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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月04日

高校選手権群馬準決勝 前橋育英×桐生第一@前橋総合

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1103maebashi.jpg4年続けてファイナルで激突してきた両者が今年はセミファイナルで激突。群馬の高校サッカー界における新・黄金カード。舞台は前橋総合運動公園陸上競技場です。
選手権県予選は9年連続で決勝へ進出。上州のタイガー軍団と言えば県内にとどまらず、全国中のサッカーファンが認識している前橋育英。ただ、ここ4年に限って見れば決勝の対戦成績は2勝2敗で、2敗はいずれも今日の対戦相手となる桐生第一。昨年も終了間際の失点で全国を逃しており、「去年の悔しさを晴らすために今日の試合に挑もうという形でやってきた」と力強く話したのはキャプテンの鈴木徳真(3年・FC古河)。スタッフもその"2敗"を中心にしたモチベーションビデオを用意したそうで、「前日も今日の試合前もそれを見て、みんなで気持ちを高めた」と坂元達裕(3年・FC東京U-15むさし)。リベンジを果たしてのファイナル進出に気合十分です。
一方、U-21日本代表の鈴木武蔵(現・アルビレックス新潟)を擁し、冬の群馬を初めて制したのは3年前。近年は県内での上位進出のみならず、全国出場を明確な目標として捉えている桐生第一。前述したように、昨年の県予選決勝では試合終了間際に乾貴哉(3年・前橋ジュニア)の決勝ゴールで育英を撃破して、2度目の全国出場権を獲得。「とにかく春先が自分たちのサッカーができなかったから、ここで表現しようよと言ってやってきた」とは田野豪一監督。"3度目"に向けて最大の難関とも言うべき、重要な90分間に臨みます。2100人のサッカージャンキーが集結したスタンドは、ほぼ空席なしのフルハウス。全国注目のセミファイナルは桐一のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートは56秒の育英。左サイドで渡邊凌磨(3年・FCレジェンド熊谷)が外に付け、上がってきたSBの渡辺星夢(3年・クマガヤSC)がピンポイントクロス。坂元のヘディングは桐一不動の守護神を任された依田龍司(3年・東京ヴェルディJY)が正面でキャッチしましたが、いきなり惜しいシーンを。2分も育英。渡邊がドリブルでエリア内へゴリゴリ切れ込み、シュートはDFにブロックされたものの、早くも育英が「立ち上がりなのでガンガン行こうと」(鈴木)いう意欲を打ち出します。
対する桐一も2分に決定機で応酬。右から齋藤雄大(3年・前橋ジュニア)が中へ付けると、「向こうが背後を突いてくるというのはわかっていたし、こっちもやり合わないといけないので徹底するため」(田野監督)に驚きの1トップ起用となった乾が巧みに落とし、齋藤がダイレクトで叩いたシュートは育英のGK吉田舜(3年・クマガヤSC)がファインセーブで回避。左から出村颯太(3年・前橋ジュニア)が蹴ったCKは吉田がキャッチしましたが、4分にも連続チャンス。左からSHの額賀優斗(3年・鹿島アントラーズJY)がカットインしながら放ったシュートは、DFが何とかブロック。その額賀が蹴った左CKがこぼれると、鈴木順也(3年・ウイングス鹿沼)が合わせたボレーは枠の左へ外れたものの、「立ち上がりに撃ち合う自信はあった」と田野監督も語った桐一も引く気は一切なし。期待以上にお互いが殴り合うスリリングな幕開けに。
10分は桐一。「188センチという大きさは俺らにも怖い」と鈴木も評した乾が相手のクリアを体で巻き込み、自ら拾うと左サイドをえぐって中へ。フリーで走り込んだ大塚遼太郎(3年・上州FC高崎)のシュートはクロスバーの上へ外れたものの、2度目の決定機を。13分は育英。渡邊、青柳燎汰(3年・クマガヤSC)、関戸裕希(3年・ヴェルディSS小山)と繋ぎ、渡邊が左足で狙ったボレーは依田がキャッチ。16分は育英。CBの宮本鉄平(3年・前橋FC)が高精度フィードを送ると渡邊が抜け出しかけるも、ここは準優勝に輝いた先月の国体で経験を積み、スタメンに抜擢された桐一のCB田沼一樹(1年・ヴェルディSS小山)が冷静にブロック。同じく16分も育英。バイタルでのフラッシュパスから、青柳のシュートはDFが体で阻み、リバウンドを再び打った青柳の一撃は枠の左へ。同じく16分は桐一。左サイドでボールを持った額賀は、GKの位置を見ながら40mミドルを枠の左へ。「やられてもやり返すという感じ」(鈴木)で続くハイテンション。
