持つことに。というのも、全日程を終えて暫定首位に立っている多摩大目黒の勝ち点は44。1試合を残している久留米の勝ち点は42。久留米がこのラストゲームに勝てば優勝、ドローか負けなら多摩大目黒が優勝という、わかりやすいシチュエーションの下に最後の1試合が開催されます。
9日に選手権予選準決勝で國學院久我山に惜敗し、全国という夢が絶たれたばかりの久留米。西が丘のロッカーで「選手権の全国出場という道は閉ざされたけど、T2で優勝して、総合高校になってから初めての1部昇格という結果を出して、後輩たちにそういう財産を残して引退しようじゃないかという話をした」と齋藤登監督。それでも、「選手権が終わって、その後の練習ではみんな気持ちが切れていた」とキャプテンの大畑和樹(3年・三菱養和調布JY)が話したように、大きな目標を失ったチームは難しい精神状態に。ただ、「齋藤先生にも激怒されて、最後の木曜金曜土曜で自分たちでしっかり話し合った」(野田竜太・3年・杉並アヤックス)ことで、「もう最後だから楽しくやろうと。笑って終われるようにという気持ち」(長江涼・3年・青梅第三中)を全員で再確認。1年間戦ってきたリーグ優勝のために、T1昇格を置き土産として残すために、そして「最後にこれが久留米だというサッカーをやって引退する」(柴田寛生・3年・三菱養和調布JY)ために、最後の90分間へ挑みます。また、東海大高輪台にとっても、プレーヤーとしては3年生で唯一この日まで練習を続けてきた岡田侑也(3年・GRANDE FC)と、チームを3年間支え続けてきた、たった1人の3年生マネージャーにとっての引退試合。2人を勝利で送り出すべく、易々と相手に勝ち点3を与えるつもりは毛頭ありません。色々な想いが交錯するT2ラストゲームは、9時30分のキックオフで時計の針が動き出しました。


19秒に打ち出した優勝への意欲。右サイドでボールを持ったのは、「最後は自分が出ていなくても勝って欲しかった」と語った負傷欠場の今村優太(3年・三菱養和巣鴨JY)に代わり、いつものサイドハーフではなく2トップの一角で起用された小島樹(3年・あきる野FC U-15)。ループ気味に狙ったミドルは高輪台のGK関根康大(2年・GRANDE FC)にキャッチされましたが、積極的なファーストシュートを。2分に右から柴田が、3分に永井恒輝(3年・AZ'86東京青梅)と大畑がトリック気味に蹴ったFKはいずれもシュートへ繋がらなかったものの、4分にも大畑が左からCKを蹴ると、混戦の中から朝倉一寿(3年・練馬FC U-15)が枠へ飛ばしたシュートは関根に阻まれるも、まずは久留米がセットプレーを中心に攻勢を強めて立ち上がります。
ただ、10分過ぎからは高輪台も攻撃にテンポが。11分には右サイドで畠中一樹(2年・FC PROUD)のドリブルからFKを獲得すると、武市健太(2年・インテリオールFC)の蹴ったボールは大畑に跳ね返されますが、エリア外から叩いた岡田のボレーは久留米のGK長江が何とかセーブ。直後の右CKもオフェンスファウルを取られるも、キッカーのレフティ今部直哉(2年・FERICE・FC浦安)は鋭いボールを中へ。14分にはFK獲得時に負傷した畠中が本藤悟(1年・横浜FC JY)との交替を余儀なくされたものの、ボランチの武市を中心に両サイドをきっちり使った高輪台が掴みつつあるゲームリズム。
18分は久留米。朝倉が左へ流したボールを、開いた小島が折り返すも、よく戻った高輪台のボランチ袖山翼(1年・インテリオールFC)がきっちりクリア。23分は高輪台。本藤の果敢なドリブルで奪ったFKはエリア右寄り、ゴールまで約25m。スポットに立った今部は直接狙うも、ボールはカベにヒット。26分は久留米。ここも小島と朝倉の連携で右CKを得るも、大畑のキックは関根がキャッチ。流れは互角かやや高輪台へ。
「なんかうまくいかないと自分たちも感じていて、自分自身やチームメイトに苛立ちを感じているような感じだった」と齋藤監督も振り返ったように、少しずつ普段は噛み合っている歯車がズレ出していった久留米。「いつもはみんな楽しそうにやっているんですけど、最後ということで緊張していたのか、結構ネガティブな声が飛んでいた」と大畑が話せば、「みんなちゃんとやれよみたいな感じで、雰囲気は悪かった」と長江。それに「みんなやる気がない訳じゃないんですけど、球際の所とか気合が足りなかったかなというのはあった」と元気印の朝倉も同調するなど、うまく行かない流れがメンタル面にも影響を及ぼし、なかなか攻撃の形を創れません。
