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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年11月16日

高校選手権東京B決勝 國學院久我山×実践学園

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1115nishigaoka2.jpg2年連続を目指す"美しく勝て"か。2年ぶりを狙う"心で勝負"か。東京頂上決戦のセカンドラウンド。舞台は説明不要の西が丘です。
夏冬連覇。その掲げたスローガンを体現するようなアタッキングフットボールで、昨年は2度の全国を経験した國學院久我山。今年は守護神の仲間琳星(3年・ジェファFC)に加え、チームを預かる李済華監督も「あの3人は高校サッカーの中でもトップレベルの選手」と信頼を寄せる、SBの鴻巣良真(3年・ジェファFC)、CBを組む内藤健太(3年・Forza'02)に花房稔(3年・横河武蔵野FC JY)と守備陣はそのまま昨年のレギュラーが残る中、やや攻撃面での連携に不安を抱えてきましたが、「トーナメントを勝ち上がっていくという意味では、ウチらしい戦いで決勝まで来れたなと思っています」と指揮官も認めたように、都立東久留米総合相手に粘り強く戦った準決勝もウノセロで手堅く勝利。開幕戦の国立で敗れた昨年を越えるべく、まずは東京連覇を引き寄せるための80分間に挑みます。
T1制覇。通年で行われる東京のリーグ戦において、トップディビジョンに当たるT1リーグ。ここで怒涛の開幕16戦無敗を記録するなど、シーズンを通じて安定した結果を出し続け、初の優勝を達成した実践学園。その勢いを持って臨んだ今大会も、難しい初戦で曲者の大成を何とか振り切ると、以降も確実に勝利を積み上げ、先週の準決勝も粘る保善を1点差で下して、最後の1試合へ。「今年のメンバーがT1で優勝できることが予想外だったけど、それがこうやって決勝まで来れるというのは嬉しいし、ここまで伸びてくれたチームが決勝でどれくらいできるのかは楽しみだね」とは野口幸司コーチ。2年ぶりとなる冬の戴冠はすなわちリーグとのダブル。"東京最強"の称号はすぐそこです。戴冠の行方を見届けるべく、西が丘のスタンドはフルハウスの8281人という観衆で大入り満員。2チーム目の東京最強を決める一戦は実践のキックオフでスタートしました。


2分のセットプレーは久我山。左から鈴木遥太郎(2年・東急SレイエスFC)が蹴ったFKは中央と合わず、そのままゴールキックへ。6分のセットプレーは実践。こちらも左から右SBの新井直人(3年・FC渋谷)がFKを蹴り入れると、ファーサイドに飛び込んだ高橋龍世(3年・FC多摩)のヘディングはわずかにゴール右へ。お互いにFKからチャンスを創り合って、ゲームは立ち上がります。
"らしさ"の結実は7分。中央をCFの小林和樹(2年・ジェファFC)がドリブルで運ぶと、こぼれを拾ったのは果敢に高い位置まで上がってきていた鴻巣。昨年の国体優勝メンバーでもある6番は、サイドバックとは思えない間合いでスルーパスを。受けた鈴木がマーカーをかわしてそのまま放ったシュートは、寄せたDFの股下を抜けてゴールネットへ転がり込みます。「巧かったですよね。いい形でやって、いい形で点数を取ったと思う」と李監督も賞賛した崩しからきっちり成果を。久我山が1点のリードを手にしました。