さて、「落ち着いたらこっちもボールを回せるだろうと思っていた」(田野)桐一は15分前後に配置転換。乾は左WBへ、中盤センターの井上翔太(2年・AZ'86東京青梅)が右SHへ、右SHの齋藤が1トップへそれぞれスライドして、本来やりたいサッカーへの移行を。17分には中央から齋藤が浮き球で裏へ落とし、走った額賀のシュートはここも吉田がファインセーブで掻き出しましたが、今日3度目の決定機。19分は育英。SBの岩浩平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が右からクロスを放り、最後は左に持ち出しながら青柳が打ったシュートはクロスバーにハードヒット。直後も育英。坂元の右クロスをニアで青柳が収めかけるも、田沼の冷静なカバーでシュートまで行けず。どちらにも漂う先制点の可能性。
それでも、「向こうはDFラインが浅いので、対戦相手のオフサイドが凄く多い。だから、ラインを上げた裏をうまいこと突く」(山田監督)という狙いの下、比較的シンプルに前へ蹴っていた育英のアタックはボディーブローでジワジワ。すると、絶好の先制機が訪れたのは27分。
「ああいうガムシャラなプレーが育英としてのプレースタイル」という坂元が右サイドを文字通り"ガムシャラ"に持ち運ぶと、対応したマーカーともつれて転倒。主審はペナルティスポットを指差します。この大事な局面。キッカーは「自分で決めたいと思って、蹴らせてくれと言いました」という坂元。右スミを狙ったボールは、同方向に反応した依田もわずかに及ばず。「自分としても点を決めたくても決められなかったので、どこかで決めたいという想いはあった」と話す坂元は、これがなんと今シーズンの公式戦は2ゴール目。「なかなか公式戦で結果を出していなかったので、彼にとっては良かったですよね」とは山田監督。育英がスコアを動かしました。
煌いたのはまたも11番。31分、青柳を起点に関戸が右へ振り分けると、待っていたのは坂元。「マーカーが大きかったので、股が空くかなと思ってずっと狙っていた」とタイミングを計って左足から振り抜かれたボールは、狙い通りのコースを辿って右スミのゴールネットへグサリ。公式戦3ゴール目は2ゴール目のわずか3分後。「去年もポゼッションはするけど、なかなか入り込めなくて術中にハマったという感じだったので、今年は入り込もうと」指揮官に送り出された育英の、"入り込んで"のパスワークから大きな成果が。あっという間に2点の差が付いてしまいました。
一気に2点のビハインドを追い掛ける格好となった桐一は、「こぼれ球が凄く相手のリズムになっているというのが分析の中でわかっていたので、その中でボランチの所でしっかり拾うようにという指示で今日の試合に臨んだ」と話す鈴木と吉永大志(3年・JFAアカデミー福島)の育英が誇るドイスボランチにセカンドも回収されて、パスワークのリズムも霧散。36分には田沼が右からロングスローを投げ込むも、中央でオフェンスファウルが。37分にも田沼が右ロングスローを投げ入れ、乾が懸命にフリックするも、齋藤は届かず吉田がキャッチ。逆に38分には育英も左から渡辺がアーリークロスをファーまで届け、坂元のシュートはわずかに枠の左へ逸れたものの、11番はあわやハットトリック。跳ね返せない劣勢。
38分は桐一。右SBへポジションを移していた出村が鋭いパスカットからドリブルで運び、右へ振ったボールを大塚がハーフボレーで叩くもクロスバーの上へ。40分は育英。渡邊のパスから関戸の枠内ミドルは依田がキャッチ。40+1分も育英。左サイドから渡邊が中央へ斜めに送り、抜け出した鈴木は飛び出したGKをかわすも、シュートは枠を捉え切れず。さらにこぼれを拾った関戸のクロスを、青柳がヘディングで枠へ収めましたが、依田が超ファインセーブで弾き出し、田沼が何とかクリア。「前半はそこまで入らなくても、後半は焦らずにやるというのがみんなの気持ちだったので、前半に決めたことで落ち着いてできた」とドッピエッタの坂元。激しく立ち上がった最初の40分間は、育英が2点のリードを手にしてハーフタイムへ入りました。