逆に見慣れた4-3-3ではなく、3-4-3の布陣でこのゲームに臨んだ高輪台は、ボールをしっかり回しながらピッチで躍動。37分には野村浩輔(2年・FC東京U-15深川)を起点に武市が右へ極上のスルーパスを通し、岡田が枠へ収めたシュートは長江がファインセーブで何とか回避。38分にも今部の右CKを左CBの宮原考輔(2年・GRANDE FC)が残すと、野村のシュートはDFが何とかブロック。40分にも武市、高野颯翔(1年・ジェファFC)とスムーズにパスが繋がり、野村のシュートは久留米では唯一2年生でスタメンを張る川村涼太(2年・FC府中)が必死にブロック。拾った岡田はエリア内で転倒し、ここはノーホイッスルでPKとはいきませんでしたが、優勝の懸かった強豪を1,2年生中心チームが圧倒してみせます。
44分も高輪台。右CBの田中千寛(2年・杉並FC)が素晴らしいフィードを左へ送り、頭に当てた武市の折り返しは柴田が何とかクリア。45+1分には久留米も相手の連携ミスを突いて、朝倉が距離のあるミドルを狙いましたが、DFがコースに入ってきっちりブロック。「もともと能天気なヤツが多くて、普段の生活の中でも雑というか慎重さや丁寧さがないので、そういうのが全面に出ちゃった」と苦い顔は齋藤監督。高輪台が押し気味に進めた前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


「負けた切り替えが怖かったんだけども、逆に極端に切り替わり過ぎちゃって(笑)、勢いだけになっちゃった」と指揮官も振り返る前半を過ごした久留米。嫌な雰囲気で入ったハーフタイムには、「みんなでネガティブな声をやめようみたいな。みんなで褒め合っていこうみたいに、明るく行こうと、最後楽しくやろうと言っていた」(野田)「みんなでやってきたことをちゃんとやって、1年間積み重ねてきたものをみんなで出そうと言った」(永井)と2人が言及したように、もう一度気持ちを新たに。そして、「前半は精神を収めるみたいな円陣なんですけと、後半は前半が良くなかったので、みんなで好きなことを言い合うみたいな」(柴田)円陣を経て、最後の45分間に向かいます。
すると、後半開始のホイッスルからわずか13秒で生まれた先制弾。ゴール前に入った後方からのフィードを、「もう気合でやるしかなかった」という朝倉が何とか落とすと、ここに入ってきたのは後半から保池瑶(3年・三菱養和調布JY)に替わって投入されたばかりの西岡祥樹(3年・JACPA東京FC)。「危機感がないというか、大胆不敵というか、ビッグタイトルが懸かったようなゲームでも緊張なんかしないようなヤツ」と齋藤監督も評した西岡は、GKとの1対1にも何食わぬ顔で左足アウトサイドでのシュートを選択。緩やかに転がったボールは、それでも確実にゴールネットへ吸い込まれます。「テクニックはあるし、左足のシュート力なんかも持っているので、どこかで使いたいと思っていた」(齋藤監督)というレフティが、この大事な一戦で大仕事。久留米が1点のリードを手にしました。
「1点目を取ったあたりから笑顔が出始めて、みんながいい感じに噛み合ってプレーできた」と長江も話したチームに、ようやく帰ってきた普段の活気。49分には朝倉が左CKをショートで蹴り出し、大畑がグラウンダーで入れたクロスを、ニアに潜った永井は巧みなシュートでゴールへ。ここはオフサイドの判定で追加点とはいきませんでしたが、惜しいシーンを。50分にも朝倉が単独で抜け出しかけ、ここは飛び出した関根が防いだものの、徐々に手数が増えていきます。
51分は高輪台に決定的なチャンス。武市のスルーパスから今部が抜け出し、GKもかわして流し込んだシュートは、全力で戻っていた後藤勇也(3年・クリアージュFC)が決死のクリア。こぼれに反応した野村のシュートもゴール左へ外れ、逃してしまった千載一遇の同点機。56分にも高野がドリブルで運んで中へ戻すと、1人かわした野村のミドルは枠の右へ。追い付くことができません。
58分は久留米。左から後藤が蹴り込んだFKはファーまで届き、朝倉が叩いたボレーは枠の右へ。60分も久留米。朝倉が残したボールから小島が抜け出すも、高輪台のCB佐々木駿(1年・三鷹F.A.)が何とかクリア。61分は高輪台。本藤、野村とボールが回り、岡田のシュートはDFが体でブロック。こぼれをフリーで狙った野村のシュートは枠の右へ。1-0のスコアは変わらず。
2度目の歓喜は意外な形から。66分に西岡と後藤の連携で獲得した左CK。スポットに立った大畑が中央へ蹴り入れたキックはファーサイドへ飛ぶと、キャッチの態勢に入っていたGKの手からこぼれたボールは、そのままラインを割ってしまいます。「ファーの野田を狙ったら中に入り過ぎちゃったんですけど、ラッキーでしたね」と笑ったのは大畑ですが、おそらくはここまで「個が強いというか、そういうのをまとめるのは結構苦労しましたけど、雰囲気が良い時は結構チームが1つになったので、そういう時は楽しくみんなでできたと思います」と自ら振り返るチームをキャプテンとしてまとめてきたご褒美。点差は2点に広がりました。