さて、「最初から思い切って出ようと行った所での出だしがいつもの出だしじゃなかった」と野口コーチが話し、「今まで味わったことのない緊張もありましたし、プレッシャーもあって、最初自分たちが前に出られなかったことがあの失点に繋がったのかなと思う」とゲームキャプテンの渡辺東史也(3年・八王子由井中)も振り返ったように、やや立ち上がりから硬さの見られた実践は、少しずつ右の新井、左の橋本康平(3年・東急SレイエスFC)とサイドバックのオーバーラップも頻繁に。17分には久我山も鴻巣、内桶峻(2年・GRANDE FC)、鴻巣と細かく繋ぎ、小林がダイレクトで叩いたシュートは枠を越えると、21分は実践。2トップの一角を任された小池将史(3年・北区赤羽岩淵中)の思い切ったミドルは枠の右へ外れるも久々のシュート。「失点以降は少しずつ動き始めて、ある程度いつものリズムやいつもの形ができ始めた」と野口コーチも言及した通り、徐々にペースを引き寄せます。
24分も実践。広範囲に動いてボールを引き出していた杉山大周(3年・FC杉野)のミドルは、内藤がきっちり寄せて体でブロック。直後も実践。左から杉山が右足で上げたアーリークロスを、ファーで合わせた横溝聖太郎(3年・FC杉野)のヘディングは仲間がしっかりキャッチ。25分も実践。右から横溝が入れたクロスを中央で小池が粘って残し、角度のない位置から杉山が狙った枠内シュートは、仲間が何とかキャッチ。「失点しても焦らず、自分たちのやるべきことをやっていこうと話していた」とは渡辺。26分もにも新井のFKに須田皓太(3年・JACPA東京FC)が飛び込み、ここは仲間がキャッチしたものの、ゲームリズムは高尾の青へ。
とはいえ、久我山も「どうするかは実際迷ったんですけど、良い時はあまり変えるのはやめようと」(李監督)、夏以降で熟成させてきた3-4-3ではなく、準決勝の都立東久留米総合戦と同様に敷いた4-3-3は守備時に安定感が。「3バックだとサイドを使われやすいし、4バックにしたら右も左も1対1だったら強いので、クロスもそんなに上げられていなかったと思いますし、ちょっと時間を掛けてクロスを上げられても、自分たちも準備ができるので弾きやすかった」とは内藤。攻められる時間は長い中でも、中央のシビアなゾーンには「あの2人は少し次元が違う」と仲間も評したCBコンビがしっかり鍵を掛け、決定的なシーンは創らせません。
34分も実践。橋本の右CKは中央へこぼれるも、シュートまでは持ち込めず。同じく34分も実践。ミドルレンジから橋本が狙ったシュートは、花房が体でブロック。実践もハイサイドまで侵入し、セットプレーも獲得するものの、野口コーチが「久我山さんのディフェンスが堅いし上手い」と認めた通り、相手のサイドアタックも冷静に凌ぎ切った久我山が1点のアドバンテージを握ったまま、最初の40分間は終了しました。


ハーフタイムを挟んでも大枠の流れは変わらず。42分は実践。相手の連携ミスを小池が奪い、右サイドから杉山が左足で蹴ったクロスは内藤がクリア。43分も実践。橋本が縦に付けたボールを、百瀬隆平(3年・JACPA東京FC)がクロスに変えるも、飛び込んだ須田はわずかに届かず仲間がキャッチ。44分は久我山に決定機。右サイドから鈴木が斜めにパスを通し、小林の絶妙なフリックは内桶へ。躊躇なく放ったシュートはゴールネットを揺らすも、ここはオフサイドでノーゴールという判定。実践のサイドアタック、久我山の細かい崩しと、両者が持ち味を繰り出し合って後半が動き出します。
セットプレーも実践の重要な得点源。46分、杉山が粘って獲得したFKを左から新井が蹴るも、ここは仲間がパンチングで回避。同じく46分、右から橋本が入れたCKは鈴木が確実にクリア。47分には実践に1人目の交替が。負傷を押して出場していた横溝を下げて、天下谷真一郎(3年・FCトリプレッタJY)を1.5列目へ送り込み、杉山がボランチにスライド。47分、百瀬の左ロングスローは仲間が弾き、最後は久我山の左SBに入った野村京平(2年・横河武蔵野FC JY)が大きくクリア。50分、左サイドのスローインから百瀬がクロスを上げ切り、こぼれを狙った天下谷のシュートは仲間がキャッチ。リスタートから掛け続けるゴール前への圧力。