後半はスタートから攻めるしかない桐一が続けて手数。42分、齋藤を起点に鈴木が右へ振り分け、野村海斗(3年・GRANDE FC)のパスから額賀が飛び出すも、育英のCB上原大雅(3年・FC厚木)がタックルで回避。45分、出村、齋藤、鈴木とスムーズにパスが回り、前を向いた額賀の枠内ミドルは吉田の手を弾いて、わずかにゴール左へ。46分、出村は左CKをグラウンダーで放ち、角田駿(3年・前橋ジュニア)のスルーを経て鈴木が上げたクロスはDFが跳ね返しましたが、「0-2だから後半は落ち着くと。そうしたらウチもやれると思った」と田野監督。桐一の応援席に高まる期待。
50分は育英の追加点機。左から渡辺が入れたCKはファーまで流れ、拾った渡邊の好クロスをニアで合わせた関戸のヘディングは依田がファインセーブで阻んだものの、ワンプレーでゲームリズムを一変させると、次の得点は育英伝統の14番を託されたオーガナイザーを起点に。
52分、センターサークル付近でボールを引き出した鈴木は「みんなが良いボールを横にくれたので、あとは自分が持っているスキルを出すことができた」と左へ最高のサイドチェンジ。受けた関戸がカットインしながら思い切り右足を振り抜くと、凄まじいコースに飛んだボールは右ポストの内側を叩いて、ゴールネットへ吸い込まれます。あまりにも鮮やかな一撃に「GKもちょっと触っているけど、それでも入っちゃったから、あそこが入るのが今年の育英だと思う」と田野監督も脱帽の体。大きな大きな3点目が育英に記録されました。
桐一も53分には1人目の交替を決断。大塚と滝沢昴司(2年・リトルジャンボSC)を入れ替え、中盤のてこ入れを図りますが、勢い付いた育英のラッシュ。55分、3列目から持ち出した吉永が、1人かわして放ったシュートはクロスバーの上へ。59分、渡邊からボールを受けた吉永が右へラストパスを通し、青柳のシュートは依田がファインセーブ。60分、渡邊の右CKは中央へ届き、フリーで当てた青柳のヘディングは枠を越えましたが、次の得点を狙う意欲満々。
62分には桐一にビッグチャンス。左から井上が丁寧に蹴ったFKはファーへ抜け、飛び込んだ出村のボレーはきっちり枠を捉えましたが、吉田が懸命に飛び付いてファインセーブ。直後の右CKも、出村が蹴ったボールは井上に届いたものの、シュートには持ち込めず。1点が遠いディフェンディングチャンピオン。
トドメの一発は真打ち登場。64分、育英のカウンターが発動されると、右サイドを走った関戸は中央へ。吉永が優しく出したラストパスで渡邊は完全に一人旅。GKもコースを潰しに前へ出ましたが、全国屈指のアタッカーは冷静沈着に左スミのゴールネットへボールを送り届けます。10番が確実に仕留めた4点目。試合の大勢は決しました。
66分には育英に1人目の交替。関戸を下げて、野口竜彦(2年・高槻FC)が左SHへ。67分には桐一に2人目の交替。出村と一宮憲太(2年・AZ'86東京青梅)のスイッチで、何とか報いたい一矢。69分には育英に2人目の交替。殊勲の坂元がベンチへ下がり、横澤航平(2年・前橋FC)が右SHへ。ゲームはいよいよ最後の10分間へ。
王者の意地。70分、昨年からレギュラーを務めてきた角田が左へ絶妙のスルーパスを通すと、これまた絶妙のラインブレイクで抜け出した齋藤はGKと1対1に。少し近くなった間合いをものともせず、齋藤は確実にGKの届かない位置にボールを流し込み、ゴールネットを揺らします。昨年の全国でもゴールを奪った10番のストライカーが魂で奪った1点。スコアは4-1に変わりました。
失点を喫した育英も攻め手は緩めず。71分、青柳、吉永と回し、横澤のカットインシュートは枠の左へ。73分、鈴木のミドルがDFに当たってこぼれ、拾った横澤のシュートは井上が体でブロック。74分、横澤が右へスルーパスを通すと、しかし青柳はファーストタッチが大きくなって飛び出した依田が決死のセーブ。76分には桐一も依田のキックに齋藤が競り勝ち、滝沢昴司が打ったミドルは枠の左へ。始まったタイガー軍団のカウントダウン。
78分には小泉佳穂(3年・FC東京U-15むさし)、80+2分には佐藤誠司(2年・FC東京U-15むさし)を相次いでピッチへ解き放ち、近付いていく勝利の瞬間。80+3分に渡邊の左CKがゴールキックになり、その桐一のリスタートを終えると、前橋総合を包んだファイナルホイッスル。「俺だけの力じゃなく、応援してくれるみんなもいたし、良い観客の後押しもあったので、凄く楽しくサッカーをすることができた」と鈴木も話した育英が昨年のリベンジも完遂し、10年連続となるファイナルへ駒を進める結果となりました。


「1-2になればやれたなとは思うけど、0-3になったということは育英さんの方が上だったなと素直に受け入れなくてはいけない所」と敵将の田野監督も認めたように、育英の強さが際立った80分間だったと思います。中でも「徳真はちゃんと仕事やってましたね」と山田監督も言及した鈴木は、「前線の傾きというか、何対何の比率で自分たちが攻撃に動いているかと、パッと見て全体の流れというのはわかるので、そういった部分で逆サイドにストップ掛けたりとかしている」とオーガナイズの方法を理路整然と説明。高い攻撃性を有するサイドバックも積極的に上がっていくチームの中で、一見派手なプレーはない14番がピッチの中心に君臨し、ゲームを支配していることを改めて感じました。これで2年ぶりの全国へ王手を懸けた育英。「『育英のサッカーは劣勢になった時に絶対勝ち切るサッカーだ』という監督の言葉が自分たちの自信になっている」と鈴木。日本中が注目するタイガー軍団の行進は果たしてどこまで。     土屋

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