こうなると「フザケたヤツが多いので(笑)、テンションが上がると止められない」(大畑)久留米の本領発揮。69分、長いボールを収め、枠へ飛ばした朝倉のシュートは関根がキャッチ。72分には高輪台も高野と小池英翔(2年・三鷹F.A.)を入れ替えるも、73分も久留米。「ウチの中ではとんでもない能力を持っている」と齋藤監督も評価する司令塔の白井が、右へ絶妙なスルーパス。西岡が再び迎えた1対1も、今度は関根がファインセーブで応酬しましたが、「自分たちの流れになって楽しかった」と永井が笑った通り、ポジティブな雰囲気に包まれたイレブンとベンチ。
トドメの一撃は「最初は2番手のディフェンダーという感じだったけど、その内に安定してきて欠かすことのできないCBになったことは確か」と齋藤監督も認める15番。78分、右から上がったクロスがファーへこぼれると、ここで待っていたのは柴田。「毎試合ゴールを狙ってるんですよ。もう来い来い来い来いって(笑)」というCBが思い切り右足を振り抜いたボレーは、激しくゴールネットを揺らします。「最後の試合でゴールを決められることなんてなかなかないと思うので、思い出に残るシュートになって本当に良かったです」と笑った柴田の追加点。一気に引き寄せた栄冠の時。
81分に齋藤監督が決断した2枚替え。朝倉、永井と攻撃を牽引してきた2人に替えて、川上翔(3年・Forza'02)と鈴木海輔(3年・JACPA東京FC)を投入。続いて83分にも小島と上別府亨(3年・TFCシュルツ)を入れ替えると、86分には最後の交替カードとして古屋寛大(3年・練馬FC U-15)がピッチへ。刻々と近付く「個性が1人1人あって、みんな本当に面白くて最高」(大畑)な仲間たちとの別れの時。
86分には高輪台も3人目の交替として今部と浦川瑠維(2年・ソルコリーナ)をスイッチ。再三右サイドを切り裂いた岡田と、ベンチから凛々しくピッチを見つめるマネージャーにとっても、高校サッカーに終わりを告げるカウントダウンが。90+2分は久留米。西岡、川上と繋いだボールを、大畑はミドルで枠を捉えるも、関根が意地のファインセーブ。90+4分も久留米。後藤のラストパスから、西岡が放ったシュートは関根がキャッチ。そして、主審が吹いた試合終了のホイッスル。「『ああ、もう終わりか』って。寂しい気がしました」(野田)「優勝が決まったというよりは、もう終わっちゃったんだなというのが大きかったです。凄く楽しかったなというような感じで」(長江)「最後はベンチだったんですけど、1年間やってきたことが形になって表れて嬉しかった」(永井)「優勝は嬉しかったけど、絶対に出たかったので複雑でした」(今村)。様々な感慨が渦巻く中、勝ち取った堂々たるリーグ制覇。「リーグ戦じゃなければ、選手権で全国優勝しない限りは勝って終わるというチームはないので、そういう意味では良い経験を彼らにさせてもらったなということで感謝しています。初めてですけど笑って終われるというのは良いですね」と齋藤監督も笑った久留米が、T2優勝とT1昇格を同時に手に入れる結果となりました。


今年の久留米は非常に個性的なチームでした。「凄く良い内容で結果も出して感動して終わりたかったんだけど、あまりにも内容が酷かったので途中から怒りに変わってきて、感動できなかったよ(笑)」と齋藤監督が苦笑いしたように、「テンションが低い時はどのチームもウチに勝てるような、こっちが絶対負けちゃうようなサッカーになっちゃう」と朝倉も触れた"テンション"が、前半と後半でこうも変わってしまうあたりも、今年の久留米らしかったのかなと。「本当だったら西が丘でやりたかったですけど、ずっと3年間練習してきたこのグラウンドで胴上げできたというのは嬉しかった」と永井が話した"胴上げ"の対象はもちろん齋藤監督。「まさかそんなものがあると思っていなかったけど、優勝したんだからそれもいいかなと。こういう結果が出たり、最後の試合が終わっても、監督に見向きもしないで自分たちだけで集まっているようなチームじゃなくて、形だけでもああやって行動で示してくれたことは本当に嬉しいですよ」と長めのコメントで嬉しさを表現した指揮官は、続けて「俺なんかただの高校の体育教師だけど、こうやって監督って呼ばれて、こんな現役から何年も遠ざかっているような人間でもこうやって指導者として楽しむことができていて、それができるのも選手がいてくれるから。監督のいないチームはあるけど、チームのない監督なんていない訳で、彼らがいてくれるから、俺もこうやって勝負事を楽しめたり、泣いたり笑ったりできるし、彼らが真摯に真剣にサッカーに対して取り組んでくれているからこその悔しさや喜びなので、それを与えてくれている彼らには本当に感謝していますよ。だから『ありがとう』しかないですよね」と選手たちへの感謝を口に。厚い雲に覆われていた上空も、気付けば綺麗な青空が。優勝を祝福するような陽射しの下、最後の記念写真に収まった3年生のプレーヤー46人とマネージャー5人は、「ニコニコしながら」(齋藤監督)引退の日を迎えました。     土屋

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