50分には久我山にチャンス。小林が粘って右へ繋ぎ、飯原健斗(3年・横浜FC JY)のカットインミドルはクロスバーの上へ外れましたが、「例年は攻めてカウンター一発でやられるという所だったんだけど、今年は逆」(李監督)「今年は去年よりも全員で守って攻めて、カウンターで一発というのもある」(内藤)と2人が声を揃えたように、チラつかせるカウンターは明確な脅威。
それでも、手数は実践。51分、橋本の右CKは中央をすり抜けてゴールキックへ。53分、新井の長いFKを拾った天下谷のクロスはDFがブロック。54分、新井の右ロングスローから、杉山が打ち切ったシュートは鈴木がブロック。55分はビッグチャンス。橋本の左FKを高橋が粘って残すと、渡辺がフリーで狙ったシュートはしかしクロスバーの上へ。「ボール支配もいつも以上に逆にでき過ぎちゃった部分はある」と野口コーチ。押し切りたいリーグチャンピオン。
55分は久我山に決定機。鴻巣が右のハイサイドへボールを送り、飯原は切り返しの連続で抜け出して中へ。DFのクリアは高く上がり、落ちたボールを澁谷雅也(1年・ジェファFC)が至近距離から打ったシュートは、実践のGK柿崎陸(3年・FC.GONA)が驚異的な反応で掻き出しましたが、わずかに風向きが変わると、飛び出したのはレフティのゴラッソ。
57分、中盤で小林が体を張って収めたボールを、アンカーの宮原直央(2年・FC多摩)はすかさず前へ。内桶も右へシンプルにはたくと、受けた飯原はカットインしながら左足一閃。完璧な軌道で左スミへ向かったボールは、ポストを叩いてゴールネットへ吸い込まれます。殊勲の14番が一目散に向かったのは「ああいうシュートが入るのも応援があったからこそ」と内藤も胸を張ったオレンジの大応援団。「攻撃になった時に中盤でボールを大切に1個だけ繋げれば、2発目に崩しのパスが入って、3発目に決定機が創れる」という李監督のメッセージがズバリ。次の得点も久我山に記録されました。
点差を広げられた実践ベンチは59分に決断。中盤で奮闘していた和氣貴也(2年・横河武蔵野FC JY)に替えて、大山友幸(2年・三菱養和巣鴨JY)を投入すると、システムも変更。最終ラインには大山、渡辺、新井の3人が並び、高橋を前線に上げる形で勝負に出ます。
61分は実践。百瀬と橋本の連携で奪った左CKを渡辺がグラウンダーで入れるも、杉山のスルーを読んだ花房がボールに触り、新井のミドルも内桶がきっちりコースに入ってブロック。久我山も61分に1人目の交替として澁谷と多嶋田雅司(2年・FC東京U-15むさし)を入れ替えると、62分には内桶と名倉巧(1年・FC東京U-15深川)もスイッチ。中盤の構成もそれまでの逆三角形から、名倉を頂点に宮原と鈴木が横へ並ぶ正三角形気味にシフトして、着手するのは一層のバランス維持。
「前に人数を掛けなきゃ点が取れないと思った」野口コーチも、66分に3人目の交替を。小池に替えて、黒石川瑛(2年・AZ'86東京青梅)を右サイドへ配し、高さのある須田を最前線へ。68分に杉山を起点に高橋が上げたクロスから、須田のボレーがヒットしなかったシーンを見届けると、70分に切った4枚目のカードは谷本薫(2年・文京クラッキ)。「シンプルにクロスを上げてもなかなか合いそうもなかったので、ある程度あの組織を崩すには個の能力かなと」ドリブラーをピッチへ解き放ちます。
ただ、「自分たちが支配するというより攻め込まれる時間の方が長かったですけど、プリンスでやっているとそういう試合が多いので、そういう攻められ方をしていた方が守りやすかった」と内藤も話したように、久我山にとって我慢する展開はお手の物。さらに、「変に繋いで取られるよりは、クリアしちゃってラインを上げちゃった方が良いかなと思う」(花房)「とりあえず相手に前で触らせないように、クリアが大きくなって相手に取られる分にはまだいい」(内藤)とCBコンビは揃って割り切る姿勢を鮮明に。「『蹴るか繋ぐかはお前らが判断しろ』だから、選手も結構しんどいんだと思いますよ」とは指揮官ですが、リスク回避を大前提にした"判断ある"クリアで時間を潰しつつ、71分には多嶋田のフィードを小林が残し、名倉がわずかに枠の左へ外れるシュートまで。連覇まではあと10分間とアディショナルタイム。
「失うものはなかったので、失点してもいいから割り切って前に行こうと」(渡辺)最後の攻勢に出たい実践。79分、渡辺が左へ振り分けるも、黒石川のクロスは高橋とわずかに合わず。80分、杉山が頭で粘って残したボールを、黒石川が強引に叩いたボレーはクロスバーの上へ。久我山も木村快(3年・インテリオールFC)と小林祐貴(3年・Forza'02)を相次いで投入し、3年生に託したクロージング。掲示されたアディショナルタイムは2分。声を枯らす両チームの応援席。
80+1分、百瀬が奪い返したボールを大山が右からクロス。飛んだ高橋のヘディングは内藤が確実に跳ね返し、高橋が再び食らい付いたボールも宮原が大きく蹴り出すと、これが実践にとってのラストチャンス。そして82分15秒。西が丘を包んだタイムアップのホイッスル。「ディフェンスは正直言って強いというのはわかっていることなので、ウチらしい典型的な今年のゲームだったと思いますよ」と笑顔を見せたのは今年限りの勇退が決まっている李監督。久我山が同校初の連覇に4試合無失点という花を添え、力強く東京を制する結果となりました。


「本当に良いチームだったし、向こうは強かった」と敵将の李監督も認めたように、惜しくもここでの敗退となった実践も持ち味は十分に発揮してくれたと思います。野口コーチも「今回は負けたけど、今年一年の彼らの努力というものが今日のゲームでは全て出たと思います。全部表現してくれたと思いますし、今日の内容に関して反省はないです」と教え子たちへの評価を口にしました。ただ、3年生への想いを問われると「本当に良く成長してくれたなと思いますし、感謝でしかないと思います」と涙ながらに声を絞り出した野口コーチ。「正直自分たちも最初は不安の方が大きくて、個人的な感想ですけどここまで来れるとは思っていなかったですし、本当にリーグ戦もよく優勝できたなと思っています。ここまで来れたのは野口さんのおかげだと思いますし、色々なサポートがあってここまで来れたので良かったです」とは渡辺。全国出場という結果は得られなかったものの、李監督同様に今年で勇退する野口コーチにとって、彼ら選手の成長が何より嬉しい恩返しだったことは間違いありません。
耐える時間の長かった準決勝と決勝を粘り強くモノにして、再び全国へと帰還する権利をもぎ取った久我山。「守って守って何とかというのではなく、こちらの意図があるゲームだったので、結構良いゲームだったと思っています」と李監督も話したように、いわゆる久我山のイメージとは異なるかもしれませんが、今年のチームの勝利に対する欲求からは「いつもの久我山とは少し違う泥臭さが今年の持ち味」という仲間の言葉にも頷ける、並々ならぬ気迫を感じます。「去年は自信があったんですよ。まさか開幕戦で負けるとは思ってなかったけど、勝負事ですからそれがいけなかったんだろうと」と1年前を振り返った指揮官は続けて、「この子たちは自分たちがそういうチームじゃないと認識しているんですよ。そこで緊張感を持って、頑張って一生懸命やって、自分たちの持ち味を出そうということなので、コテッと負けちゃうようなことはないんじゃないかと。結構上に上がる時は期待できるんじゃないかなと思っているんです」とキッパリ。「とにかく結果を残すのが去年から渡されたバトンだと思っているので、ここからプリンスも含めて全部勝ちたいと思います」とは仲間。昨年のリベンジを誓った"泥臭い"久我山が漕ぎ出す新たな航海の行方に、是非期待したいと思います。       土屋

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